企業法・授業まとめ-第11回-

管理監督者等

これまで説明したような労働時間に関する適用を受けるのは、
あくまで「従業員」のみ。

「管理監督者」と呼ばれる立場の人は、適用外である⇩

労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
「この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
① 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
② 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
③ 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」
労働基準法別表第1第6号
「土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業」

※いわゆる「名ばかり管理職」が問題になるのは、管理監督者(労基法41条2号)

これだけ見ると
「管理監督させていれば残業代は払わなくていいのか」
「いくらでも労働させられるんじゃないか」
なんて思うが、その判断基準はきちんと定められている⇩

※判断基準
「管理監督者は法律上の労働時間等の制限を受けませんが、管理監督者に当てはまるかどうかは役職名ではなく、その社員の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇を踏まえて実態により判断します。

●経営者と一体的な立場で仕事をしている
●出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
●その地位にふさわしい待遇がなされている」

「労働基準法では、労働時間、休憩、休日について最低限の基準が定められ、それを超えて働かせた場合は時間外割増賃金(残業手当)や休日割増賃金(休日出勤手当)などを支払わなければならないとされています。その一方で、「監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)又は機密の事務を取り扱う者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」とも定めています。これは「管理監督者には労働時間、休憩、休日について法律上の制限をしない」ということですから「残業や休日出勤をしても残業手当や休日出勤手当を支払う必要がない」ということになります。 ところが、この「管理監督者」の意味を誤解し、「役付の職員ならば残業手当は要らない」と考えているケースも見受けられます。「管理監督者」とは一般的に「部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」という意味ですから、役付者の全てに残業手当の支払いが不要になるわけではありません。
なお、「機密の事務を取り扱う者」とは、経営者に随伴したり代理として行動・対応をする秘書など、職務が経営者等の活動と一体不可分であり、厳格な労働時間管理になじまない立場の人を指します。」

東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 管理監督者編」より

⇒これらに該当すれば、残業代(深夜手当は除く)は支給しなくても良いが、
判定は厳密におこなう。

ここで揉めたのが以下の事例。

東京地方裁判所平成20年1月28日判決
〔判示事項〕
「ハンバーガーの販売等を業とし、多数の直営店を展開している株式会社の店長である原告が管理監督者に該当するか否かが争われた事例」
〔判決文〕
ア 店長の権限等について
「被告における店長は、店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用やその育成、従業員の勤務シフトの決定、販売促進活動の企画、実施等に関する権限を行使し、被告の営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあるから、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、店長の職務、権限は店舗内の事項に限られるのであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない
店長は、自らのスケジュールを決定する権限を有し、早退や遅刻に関して、上司であるOCの許可を得る必要はないなど、形式的には労働時間に裁量があるといえるものの、実際には、店長として固有の業務を遂行するだけで相応の時間を要するうえ(原告や証人青山二郎の試算では、月150時間程度となっている。甲44、50)、上記のとおり、店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなければならないという被告の勤務態勢上の必要性から、自らシフトマネージャーとして勤務することなどにより、法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされるのであるから、かかる勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない。」「店長は、被告の事業全体を経営者と一体的な立場で遂行するような立場にはなく、各種会議で被告から情報提供された営業方針、営業戦略や、被告から配布されたマニュアル(甲45)に基づき、店舗の責任者として、店舗従業員の労務管理や店舗運営を行う立場であるにとどまるから、かかる立場にある店長が行う上記職務は、特段、労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容、性質であるとはいえない。」
ウ 店長に対する処遇について
「S評価の店長の年額賃金は779万2000円(インセンティブを除く。以下同様)、A評価の店長の年額賃金は696万2000円、B評価の店長の年額賃金は635万2000円、C評価の店長の年額賃金は579万2000円であり、そのうち店長全体の10パーセントに当たるC評価の店長の年額賃金は、下位の職位であるファーストアシスタントマネージャーの平均年収より低額であるということになる。また、店長全体の40パーセントに当たるB評価の店長の年額賃金は、ファーストアシスタントマネージャーの平均年収を上回るものの、その差は年額で44万6943円にとどまっている」…「被告における店長は、その職務の内容、権限及び責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない。」

参考記事:
ほっともっと元店長、管理職当たらず 地裁が残業代支払い命令
(2010/2/26 日本経済新聞 電子版)

⇒いずれにおいても、
経営者とわたりあうような裁量も、勤務時間の自由も、十分な賃金(待遇)もなかったため、管理監督者とはいえず、会社に対して未払い賃金の支払いが求められた、という事例。

※大原則は「1日に売買できる労働時間は8時間まで」であるが、
様々例外があるため、それが原則かのように捉えられてしまうことも。
難しいところだが、原則は8時間、で変わらない。

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