六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成27年版

六法全書 平成27年版

 

この年の六法全書に新収録された法令に、
少年鑑別所法(平成26年法律第59号)があります。

「少年鑑別所」という組織自体は昭和24年からあったのですが、
この法律ができるまでは独立の根拠法がなく、
旧少年院法にわずかな条文が置かれていただけでした。

各都道府県庁所在地など、全国で52か所に設置されていますが、
さて、皆さんは少年鑑別所についてどのくらいご存知でしょうか?

 

「非行少年が入るところ」くらいの漠然としたイメージはあっても、
少年院との違いなど、詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。

ものすごくざっくり説明してしまうと、
少年鑑別所と少年院の関係は、成人で言う拘置所と刑務所の関係に似ています。

拘置所(少年鑑別所)
まだ裁判(審判)の結果が出ていない人が収容される。

刑務所(少年院)
裁判(審判)の結果、刑(保護処分)が言い渡された人が収容される。

 

ここで「どっちにしろ、自分は非行少年じゃないから関係ないよ」と思われた方、
それだけじゃないんですよ。

実は、少年鑑別所は「法務少年支援センター」としても活動しているんです。

 

非行少年と向き合う中で培ってきた専門的知識や技術を活用し、
地域の相談機関の一つとして、一般の方からの心理相談に応じてくれます。

ご本人だけでなく、ご家族の方、学校の先生、
また支援機関の方などからの相談も受け付けてくれるとのこと。
カウンセリングや、心理検査を受けることもでき、
もし、自分たちが対応できない場合には、
他の専門的な機関を紹介してくれたりもするそうです。

 

物質的には豊かになった反面、心の問題を抱えている人も多いと言われる現代。

こんな機関も助けてくれるんだということを覚えておくと、
少し、勇気が持てるかもしれません。

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)があります。

この改正で、「山の日」が制定されました。
祝日の新設は、「海の日」以来、約20年ぶりのことでした。
(「海の日」は平成7年に法改正、平成8年から施行。)

これにより、年間の国民の祝日数は、15日から16日に増えました。

 

さて、「山の日」ってどんな日でしょう?

法律は、
八月十一日 山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。」と定めています。

8月としては初めての国民の祝日で、改正法は平成28年1月1日から施行されていますので、日本で最初の山の日は、平成28年8月11日ということになります。

 

山に関する大きな出来事が8月11日にあった、というわけではなく、
日付を「8月11日」とするまでには紆余曲折があったようです。

制定の過程では、
「夏山シーズン前の、山々がもっとも輝く月」として
6月第1日曜日が提言されたり、

「8月13日からのお盆につながる、夏山シーズン」を狙った
8月12日を推す声も多かったといいます。

しかし、8月12日は、御巣鷹山日航機事故という悲劇があった日でもあり、
慰霊の日を祝日とすべきでないということから、最終的に8月11日とされたよう。
(参考:以前の記事でも触れましたが、2020年は「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」の規定によって、山の日が8月10日へ移動されます。)

 

都会で暮らしていると、
日常生活において「山の恩恵」について考えることはほとんどないのでは。

識者によると、
森林が山間部に分布することで、
災害の防止・洪水の緩和等の役割を果たしていたり、
貴重な動植物の生息生育の場であったり、
木材を生産するなど、
山は多面的な機能を有しているそうです。

また、美しい景観や、静けさ、森の香りなどが、人間の五感を楽しませ、
レクリエーション活動の場としても、山は重要な役割を果たしています。
(参考:林野庁HP

せっかく増えた、新しい祝日。
山に関連したイベントなども多数おこなわれているようですので、
その意義を感じつつ、満喫したいものです。

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成28年版

六法全書 平成28年版

 

 

この年の六法全書に新収録された法令に、

平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法(平成27年法律第33号)

があります。
(元号は令和に変わりましたが、法律の名前は「平成32年」のままです。)

“東京”オリンピック・パラリンピックではありますが、
国家的に特に重要ということで、国をあげて準備・運営に当たるための法律です。この年から、準備に取り組んでいたんですね。

 

内容としては大きく四つ、

①大会推進本部を設置する
②基本方針を策定する
③国有財産を無償で使用させるなどの「特別措置」を講ずる
④国民の祝日を特例としてずらす

ということが定められています。

 

このうち、③の「特別措置」って、どんなことするの?って思いませんか?
具体的には、

  • 国有財産法2条に定める国有財産を、オリンピック組織委員会等に、無償で使用させることができる(14条)
  • お年玉付年賀はがきの収入を、大会の準備・運営に充てることができる(15条)
  • 国の職員を、オリンピック組織委員会に派遣することができる(17条)

などのことが書かれています。
こうして法律の条文を眺めていると、

「国が何か特別なことをするためには、
いちいち法律を作ってからでないとできないんだ」

ということがよく分かります。
(例えば、あなたが、自分の持ち物を誰かにタダで使わせてあげようと思ったら、
それについて書かれた法律なんかなくても、自由に使わせてあげられますよね。
でも、国にはそれができないんです。)

 

また、④に“祝日をずらす”とありますが
具体的には、2020年に限り、

「海の日」を7月23日に、
「体育の日※」を7月24日に、
「山の日」を8月10日にするそうです。
(※「体育の日」は、2020年以降、「スポーツの日」に名称変更)

すると(開催の可否が議論されている昨今ですが、もし予定通り開催されれば)
7月23日はオリンピック開会式前日、
7月24日はオリンピック開会式当日、
8月10日はオリンピック閉会式翌日に当たります。

開催期間中の、東京中心部の混雑緩和を狙っているとのこと。

こんな風に、法律でたくさんの“特別扱い”が決められているなんて、
「オリンピック・パラリンピックって、本当におおごとなんだな」
って思います。
たくさんの人の思いを背負った大会、無事開催されることを祈りたいものです。

 

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また、改正された法令として収録されたものに、学校教育法があります。

この改正によって、小学校から中学校までの義務教育を一貫しておこなう
「義務教育学校」が新設されるなど、小中一貫教育の制度化が図られました。

それまでは、各自治体や学校現場での取り組みが10数年以上にわたって蓄積され、成果が報告されていた中、正式に、小中一貫教育が学校制度として位置付けられたわけです。

多分、ご自分が小中一貫教育の学校を卒業したよ、という方はまだこちらにはいらっしゃらないかとは思いますが…
お子様が小中一貫校に通っているという方はいらっしゃるかもしれません。

小中一貫教育には、次のようなメリットがあるそうです。

  • 既存の枠にとらわれず、9年間という長期的な教育ができる
  • 小学校から中学校に進学した際に発生する「中1のギャップ」をなくすことができる
  • 小学校と中学校が共同で行事を行うなど、学校の枠にとらわれずに交流できる

その半面、
×生徒の顔ぶれが同じであるため、人間関係がリセットできない
×実施している学校の数が限られており、子どもがみんな進学できるわけではない
などのデメリットも言われています。

いずれにしても、一人ひとりに合った教育が受けられることが一番ですよね。
色々な選択肢が増えるということは、方向性として望ましいのではと思います。
今後も、注目していきたいものです。
(参考:文部科学省「小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引」)

企業法・授業まとめ-第12回-

授業ブログ第12回目です。

今回のテーマは「会社法と独占禁止法」。
独占禁止法と聞いて、どんなことをイメージされますか?

個人的には“大企業が直面する問題”というイメージですが、
実際のところ、どういった「独占」が「禁止」されているのでしょうか。

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