資格試験アラカルト・宅建(5)~登録手続編

宅建ブログ5回目です。
今回は、実際の登録の手続について、共有させていただきます。

 

都道府県への登録申請

 

前回、宅建士として登録するために
「登録実務講習」を受講したことを共有させていただきました。

これで登録に必要な条件がそろいました。
次はいよいよ都道府県への「登録申請」となります。

 

登録申請ですが、
まず、申請先は、試験合格地の都道府県に申請することになります。
私は東京都で受験し合格しましたので、東京都に対して申請をしました。

申請方法は、書類の提出によります。
具体的には、窓口に持参することもできますし、郵送も可能です。
今回は、郵送でおこないました。

提出する書類は、以下のとおりです(かっこ書きは、該当者のみ)。

① 登録申請書
② 誓約書
③ 身分証明書
④ 登記されていないことの証明書
⑤ 住民票
⑥ 合格証書(コピー)
⑦ 顔写真
⑧ 登録資格を証する書面(実務経験を証明する書類/登録実務講習修了証)
(⑨ 従業者証明書(コピー)※現在、宅地建物取引業者に勤務し、宅地建物取引業に従事している方。)
(⑩ 営業に関する法定代理人の許可書等※未成年の方(婚姻したものを除く))
⑪ 返信用封筒
⑫ 運転免許証等顔写真の入った本人確認書類の拡大コピー
⑬ 手数料

持参か郵送かで異なるのは、⑪の返信用封筒だけでした。
また、⑬登録手数料について、
持参の場合、現金37,000円を持参するよう指示があるのに対し、
郵送の場合、書類提出後に都から電話連絡するので、連絡を待って入金するように指示されています。

少し詳しく見ていきましょう。

 

 

登録申請に必要な書類・その役割

 

①登録申請書
②誓約書
これらついては、ホームページ上に様式が準備されていますので、そちらに必要事項を記載します。

 

③身分証明書
こちらは、日常生活における「身分証明書」(例えば運転免許証とかマイナンバーカードなど)のことではなく、本籍地の市区町村で発行してもらう公的な書類になります。
市役所、区役所、町村役場の戸籍課の管轄で、窓口で申請するほか、郵送でも申請が可能です。
手数料は、自治体によって異なるかもしれませんが、例えば弊所が所在する東京都港区では、1通300円となっています。
「成年被後見人及び被保佐人とみなされる者に該当しない旨の証明(禁治産者、準禁治産者ではないと表示されています。)並びに破産者に該当しない旨の証明」をする書類とのことで、私は生まれて初めて発行してもらいました。

 

④登記されていないことの証明書
上記③と似ているのですが、正式名称は「成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明」です。
東京法務局後見登録課、又は全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課で発行してもらいます。各法務局の窓口で申請するか、又は、郵送の場合は、住所地がどこであっても「東京法務局民事行政部後見登録課」に申請することになります。窓口の場合、支局や出張所では発行できないとのことですので、注意が必要です。
これまた、私は生まれて初めて発行してもらいました。郵送で申請したところ、おおむね1週間弱で届きました。

 


ここで、③④の提出が求められる事由についての豆知識をお伝えします。

従前、改正前宅建業法18条1項2号は、「成年被後見人又は被保佐人」であることを、宅建士の欠格事由としていました。
2019年に、成年被後見人等が不当に差別されることがないよう、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が制定され、これによって、宅建業法の前記規定は削除され、代わりに、
「心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの」(改正後宅建業法18条1項12号)
が欠格事項に追加されました。

これを受けた宅建業法施行規則14条の2の2は、
「法第18条第1項第12号の国土交通省令で定める者は、精神の機能の障害により宅地建物取引士の事務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。」
と定めています。

つまり、成年被後見人・被保佐人を一律に欠格とするのではなく、該当する人の状態を個別的・実質的に審査し、判断することとしたのです。
というわけで、③④が提出できない場合でも、直ちに宅建士として登録ができない、ということにはなりません。

東京都でも、
成年被後見人又は被保佐人に該当し、身分証明書及び登記されていないことの証明書が提出できない場合は、宅地建物取引士の事務を適正に行う能力を有する旨を記載した医師の診断書が必要となりますので、事前に不動産業課免許担当までお問い合わせください。
という取り扱いがなされているようです。
(これも、宅建試験で勉強した事項です。そういえばそうだった、こういうふうにつながっているんだな、と思います。)

 

⑤住民票
ごく一般的なもので、本籍・続柄は不要、マイナンバーが記載されていないものと指定されています。

以上、公的な機関が発行する③④⑤については、発行日から3か月以内のものという限定がされています。
(そのため、登録実務講習の受講など、申請前に必要な手続がある方は、その手続が終わってから書類を集め始めた方が安心かと思います。) 

⑥合格証書(コピー)
コピーに「原本と相違ありません」と自分で原本証明を記載したものです。
こちらも署名のみで、押印は不要でした。

⑦顔写真
一般的な証明写真です。①に貼付します。

⑧登録資格を証する書面
実務経験が2年以上ある方・ない方で提出内容が異なります。
実務経験がある方は、勤務先の宅地建物取引業者が在職期間等を証明した実務経験証明書、従業者名簿のコピー、業務内容証明書等が必要になります。これらの書面は、勤務先代表者が証明する必要があり、勤務先(過去の勤務先含む)との連絡調整が必要です。
実務経験がない方は、前回紹介した「登録実務講習」を修了したことの証明書(講習実施機関が発行)を提出することになります。

⑨従業者証明書
現在、宅地建物取引業者に勤務し、宅地建物取引業に従事している方が提出します。
宅建業法48条1項は、
「宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。」
と規定していて、いわば社員証のようなイメージです。
こちらをコピーして、「原本の内容と相違ありません」と自分で原本証明をします。

⑩営業に関する法定代理人の許可書
未成年の方(婚姻した方を除く)が提出します。
宅地建物業法は、「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」は宅地建物取引士の登録を受けることができない旨を規定しています(宅建業法18条1項1号)ので、こちらの確認です。

 


 

ここでまたまた豆知識。

「行為能力」とは、契約などの法律行為を「単独で」「確定的に」有効におこなうことができる能力をいいます。

そもそも、法律行為を有効におこなうには、その行為をおこなったら自分の権利や義務がどのようになるかを理解するだけの精神能力(=意思能力といいます)が必要とされているのですが、その行為をした時に自分には意思能力がなかった、と証明するのは難しいですし、相手方にしても、一見しただけではその人に意思能力があるかどうか分からないこともあります(なにせ、内面的な問題ですので)。

そこで、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人については、一般的に判断力が不十分なものとして、それらの者が法定代理人の同意を得ないで単独でおこなった法律行為は、「その行為をした時に意思能力がなかった」ことを具体的に証明しなくても、原則として事後的に取り消せることとして、その保護が図られています。
このことを、未成年者等は「行為能力が制限されている」といい、未成年者等を「制限行為能力者」といいます。

宅建試験は、日本国内に居住する方であれば、年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できますので、当然、未成年の方が合格することもあり得ます。
しかし、宅建士が締結した契約等について、「実は未成年者がやった行為なので、取り消します」と言われてしまうとしたら、相手方は安心して取引ができません。
そこで、宅建士として登録し、実務に従事するためには、「成年者と同一の行為能力」を有することを条件としているのです。

次に、どうやったら「成年者と同一の行為能力」が認められるかというと、
①法定代理人から営業の許可を得ること
②婚姻すること
以上の2パターンがあります。
(ただし、②については、2022年4月1日施行の民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられたこと、婚姻適齢が男女とも18歳以上となった(従前は、女性は16歳以上とされていた)ことで、未成年者が婚姻することができなくなり、それに伴って「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」と規定していた旧民法753条が削除されましたので、今後数年のうちには該当者はいなくなると思われます。)

以上のような理由で、未成年者の方は「営業に関する法定代理人の許可書」を提出する必要があるけれども、婚姻した未成年者の方はこれを提出しなくてよいのです。

具体的な手続のためには、宅建業法の条文だけではなく、民法等の条文(しかも改正過程まで)も広く知っておく必要があるのですね。
「資格試験の勉強」と「実務」の違いを、こんなところでも実感しました。

 


 

残りは以下のとおりとなります。

⑪返信用封筒
A4版が入るサイズに210円切手を貼り、自分の住所を記載した封筒となります。

⑫運転免許証等顔写真の入った本人確認書類の拡大コピー
顔がわかるよう拡大し、余白に、日中連絡が取れる電話番号を記載したものです。

⑬手数料
既述のとおり、先方からの電話連絡を待っての支払いとなりますので、提出時点では不要です。

 

こちら、令和5年2月16日に普通郵便で申請書を郵送したところ、同月21日に申請書類がそろっていることを確認したので、手数料37,000円を「現金書留」で書類と同じ宛先に送るように、と電話連絡がありました。

試験直後の時期などは、込み合っていてもう少し時間がかかるかもしれませんが、案外素早いな、という印象です。

 

それにしても、「現金書留」。
なんというか、オールドファッションですよね。
税金でさえ決済アプリで納付できたりする昨今、クレジットカード払いさえできないというのは、驚きでした。係員の方だって、現金を取り扱うのは気を遣って嫌だろうと思うのですが。
まあ、収入印紙や小為替で、と指定しないだけ手間が少ないのかもしれません。

そして、令和5年3月22日付で東京都知事名の「宅地建物取引士資格登録について」という葉書が自宅に届きました。
登録番号が付されており、これで私も、宅地建物取引士の仲間入りです。

………ところが手続としてはこれで終わりではなく、実務に従事したい場合は、さらに、「取引士証」の交付申請をしなければならないのでした。
なかなか、道のりは長いです。
「取引士証」取得まで進むかどうかは、少し検討しようかと思っています…。

 

◇ ◇ ◇

 

というところで、もし「取引士証」を取得することになったら、次回はその手続についてお伝えしたいと思います。
(合格後1年を経過してしまうと、法定講習を受講しなければいけないようです。その時までに次回記事が投稿されていないようでしたら、今回は見送ったのだな、とご理解ください。)

では。

資格試験アラカルト・宅建(4)~登録実務講習体験記編

宅建ブログ4回目です。
今回は、登録実務講習の様子について、共有させていただきます。

 

「登録実務講習」って?

 

そもそも、「登録実務講習」って何?という感じですが、
ざっくり言えば、実務経験のない人が、宅建士登録するために受けなければならない講習、です。

宅地建物取引士資格試験に合格しても、それだけでは、宅地建物取引士としての業務をおこなうことはできません。
試験合格後、都道府県知事への「登録」をすることで、宅地建物取引士資格者となり、「宅建士証」の交付を受けて、初めて宅地建物取引士としての業務をおこなうことができます。

そして、この宅地建物取引士の「登録」については、宅建業法及び同法施行規則で、

「試験に合格した者」かつ
「2年以上の実務経験を有するもの」(法18条、規則13条の15)

又は

「国土交通大臣がそれと同等以上の能力を有すると認めたもの」(法18条)

でなければならないと規定されていて、
その、同等以上の能力を有すると認められるための要件の一つが、

「登録実務講習」を修了した者(規則13条の16第1号)

なのです。

つまり、宅建士の「登録」のためには、

①「試験合格」+「実務経験2年以上」
②「試験合格」+「登録実務講習を修了」
等のどちらかが必要、とされていて、
私の場合、宅地建物の取引に関する実務に携わった経験が全くないので、②の「登録実務講習」を受講する必要があった、ということです。

 

実施機関

 

登録実務講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施することになっています。
令和4年11月14日現在の実施機関は、19機関あるようです。

これらの機関が、それぞれに講習をおこなっているのですが、講習の内容については、宅地建物取引業法施行規則13条の21第4号で

・宅地建物取引士制度に関する科目が講義1時間
・宅地又は建物の取引実務に関する科目が講義37時間

などと定められています。
そのため、どこの機関の講習を申し込んでも、科目やコマ数は共通になっています。
(念のためネット情報も検索してみたのですが、特に「ここがいい!」とか、逆に「ここはやめておけ!」のような情報はないようでした。いずれも独自性を競うようなことはしておらず、大差はない、というところではないかと思います。)
実施機関によって違うのは、会場(場所)、日程、費用などでしょうか。

大手の資格試験予備校などは、全国の会場で多数の日程にわたって講習をおこなっている一方、地方に事務所がある機関では、当該地方で少数の日程しか講習をおこなっていないところが多いようでした。
費用については、おおむね同程度で、22,000円(消費税込)が相場のようです。
(地方の機関がおこなっている講習では安価な設定のものがあるようでしたが、条件が合わず、今回は使えませんでした。)

今回私は、そのうちの「TAC株式会社」で登録実務講習を受講しました。
費用は、相場どおりの22,000円(消費税込)です。
上述のように、どの機関を選んでも大差はないように思ったので、選択のポイントは、(またしても)自宅から通いやすいこと、です。

というのも、この講習の一番重要なポイントは、(後で詳述しますが)

▼2日間にわたり、朝から夕方までのスクーリングに参加が必要(オンライン等不可)
▼欠席・遅刻・早退・中抜けは一切認められない

というところだからです。
(最後に修了試験はありますが、これはそもそもが「受からせるための試験」です。受験できれば、まあ間違いなく合格できると思われます。)

そこで、「2日間、スクーリングの全講義に出席すること」というミッションを確実に達成するため、
・迷子にならない(土地勘がある)
・最悪、交通機関がマヒしてもたどり着ける
ということで、自宅近くの会場が設定されていたTACを選びました。

(受講してみて分かったことですが、実施機関側も、受講者を1回で修了試験に受からせたい、といろいろな便宜を図ってくれます。でも、遅刻・欠席だけは、どうにも救済できないようでした。
朝が苦手な方は、8時半始まりのところではなく9時半始まりの講習を選ぶなど、対策されてください。)

 

申込手続

 

申込みの際は、宅建試験合格証書のコピーが必要となります。
TACでは、何故かオンラインでは申し込みができず、窓口に行くか、郵送でした。
費用は、郵送の場合は先に振込んで振込控えを提出する形で、窓口の場合は現金のほかクレジットカードも使えました。

どんどん枠が埋まっていくので、早めに申し込むのが良いと思いますが、ただ、「申し込み後、会場や日程の変更は一切できない、振り替えもできない(キャンセルの場合も返金しない)がよろしいですか」と何度も念押しされましたので、その点は十分注意が必要です。
(実際、業務に差しさわりのない時期を選んだつもりが、急遽、書面提出の締め切りが入ってしまい、できることなら変更したい!と電話してみたのですが、「変更はできません」とけんもほろろに断られました。)

 

カリキュラムと実際の様子

 

カリキュラムは、大まかに、
①通信学習
②スクーリング
③修了試験
の三つです。

①通信学習(約1か月間)
スクーリング日の1か月くらい前に、自宅にテキスト等が届けられ、これを使ってWeb講義を受講します。
ここで使用する教材は、以下となります。
・送られてきたテキスト1冊+確認テスト1冊
・インターネットからダウンロードした講義動画×3回分
(各回2時間20分程。各回、前半・後半の2ファイルに分かれています。)
・講義録のPDFファイル×3回分

教材については、実施機関によっていろいろ違いがあるようで、例えば、最大手のLECでは、DVD教材を使用しておこなうそうです。

TACではWeb講義で、視聴には、「TAC WEB SCHOOL」というアプリを使用します。
巻き戻しや早送り、再生速度の変更、「しおり」を挟んで次回そこから再生できるようにする、などの機能があって、使い勝手は悪くなかったです。(HPから事前に、動作環境の確認もできます。)

なお、講義動画は、ファイルをダウンロードして視聴するのですが、(ダウンロードしても)インターネットに接続されていない環境では再生できないようでした。自宅にwi-fi環境がない方は、要注意かもしれません。
講義中、板書等はしないので、画面が小さくても問題ないです。私はスマホで視聴しましたが、「大きい画面で見たい」と思うことはなかったです(なんなら、音声だけで充分だと思います)。

内容は、宅建試験の復習又は延長のようなものになっており、やっていて、なんとなく「こういうの勉強したなあ」と懐かしい感じがしました。難易度も同じくらいなので、試験合格者の方なら、恐れるに足らず、だと思います。

 

②スクーリング(演習)(12時間)
重要事項説明・契約書の作成等について、事例を基に演習をおこないます。
(先ほども書いたとおり)この講習の肝は、このスクーリング講義、すべてに出席することです。ほとんどの機関が2日間で実施していますが、中には、1日で全て終わらせるところがあるそうです(ただし、時間数は12時間で同じ)。
1コマでも欠席・遅刻・早退・中抜けをすると、修了試験の受験が認められません(つまり、講習を修了することができません)。

実際の演習の内容は、
一軒家の売買にかかる事例が示され、
その事例についての「重要事項説明書」と「売買契約書」を作成する
(実際の「重要事項説明書」と「売買契約書」の、要所要所が空欄になっているものが示されて、それを穴埋めする)
というものです。

こちらも、問われている内容は宅建試験でやったことの復習ですし、答えは示される資料(不動産登記簿など)に書いてあって、それを拾い出して書き写すだけなので、登記簿等を見たことがある人だったら、恐れるに足らない、と思います。
(これまでに全く不動産登記を見たことがない人だと、1回目は少し戸惑うかもしれませんが、スクーリング中にどこを見たら知りたい情報が書いてあるか、丁寧に教えてくれますので、講師の話さえ聞いていれば大丈夫だと思います。)

今回の場合、講師は不動産鑑定士をされている方でした。
土地建物の取引の実務に日々携わっておられる方なので、実務上で用いられる略語とか、実務の最近の動きなどが説明にちりばめられており、「そうなんだ!」と、興味津々でした。

ただ、実施機関側としては、何としても「修了試験を受けてもらい、1回で合格してもらう」ことを至上命題としているようで、
そういった実務的なお話などより、「修了試験にはここが出ます」(言葉は少し濁して言われますが、翻訳するとそういう意味)というお話が大半でした。
(そのため、正直なところ①の通信学習は、受けなくても支障はない(修了試験合格のためには)と思います。Web講義を聞かなくても、スクーリング中に、修了試験にでるところは全部、「復習」として教えていただけます。)

 

③修了試験(1時間)
一問一答式と記述式があり、それぞれで8割以上の得点を取ると合格=登録実務講習修了となります。
試験中は、通信教育のテキスト、スクーリングのテキスト、スクーリング当日に配布されるノート(穴埋め式)の3冊を持ち込むことができます。その3冊以外から出題されることはなく、時間も60分たっぷりあるので、まあ、ほぼ不合格になることはないのではないか、と思います。
(マークシートで、マークする場所が全部一つずれていた、とかでなければ…)
提出時、問題用紙は回収されます。試験開始から30分経過後、途中退席も可です。

もし不合格となった場合、追試等の救済措置はない、とのことでした。
(ただし、修了試験に不合格になってしまった場合、1回に限り無料で再受講可能となっている機関が多いようです。その場合、修了試験だけを再受験するということはできず、スクーリング12時間を全部最初から受講する必要があるようです。)

 

受講してみての雑多な感想ですが、

〇2クラスに分けて実施されました。教室にはかなりゆとりがあり、3人席を一人で使える状態だったので、快適でした。(通信教育のテキストと、スクーリングのテキストとノート、3冊同時に開いて作業する、みたいなこともありますので、スペースは広い方がやりやすいです。)

〇会社の同僚?と思しきグループで受講されている方もいらっしゃいましたが、一人で受講されている方が多く、(私も一人での受講でしたが)独りぼっち感はなかったです。

〇受講生は、男女比は半々くらい、年代は20代から60代くらい?までバラバラといった感じでした。

〇時間割上、「演習①9:30~12:30」のように記載されていますが、実際は1時間ごとに10分程度の休憩がありました。1コマ3時間は長い、集中力が切れてしまうのではないだろうかと心配していたのですが、ちゃんと配慮されていました。なお、各コマの最初に、結構厳密な(写真との照合もされているようでした)出欠確認がありますのでご注意ください。

 

最終的な感想としては、
〇試験勉強で自分が勉強していたことは、実務でこういうふうに使われているんだ、というのが理解でき、何というか、「身になった」気がした
〇最初に不安に思ったほど、大変ではなかった
→結論「受けてよかった」、といったところでしょうか。

私は、今のところ、不動産取引そのものに携わる予定はないのですが、弊所での業務でも、不動産売買契約書や重要事項説明書を参照する機会は少なくないので(法務デューデリジェンス等)、今回得た知識を活かしていきたいな、と改めて思いました。

 

◇ ◇ ◇

 

そして、1週間後くらいに、無事に修了証が郵送で届きました。
これを添付して、各都道府県に「宅地建物取引士資格登録申請」をすることになります。

次回、その手続についてお伝えしたいと思います。
では。

資格試験アラカルト・宅建(3)~試験当日ってどんな感じ?編

宅建ブログ3回目です。

今回は、実際の宅建試験の様子について、共有させていただきます。

 

申し込みについて

 

前回も記載したとおり、
宅建試験は、原則として毎年10月の第3日曜日に実施されます。
令和4年は、10月16日(日)で、13時から15時までの2時間実施されました。

 

ちなみに、申込みについては

インターネット:令和4年7月1日(金)9時30分から7月19日(火)21時59分まで
郵送     :令和4年7月1日(金)から7月29日(金)まで(窓口消印有効)

以上の方法・スケジュールとなっていました。

お薦めは、インターネット(スマホ)申込みです。
顔写真を提出しなければならないのですが、スマホなら、カメラで撮影した画像を添付して送るだけなので、写真館などに行く手間がないです。
また、郵送は簡易書留で送る必要があることも要注意です(その辺の封筒に入れて適当に送ればいいというものではないです)。

受験手数料は8,200円で、クレジットカード払いかコンビニ決済です。
また、申し込む際に、試験会場を選択することができます。

コロナ対策として、申込み者多数の場合は、10月と12月の2回に分けて試験が実施されることとなっていて、実際、令和2年度及び令和3年度は12月試験がおこなわれましたが、令和4年度は10月試験の1回のみでした。

 

実は、私は申込む際に、待っていたらもしかして12月試験が選べるようになるかも、そうしたら勉強できる時間が長くなるかも、と淡い期待を抱いて、10日くらい様子を見ていたのですが、全然その気配がなかったので、あきらめて申し込んだというエピソードもあります…

実際のところは、人気のある会場から埋まっていきますので、そんな悪あがきをせず、早めに申し込むのが良いと思います(反省を込めて)。

 

私は、会場として、大妻女子大学(東京都市ヶ谷)を選択しました。
ポイントは二つあって、

①女性受験生専用の会場だった
②まあまあ土地勘があった

ということです。

①については、女性の方でしたらきっと頷いていただけるのではないかと思うのですが、イベントごとで、女性用トイレだけ大渋滞(男性用は空いている)っていう事態、「あるある」ですよね。
女子大ならば、その辺は抜かりがないだろう、と踏みました。
また、隣に座る方が同性の方が、いろいろ気楽かもしれない、とも思いました。

(結果的に、大正解でした。各階に広い女性用トイレが設置されていてスムーズに利用できましたし、同室者のたばこのにおいが気になって集中できない、みたいなこともありませんでした。
たばこの件は、女性でも喫煙者の方はいらっしゃいますので、確率の話でしかないのですが。ご参考までに、2019年の喫煙率は、男性27.1%、女性7.6%だそうです。)

 

②については、これまた個人的事情なのですが、私はかなりの方向音痴で、地図を見ても目的地になかなかたどり着けない(Googleマップなどのアプリを使うようになって、かなりマシになりましたが、それでもスマホをぐるぐる回さないと方向が分からなかったり、GPSがうまく働かず目的地付近をぐるぐる回ったりすることがあります)せいです。

試験会場にたどり着けなかったらどうしよう、という余計なストレスをなくすため、会場リストの中から、土地勘があるところを最優先で選択しました。
「せっかくだから、憧れのあの大学で受けてみたい!」みたいな理由で決めるのもありだとは思うのですが、その場合は、事前に下見しておくことをお勧めします。

 

何といっても、1年に1度しかない試験なので、遅刻してしまったり、遅刻はせずともギリギリになったせいで落ち着いて受験できなかったり、実力以外のところで不合格になってしまうリスクは極力なくしておきたいものです。
試験開始は13時なので、朝が弱い方でもそれほど心配はないようにも思うのですが、念には念を、です。

多分、お一人お一人に、大事なポイントや譲れない事情があると思いますので、そこをクリアするベストな会場を選んでください。

 

 

試験当日の様子

 

さて、試験日当日。

学生時代から一夜漬け派(追い込まれないとやれないタイプ)だった私ですが、ここは無理をせず、「前日は早く寝る」作戦を採りました。

そして、当日早めに会場周辺へ移動し、会場周辺で最後の詰込みをすることに。
ちょうど、季節的に暑くもなく寒くもない時期で、お天気が良かったこともあり、靖国神社の境内で、ベンチに座ってテキストを読みました。

・絶対出ると予想した「重要事項説明と37条書面の違い」

・それまで何回やっても覚えられなかった「報酬の上限」

・いろいろな「数字」
(例えば、建築基準法の建築物の高さ制限○○メートル以下とか、似たような数字がたくさん出てきます。あまりにも覚えられないので、「ここは最後の数時間に賭ける」と決めていました。)

など、一番苦手としているところをぎゅっと詰め込んで、あとはなるようになれ、という気持ちで、開場早々に会場に乗り込みました。

 

ここで一言アドバイス。

試験が13時開始で、11時45分開場、遅くとも12時30分までには会場に入らないといけません。お昼ご飯は早めに済ませましょう。
お腹いっぱいで眠くなってしまう、なんていう事態を避けるためにも、軽めにブランチとかにしておくのも良いかもしれません。

 

座席は、コロナ対策か、はたまたカンニング対策か、隣同士1席空けて座るよう指定されますので、隣の人と肘がぶつかるといったことはありませんでした。
ただ、割と大きめの教室だったので、横長の机に4人くらい座ることになり、そうすると真ん中の席の人は、出入りするたびに出入り口側の人に立ってもらわないといけない、ということはありました。

希望することができるのは「会場」までで、(昨今の映画館のように)「教室」や「席」まで指定できるわけではないので、この辺りは、運としか言えません。
そういう席になることもあるんだな、と心の準備をしておけば落胆することも少ないように思います。

なお、試験時間は2時間ですので、途中で出入りすることは基本的にはないと思います。後は、席によって空調の効き具合も異なる可能性がありますので、例えば脱ぎ着しやすいカーディガンなどを準備しておくと安心かもしれません(基本的には空調設備が整っていると思われ、心配し過ぎることはないと思います)。

スマホやスマートウォッチは、電源を切った上、机上に用意されている封筒に封入して席の下に置くよう指示されます(回収はされません。試験終了後、自分で封筒を破って出しました)。
私が受験した教室には掛時計が設置されていましたが、もしかすると会場によってはなかったり見にくいこともあるかもしれませんので、普通の腕時計を準備した方が良いと思います(ちなみに、置時計は不可となっています)。

 

全くの余談ですが、試験監督の方々は、おそらく大学関係者(?)がアルバイトでやられているみたいで、「本部の準備がなっていない」とか、「お昼休み時間に受験生の対応をしなければいけなかったから、超過勤務手当を請求しよう」なんておしゃべりをしていたり、何というか、気が抜けました。
教室やトイレの場所は教えてもらえますが、試験についての質問は受け付けてもらえないようです。

(さらに余談になりますが、私はかつて、旧司法試験の試験監督をした経験があります。その時は、受験生の方々の表情も一様に厳しく、係員としても、もしかするとその受験生の方の一生がかかっているかもしれない、と思えて、「始め」の合図を発するのにも緊張したものでした。やはり、試験の重みが全然違う、ということでしょうか。)

 

 

試験問題について

 

実際の試験問題は、不動産適正取引推進機構HPで公表されています。

構成としては

 権利関係
 ↓
 法令上の制限
 ↓
 税
 ↓
 宅建業法
 ↓
 その他

という並びです。

 

私は、
○ まず頭から順番に解いていき、

○ 問27(報酬限度額の計算を含む)だけは、ゆっくり落ち着いて解いた方が良いと思い、最後に回しました。

○ 途中、テキストや問題集で全く見たことのない問題が幾つか出てきましたが、こういう問題は多分皆できない(少なくとも苦労する)んだ、と思って動揺しないようにしました。

○ 最終的に、時間が余って困るほどでもなく、時間が足りずに慌てることもなく、ひととおり回答し終わって全体を軽く見直しをしてもまだ余裕がある、という感じでした(余り何度も見直すと、かえって迷ってしまうと思い、1回しか見直しはせず、後はひたすら終了を待ちました。なお、途中退席不可です)。

難易度や出題傾向的には、全体として過去問の傾向からそれほど乖離しておらず、想定の範囲内だったかなと思います。
ですので、過去問を繰り返し解いて、「こういうところで間違えさせようとするんだな」というポイントさえ押さえておけば、細かい論点や知識を全部網羅しなくても、十分対応可能だと思いました。

 

試験が終わると、受験生が一斉に駅に移動することになりますが、こちらも特に混乱することはなく(偶然居合わせた方にしてみたら、女性の集団が無言で同じ方向に進んでいくので、何事だろう、とは思われたかもしれませんね)、スムーズに帰宅できました。
試験のボリューム的にも、負担が少なくて良かったと思います。

 

その日の夜や、翌日には、各予備校などのHPで模範解答や合格予想点が発表されていたようです。
私は、見るのも怖いし見ないのも怖い、でもまあ、初志貫徹して受験できただけでも一つ達成だから、合格できるかどうかは一喜一憂せず待とう、という気持ちで、あえてそれらのページは見ずに合格発表を待ちました。

 

 

合格発表

 

令和4年の合格発表は、11月22日(火)でした。

午前9時30分から、試験団体のHPに、合格者受験番号が掲示されます。
どきどきしながら発表を見て、自分の番号を見付けたときは、とてもとても安堵したことを覚えています。

そして、翌日仕事を終えて帰宅すると、簡易書留郵便が届いており、合格証書が入っていました(不合格者には、結果の通知はおこなわないそうです)。

A4の紙1枚だけですが、なんというか、少し重みを感じました。

 

◇ ◇ ◇

 

というわけで、試験当日から合格発表までの様子について共有させていただきました。

次回は、試験に合格しただけではゴールではなくて、「登録実務講習」が必要だ、ということと、実際の講習の様子をお伝えできたらと思います。
では。

資格試験アラカルト・宅建(2)~宅建試験ってどんなの?どんな勉強すればいいの?編~

宅建ブログ2回目です。今回は、

・宅建試験がどのような内容で
・それに向けてどんな勉強をしたか

について共有させていただきます。

 

宅建試験の内容

 

宅建試験は、原則として
毎年10月の第3日曜日に実施され、11月下旬に合格発表があります。
試験時間は2時間です。

試験内容は、前回も書いたように宅建業法施行規則で決まっていて

1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
2.土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
3.土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
4.宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
6.宅地及び建物の価格の評定に関すること。
7.宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。

なのですが、教材等では、おおむね

宅建業法」(↑の7)
権利関係」(↑の2)
法令上の制限、税・その他」(↑の1、3~6)

というふうに、大きく3つにまとめられています。

 

全50問中、分野別の内訳は以下となります。

・宅建業法    20問
・権利関係    14問
・法令上の制限  8問
・税その他    8問

全てマークシート(四者択一)方式で、記述式の問題はありません。

(当然ですが)50問全部できなければ不合格、というわけではなくて、年によって異なりますが、大体31~38点くらいが合格ラインとのことです。
令和4年は36点でした。

 

ちなみに、必要な勉強時間の目安は300時間とか。

1日1時間としたら、300日=10か月 ➔12月か1月に取り掛かる必要あり
1日2時間としたら、150日=5か月 ➔5月か6月には取り掛かる必要あり

みたいな計算でしょうか。

私は、令和4年初頭に新年の抱負を考えていて
「今年は資格の勉強をしよう!」と思い立ったという次第で
受験を決めたのは令和4年1月頃でした。

インターネットで上記のようなことが分かったので、
早く始めればそれだけ1日当たりの勉強時間が短くて済む
と目論み、受験を決めたその夜からさっそく教材を探し始めました。

 

 

教材選び・対策のポイント

 

ところで、教材探しをされる方に一言。

お薦めの教材、またお薦めの勉強方法については
インターネット上にたくさん情報があります。

しかし、私の個人的な意見としては、人それぞれ、自分に合う教材や勉強は違っているので、他人の言うことをそのまま信じず、自分の五感で探した方がいいと思います(身もふたもなくてすみません)。

というのも、人それぞれ、それまでに積み上げてきた知識経験(法学部出身だったり、そうでなかったり)も違えば、生活スタイル(電車通勤だったり、専業主婦だったり)も違うからです。

ある人が、この教材でこういう時間割で勉強して受かった!と言っても
それをそっくり真似するのは、難しい上に危険だと思います。

そういう前提に立った上で
これから受験する方に、私からアドバイスできることがあるとしたら…

 

 ① 教材 余り手を広げなくても大丈夫です。
これと決めた教材に絞って、何度も繰り返してやるのがお薦めです。
 ② スケジュール管理 最終的に帳尻が合えばAll OKです。
なので、受験を思い立ったら、とりあえず一刻も早く勉強を始めましょう。
早く勉強しても試験までに忘れてしまう…という懸念は、直前に再暗記期間を設定しておけば大丈夫です。早く始めれば、その分、たとえ途中怠けてしまう時期があってもいろんな調整が効きます。
 ③ 勉強する環境作り 自分は意志が弱いと思う人は、誰か自分にとって重要な人に、「受けます」と宣言しておきましょう。

 

くらいでしょうか。
各ポイントについて、もう少し詳しく説明していきましょう。

 

 

① 教材

 

宅建は人気資格なので、受験予備校や通信講座がたくさんあり、書店に行けば、教材は選り取り見取り、どれを選んでいいか迷うくらいたくさん並んでいます。

私は最初、予備校や通信講座を調べました。

費用は安いところで数万円くらいからですが、例えば合格保証が付いていたり(不合格だったら受講料を返金してくれる。ただし、厳しい条件があります)、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっていて費用の一部が支給されたり、というものもあります。

予備校や通信講座のいいところは、教材も勉強の進度管理も、全部専門家が考えてくれて、自分は与えられたカリキュラムをこなしていくだけでいい、というところかと思います。

 

幾つか調べた結果、「スマホで学べる」講座があり、テキストを持ち歩く必要がなく通勤電車の中などでも勉強ができるといううたい文句でした。
(気になる方は上記キーワードで検索してみてください)

費用も2万円程度で比較的安価だったこともあり、とても良さそうだったのですが
ごく個人的な事情として、
・乗り物の中で文字を読むと、乗り物酔いをしてしまう(本でもスマホでも)
・勉強する時間が取れそうなのは寝る直前で、寝る直前にスマホのブルーライトを見るのは避けた方が良い(不眠になる)と聞いた
ということで、こちらは断念しました。

 

結局、アナログに、紙のテキストで勉強するのが自分に合っていそうだ、という結論に至った私は、さっそく書店に行ってテキストを購入することにしました。

先ほどもお伝えしたとおり、教材が数多並んでいる中で、私は「一番売れている」テキストを選びました。
みんなが選ぶということは、選ばれるだけの理由があるのだろうと思ったし、逆に、試験委員もその本のことを意識しているだろう、とも思ったのが理由です。

いま改めて考えても、ある程度実績があるところが出版している、ある程度売れている本だったら、どれもちゃんと作りこまれているし、ぶっちゃけそれほど大差はないと思います。

だったら、あとは自分の好みです。

試験までの長丁場、ずっとお付き合いするテキストですから、例えば読んでいて言い回しがなんとなく気に障るとか、カラフルすぎて目がチカチカするとか、そういう些末な理由でストレスを感じることがないよう、書店で実物を見比べて「私はこれが好き」と思うものを選ぶのが一番だと思います。
(ネット購入は、実物が届いたらイメージが違ったということが発生しやすいです。もし事情が許すのであれば、リアル店舗をお薦めします。)

 

私は、学生時代に参考書を購入しても、一つ説明を読んでも分からない箇所があったりすると「本当にこの本でよかったのかな、別の本の方が分かりやすいのでは」などと迷ってしまい、別の本を買い直したりしていました。
例えば歴史だったら、原始時代ばっかりいろんな本で何回も勉強して、最終的に時間が足りず現代史までたどり着かない、という感じになりがちでした。

そのため、今回は「いろんな教材に手を出さない、最初に選んだ1冊に賭ける」と決めて、テキスト1冊と問題集1冊しか使いませんでした。
ただ、一人の筆者、一つの会社の見解だけに全て頼るというのはやはり怖いと思ったので、テキストと問題集はあえて別の会社のものにしました。
これも一長一短で、同じシリーズのテキストと問題集を併用した場合は、相互に参照ページが書いてあるなど調べ物がしやすい、という意見もあるようです。

私は、最初にテキストを読んだ時は理解があやふやだったところが、次に問題集を解いてみたら別の観点から解説がされていて、「テキストに書いてあったあれは、こういうことだったのか!」という気付きをしたことも結構あったので、教材を絞り込もうと考えている方には、あえて別シリーズにしてみることもお薦めします。

プラス、条文が見たいときはインターネットの「e-Gov法令検索」で検索しました(法令の名称を検索すると大体最初に表示されるページです)。
現在生きている条文が無料で読めるのでお薦めです。
(個人的には、業務でも頻繁に利用するので書籍版六法より馴染みがありました)

 

 

② スケジュール管理

 

試験範囲が広いため、行き当たりばったり・成り行き任せでは、どんな結果になるか分かったものではありません。
やっぱり、計画を立てて取り組む必要があります。

受験予備校や通信講座を利用される方は、ちゃんとプロが試験日に間に合うようなプログラムを組んでくれますので、お任せで良いと思います(こういうノウハウに、お金を払っているわけですから)。

独学の方は、ここを自分でやらないといけません。

まあ、労力はかかりますが、その分「自分のことを一番知っている(はず)というメリットを生かして、自分専用のプログラムが組める」とも言えるので、またまた一長一短かもしれません。

 

私は独学だったので、まずは全体のスケジュール感をつかもうと、早い時期にテキストを買い、理解しようとか暗記しようとかせず、とりあえず試験範囲全体を一通り読んでみました。
ここで、自分のこれまでの知識がどれくらい使えそうか、新しく覚えなくてはいけないことはどれくらいあるか、といった感触をつかみ、
「合格するには、自分は、これくらい頑張らないといけないようだ」
というレベル感をざっくりと見積りました。

その結果、

「権利関係」については過去に少し勉強したことがあり、しかも業務でも日常的に触れているので、ここは復習程度でよさそうだな
「宅建業法」は読んだことがないし、主要科目で出題数が多いため、ここに力を注いだ方がよさそうだな
「法令上の制限や税制その他」は、理解というよりは暗記が主のようなので、試験が近くなってから短期集中でやるのがよさそうだな

みたいな、ふわっとした感触を得ました。

 

その次に必要になるのは具体的な計画ですが、私は
・平日は〇時から〇時まで勉強する
・何月には〇〇の科目を終わらせる
のような計画はあえて作りませんでした。

というのも、経験上、計画を立ててそのとおりにできたことがないし、自分にプレッシャーを掛け過ぎたくないと思ったからです。
プレッシャーを感じすぎて、法律の勉強をすることに嫌悪感を感じるようになってしまったら、かえって仕事にも差し障りが出てしまう、それは本末転倒だと思いました。

私が決めた計画?(と言えるかも疑問ですが)は、

・毎日、ちょっとでもいいから宅建の本を読む

・試験の1か月前までに、テキストと問題集を少なくとも3回は繰り返し読む

・試験の1か月前になったら集中的に暗記をする。それまでは数字等細かいところは覚えようとしない

という、はなはだ緩いノルマを課すものでした。実際のところ、

平日夜は、
寝室に移動するときにテキストか問題集を持っていき、布団に入って読む
⇒10分もすると、寝落ちしそうになるので、本を閉じて就寝

休日は、
ソファでゴロゴロするときにテキストや問題集を横に置いておき、
気が向いたら読む

という感じで、1日当たりの勉強時間は短かったのですが、その分、勉強が嫌になることはなく、計画どおりに進まない!と焦った挙句に全部放り投げてしまうようなこともなかったため、ゆるーく続けることができました。

 

そして、試験の1か月前。

勉強を続けてはいたものの、数字等、細かい部分の暗記を後回しにしていたこともあって、問題集が全然解けず危機感を覚えました。

しかし、ここで急に「1日5時間やる!」とか決めても、絶対無理なのは分かっていたので、冷静に自分の集中力を見積もりました。

1回15分なら集中できて、取り掛かるのに必要な意思の力も少ないだろうと判断し
「最低でも1日15分を4コマやろう、できなかったら翌日に回してもいいし、できそうならおまけでコマ数を増やそう」
という、これまたゆるーいノルマを課すことにしました。

気分が乗らないときでも、「まあ、15分だし…」ということで、しぶしぶでも取り掛かることができ、始めると意外に気分が乗って気が付いたら30分経っていた、みたいなことも結構ありました。

科学的に証明されている「やる気スイッチ」があって、それは

「気が乗らなかろうが心の準備が整っていなかろうが、
何でもいいからとにかく作業を始めること」

 
だそうです。やっているうちにだんだん脳に刺激が伝わり、脳が興奮して、やる気が出てくるのだとか。

 

つまり、
「準備が整う⇒やる」ではなくて
「やる⇒準備が整う」という
何というか、逆説的?なことが分かっているそうです。そのため、

気分が乗っている時に集中して勉強するのが一番効果的に決まってる!
…今は気分が乗っていないから、後でやろう

ではなく

今は気分が乗らない。
…でもまあ、ともかく本を開くだけでも開くか

と、行動することが必要なんですね。

そこでプラスしてお薦めなのが、
気分が乗らないときでも「まあ、これくらいならできそうかな」と思えるよう、例えば「1コマ15分」のように、最初のハードルを下げておくことです。
(こういうのも「スモールステップ」といって、教育現場や医療現場でも、習慣化のために使われているテクニックの一種かもしれません。)

もちろん「簡単すぎる目標では燃えない!」という方もいらっしゃるでしょう。
また、ハードルを下げすぎると、どう計算しても試験日までに範囲が全部終わらない、などということになってしまうことも考えられます。

結局重要なことは、自分の生活状況・性格・能力を、冷静かつ正確に見定めた上で、試験までに残された時間との兼ね合いを見据えつつ、自分にとって最適化された計画を練ることです。

留意点は、「現実的」な計画を立てること。
計画を立てる時は、あれもやりたいこれもやりたい、一日○時間は勉強すべき、などと考えて「理想的」な計画を立ててしまいがちですが、ここでぐっと気持ちを抑えることが大切です。

絵に描いた餅では、どんなに美味しそうでも、現実にお腹は膨れないですよね。

 

 

③ 勉強する環境作り

 

長丁場なので、途中で計画が滞ってしまい
「やっぱり駄目かも」「来年にしようかな…」
などと弱気になってしまうことも起こってしまいがちです。

そういうときに、あらかじめ周囲に「今年宅建を受験します」と宣言しておくことで、「でも、あの人に今年受けるって言っちゃったしなあ…」という感じで、放り投げるのを思いとどまらせてくれます。

ここでのポイントは、
自分にとって近しすぎる存在の人では効果がないということ。

「私、受験するんだ~」と宣言しておいても、後日「やっぱ止めた」と言いやすく、「ほんとにこの人はしょうがないね~」と受け入れてくれる存在ではストッパーになってもらえません。
例えば上司や、義両親など、「気が置ける」(気遣いが必要な)存在に、宣言しておくと良いと思います。

実際、私も事務所の弁護士に受験することを伝えていたため、試験までに勉強が間に合わないかも、止めようかなと不安な気持ちになった時に、「でも、先生に受けるって言っちゃったし…」と、何とかこらえて続けることができました。

 

◇ ◇ ◇

 

以上、いずれも、意志が弱いことを前提とした勉強方法についてお伝えしました。

向学心に燃えている方には、怒られてしまいそうですが
「これくらい意志が弱くて緩くしか勉強できなくても、何とかなりますよ」
という一例として、参考になると嬉しいです。

長くなってしまったので、実際の試験の様子については、次回お伝えします。
では。

 

(参照:一般財団法人不動産適性取引推進機構HP

資格試験アラカルト・宅建(1)~「宅建」って何?編~

はじめに

 

タイラカ総合法律事務所事務員です。

このたび、「宅建」資格を取得しました。

「宅建」は、国家資格の中で受験者数が最も多いそうで、
合格体験記等もインターネット上に数えきれないくらいあります。

そんな中でも、あまり「典型的」ではないケースとして、何かのご参考になればと思い、何度かに分けて体験を共有させていただきます。

(※なお、本稿は令和4年度の資格試験制度に基づく記載です。最新の制度は異なる可能性がありますので、必ず試験団体のホームページ等によりご確認ください。)

 

 

宅建とは

 

さて、改めまして「宅建」です。

その存在については広く認識されているのではないかと思うのですが、

「ところで、宅建に受かると何ができるの?」
と改めて質問されると、

「さあ?」
となってしまう方が多いのではないでしょうか。

 

正式名称は、「宅地建物取引士資格試験」といい、
合格すると、「宅地建物取引士」(通称「宅建士」)になることができます。

 

この辺り、少しややこしいのですが、

宅地建物取引業(ざっくり言うと、不動産の売買や貸借の媒介などを、事業としておこなうこと)を営むためには、

・国土交通大臣(複数の都道府県にまたがって事業をする場合)
・都道府県知事(一つの都道府県内でだけ事業をする場合)

いずれかの「免許」を受けなければならないのですが、その免許を受けるためには、事務所ごとに、従業員5人に1人以上の割合で「宅地建物取引士」を置かなければならない、とされているのです。

またまたざっくり言うと、

宅建=不動産業者等に就職して(又は個人事業主として)
不動産取引のうち、専門知識が必要とされる業務に従事するための資格

という感じでしょうか。
宅建士じゃないとできない(したら罰則が科される)業務もあります。

それが、

① 重要事項の説明
② 重要事項説明書への記名
③ 契約書への記名

この3つです。

 

 

宅建士にしかできない業務

 

・・・と言われても、
①重要事項の説明ってナニ?という方もいらっしゃるでしょう。

この「重要事項説明とは何か」というのも、実は宅地建物取引業法(宅建業法)で決まっていて、宅建試験で必ず出題されるところだったりします。

 

まあ、読んで字のごとく
「重要事項」を「説明」することなんですが(まんまですね)
これを5W1Hに分解してみると、

When(いつ)
契約が成立するまでの間に、

Where(どこで)
(特に制限なし。オンラインも可)

Who(誰が)
宅建業者が、宅建士をして
(Whom(誰に):買い手・借り手になろうとする人に、

What(何を)
その不動産の現在の所有者の名前や、その不動産上に建築基準法等の法令による制限(建築できる建物は高さ何メートル以下、など)があるかどうかとその制限の内容、電気ガス水道が整備されているかどうか、などなど、買ったり借りたりする前に知っておく必要のあることを、

Why(なぜ)
(宅建業法にはっきりと書いてあるわけではありませんが、不動産取引は高額である上に、一般的には一生に数回程度しか経験しないものであるところ、悪徳業者に、買い手・借り手の経験が少ないことに付けこんだ不当な取引をさせないため、です。)

How(どのように)
説明を記載した書面(※)を交付して、口頭でも説明する
(相手も宅建業者の場合は、書面の交付だけでよい)

※ちなみに、書面のひな形は、こんな感じです(国土交通省HPより)。
ものすごく長くて、見るだけでうんざりしてしまいそうですが、「不動産を買ったり借りたりするんだったら、これくらいは知っておけ」ということなんですね。

   

となります。
上記でハイライト付したところが、宅建士でないとできないところです。

重要事項説明の時に交付する書面=「重要事項説明書」に、
「説明をする宅地建物取引士」として記名し(←②)、
実際に説明する(←①)
ことになります。

 

もう一つの、③の「契約書」については、
「日常生活で見たことがある」「ハンコを押したことがある」
という方が多いのではないかと思います。

法律(民法)上は、売買契約や賃貸契約は当事者の合意によって成立するとされているので、不動産の売買や賃貸契約も、「契約書」がなくても成立します。

ただ、そうは言っても、不動産取引のように高額で、しかも内容が複雑な契約を口約束でおこなってしまったら、後日「言った」「言わない」「説明したはずだ」「聞いてない」のように、トラブルになる危険性が高いので、通常は「契約書」を交わします。

もしも「契約書」を交わさなかったとしても、宅建業者は、契約内容を記載した「書面」(宅建業法の37条に規定があるので、「37条書面」と呼ばれます。)を当事者双方に交付しなければならないことになっています。

宅建業者は、その書面(一般的には、「契約書」に、「37条書面」に記載しなければいけないことを全部記載して、「契約書兼37条書面」とすることが多いようです)を作成して、これに、宅建士をして、記名させなければならないと決められています。

(余談ながら、私が勉強した時は、重要事項説明書も37条書面も、宅建士の「記名押印」が必要とされていたのですが、デジタル改革の一環として宅建業法が改正され、2022年5月から押印は不要となり、「記名」だけになりました。
こういうことがあるので、教材は最新のものを使った方が良いです。)

 

 

「宅建」を選んだ理由

 

ここまでをまとめると、「宅建」は

・不動産業者で働いている人
・仕事で不動産取引をおこなう人
(例えば、各地の不動産を買ったり借りたりして新規出店する外食産業チェーンなど)

のための資格と言えそうです。

 

そうだとすると、

法律事務所で働いていながら、どうしてこの資格を取得しようと思ったの?
何かの役に立つの?

と聞かれるかもしれません。
その答えは、試験科目を見て決めました、となるでしょうか。

 

宅建の試験内容は、宅建業法施行規則で、7項目規定されているのですが、
ものすごく大雑把にまとめてしまうと、

① 宅建業法
② 民法等の、不動産の権利関係の部分
③ その他の法令の、不動産に関する制限(売買するときは届出が必要とか)や不動産に関する税制の部分

となるかと思います。

 

現在までのところ、弊所において、
①③の宅建業法に関する業務等には、ほぼ従事したことがないのですが
(一度だけ、不動産を購入したクライアントさんから、クーリングオフが可能かどうか調べてほしいとのご依頼があり、条文等を調べたことがあるくらいです)

②の民法等(借地借家法などの特別法も含むため、「等」としています)の権利関係についての条文には、業務で、日常的に触れています。

そこで、②について勉強することで、民法的な考え方が身に付いて、日常業務にも役立つのでは?と期待して、チャレンジすることにしたのでした。

(その他、難易度等の関係もありますが。
ほかに弊所の業務に関係しそうな資格で思いつくものといったら、司法書士とか社会保険労務士とか、超難関資格しか見付けられなかったので・・・。
ちなみに、令和4年の宅建試験結果は、試験団体の発表によりますと、
申込者数283,856人
合格者数38,525人
合格率17.0%
だそうです。まあまあ、何とかなるかも、と思える数字ですよね。)

 

◇ ◇ ◇

 

というわけで、
今回は「宅建」って何?というところについて、ざっくりお話しました。

次回は、宅建試験に向けてこんなことをやりました、実際の試験はこんな感じでした、というところをお話したいと思います。

では。

 

(参照:一般財団法人不動産適性取引推進機構HP

六法全書クロニクル~改正史記~平成12年版

平成12年六法全書

平成12年版六法

 

この年の六法全書に新収録された法令に、
犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年法律第137号)
があります。略称は「通信傍受法」です。
捜査手段としての通信傍受の要件、手続等について規定しています。

 

プライバシー侵害への懸念などから、成立までに激しい反対があったことは、
ご記憶にあるのではないでしょうか?

何となく危なそうな法律だとは思っているけど、詳しくは知らない・・・
という方のために、少し中身を見てみましょう。

 

まず、「通信」と「傍受」です。
傍受の対象となる「通信」とは、「電話その他の電気通信」をいい、電話(固定電話・携帯電話)だけでなく、電子メール、FAXも対象となります。
「傍受」とは、現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることです。

通信傍受による捜査が許容される犯罪は、通信傍受が必要不可欠な組織犯罪に限定されます。具体的には、法律制定当初は
・薬物関連犯罪
・銃器関連犯罪
・集団密航
・組織的殺人  の4類型に限定されていたところ、平成16年12月から、
殺人、傷害、放火、爆発物、窃盗、強盗、詐欺、誘拐、電子計算機使用詐欺・恐喝、児童売春などが追加されました。

通信傍受の手続としては、裁判官から発付される傍受令状に基づいておこなわれることになります(令状主義)。通信傍受を実施する根拠・必要性があるかどうか、裁判官によってチェックされる仕組みです。
捜査機関が通信傍受をおこなおうとする場合には、地方裁判所の裁判官に対して傍受令状を請求する必要があります。傍受令状の請求ができるのは、検事総長からの指定を受けた指定検事か、国家公安委員会等から指定を受けた警視以上の階級を有する警察官等に限定されています。(他の令状、例えば逮捕状では、これを請求できる警察官の階級は「警部以上」とされていますので、傍受令状については制限が厳しいといえます。)

請求を受けた裁判官は、請求を理由があると認めるときは、傍受令状を発付します。
傍受令状には、被疑者の氏名や、傍受すべき通信、傍受の実施の方法及び場所、傍受できる期間、傍受の実施に関する条件、有効期間等などが記載されます。
そして、この傍受令状を、通信事業者等に対して提示して、傍受を実施することになります。

傍受してよい通信は、傍受令状に記載された通信のみです。傍受実施中におこなわれた通信であっても、傍受令状に記載されていない内容は傍受してはならず、例えば、犯罪に関わらない家族からの電話等は傍受できません。

傍受した通信は、全て、記録媒体に記録しなければならず、検察官・司法警察員は傍受した通信内容を刑事手続において使用するための記録(傍受記録)を裁判官に提出しなければなりません。
また、傍受終了後、傍受された通信の当事者に対して、傍受したことを書面で通知しなければなりません。通知を受けた通信の当事者は、当該通信の記録の聴取・閲覧や複製をしたり、不服を申し立てたりすることができます。

このほか、通信の秘密の尊重が条文にうたわれていたり、
通信傍受の実施状況を国会に報告するとともに公表することが規定されているなど、
人権侵害が生じないよう、配慮された内容となっています。

 

ちなみに、警察庁HPによると、
2019年における通信傍受の状況は、傍受令状の発付は31件、通信手段の種類はいずれも携帯電話、逮捕人員は48人とのこと。

かなり謙抑的に運用されている印象です。
しかし、たとえ数は少なくても、通信傍受がなかったとしたら逮捕することができなかったケースが、確実にあったのだと思います。
効果的な武器ともなる反面、罪のない人の人権を侵害してしまうおそれもある。
まるで、鋭利な刃物のようだと思います。
使い方を間違えないよう、慎重に、しかし有効に使われるよう、注意深く見守っていく必要がありそうです。

 

◇ ◇ ◇

 

改正された法令として収録されたものに、
借地借家法(平成3年法律第90号)
があります。

借地借家法(しゃくちしゃっかほう)は、建物の所有を目的とする地上権・土地賃貸借と、建物の賃貸借について定めた法律です。
「しゃくちしゃくやほう」と呼ぶこともあります。
その立法趣旨は、一般的に弱い立場に置かれがちな土地や建物の賃借人(借地人、借家人、店子)の保護にあるとされています。

平成11年の改正では、
「定期建物賃貸借」(定期借家契約)の規定(38条)が新たに設けられました。
存続期間が終了すればそこで賃借権は完全に消滅し、契約を更新することはできないという、特別な建物の賃貸借です。

これは、建物の賃貸借に関して、賃借人の権利が強くなりすぎた(一度物件を貸すと、正当な事由がない限り立ち退いてもらえない)ために、家主が賃貸に消極的になってしまい優良物件の供給が阻害されているとの指摘があり、改正がなされたものです。

 

一般の借家契約との違いを見てみることにしましょう。

○契約方法
普通借家契約は、書面でも口頭でも締結が可能であり、その際、特段の説明をする義務等は貸主に課されていません。
一方、定期借家契約は、書面によらなければ締結できません。また、定期借家契約は、「更新がなく、期間満了により終了する」ことを、あらかじめ、契約書とは別に書面を交付して説明しなければなりません。

○賃料の増減
租税等の増減や経済事情の変動等があれば、貸主と借主は、賃料の増額や減額を請求できます。ただし、普通借家契約では、賃料を増額しない旨の特約をすることができます。
一方、定期借家契約では、賃料を増額しない旨だけでなく、減額しない旨の特約をすることもできます。

○契約の更新
普通借家契約では、当事者が、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、相手方に対して「更新をしない」旨を通知しなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(賃貸借期間が1年以上の契約)。なお、貸主による更新しない旨の通知には、正当事由(家主がほかに住むところがなく貸している建物に住まなければならない場合など)が必要となります。
一方、定期借家契約では、更新はありません。賃貸借期間が1年以上の場合、貸主は、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、借主に対して、期間満了により契約が終了することを通知しなければ、その終了を借主に対抗できません。(逆に言えば、通知さえすればよく、正当事由は必要ない。)

○1年未満の契約
普通借家契約では、1年未満の契約は、期間の定めのない契約とみなされます(各当事者はいつでも解約の申入れが可能で、借主による解約の申入れについては3ヵ月経過後に契約が終了しますが、貸主による解約の申入れについては6ヵ月の猶予期間がある上、正当事由が必要となります。)。
一方、定期借家契約では、1年未満の契約も可能です(期間の定めのない契約とみなされることはありません)。

○借主からの中途解約
普通借家契約では、(貸主からの中途解約は自由には行なえませんが、)借主からの中途解約は、それができる旨の特約があればその定めに従うことになります。
一方、定期借家契約は、特約がなくても借主からの中途解約が可能な場合があります。それ以外の場合は、特約があればその定めに従うことになります。

 

定期借家契約が満了したら、借主は必ず出ていかなければならないのかいうと、そうではありません。当事者双方が合意すれば、「再契約」という形でその建物の使用を続けることは可能です。
しかしあくまで、家主側の合意が必要であるため、必ず再契約できるわけではないことを承知しておく必要があります。これが、借主にとっての最大のデメリットと言えます。

ただ、そういったデメリットのために賃料が相場より安かったり、問題を起こす住民が長く居座り続けることができない仕組みであるため居住環境が良好に保たれやすいといったメリットもあると言われています。

「定期借家契約」は、全体の数パーセント程度だそうです。メリット・デメリットをきちんと把握した上で、賢く使い分けたいですね。