企業法・授業まとめ-第13回-

◎破産の手続き(マウントゴックスの事例)

マウントゴックス(株式会社MTGOX)は、ビットコインの取引所だった。
2014年、民事再生手続き開始を申し立て、かなり大きなニュースに。
会社自身の責任で倒産したにもかかわらず、この一件のせいで「ビットコイン」という商品のイメージが非常に悪くなった。

当初は民事再生の手続きを申請していたものの、再生は難しいと判断され、破産手続きに移行された。

以上の手続きがされると、会社の登記簿にも記載がされる。
(☟画像はイメージ、下線箇所は抹消事項)

破産手続きが開始された瞬間から「財産の清算」が始まる。
会社の所持している財産をひたすら掻き集め、債権者への分配作業を進める。
全て分配しきったところで破産手続き終了、会社はなくなる。

余談であるが、
破産手続き中、不正操作により資産を水増しするなどし、マウントゴックスの社長が逮捕された。これも、ビットコインのイメージを悪化させた一つの要因。

後に、仮想通貨に関する法律を整備しようという動きがあり
資金決済法が改正され、仮想通過について規定がされた。

⇒この件は、単なるひとつのキッカケにすぎない。
マウントゴックスという会社がつぶれ、沢山の被害が出たからこそ
「法律を整備しよう」という動きが生まれたのである。
最初から「こういうことが起きるだろうから法律で規制しよう」とはならない。
ビットコインのような新しいカテゴリーの商品には難しいところ。

参考記事:
マウントゴックス、破産手続きへ ビットコイン取引所
(2014/4/16 日本経済新聞)
マウントゴックス、破産手続きの開始決定
(2014/4/24 日本経済新聞)
『ビットコイン』社長逮捕へ 大量消失、不正操作の疑い
(2015/8/1 日本経済新聞 電子版)
仮想通貨の透明性向上 法規制案を閣議決定、破綻時など課題も
(2016/3/4 日本経済新聞 電子版)

 

 

◎民事再生の手続き(タカタの事例)

「倒産」には破産、再生、更生の3つがあるが、会社として「お金が払えない」状態になってしまったとき、どの法律(手段)を選ぶのが良いか。

破産は、既に述べたとおり、会社にある財産を掻き集め、分配すれば終わり。
会社を存続させたい場合、債権者から(借金の返済延期や減額について等々)同意を得て事業計画を目指すのが再生・更生。

参考記事:
タカタが再生法適用申請 なぜ使われない更生法
(2017/6/26 日本経済新聞 電子版)

記事によれば、

ここ10年ほどは民事再生法の利用が圧倒的に人気

上場企業の破綻としては、2015年のスカイマーク、第一中央汽船などが挙げられるが、いずれも民事再生法の適用申請

大企業だけでなく中堅中小企業の破綻でも、再建を目指す場合は民事再生法が好んで選ばれている

とのことであるが、民事再生が好まれるのはなぜか。
再生・更生の主な違いは以下のとおりである。

民事再生
・個人、法人のいずれも対象。
・原則、従来の経営陣が引き続き経営をおこなうことができる。
・財産処分や新スポンサーとの交渉を既存の経営陣、金融機関、大口取引先が主導することができ、「プレパッケージ型」の民事再生をおこなうことで、最小限の混乱で素早い再建を目指すことができる。
会社更生
・対象は「株式会社」のみ。
・経営権は、裁判所が選ぶ管財人に引き継がれる。経営陣は残留できない。
・管財人の権限により、ある程度強制的に会社の処分・経営を進められる。
・各債権者に意見を聞いて同意を得ることが難しい場合、利害関係が入り組んだ破綻の場合は有効。
・ただし、手続きは厳格。
・時間もかかる。再建計画が裁判所に認可されるまで数年かかるのも珍しくない。

大きな違いは 経営陣の責任の処し方再建の担い手 の点。

帝国データバンクによれば、
本件が起きる直前の2016年に倒産した会社のうち
民事再生法を適用:246件
会社更生法を適用:1件
とのことだが、どちらを選択するかは、結局ケースバイケースなのである。
(ちなみに、日本航空は会社更生法を選択。∵利害関係が複雑だったから。)

⇩弁護士会や裁判所でも詳しく説明されているので、そちらも参照されたい。
「民事再生手続に関するQ&A」(鳥取地方裁判所)
「民事再生と会社更生」(愛知県弁護士会)

民事再生法を適用したときは、破産と同様、会社の登記簿に記載される。
(☟画像はイメージ)

裁判所の決定により、弁護士が監督委員に選任される。
代表者の名前は抹消事項となっておらず(=下線が引かれていない)、
引き続きその職にあるが、今後、代表者は重要事項にある事柄について、監督委員の同意を得る必要がある。(重要事項:登記簿記載の(1)~(8))
⇒ちなみに、代表者の住所は登記簿に必ず記載される。
登記簿はお金を払えば誰でも入手でき、世にある会社はすべて登記がされているため、代表者は住所が公開されている状態である。

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