いきなり企業法! <2-2.株式会社の作り方>

第2回後半戦、前回の続きである記事にいきなりも何もないが株式会社の作り方、つまり設立の手続について説明してみよう!

-会社の設立:発起手続と募集手続

株式会社を設立するための手続には二種類あり、発起設立と募集設立がある。
発起設立とは発起人が会社成立時に発行される株式の全部を引き受ける方法(会社法25条1項1号)をいい、募集設立とは発起人は会社成立時に発行される株式の一部のみを引き受け、残りの株式は発起人以外の引受人を募集する方法(会社法25条1項2号)のことをいう。

会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明によると、平成2年の会社法改正以降は発起設立が設立手続きの大半を占め、募集設立に対する利用のニーズは減少しているとのことであり、募集設立の利用数は実務上極めて少ない。発起人以外の引受人には会社の内部事情が見えにくく、詐欺に利用されたり投資家に不測の事態をもたらすこともあるため、投資公衆の保護の観点からも金融商品取引法などでにより厳しく規制されている。
手続としては出資金の払込について払込取扱機関による払込金保管証明書が必要であったり、創立総会を開催する必要があったりなど、発起設立と異なる。

発起設立の流れは次のとおり。
1.設立時株主が複数いる場合は出資比率、役職の分配、会社の運営方針等についての交渉
2.定款の作成
3.株式発行事項の決定と株式の引き受け
4.出資の履行
5.設立時役員等の選任
6.設立登記

 

 

-会社づくり、何から始める?

ウサギさんとカエルさんはいつもどおりファミレスでだらだらしていたところ、「自分たちで育てた野菜を使ってオリジナル野菜ジュースを販売すれば儲かるのでは……!」という話で盛り上がり、二人で会社を設立することにした。

二人以上で会社を設立する場合、はじめにいくつか決めごとをしておかなければ後々揉めることになる。
まず気をつけたいのは出資比率。会社の重要なことを決めるには、株主総会を開いて株主で多数決をとらなくてはならない。ウサギさんとカエルさんが同じ金額を出資した場合、意見が対立してしまえば過半数の賛成を得ることができず、決議できないという事態に陥り何も決められなくなってしまう。このリスクを回避するためにもどちらかが50%を超えるように比率を決めておくのがベター。また、決議事項によっては2/3以上の株主の同意が必要になるものもあるので、どちらかが2/3以上の株式を保有している方がモアベターということになる。今回はウサギさんが60%、カエルさんが40%出資することになった。
話し合いの結果、ウサギさんが代表取締役でカエルさんは取締役になることが決まった。ここできちんと今後の運営方針についても話し合っておくことも大事。

さて次は定款の作成である。
定款とは、会社の組織と活動に関する根本原則となるもので、会社はこの定款の目的の範囲内でしか権利能力を持つことができない。そのため会社を設立する際に必ず必要となる。
定款に記載しないと会社を設立できない「絶対的記載事項」というものが会社法により定められていて、発起設立における絶対的記載事項は、
1.会社の目的(27条1号)
2.商号(27条2号)
3.本店の所在地(27条3号)
4.設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(27条4号)(資本金の額)
5.発起人の氏名・名称および住所(27条5号)
6.発行可能株式総数(37条)
である(落合誠一ほか「会社法Visual Materials」22~23頁参照)。これがなくては会社といえないという、最低限のものが定められている。
また、決めなくてもよいが、決めた場合には定款に記載しないと効力が生じない「相対的記載事項」というものもあり、現物出資、財産引受、発起人の報酬等、設立費用などがそれにあたる。
必要事項を定めたら近くの公証役場に行き、公証人に認証してもらう。公証人が認証することで、「最初に作った定款はこんな定款じゃなかった!」というようなトラブルを避けることができるのだ。

上述のとおり、財産引受は定款の相対的記載事項である。記載していなかった場合は効力が生じないわけだが、本当に無効になってしまっていいのだろうか。この点につき、具体的な事例として最高裁判所大法廷判決(昭和61年9月11日)を取り上げよう。
事件の概要をざっと説明すると、A社はB社の発起人Dとの間で、B社設立の際、E工場に属する一切の営業を1600万円分割払で譲渡する旨の営業譲渡契約を締結した。B社は無事設立されたがいろいろうまくいかず、支払が滞ることとなった。A社は支払を5年間猶予することにしたもののその後B社は倒産寸前となり、お金なんて当然払えない。ここでB社は営業譲渡契約について定款に記載がないことを理由に、「そもそもこの契約が無効でありお金を払う必要がない!」と主張したのである。会社法によると定款に記載のない財産引受は無効、しかし譲渡から無効の主張をするまでの9年間はみんな有効だと思って営業してきたわけである。今更無効になってしまうと、じゃあこの9年間は何だったのか!ということになる。
判例においても、定款に記載のない財産引受自体は無効であるとされているが、債務の履行を拒みたいがゆえにそれを無効と主張することは「信義則に反し許されないもの」とされ、棄却された。

そこで、上告会社に本件営業譲渡契約の無効を主張することができない特段の事情があるかどうかについて検討するに、原審の確定した事実関係によれば、被上告会社は本件営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行ずみであり、他方上告会社
は右の履行について苦情を申し出たことがなく、また、上告会社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、被上告会社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、しかも、上告会社は、原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由については契約後約九年、株主総会の承認手続を経由していないことを理由とする無効事由については契約後約二〇年を経て、初めて主張するに至つたものであり、両会社の株主・債権者等の会社の利害関係人が右の理由に基づき本件営業譲渡契約が無効であるなどとして問題にしたことは全くなかつた、というのであるから、上告会社が本件営業譲渡契約について商法一六八条一項六号又は二四五条一項一号の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定した上告会社又は被上告会社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、右違反に籍口して、専ら、既に遅滞に陥つた本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められ、信義則に反し許されないものといわなければならない。したがつて、上告会社が本件営業譲渡契約について商法の右各規定の違反を理由として無効を主張することは、これを許さない特段の事情があるというべきである。
最高裁判所大法廷判決 昭和61年9月11日

信義則、なかなか聞き慣れない言葉だが「信義誠実の原則」ともいい、簡単に言えば相手のことを裏切っちゃだめだよということである。具体的には民法1条2項において「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」と定められている。
本件は、みんな有効だと思って何年もやってきたんだからそれを突然無効にしたら困っちゃうでしょ、お金がないから払わないで済むようにしようなんて許されません、だから本当は無効だけど例外的に有効ね、というお話で、例外の例外のそのまた例外……みたいな判例もまれにあるわけだが、例外は置いておいてひとまず基本的なところを押さえておきたい。

会社の設立の流れに話を戻して、設立の際に発行される株式を「設立時発行株式」といい、株式の引き受けとは出資をおこなって株主になることを指す。設立発行株式に関する事項、すなわち株式発行事項のうち、重要な事項は定款に定められてその他の事項は発起人の多数決で決定される。また、発起設立の場合は発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける。

発起人は株式の引受後、遅滞なく、引き受けた設立時発行株式分の全額の払込みをし(会社法34条1項)、金銭の払込みは、発起人が定めた払込取扱機関の払込取扱場所においておこなう(会社法34条2項)。なお、出資の履行がなされない場合、催促を経て、最終的には失権(設立時発行株式の株主となる権利を喪失)する。

 

 

-資本金に関するトラブル

お金が絡むと揉め事が起きるというのが世の中の常で、だいたい悪いことをする人が出てくるものである。昔は資本金が1000万円以上なければ株式会社を設立することができなかったため、見せかけの資本金を用意する会社もあったのだ。
現在は資本金1円でも株式会社を作ることができるため普通の株式会社を設立するにあたってはおこなう意味がほとんとないが、債権管理回収業に関する特別措置法5条により、いわゆるサービサー会社は現在でも5億円以上の資本金を要求されるため一部の会社においてはおこなう意味はある。

代表的な払込みの偽装方法とされるのが、「預合い」と「見せ金」の二つである。
預合いとは、発起人が払込取扱機関(銀行)の役職員と通謀して、払込取扱機関から借り入れをしてそれを払込みに充てるが、借入を返済するまでは預金を引き出さないことを約束する行為で、会社法965条で禁止されている。
たとえば、タイラカ商店の設立のため、ウサギさんはヒマラヤ銀行から1000万円を借り入れた。それを払込み、タイラカ商店は資本金1000万円であるとして設立登記する。実はヒマラヤ銀行からお金を借り入れる際、担当者のサルさんから「ひとまず資本金として1000万円お貸ししますが、返済するまで引き出さないでくださいね。」と言われ、ウサギさんはその旨約束をしていたのである。このように銀行と発起人との間で約束することが預合いで、先ほど述べたとおり法律で禁止されている。そもそもなんでこのような約束をするかというと、ヒマラヤ銀行としてはジュース屋さんとかいう儲かりそうなのか予想のつかない会社に大きなお金を貸すわけで、結局すぐに潰れて回収できませんでしたという事態は避けたい。発起人であるウサギさんは何よりもまず会社を設立したい。と、なるとお金は貸すけど使わないで持っててね、という話でwin-winっぽい感じになるわけだ。
二つ目の見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金銭を株式の払込みに充て、会社の成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てる行為のことである。預合いと似ているが、異なる点として、巻き込む相手が金融機関ではなく第三者であるところだ。ヒマラヤ銀行に融資を断られて困ったたウサギさんは、お友達のウシさんに「一瞬だけ1000万円貸してもらえない?絶対すぐ返すからさあ!」とお願いし、1000万円借りることができた。その1000万円を銀行に持って行って払込みをし、登記後は無事完了。すぐに銀行に向かい1000万円を引出したウサギさんは、急いでウシさんのところへ行って「ありがとう、おかげで会社が作れて助かったよ!」とお金を返したのでした。これではウシさんの1000万円がぐるぐると移動しているだけで結局会社にお金は残らない。
どちらも資本金を用意してはいるもののそれは見せかけで、会社の運転資金となるお金はどこにもない。使えるお金がないと意味がないので、どちらもいけませんよということになっている。なお、預合いは条文上禁止されているが、見せ金は法律では禁止されておらず、判例上無効となっているだけである。

出資にあたり、株式の対価を現金で払う以外に現物出資という方法もある。たとえば車とか建物とか、有価証券や知的財産権などがあり、現物出資をおこなう場合は定款への記載が要求される(会社法28条)。金銭ではないので、目的物の価値評価が不当になる可能性がある。
カエルさんが「現物出資だ!事務所に飾ろう!」と言って持ってきた絵画、あなたはこの絵画の価値を正しく決められるだろうか。買ったときの領収書があればあるいはなんとなくわかるかもしれないがモノの価値はみんなよくわからないというのが正直なところなので、裁判所が選任する検査役に調査をしてもらい、価額が適正かどうかをチェックする決まりになっている(会社法33条)。なお、例外として500万円を超えない場合や市場価格が決まっている有価証券を出資する場合(会社法33条10項)、調査が不要となる。調査がなくても手続が大変なので、実際のところ価値のよくわからないものを現物出資に使うことはあまりない。

出資の履行後、まず設立時取締役を選任する。発起人は1株につき1議決権を持つことになっており、過半数の決定によって設立時取締役が決まる。もちろん自分を選任することも可能である。
すべての準備が終わったら法務局に行って設立登記をする。「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法49条)」、つまり登記時をもって会社は法人格を取得する。
というわけでウサギさんが代表取締役を務める株式会社タイラカ商店は登記が完了し、無事法人格を取得したのでした。めでたしめでたし。

 

 

-安心するのはまだ早い?「設立無効の訴え」

…と、会社ができたとしても「設立無効の訴え」というものを提起することで、その会社の成立を否定することができるとされている(会社法828条1項1条)。会社そのものが無効になるとそれはそれは多くの関係者が混乱するので、もちろんそう簡単に無効になることはない。誰でも提起できるのかというと、もちろんそんなことはなく、株主や取締役等に限られており、また設立登記から2年以内と期間が決まっている。具体的な無効事由は
・定款の絶対的記載事項が欠けている
・設立時株式を1株も引き受けていない発起人がいる
・公証人による定款の認証がない
といったところであるが、実際こんなことが起きるのだろうか。
登記をする際はまず登記官が入念に書類のチェックをする。簡単な不備であれば補正することもできるし、形式的な不備がある書類の登記がとおる可能性はかなり低い。とはいえその不備を見逃して登記されてしまうと無効事由となるので注意しなくてはならないだろう。

株式会社についてはこんな感じ。次回のテーマはいきなり「株式」。

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