企業法・授業まとめ-第3回-

【今回のテーマ:「株式」】
会社の特徴の一つ:社団性(グループであるということ)に絡めて「株式とは」
⇒設立時に一人であっても、後々複数になることが予定されてないと、会社の特徴(本質)である「社団性」にそぐわない。

株主はあくまで構成員(株式会社の社員たる地位を「株主」)となるべき

ここで、自分が株主であることを示す方法は?
置き換えて、自分がゼミに属していることを示す方法は?
『入った際に証明書のようなものを作ってもらい、訊かれたら示す』?
自分が土地を持っているということを示す方法は?
『登記』『土地の権利書』?
どこかの株を買ったとして、友人に“見せる”にはどうすればよい?
『株券を見せればよい』?
物の所有者であることを示す方法は?
『購入した際のレシートを見せる』?

このように、自分の権利を示す方法は多様である。

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【債権・証券について-無記名式と記名式-】

<PASMOを例に考えてみる>

◆無記名PASMO
◆記名PASMO
どなたでもご利用いただけるPASMOです。
大人運賃が適用されるため、小児用はありません。
バスの持参人式定期券を付加できます。
紛失時の再発行はできません。
記名人のみ、ご利用いただけるPASMOです。
紛失時には再発行が可能です。

株式会社パスモHPより)※株券はどちらにあたるか?

⇒株券は無記名式である
※この性質から、会社法上の条文の中身がいろいろと決まってくる
無記名式の場合、カード(証券)自体を持っているということが大事。
(=カードの所持が権利を有していることを示す。)

記名式(所有者・宛名が書いてある)の場合、他の人は使えないので、
カード(証券)を持つこと自体にあまり意味は無い。
⇒例えば、契約書や借用書などは拾ったとしても
拾った人が借主に「お金を返せ」と言えるわけではない。

ただし、現在は株券不発行会社が増えており、
無記名「証券」である意味は薄れた、といわれている。
⇒よって、非常にあいまいな状態になってきてはいる…
ただ、本質的なところとしては、「株券はあくまで無記名式」
無記名式であるためがゆえに誰でも持つことができ、
「持っている人が権利者」となる。

では、どのように株主を管理(把握)するのか?
⇒会社が「株主名簿」を準備して、管理する(会社法124条)。:後述。

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【株式名簿と株券】
○株主名簿:会社側が特定の人を株主として扱うためのもの

会社法124条(基準日)
「株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができる。」

○株券:株主が自分が株式を有していることを会社や第三者へ示すためのもの

会社法133条(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。」
会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
「1. 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2.株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中 「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする

※株券発行会社の場合には「株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社に対抗することができない。」となる。

なお、会社法128条1項「株券発行会社の株式の譲渡は、
当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。」

※ただし、株券不発行会社が原則となった現在
「株主名簿」の重要性が高くなった。

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【株主の管理方法(株主名簿)】
会社は「株主名簿」を準備して、管理する。
この「株主名簿」と「無記名」という概念は別。
⇒「会社側が誰が株主かを把握する情報」と「本来の株主が誰なのか、その権利の帰属は誰かを決める」のは別、ということ。あくまで、株券自体に名前は書かれない。名簿は会社が管理するためだけのもの。

会社法第121条(株主名簿)
「株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下
「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
① 株主の氏名又は名称及び住所
② 前号の株主の有する株式の数
③ 第1号の株主が株式を取得した日
④ 株式会社が株券発行会社である場合には、第2号の株式に係る株券の番号」

※名簿の存在と、無記名という概念は別のお話

Q.そのほかの「もの」については、権利はどのように管理されるのか?
※ちなみに究極の無記名のものは「お金」。「占有」と「所有」が一致。
↑名前を書いた人しか使えない、ということは絶対にない。
株券は似たような性質がある。(株主名簿の存在はあるものの…)
ただし、横領や不当利得のお話は別。

⇩参考条文等

民法86条(不動産及び動産)
「1. 土地及びその定着物は、不動産とする。
2. 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3. 無記名債権は、動産とみなす。」
民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」

明認方法(立木について、所有権を主張するために木に名前を墨書すること)

⇩自動車は基本的に動産だが、登録を受けなければ使えなかったり、
対抗できなかったりするため、また別の扱いになる。

道路運送車両法4条(登録の一般的効力)
「自動車は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。」
道路運送車両法5
「登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。」

○参考判例

最高裁判所第2小法廷判決昭和39年1月24日
〔判決文〕
「金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである。」

⇒「その金銭を手元に持っている人が、その金銭の所有者」ってこと。
無記名債権の究極的な概念は、ここまで行きつく。
株式や株券は、これくらい個性がない。

———

【株券が無記名式であることの意味は?】
すでに述べた通り、株券は動産と見なされる為、ものの引き渡しが大切。
– 株券が無記名だと、会社法上、株券をどのように扱うのが良いのか?
– 会社法上、何を基準にどのような規定をするべきか?
– 誰のどのような状況に配慮すべきなのか?(具体的な状況)

こうした疑問点に答えるような形で、会社法上の条文が決まっていく。

株券が無記名だと、どういう扱いになるのか。何を決めるべき?
– 株券を持っている人が株主?
– 株券を持ってないと、譲渡できない?
– 同じ株券が二つ存在することはあるのか?
– 株券不発行会社の場合はどのように規定すべきか?

Q.「株主」、「株券」、「株式」の言葉の違い
『株券は具体的な券、株式は概念』?

会社法131条(権利の推定等)
「1. 株券の占有者は、当該株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定する。
2. 株券の交付を受けた者は、当該株券に係る株式についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。」

⇒「株券を持っている人」=「株式を持っている人」ということ。
「株式」は株の権利、というイメージ。

会社法127条(株式の譲渡)
 「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」

⇒あくまで譲渡するのは株式(×株券)。
「株券」は存在してもしなくてもOK。

会社法128条 (株券発行会社の株式の譲渡)
「1. 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
2. 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。」
会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
「1. 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2. 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。」

⇒株券発行会社において、「株券」の存在がとても大事になってくる。

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【株主名簿と株券】
〇株券発行会社の場合
株式発行会社の場合

※譲渡制限会社の場合、原則会社の承認手続きが必要。
※但し、株券不発行会社が原則となった現在「株主名簿」の重要性が高くなった。

⇒株券不発行会社がほとんどの昨今、①は合意のみで成立することになっている。

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【ここで、株券(株式)の性質】
株券持ってる人:すごく有利な状況になる
⇒株券が無記名債権(権利)だという性質から、株券が全部の意味を有する。

⇩そもそも「株式」とは?

株式:「株主としての細分化された割合的単位の形」といわれている。
⇒株式ひとつの価値は同じであるためそれぞれの株式に違いはなく、株主皆を均一に扱わなければならない。
⇒記名式のパスモや債券ならば、それぞれのパスモや債券に意味がある。しかし、株式は均等に割られた権利であるから、それ以上のものでもない。株式の個性というのは非常に弱くなっている。「株式を持っていれば誰でも平等に扱われる」のが原則となっていて、その性質から無記名制が生じ、既述の条文が規定されている。

<ちなみに…「株主平等原則」>

会社法109条(株主の平等)
「1.   株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない*
2. 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3. 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第5編の規定を適用する。」

⇒株主優待なども、基本的にはこのルールの範囲内で行われている。
*例えば・
Aさん:1株所有
Bさん:100株所有

この場合、「BさんをAさんの100倍優遇することはOK」ということ。

 

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