六法全書クロニクル~改正史記~平成13年版

平成13年六法全書

13年六法

 

この年の六法全書に新収録された法令に、
民事法律扶助法(平成12年法律第55号)
があります。

民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)とは、
民事の法的トラブルがあった場合に、経済的理由で、弁護士などの法律専門家を依頼する費用を支払うことができない人に対して、その費用を公的機関が給付したり立替えたりする制度です。

日本における民事法律扶助制度は、
1952年に日弁連により設立された財団法人である法律扶助協会が担ってきました。
しかし、民間の寄付に頼るなど財政基盤が弱く、地域間格差や運営体制の整備の立ち後れが指摘されていました。
そんな中、国民へ十分な司法サービスを提供することを目指して広汎な司法制度改革をおこなう流れとなり、その先駆けとして制定されたのが、この法律です。

この法律により、法律扶助協会は、民事法律扶助事業をおこなう者として、法務大臣の指定を受けることとなりました。
そして、国からの補助金も大幅に拡充されました。

 

この法律では、

①国の責任が明示され、事務・運営費について補助金が大幅に拡充された
②法律事務所等で援助申込みができるようになり、アクセス・ポイントが大きく広がった
③司法書士が新たなサービス提供者として加わった

などの点で、民事法律扶助事業の拡充が図られました。

しかし、それでもなお、
対象事件の範囲や対象者の範囲が限定的で、予算規模も小さく
憲法第32条の『裁判を受ける権利』の実質的保障という観点からはなお不十分
との指摘があり、これを受けて、総合法律支援法が制定されます。

民事法律扶助法は廃止され、
民事法律扶助業務は「日本司法支援センター」(通称:法テラス)が承継して実施することとなりました。

 

法テラスで扶助を受けるためには、次のような条件を満たす必要があります(2020年10月現在)。

①資力が一定額以下であること。
(単身者の場合、月収18万2000円以下、保有資産180万円以下など。)
②勝訴の見込みがないとはいえないこと。
③民事法律扶助の趣旨に適すること。
(報復のためだけの訴訟や、権利濫用的な訴訟などはダメということ。)

しかし、たとえ上記の条件に当てはまらない人でも大丈夫。
法テラスでは、問題を解決するための法制度や手続、
適切な相談窓口を無料で案内するという業務もおこなっています。
サポートダイヤルが設けられていて、電話(通話料のみ)やメールでも問合せ可能ですので、気軽に相談ができますね。

法的トラブルは、こじれてしまってからでは、解決に時間がかかります。
できるだけ早い段階で、躊躇なく、専門家の援助を受けることが大切です。

経済的な事情でそれが難しい時にも、自分一人で何とかしようとするのではなく、
どうぞ、この民事法律扶助制度を思い出してください。きっと最終的に、経済的にも精神的にもずっと軽い負担で解決できることでしょう。
(参考:法テラス公式サイト

 

◇ ◇ ◇

 

改正された法令として収録されたものに、
少年法(昭和23年法律第168号)
があります。

この年の改正内容は、次のようなものでした。

①刑事処分可能年齢の引き下げ(16歳から14歳へ)
②懲役・禁錮の言渡しを受けた少年の、16歳に達するまでの少年院収容が可能に
③犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件について、原則として検察官送致
④保護者に対する訓戒、指導等
⑤検察官・弁護士である付添人が関与した審理の導入
⑥被害者への配慮の充実(被害者等の申出による意見の聴取、被害者通知制度、記録の閲覧・謄写)

少年法では、20歳未満の少年による犯罪行為の場合、
すべて家庭裁判所に送致する「全件送致」が定められています。
しかし、16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた場合、
原則として家庭裁判所から検察官に送り返すこととなったのです(上記③)。
これを検察官送致(逆送)と言います。
その場合、少年は成人同様の刑事処分を受けることになります。
場合によっては、少年院ではなく、刑務所(少年刑務所)に入ることになります。

この年の少年法改正は、全体として、
1997年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件などを契機として、
少年法の厳罰化を実現するものでした。

少年による凶悪な事件が発生すると、
どうしても、「少年法は甘い」という声が高まります。
しかしそもそも、少年法は、その目的を処罰ではなく、少年の健全育成においています。つまり、少年の処罰よりは、改善更生を目的としているのです。

どこでバランスを取るか、とても難しい問題だと思います。

 

現在も、民法の成年年齢を18歳未満に引き下げる法律が2022年4月に施行されることに伴い、少年法の適用年齢を、20歳未満から18歳未満に引き下げることの是非が議論されています。

法制審議会の要綱案では、適用年齢の引き下げについて結論を見送る一方
18・19歳の少年について、原則検察官送致する犯罪の範囲を広げ、起訴されれば、18・19歳でも実名報道を可能とするとの方向性が示されたとのこと。

複数の視点が対立する難しい問題だからこそ、
目を背けることなく、関心を寄せ続けたいと思います。