企業法・授業まとめ-第12回-

無過失損害賠償責任(独占禁止法)

独占禁止法25条(無過失損害賠償責任)
「(1)第3条、第6条又は第19条の規定に違反する行為をした事業者(第6条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第8条の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
 (2)  事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。」

※実際に請求できる人はだれ?

東京高等裁判所昭和52年9月19日判決
〔判決要旨〕
「1、不公正な取引方法を用いた事業者が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条1項によつて損害賠償の責に任ずべき被害者には、競争関係にある事業者のみでなく、一般消費者も含まれる。
2、 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条1項に基づく損害賠償請求訴訟において、裁判所は、公正取引委員会が確定審決に示した事実認定に拘束されない。」
〔判決文〕
「不公正な取引方法によつて商品の小売価格が不当に高額に維持された場合に、その維持された価格でその商品を買受けた消費者は、不公正な取引方法が用いられなければ自由かつ公正な競争によつて形式されたであろう適正価格との差額につき損害を被つた者であり、この損害を目して、不公正な取引方法による事実上の反射的な損害に過ぎないということはできない。独禁法25条の規定により、不公正な取引方法を用いた事業者が損害賠償の責に任ずべき被害者には、右の場合の消費者を含むものと解すべきであつて、原告らは、その意味での被害者として本件損害賠償請求訴訟を提起しているのであるから、原告らが一般消費者であることから直ちに本訴につき当事者適格ないし訴の利益を欠くとする被告の主張は、到底採用しがたいところである。…… 被告が、カラーテレビ受信機等主として家庭用電気器具の製造販売を業とし、その製造にかかるナシヨナル製品(カラーテレビ受信機等その国内向け家庭用電気器具)の殆どすべてを、ナシヨナル製品を総合的に取扱う代理店(卸売業者)に販売していること、公正取引委員会が、被告に対し、独禁法19条に違反し同法2条7項、昭和28年公正取引委員会告示11号不公正な取引方法の8に該当する行為があるとして、昭和42年8月14日審判手続(昭和42年(判)第4号)を開始し、昭和46年3月12日同意審決がなされ、同審決が確定したこと、原告らが、それぞれ別紙第一表記載の各契約日に、各買受先から、各機種のカラーテレビ受信機各一台を買受ける契約をしたこと(各価額及びその支払の点を除く。)、以上の事実は当事者間に争いがない。」

※25条で損害賠償が認められた事案は見当たらない。

 

 

下請法「親事業者の禁止行為」

親事業者には次の11項目の禁止事項が課せられています。たとえ下請事業者の了解を得ていても,また,親事業者に違法性の意識がなくても,これらの規定に触れるときには,下請法に違反することになるので十分注意が必要です。

禁止事項概要
受領拒否(第1項第1号)注文した物品等の受領を拒むこと。
下請代金の支払遅延(第1項第2号)下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
下請代金の減額(第1項第3号)あらかじめ定めた下請代金を減額すること。
返品(第1項第4号)受け取った物を返品すること。
買いたたき(第1項第5号)類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
購入・利用強制(第1項第6号)親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
報復措置(第1項第7号)下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号)有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
割引困難な手形の交付
(第2項第2号)
一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
不当な経済上の利益の提供要請
(第2項第3号)
下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること。
不当な給付内容の変更及び
不当なやり直し(第2項第4号)
費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。

(以上、公正取引委員会HPより)

参考記事:
下請法の指導件数 7年連続で最多 公取委、16年度
(2017/5/24 日本経済新聞)

117納入業者『消費増税理由に値下げ要請受けた』 公取委調査
(2013/6/28 日本経済新聞)

⇒下請法はひとまず知っておく程度でOK。
企業とは、営利を追求してどんどん頑張っていくべきだが、
一線を越えて下請業者や取引相手をいじめると法律で規制されてしまう。

 


 

以上、独占禁止法についてでした。

私的独占などは、一見企業間のみのトラブルのようですが、
フタを開けてみると、私たちの生活にかなり密着している模様。
独禁法は消費者も守る法律なんですね。
今後、関連するニュースがあった際には、着眼点が広がりそうです。

次回は企業の「倒産・破産」について学びます。お楽しみに!

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