六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成24年版

六法全書 平成24年版

この年の六法全書に新収録された法令に、
東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)があります。

 

平成23年3月11日に、東日本大震災が発生しました。
直後から、その復興に向けた特別措置や特例を設ける法律が次々と作られましたが、この法令はその一つになります。

この法律では、「復興特区」の制度を創設しています。

被災状況や復旧・復興の状況は地域ごとに異なっていて、
復興に当たりどの産業を柱とするかなど、その方向性もさまざまです。

そこで、地方公共団体が、地域の状況や特性を踏まえて自らオーダーメードのメニューを作成し、それに基づいて、地域限定で思い切った特例措置を実施することで、復興を加速しようと作られたのが、「復興特区」です。

特例を活用するためには、地方公共団体が、計画を作成し、
内閣総理大臣の認定などの手続を経る必要があります。

計画作成をおこなうことができるのは、
震災で一定の被害を生じた227市町村の区域
(岩手県内全市町村、宮城県内全市町村、福島県内全市町村など)
に限られます。

実際の特例としては、例えば、

〇公営住宅等に関する入居資格要件を、最長10年間にわたり緩和
(通常の災害では入居者資格要件の緩和は3年のところ、10年に延長。)

〇病院や介護施設における医師等の配置基準を緩和
(通常よりも少ない医師等の配置で、病院や介護施設を設置できるようにする。)

〇「復興産業集積区域」内に新たに立地した新設企業について、
法人税を5年間無税化

などがあるそうです。

 

東日本大震災発生から、9年が過ぎました。

少しづつ記憶は薄れ、正直、意識することも少なくなっているかもしれません。特に今は、新型コロナウイルスの問題で頭がいっぱいで、そこまで気が回せなくなっているかも…

しかし、復興は、まだまだ道半ばです。

未曽有の災害だっただけに、そこからの復興にも、
経験したことのない困難が立ちふさがっていることが予想されます。
わたしたちにできること・しなければならないことは
“記憶を風化させず、心を寄せ続けること”なのかもしれません。
(参考:首相官邸ホームページ

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
刑法(明治40年法律第45号)があります。

この年の法改正では、
不正指令電磁的記録に関する罪」が新しく設けられました。

…と、言われても、何を処罰しているのかさっぱり分からないですよね?

分かりやすい言葉で言えば、
いわゆる「コンピュータウイルス」に関する罪のことです。
正当な理由がないのに、その使用者の意図とは無関係に勝手に実行されるようにする目的で、コンピュータ・ウイルスやコンピュータ・ウイルスのプログラム(ソースコード)を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

 

「コンピュータウイルス」と言い換えて、少しは分かった気になったものの、
はて、コンピュータウイルスって、どんなものだったでしょうか。

他人のコンピュータに侵入して、悪さをする、
くらいのイメージはあるのですが、それ以上は、「?」です。
ちょっと詳しく見てみましょう。

 

コンピュータウイルス対策基準」(通商産業省告示、最終改定平成12年)
によると、コンピュータウイルスは、第三者のプログラムやデータベースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、
①自己伝染機能
②潜伏機能
③発病機能
のうち一つ以上有するものと定義されています。

もう少しかみ砕いて言うと、

①自己伝染機能
侵入したウイルスが、自身の機能によって、他のシステムやプログラムに自らをコピーして伝染していく機能です。
ダウンロードした覚えのないプログラムやファイルが、知らない間に増えているといった事象を引き起こします。

②潜伏機能
発病するための条件(特定の時刻や処理回数など)を設定しておき、この条件がそろってから発病するという機能です。
ウイルスに感染してからも、一定期間はウイルスに感染していないパソコンと全く同じ動作をし、ユーザーに察知させないようにします。

③発病機能
プログラムやデータを破壊したり、本来ではありえない動作をさせる機能です。
知らない間にファイルが破損している、自動的にポップアップウィンドウが開いてしまう、ファイルが削除されているなどといった現象を引き起こします。

 

かつては、自分の技術の誇示や愉快犯的な目的で作られ、感染しても画面に渦巻き模様や花火を表示する程度のものが多かったのですが、最近では、犯罪組織によって金銭的な利益目的で作られ、感染したことや活動していることに気付かれないよう密かに動作するものが多くなっているとのことです。

情報(個人情報、カード情報、画像データ等)の搾取・漏洩・改ざんをされる、他のパソコンへの攻撃の踏み台にされる、ウイルスメールを配信されるなどの被害が出ているとか…。

私たちが日々使っているスマートフォンや携帯電話を狙ったウイルスも、世界中で年々増え続けているのだそうです。
新型コロナウイルスばかりが話題になる昨今ですが、コンピュータウイルスも、やっぱり怖いですね。こちらは、既にワクチン(対策ソフト)が開発されていますので、最新の対策ソフトを使って感染を防ぎたいものです。

(参考:総務省「国民のための情報セキュリティサイト」)