六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成21年版

平成21年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、
保険法(平成20年法律第56号)があります。

保険法には、保険契約の締結~終了の、関係者の権利義務等が定められています。

このような保険契約に関するルールは、従来は商法に定められていました。
しかし、これらの規定は、明治32年の商法制定後、100年近くにわたって実質的な改正がなされておらず、表記も片仮名・文語体のままでした。
そこで、これらの規定を全面的に見直し、独立した法律としたのが保険法です。

保険法の主なポイントは、以下のことが挙げられます。

○これまでは基本的に適用がなかった、共済契約にも適用範囲を拡大

○これまでは規定がなかった、傷害疾病保険に関する規定を新設

○保険契約者等の保護
・片面的強行規定(へんめんてき きょうこうきてい)の導入
(約款の定めが保険法の条文よりも保険契約者等に不利な内容である場合には、
その部分を無効とする。一方、保険契約者等に有利な内容である場合には、無効とならない。)

○告知義務について、重要事項のうち保険会社から告知を求められた事項のみ告知すればよいことに変更

○保険金の支払時期についての規定を新設
(適正な保険金の支払に必要な調査のための合理的な期間が経過した時から、保険者は履行遅滞の責任を負う。)

○保険会社が倒産した場合でも、被害者が保険金から優先的に被害回復を受けられるようにするための先取特権の規定を新設

○保険金詐欺などの重大な事由があった場合に、保険会社が契約を解除できる旨の規定を新設

保険は、人生で2番目に高い買い物と聞いたことがあります。

高価で、しかも長い間付き合っていくこととなる「保険」。
契約すると分厚い約款を渡されますが
「見てもちんぷんかんぷん、結局最初の数行だけ読んで後は読まずじまい…」
という方も多いのでは?

そんな中、(聞きなれない言葉ですが)
「片面的強行規定」で保険契約者を保護してくれているとは
頼もしい限りですね。

しかし、せっかく法律が守ってくれていても
その存在を知らなければ、保険会社に言われるがままになってしまうかも。

「こんな法律があるんだなー」くらいのふんわりした知識からで大丈夫☝
知識をどんどん広げて、賢い消費者になりましょう!

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
少年法(昭和23年法律第168号)があります。

少年法も頻繁に改正されている法律ですが、
この年の改正のポイントは、次の4点です。

①家庭裁判所は、重大事件の被害者等から申出がある場合に、相当と認めるときは、少年審判の傍聴を許すことができる制度を創設すること

②家庭裁判所が被害者等に対し審判の状況を説明する制度を創設すること

③被害者等には、原則として、記録の閲覧・謄写を認めることとするとともに、
閲覧・謄写の対象となる記録の範囲を拡大すること

④被害者に代わり、被害者の配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹が意見を述べることができることとすること

一言でいうと
少年審判における犯罪被害者の権利利益の一層の保護を図るための改正
ということになります。

従来、少年事件では、人格的に未成熟で傷つきやすい少年の情操を保護し、少年時代の非行によって長い将来にわたって不利益を受けることを回避するなどの配慮によって、
少年事件の審判手続は(刑事裁判の公判とは違って)非公開とされ、事件の当事者である被害者でさえ、加害者である少年の審判の内容や結果について十分な情報を得ることができない、という状況が続いていました。

しかし、被害者自身による、その悲惨な状況及び刑事手続における疎外された地位に対する不満の訴えなどを受けて、被害者に対する配慮を求める声が高まっており、立法による制度の創設も順次進められてきています。

少年の保護と被害者の保護、相反する二つの要請。
どこでバランスを取るのか、とても難しい問題だと思います。

軽々しく意見を言うことは控えますが、ただ、どちらか一方だけ満たせばよいという態度では解決しないということだけは確かだと思います。

犯罪被害者の権利保護の動きは、今後も推進されていくことになるでしょう。
関心をもって見守りたいと思います。

(参考:法務省HP

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