企業法・授業まとめ-第12回-

 

不当な取引制限:カルテル

カルテルとは、横並びでモノを売るときに、値段を示し合わせて決めること。
大体モノの値段というのは横並びになってしまうものだが、
そこを「共同して」やってしまうと違反行為。

複数の企業が連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為を「カルテル」といいます。


上の絵のようにA・B・C社が話し合ったりして「カルテル」を結ぶと、競争がなくなり、高い価格が設定されることになります。
消費者は価格によって商品を選ぶことができなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなります。それでは消費者のメリットが失われますので、このような「カルテル」は不当な取引制限の一つとして禁止されています。
「カルテル」は、商品の価格を不当につり上げると同時に、非効率な企業を温存し、経済を停滞させるため、世界中で厳しく規制されています。
公正取引委員会HPより)

参考記事:
光ケーブルカルテル 大手数社に排除命令へ 課徴金160億円
(2010/4/15 日本経済新聞)

道路舗装9社に立ち入り 公取委、全国規模でカルテルか
(2017/2/28 日本経済新聞 電子版)

壁紙カルテルで2社に課徴金2400万円 公取委
(2017/3/13 日本経済新聞 電子版)

 

 

不当な取引制限:入札談合

国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する企業同士が事前に相談して、受注する企業や金額などを決めて、競争をやめてしまうことを「入札談合」といいます。



上の絵のように、入札の際、A・B・C社が事前に相談して、C社が受注することを決めると、価格競争をする必要がなくなり、結果として高い価格で落札されることになります。
企業間の競争が正しく行われていれば、より安く発注できた可能性がありますので、「入札談合」は、不当な取引制限のひとつとして禁止されています。

本来、入札は厳正な競争を行うことを目的としているため、「入札談合」は税金の無駄づかいにもつながり、公共のメリットを損なう非常に悪質な行為です。
公正取引委員会HPより)
独占禁止法2条6項(定義:不当な取引制限)
「この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」

*「共同して」の意義:説明として分かりやすいのが以下の判例⇩

東京高等裁判所平成7年9月25日判決
〔判示事項〕
「一 公正取引委員会が審決取消訴訟によって取り消し差し戻された事件の再審決をするに当たり 
1 被審人等に直接陳述の機会を与えることの要否 
2 旧審決に関与した委員が再審決に関与することの可否
二 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律三条の不当な取引制限の成立を認定するための手法」
〔判決要旨〕
「一、独禁法違反事件について先になされた審決が、審決取消訴訟の判決により、公正らしさを欠く委員Aが加わったため審決の主体である合議体の構成の違法を理由に取り消され、事件が公正取引委員会に差し戻された場合は、公正取引委員会の審査及び審判に関する規則72条2項の適用の余地はなく、同委員会が被審人に対し改めて直接陳述の機会を与える審判期日を開かないでした審決は、その手続の過程に瑕疵があるが、被審人の権利の保護ないし審判における被審人の防御権の行使に実質的な影響がなかった場合には、右手続の瑕疵は、独禁法82条2号の審決を取り消すべき法令違反に当たらない。右の場合、先の審決で合議体の一員として加わった委員Bを差戻後の合議体の構成員として審決することは、公正確保の観点から望ましくないが、この措置は、独禁法82条2号の審決を取り消すべき法令違反となるものではない。
二、独禁法2条6項の「共同して」に該当するためには、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であるところ、右「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認織ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまで必要ではなく、相互に他の事業者の対価引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる
三、特定の事業者が、他の事業者との間で商品価格引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出た場合には、右行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、協調的行動をとることを期待し合う関係があり、右の「意思の連絡」があるものと推認される。」
〔判決文〕
「原告の本件事案における行為が、法3条において禁止されている「不当な取引制限」すなわち「事業者が、他の事業者と共同して対価を引き上げる等相互に事業活動を拘束し、又は遂行することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(法2条6項)にいう「共同して」に該当するというためには、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に意思の連絡」があったと認められることが必要であると解される。しかし、ここにいう「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である(黙示による「意思の連絡」といわれるのがこれに当たる。)。もともと「不当な取引制限」とされるような合意については、これを外部に明らかになるような形で形成することは避けようとの配慮が働くのがむしろ通常であり、外部的にも明らかな形による合意が認められなければならないと解すると、法の規制を容易に潜脱することを許す結果になるのは見易い道理であるから、このような解釈では実情に対応し得ないことは明らかである。したがって、対価引上げがなされるに至った前後の諸事情を勘案して事業者の認識及び意思がどのようなものであったかを検討し、事業者相互間に共同の認識、認容があるかどうかを判断すべきである。そして、右のような観点からすると、特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には、右行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、協調的行動をとることを期待し合う関係があり、右の「意思の連絡」があるものと推認されるのもやむを得ないというべきである。」

⇒合意書やメールを交わしていたら明らかにNGだが、
明らかなやりとりをおこなっていなくても、
「お互いに何となくわかる」状態ならNG、とされたのがこの判決。

参考記事:
転校制限は独禁法違反 関西の私立小団体に警告
(2015/7/1 日本経済新聞)
⇒学校が示し合わせて転校生の受け入れを拒否していた、なんて事例も!

「5社に課徴金6億円命令 復興農業事業談合で公取委」
2017/2/16 日本経済新聞 電子版

「自衛隊戦闘服で談合、ユニチカに課徴金2.2億円 公取委」
2017/3/10 日本経済新聞 電子版

 

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