企業法・授業まとめ-第10回-

企業トラブルについての法的解決手段

債権関係の金銭トラブルは前回扱った。
今回は主にその他の企業トラブル(企業不祥事)について。
(企業が巻き込まれる/誘発してしまうもの)

<企業トラブルの例>
・商品、製品の欠陥等(PL法、食品偽装)
・会計不祥事、架空取引
・経営者責任
・労働問題
・施設、設備
・情報流出
・その他

⇒企業トラブルは難しい。
「こうなることが分かっていたら、もっとこうしていたのに…」
みたいなことは、後からいくらでも言えてしまうので。

最近は企業不祥事のニュースが取り上げられない。
だからといって、発生していないわけではない。
「取り上げられてしまうブーム」がある。(傾向的な話だが)

昔の企業不祥事といえば、
経営陣の失策により、企業イメージが悪化して売上ダウンした。

2010年以降:
消費者に対する不祥事により、企業イメージが悪化して売上ダウン。
皆が非常に敏感になり、売上がどんどん落ちてしまう…

「企業」には、何十万人も従業員を抱える会社もあり
消費者となるとその数は数百万人、数千万人になる。
企業の不祥事対応や危機管理対応とは、
そういう人々の動きを予測・対応するというところ。マスコミ各社も含めて。
状況によって生じる揺らぎのなか、どのように対応していくかが大切。
(セオリーはあるが、絶対的な正解はない!)

「これをやっておけば正解だった」ということはないが、
「これをやったことが間違いだった」はかなりある…

また、企業風土を検討するのも重要なポイント。
言い方は悪いが、不正しやすい・不正したくなる雰囲気の会社と、
そうではない会社がある。学校も様々な雰囲気があるのと同じ。
雰囲気というのは、非常に大きな意味をもち、影響を及ぼす。
この雰囲気・企業風土を作っているのはトップ。
つまり、トップの雰囲気によって会社は良くも悪くもなる。

参考記事:
VWやマンション… 女性の怒り、不祥事の代償を左右 編集委員 中村直文
(2015/11/12 日本経済新聞 電子版)
→VWは売上が落ちた。
不買運動はなかったが、ブランドイメージが大きかった。
マンションの傾き問題については、どこまで不買運動に繋がるか、という点。
これが食品、日用品になると話は別。

組織風土とは何か
(2016/6/11 日本経済新聞 朝刊)

オリンパスの粉飾決算事件の概要
(2013/7/4 日本経済新聞 朝刊)
→トップが企業不祥事を構築できなかったことが招いた不祥事。

「記者の目◇雪印、取り戻せるか総合乳業の強さ」
(2009/7/3 日本経済新聞 電子版)

食品偽装、「発覚したら即倒産」の傾向強まる 民間調べ
(2010/8/11 日本経済新聞 電子版)
→食品偽装については、消費者の目も厳しくなっている。
食品は、消費者が「やっぱやめた」と翌日から違うものを買うことができ、
偽装等がおきたときには皆買わなくなる。だから潰れる会社が出てくる。

以上のような事例で「何が悪かったか」?

それは、法律に違反した点。関連する条文を確認したい。
法律というのは、まず1条目に「目的」として
なぜ作られたのか、何を防ぎ、促進するために作られたのか
といったことが説明されている。

食品衛生法
1条(目的)

「この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。」
6条3号(不衛生な食品又は添加物の販売等の禁止)
次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
③ 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。」

食品に関する法律だけでも、数は沢山ある。
(うどん、冷や麦、素麺の違いを定めている法律も・・・!)
食品を作る、売る、という目的に沿って色々な条文を検討する必要がある。

農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)
1条(法律の目的)

「この法律は、適正かつ合理的な農林物資の規格を制定し、これを普及させることによつて、農林物資の品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図るとともに、飲食料品以外の農林物資の品質に関する適正な表示を行わせることによつて、食品表示法 (平成25年法律第70号)による措置と相まつて、一般消費者の選択に資し、もつて農林物資の生産及び流通の円滑化、消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護に寄与することを目的とする。」
19条の13(製造業者等が守るべき表示の基準)
「内閣総理大臣は、飲食料品以外の農林物資(生産の方法又は流通の方法に特色があり、これにより価値が高まると認められるものを除く。)で、一般消費者がその購入に際してその品質を識別することが特に必要であると認められるもののうち、一般消費者の経済的利益を保護するためその品質に関する表示の適正化を図る必要があるものとして政令で指定するものについては、その指定のあつた後速やかに、その品質に関する表示について、その製造業者等が守るべき基準を定めなければならない。」
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)1条(目的)
「この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。」
不正競争防止法1条(目的)
「この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」
計量法1条(目的)
「この法律は、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的とする。」
※容器包装に密閉された特定商品について内容量等の表示を義務付け
健康増進法1条(法律の目的)
「この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。」
※健康の保持増進の効果等に関する虚偽誇大広告等を禁止
薬事法1条(目的)
「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。」
※医薬品的な効能効果の表示を禁止

⇒こうした法律には幅があるので、
「どこまでが許される・許されない」のかは、最終的には解釈の問題。
そこをしっかりと検討することが大切。

※必ず一意的に決まる法律、は殆どない。
∵法律というのは国民や会社を対象とする為、特定の人や物をターゲットに作られることはないから。(本当に特殊な例は別だが)

では、実際に法律を破ってしまったときは・・・?
食品偽装に関する事件である「ダスキン事件」を再度確認してみる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA