企業法・授業まとめ-第11回-

労働時間

「●時から●時までは会社の業務をするのが労働契約」と言ったが、
実際は何時間なのか。もちろん条文で決まっている。

労働基準法32条(労働時間)
「1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。」
労働基準法34条(休息)
「1 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない
2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」

1日8時間(休憩時間を除く)が法定される労働時間の上限。
基本的に、雇用契約というのは、1日8時間を超えて人の時間を売買してはいけない。
つまり、32条に従えば残業ができないことになるが
そうも言っていられない状況がある…

そこで登場するのが「36協定」。
これにより「●時間までは追加で買うことができる」などと、例外的に定める。

最高裁判所平成12年3月9日判決
〔判示事項〕
「1 労働者が始業時刻前及び終業時刻後の事業場の入退場門と更衣所等の間の移動に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例
2 労働者が終業時刻後の洗身等に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例
3 労働者が休憩時間中の作業着及び保護具等の一部の着脱等に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例」
〔判決要旨〕
「1 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていた造船所において、始業時刻前に入退場門から事業所内に入って更衣所等まで移動し、終業時刻後に更衣所等から右入退場門まで移動して事業所外に退出した場合、右各移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができず、労働者が右各移動に要した時間は、労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間に該当しない。
2 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていた造船所において、終業時刻後に手洗い、洗面、洗身、入浴を行い、洗身、入浴後に通勤服を着用した場合、右労働者が、使用者から、実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことを義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったという事実関係の下においては、右洗身等はこれに引き続いてされた通勤服の着用を含めて、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができず、労働者が右洗身等に要した時間は、労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間に該当しない。
3 労働者が、就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、午前の終業については所定の終業時刻に実作業を中止し、午後の始業に間に合うよう作業場に到着し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものとされ、また、所有者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていた造船所において、午前の終業時刻後に作業場等から食堂等まで移動し、現場控所等において作業服及び保護具等の一部を脱離するなどし、午後の始業時刻前に食堂等から作業場等まで移動し、脱離した作業服及び保護具等を再び装着した場合、労働者が休憩時間中の右各行為に要した時間は、労働基準法(昭和62年法律99号による改定前もの)32条の労働時間に該当しない。」
〔判決文〕
「1 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
2 原審の確定したところによれば、(一)昭和48年6月当時、上告人ら(上告人栗原精子の関係においては、以下、同上告人訴訟被承継人栗原源三郎のことを上告人という。)は、被上告人に雇用され、長崎造船所において就業していた、(二)右当時、被上告人の長崎造船所の就業規則は、上告人らの所属する一般部門の労働時間を午前8時から正午まで及び午後1時から午後5時まで、休憩時間を正午から午後1時までと定めるとともに、始終業基準として、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、午前の終業については所定の終業時刻に実作業を中止し、午後の始業に間に合うよう作業場に到着し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものと定め、さらに、始終業の勤怠把握基準として、始終業の勤怠は、更衣を済ませ始業時に体操をすべく所定の場所にいるか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた、(三)右当時、上告人らは、被上告人から、実作業に当たり、作業服のほか所定の保護具、工具等(以下「保護具等」という。)の装着を義務付けられ、右装着を所定の更衣所又は控所等(以下「更衣所等」という。)において行うものとされており、これを怠ると、就業規則に定められた懲戒処分を受けたり就業を拒否されたりし、また、成績考課に反映されて賃金の減収にもつながる場合があった、(四)上告人らは、昭和48年6月1日から同月30日までの間、(1)午前の始業時刻前に、1 所定の入退場門から事業所内に入って更衣所等まで移動し、2 更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、(2)午前の終業時刻後に作業場又は実施基準線(被上告人が屋外造船現場作業者に対し他の作業者との均衡を図るべく終業時刻にその線を通過することを認めていた線)から食堂等まで移動し、また、現場控所等において作業服及び保護具等の一部を脱離するなどし、(3)午後の始業時刻前に食堂等から作業場又は準備体操場まで移動し、また、脱離した作業服及び保護具等を再び装着し、(4)午後の終業時刻後に、1 作業場又は実施基準線から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等を脱離し、2 手洗い、洗面、洗身、入浴を行い、また、洗身、入浴後に通勤服を着用し、3 更衣所等から右入退場門まで移動して事業所外に退出した、(五)上告人らは、被上告人から、実作業の終了後に事業所内の施設において洗身を行うことを義務付けられてはおらず、また、特に洗身をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかった、というのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。」
「3 右事実関係によれば、右二(四)(1)1及び(4)3の各移動は、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができないから、各上告人が右各移動に要した時間は、いずれも労働基準法上の労働時間に該当しない。また、上告人らは、被上告人から、実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことを義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったというのであるから、上告人らの洗身等は、これに引き続いてされた通勤服の着用を含めて、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができず、各上告人が右2(四)(4)2の洗身等に要した時間は、労働基準法上の労働時間に該当しないというべきである。他方、上告人らは、被上告人から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていたなどというのであるから、右2(四)(1)2及び(4)1の作業服及び保護具等の着脱等は、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、右着脱等に要する時間は、それが社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当するというべきである。しかしながら、上告人らの休憩時間中における作業服及び保護具等の一部の着脱等については、使用者は、休憩時間中、労働者を就業を命じた業務から解放して社会念上休憩時間を自由に利用できる状態に置けば足りるものと解されるから、右着脱等に要する時間は、特段の事情のない限り、労働基準法上の労働時間に該当するとはいえず、各上告人が右2(四)(2)及び(3)の各行為に要した時間は、労働基準法上の労働時間に該当するとはいえない。」

※仕事を始められるように準備して始業時間を迎え、仕事が終わってから身支度をして帰宅する、が最高裁判例。
→“その場で業務をおこなう”8時間が、企業が買う労働時間になるということ。

では、仮眠時間は労働時間に含まれるのか?

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