六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成25年版

六法全書 平成25年版

この年の六法全書に新収録された法令に、最近俄然注目を浴びている、
新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)があります。

(各種報道等で何度も取り上げられ、いい加減食傷気味かもしれませんが、
やはり知っておく必要がある法律だと思いますので、あえて取り上げさせていただきます。)

2009年(平成21年)にH1N1亜型インフルエンザウイルスが世界的に流行した際(※)、対応が混乱したことを踏まえ、法的根拠をもって確固たる対策が可能となるように、ということで誕生した法律です。

(※豚の間で流行っていた豚インフルエンザのウイルスがヒトに感染するようになったことに起因するとされています。「豚インフルエンザ」と聞くと、ああ、そんなこともあったな、と思い当たる方も多いのでは?)

 

この法律には、新型インフルエンザ等に対する平時の備えと、
緊急時の措置に関する規定が置かれています。

平時の備えとしては、政府・都道府県知事・市町村長それぞれに、
行動計画を定めること、
物資の備蓄をおこなうこと、
知識の普及に努めることなどを義務付けています。

そして、いざ新型インフルエンザ等が発生した場合には、

厚生労働大臣が、内閣総理大臣に報告
       ⇩
内閣総理大臣が、政府対策本部を設置
       ⇩
都道府県知事が、都道府県対策本部を設置

という流れになっています。

 

さらに進んで、新型インフルエンザ等が国内で発生し、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす(又はそのおそれがある)事態だと認められると、

新型インフルエンザ等緊急事態宣言

をすることとされています。

 

この宣言は、緊急事態措置を実施すべき期間や区域を示してなされるのですが、
当該区域の都道府県知事において、次のような措置の実施が可能になります。

○住民に、外出を自粛するよう要請
○施設管理者に、学校や福祉施設などの使用やイベント開催を停止するよう
 要請・指示
○臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を所有者の同意がなくても使用
○運送事業者に、緊急物資を輸送するよう要請・指示
○事業者に、医薬品、食品等の売渡し要請・収用等

  

こういったことは、国民の自由と権利を制限するものですので、
制限が必要最小限のものでなければならないことも、併せて定められています。

今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受け、
政令で定める日までの間、新型コロナウイルス感染症を、

「新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等」

とみなすことを内容とする法改正がおこなわれました(令和2年3月13日可決成立、翌日施行)。

 

そして、事態はまさに現在進行形で動いています。

2020年4月7日、
実際に「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」が発出されました。

これを受けて、各自治体から、様々な自粛要請が出されていることは、
日々報道されているとおりです。
本当に、これまで経験したことのない、未曽有の事態です。

 

幸い、自分の身の回りにはまだ感染者はいないのですが、それでも、すぐそこまで危険が差し迫っているという緊迫感や危機感を覚えずにはいられません。
こういった緊急事態では、政府が強力なリーダーシップを発揮して事態収拾に当たることも絶対に必要です。

反面、国民の自由と権利が必要以上に制限されてしまうことも、絶対に見過ごすわけにはいかないことです。

今回の事態で、欧米に比べて、政府の権限が弱いのではないかとの指摘もあるようです。その分、私たちには、「自主的」な行動規制が求められているのかもしれません。

 

一日も早く平穏な日常が戻るよう、今は、我慢の時です。
一人一人が、自分ごととして、自分ができることに真剣に取り組んでいくことが、事態を乗り越えるための一番の近道と信じます。

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
消費税法(昭和63年法律第108号)があります。

この年制定された「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」により、消費税率及び地方消費税率は、次のように2段階で引き上げることとされました。

改正前の税率は、消費税率4.0%、地方消費税1.0%の計5%だったところ
平成 26 年4月1日に、消費税率6.3%、地方消費税1.7%の計8%へ、
平成 29 年4月1日に、消費税率7.8%、地方消費税2.2%の計10%へ引き上げることが規定されたのです。
(※ 消費税10%への引き上げ時期は、その後、延期されました。)

 

一口に「消費税」と言っていますが、実は、
国税である「消費税」と、地方税である「地方消費税」の合計だったんですね。

この消費税、日本に初めて導入されたのは平成元年4月1日で、
その時の税率は3%でした。

その後、平成9年4月1日には税率が5%(国4%+地方1%)に引き上げられ、この年の法改正で更に2段階で引き上げられることとなったわけですが、
引き上げの理由としては

高齢化により社会保障費が膨らんで若い世代への負担が大きくなりすぎること、
国民全員が平等に負担する消費税が適していること、
景気に大きく左右されない安定した財源であること

などが挙げられています。

 

消費税8%への引き上げは当初予定した期日におこなわれましたが、
消費税10%への引き上げは、2度にわたって延期され
最終的に、平成31年(令和元年)10月1日から実施されています。

様々な対策が講じられたものの、
やはり日本経済への打撃は大きかったと分析されているようです。
払う側の心理としては、やっぱり、10%って大きいですよね・・・。

消費税は、物品やサービスの「消費」に対し、消費者が負担する税です。
食料品や外食、洋服などにも課税されており、私たちの生活に一番身近な、毎日のように支払わなければならない税金です。
(ちなみにですが、弁護士報酬にも、消費税は課税されます。「消費」している感じはないですけどね。)
支払を逃れられないのなら、せめて、本当に私たちに役立つ形で使われているかどうか、きちんと見守っていきたいものです。