企業法・授業まとめ-第7回-

【資本市場から資金調達する場合】
・企業が「株式」<資本>で資金調達をする。
株主を募集する場合には会社法上の規制がある(募集する株主が多い場合、額が大きい場合は金融商品取引法の規制も。ディスクロージャー規制。)。
→主に発行体制(会社)にかかる規制

※社債も借入れの一種だが、無記名で画一的なので、
「有価証券」として金融商品取引法の規制がある。

金融商品取引法(上場会社の場合):
内閣総理大臣への有価証券届出書、投資家への目論見書の交付。
監査法人・公認会計士の監査が必要。
※法に明記する理由としては、
①投資詐欺を防ぐため
実在するかよくわからない会社の株券を売る、といった
詐欺まがいなことをする会社もある。
そうした犯罪を防ぐため、ルールにのっとり株を発行させる。
②株券を刷ってお金を調達する=お金を刷るようなもの
ゆえに、しっかりとした届け出が必要。

・企業が「借入」<負債>で資金調達をする。
借入れ側に大きな規制はない。
お金を貸す方には、貸金業法・出資法等の規制がある。
→会社側の規制ではない。債権者保護手続きを除き、大きな規制はない。
※会社側への規制は、ほとんど無いと言ってもよいくらい。
借り手の弱みにつけこむ貸し手もいるので、そこに対する規制アリ。

⇒会社が資金調達する際に、楽なのは「借入」。
しかし、借入金は返さなければいけないので、
返済不要の株式で資金調達したくなる…

ということで、授業で扱うのは株式発行による資金調達。

 

【株式の発行(募集株式)】

設立時の株式発行(発起設立、募集設立)
設立後にも、株式会社は資金需要に応じ、株式を発行することができる。
⇔株式譲渡:資金は株主間のみ移動。会社には資金は入らない。

※株式:株式会社の社員としての地位を割合的単位として示したもの。

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一番最初、会社を設立するときにお金がなければいけない。

(もちろん1円でも作れるが、実際には運転資金としてある程度お金は必要)
なので、まず設立の瞬間に株式を発行してお金を集める。
そして、それをもとに会社を経営する。
会社というのは経営していく中で、新事業を始めたいときなど、お金が必要になる瞬間が出てくる。
その瞬間、株式を追加で発行し、お金を調達することができる:「増資」という。

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→新たな株式の発行は、新たな社員としての地位を創設・増やすこと。
→新しい株主が増える、既存の株主との利害関係を調整する必要。
→会社法は、既存株主の権利を害さないための規定を用意している。
例1)発行価格が安価の場合には株主総会特別決議が必要。
⇒会社法210条に書いてある。自分が買ったときは100万円だけど、
その後安く発行されてしまうと困る…

例2)株式発行が著しく不公正な方法の場合には、差止請求。

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増資は可能だが、その会社が好きで出資している人たちからすれば、
新しいメンバー(出資者)が入ってくるというのは、何かしら抵抗がある。
それは気持ち的だったり、経済的だったり…
どちらを保護すべきかというと、もちろん既に出資している人。
会社法では「既存株主」といい、権利を害さないための規定も用意されている。
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【新株の発行差止め】

会社法210条(募集株式の発行等をやめることの請求)
「次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
① 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
② 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合」

では、有利発行(時価より低額で株式を募集すること)とはなにか?
※第三者割当と株主割当で違いはあるのか?授権資本制度とは?

 

【授権資本制度】

発行可能株式数:定款に記載されている会社が発行できる株式総数
発行済株式数  :会社が実際に発行している株式数

公開会社の場合には、発行可能株式総数のうち4分の1は発行しないといけない。
→追加で発行できる枠(4分の3)を設定しておくことで、
既存株主の持株比率の低下を防ぐため。

発行可能株式数を増加するためには定款変更(特別決議)が必要。

<株式発行の方法>
・株式割当(株主全員に均等に割当て)
・第三者割当(募集株式の発行、特定の株主への割当ても含む)
・公募(第三者割当の一種だが、広く募集する場合)

※第三者割当には会社法上の制約が多い。条文の確認。

 

【募集事項の決定】

会社法199条(募集事項の決定)※株主総会での決議が基本必要
「株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
① 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
② 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
③ 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
④ 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
⑤ 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。」

⇒つまり、
1項:どれだけの数・金額・どういった内容で発行するのか決めなければならない
2項:前項の決定は株主総会の決議によらなければならない
3項:発行を受ける人にとって有利な金額(以前の発行よりも安い金額)で発行する場合には、取締役は前項の株主総会で当該払込金額で募集することのの理由を説明しなければならない
ってこと。

会社法200条(募集事項の決定の委任)
「1 前条第2項及び第4項の規定にかかわらず、株主総会においては、決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない。
2前項の払込金額の下限が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、同項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。」

すべての細かいことを株主総会で決めなければいけないかというと、そんなことはない。大枠さえ決めればあとは取締役会で決めていいよ、というのが⇧200条1項。

非公開会社でも、ある程度までは取締役会に委任可能
→これとは別に、公開会社における特則が201条。

会社法201条(公開会社における募集事項の決定の特則)
「第199条第3項に規定する場合を除き、公開会社における同条第2項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。」

※公開会社の場合には、有利発行(199条3項)でなければ
原則として取締役会決議で発行可。

⇒この201条の規定により何が起きるかというと…
上場企業の場合は、199条3項の「有利な金額で発行しない場合においては、取締役会の決議で、株式発行することができる」となっている。ゆえに、上場企業(公開会社)の場合は、有利発行でなければ取締役会の決議で発行することができる、というのが199条と201条。

※条文というのは読み方がある。条文に書いてあることをなぞる・知ることが大切。一回やっておけば条文の読み方がわかるかもしれないってことで、頑張って触れていきましょう…!

 

【株主総会の特別決議】

株主総会の決議において、必要なのは2/3以上の決議。
それが書かれているのが309条2項⇩

会社法309条2項5号(株主総会の決議)
「1 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
第199条第2項第200条第1項、第202条第3項第4号及び第204条第2項の株主総会」

 

【有利発行とは? 出資金=純資産と仮定】
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本題の前にワンポイント:
有利発行の場合には株主総会の特別決議が必要であるが、公開会社の場合には、有利発行でなければ取締役会決議で株式発行できる。そこで何が問題となるかというと、株主ではなく「取締役会が決めることが出来てしまう」ということ。
株主は株式を所有することでしか会社に対して関与することができないのに、その一番の生命線といえる「株式」を、取締役会が勝手に決めることができてしまう。
例えば公開会社において敵対的買収が起きた場合。
株主に「このまま外資系の企業に買われたほうが会社うまくいくのでは?」との気持ちがあったとしても、経営者が「外資系の企業には買われたくない、自分たちの好きなように運営したい」などと思っていると、お金を出してくれる人さえ見つければ経営者の一存でその人に出資してもらい、その新しい人を株主にすることができてしまうそれでは困ってしまうので、有利発行にはさまざま規制がある。
さまざまな規制があることを知ったうえで、公開会社の場合、有利発行でなければ取締役会決議で株式を発行することができるということ。有利発行の場合には株主総会決議が必要だが、そこの境目、「有利発行」とは何なのか。

そもそもの前提として、「有利・不利」とは何なのかについて考えてみてほしい
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例1)
①会社設立時:
100万円出資、1株10万円で10株発行、Aさん、Bさんが5株ずつ保有
②増資時:
50万円増資、1株5万円で10株発行、 Cさんが全部引受け
例2)
①会社設立時:
100万円出資、1株10万円で10株発行、Aさん、Bさんが5株ずつ保有
②増資時:
50万円増資、1株1万円で50株発行、 Aさん、Bさんが25株ずつ引受け

Q:Aさん、Bさんはどちらの場合に損をしている?
(会社にはそれぞれが払い込んだ資本金しか存在しないと仮定する。)
A:1のほうが損している?なんとなく。

⇩図で整理して考えてみよう

例1・2共通)会社設立時

発行済株式 10株
会社の直近の純資産 100万円
1株あたりの価値(100万円÷10株) 10万円
例1)増資時

発行済株式 10株→20株
会社の直近の純資産 100万円→150万円
1株あたりの価値(純資産÷株式数) 10万円→7.5万円

⇒Aさん・Bさんは当初1株10万円で出資したのに、1株7.5万円まで下落

例2)増資時

発行済株式 10株→60株
会社の直近の純資産 100万円→150万円
1株あたりの価値(純資産÷株式数) 10万円→2.5万円

⇒Aさん・Bさんは当初1株10万円で出資したのに、1株2.5万円まで下落
※こちらのほうが下落率が高い!

(イラストはイラストレインいらすとやよりお借りしました。)

⇩どちらが損なのか分からなくなってきた…?

結果的には、例1のほうが損。
なぜなら…

例1)
Aさん、Bさんそれぞれの出資額:10万円×5株=50万円
—増資—
Cさんの出資額:5万円×10株=50万円
———
1株あたりの価値:150万円÷20株=7.5万円
現在、Aさん、Bさんそれぞれの保有資産:7.5万円×5株=37.5万円
現在、Cさんの保有資産:7.5万円×10株=75万円
⇛Aさん、Bさんの資産はそれぞれ12.5万円目減りした
⇛Cさんは50万円の出資で75万円分の資産(株式)をゲット
例2)
Aさん、Bさんそれぞれの出資額:10万円×5株=50万円
—増資—
Aさん、Bさんそれぞれの出資額:1万円×25株=25万円
———
1株あたりの価値:150万円÷60株=2.5万円
現在、Aさん、Bさんそれぞれの保有資産:50万円+25万円=75万円
⇛出資額と保有資産は同額(=目減りしていない)

1株あたりの価値という点でみると、下落率の大きい「例2」のほうが損しているように感じるが、「手元にある会社に対する把握率」、つまり自分が会社の保有資産として所有している資産、という点でみると…

例1)1株7.5万円×5株=37.5万円しか手元にない。
例2)1株2.5万円×30株=75万円もっていることになる。
⇒会社の資産は150万円なので、AさんとBさんで75万円ずつ、
つまり50%ずつ株を持っているということ。

例1 は外部からCさんがやってきたので、
Aさん・Bさんが損した分、目減りした分を持って行ったのがCさんということ。
→Cさんは50万円の出資で7.5万円×10株=75万円の株が手に入った。
残りの75万円を、Aさん・Bさんが半分ずつ所有。

⇒何が違うかいうと、
・外部の人が入ってくるか否か
・Aさん・Bさんに当初の出資額に応じた株式を割り当てているか
会社法上、例1 のように、
株主に対して平等に追加の出資の権利を与えることを「株主割当」という。

※株主割当は、株主の持つ株式価値を低下させない。これが大切!!
・総量として低下しない
・株主総会の特別決議等は不要
しかし、外部の株主が関与してくると⇧のように、
自分の持つ資産が目減りするかもしれない。
ゆえに「有利発行の場合にはAさん・Bさんの承諾(特別決議)を得ないと
株式発行できないよ」というのが有利発行。

※なお、有利発行(株式を時価よりも低額で発行すること)は保有割合の低下とは別の規制(時価総額が大きくなると、自身の株式価値は同じでも持分比率が低下することはある)。いくらで発行すると「有利発行」なのか?

最高裁判所平成27年2月19日判決
〔判示事項〕
非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条の2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合
〔判決文〕
「非上場会社の株価の算定については、簿価純資産法、時価純資産法、配当還元法、収益還元法、DCF法、類似会社比準法など様々な評価手法が存在しているのであって、どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。また、個々の評価手法においても、将来の収益、フリーキャッシュフロー等の予測値や、還元率、割引率等の数値、類似会社の範囲など、ある程度の幅のある判断要素が含まれていることが少なくない。株価の算定に関する上記のような状況に鑑みると、取締役会が、新株発行当時、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず、裁判所が、事後的に、他の評価手法を用いたり、異なる予測値等を採用したりするなどして、改めて株価の算定を行った上、その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは、取締役らの予測可能性を害することともなり、相当ではないというべきである。
したがって、非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。」

⇒有利発行については、株式価値がどのように計算されるかが難しい。
ソニーやトヨタなど、証券取引所に株式が上場されている会社の場合には値段が逐一分かり、その値段をもってすれば株式の価値が分かる。しかし、非上場会社の株式は売っていないので、当然値段はよくわからない。
売っていないものの値段を算定するにあたって色々な方法がある、と言っているのが⇧この判例。
※価値を算定するためには様々な方法がある、ということをおさえておく。

 

【日本証券業協会の要請(上場銘柄の有利発行)】

非上場会社の株式価値を決めるのは非常に難しいが、上場会社の場合には基準が示されているのでビシッと決まる。
これが、取締役会決議で株式を発行できるかの違いとなったりする。

第三者割当増資の扱いに関する指針」から抜粋
「1. 会員は、上場銘柄の発行会社(外国会社を除く。)が我が国において第三者割当(企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第1号ヲに規定する方法をいう。)により株式の発行(自己株式の処分を含む。以下同じ。)を行う場合には、当該発行会社に対して、次に定める内容に沿って行われるよう要請する。
(1)払込金額は、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額(直前日における売買がない場合は、当該直前日からさかのぼった直近日の価額)に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から払込金額を決定するために適当な期間(最長6か月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる。
(2)株式の発行が会社法に基づき株主総会の特別決議を経て行われる場合は、本指針の適用は受けない。
2. 会員は、1.(1)のただし書により払込金額が決定されるときには、発行会社に対し、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額を勘案しない理由及び払込金額を決定するための期間を採用した理由を適切に開示するよう要請する。

※0.9は目安ではあるが、法律上明記されているわけではない。
⇒10%までのディスカウントだったら有利発行じゃなくてもOK、
というような言い方をしている。

これが日本証券業協会から要請されていること。従わなくても別によい。

Aさん・Bさんの例は、自分が保有する株式の価値が下がってしまうという話だったが、逆に、高い値段で株式を発行することは自由にできるのか?
例えば、1株10万円だったものを今度は1株100万円で他の人に割り当てるとする。
そうすれば会社の資産は増えるが、元の株主のシェア割合は変わらず、
その10株分の価値は高まる。

そうなると高い金額での株式発行は自由にできそうだが…
できない」とされている。

これは会社法上の決まりではなく、上場している会社の決まり。
上場している会社の場合には、高すぎる価格での発行もダメだとされている。
理由は⇩に書いてあるとおり。

 

【有価証券上場規定(希薄化防止のためのルール)】
有利発行規制以外にも、取締役会決議のみで発行可能であることへの疑問から。

有価証券上場規定432条(第三者割当に係る遵守事項)
「上場会社は、第三者割当による募集株式等の割当てを行う場合(施行規則で定める議決権の比率が25%以上となる場合に限る。)又は当該割当て及び当該割当てに係る募集株式等の転換又は行使により支配株主が異動する見込みがある場合は、次の各号に掲げる手続のいずれかを行うものとする。ただし、当該割当ての緊急性が極めて高いものとして施行規則で定める場合はこの限りでない。
(1)経営者から一定程度独立した者による当該割当ての必要性及び相当性に関する意見の入手
(2)当該割当てに係る株主総会決議などによる株主の意思確認」

※有利発行(時価よりも低額で株式を発行すること)とは異なる制約として、議決権比率が希薄化する場合には、市場としての独自のルールを設定。会社の支配権の変動により、少数株主の権利が害される可能性(多数派の横暴を抑制)。
⇒なぜかというと…
特別決議で有利発行できるということは
つまり、
①特別決議ができるくらいの数の株式を普通の値段に誰かに割当て
②その後、その人が自分に対してすごーく安い値段で有利発行
⇛最終的に株式を安く手に入れられる!

そういうズルをできてしまうこともあり、「議決権を多数占める」ことは会社法上かなり力を持つことになる。
会社の議決権を多く持つ=多数派の横暴を認める、ということになってしまうので、市場のルールとして規制されている。

 

東京証券取引所「安心して投資できる市場環境等の整備に向けて」より

問題意識 対象 手続/審査 備考
希釈化・支配権の移動 希釈化300%超 実質審査の対象とする 株主の利益を侵害するおそれが少ない場合は措置を講じない。
希釈化25%以上
又は
支配権の移動あり
経営陣から独立した者からの意見聴取
又は
株主総会決議などによる株主意思の確認
左記の手続きを実施することが困難なほど資金調達の緊急性が高いと東証が認める場合は、手続きは不要。
割当先に関する
問題
支配株主の移動
あり
事後的に支配株主との間の取引について確認
割当先が上場会社
及び
取引参加者以外
割当先の反社会勢力等との関係の有無について確認
有利発行の該当性 計算方法次第では
ディスカウント率が10%超
開示資料に監査役からの適法性に関する意見を追加など CB及び新株予約権の場合は必ず必要。
資金的手当て 第三者割当全般 上場会社による割当先の資金手当ての確認並びにその方法及び結果の開示

⇒何故このようなルールがあるかというと…
有利発行だけでなく希釈化がおこなわれる場合にも少数株主の権利が害される可能性がある。たとえば、今まで役員を選任できたのに、株式の希釈化によって選任する権利がなくなってしまったりする。
役員で決議できる事項も多くあり、そこに対する多数派の横暴を防ぐため、希釈化に関しても、上場企業については一定のルールが定められている。

以上が、株式を発行する場合の規制として、
有利発行に関する規制と、希釈化(議決権比率が低下する場合)の両方の側面からの規制。

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