いきなり企業法! <2-1.株式会社とは>

第2回は株式会社について、いきなり!解説していきたい。

……と、その前に。会社も人と同じく生まれてから死ぬまで色々あって、それぞれの人生があるのだ、とは言いすぎかもしれないが、人の一生のように生まれてから死ぬまで、法律によって決められた様々な手続がある。今回は、まずその話から始めたい。
そんな導入っぽい話から始めることで“いきなり感”がやや薄まるが、そこは気にせず進めよう。


-人の一生、会社の一生

人は出生により権利能力を獲得し(民法3条1項「私権の享有は、出生に始まる。」)、出生届を提出して戸籍に記載される。成長し、結婚して新しい戸籍を二人で作ったり、また離婚して親の戸籍に戻ったり、そんなことを経験する人もいるだろう。
なお、成人するまでの間は行為能力が制限される(民法5条1項「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」同条2項「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」)。子どもが勝手に契約してきたとしても、親(法定代理人)が契約を解除することができるのである。
そんなこんなで、最後は死亡届を提出し、その人の人生が終わる。

これに対して会社の出生は、設立の登記が完了したときである(会社法49条「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」)。人でいう戸籍は、会社における登記と考えてよいだろう。登記が完了することで株式会社として成立し、前回解説したとおり、法人格が与えられて権利義務の主体となれるようになる。事業をおこなう中で分割や合併、M&Aをおこなえば二つの会社が一つとなり、一方の会社の法人格は消滅してその登記も抹消される。代表者が交代して長く長く続く会社もあれば、解散、清算の登記をしてそこで“おしまい”となる会社もある。

 

-設立中の法律関係、権利能力

さて、上で述べたとおり、人は出生により権利能力を獲得する。そのため胎児は権利能力を有さないものとされるが、相続と遺贈、損害賠償請求に限り権利能力が認められている。

たとえば、お母さんのお腹の中に赤ちゃんがいて、そのお父さんが交通事故で突然亡くなったとする。この場合、まず相続については民法886条1項に「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」とあるとおり、お腹の中の赤ちゃんはお父さんの財産を相続することができる。しかし同条2項に「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」とあるように死産の場合は適用されないため、実際に遺産分割をするのは赤ちゃんが無事に生まれてからの方がよいだろう。次に損害賠償請求については「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」と民法721条に規定されている。つまり、まだ生まれていなくても、事故の加害者に対して損害賠償請求が可能なのだ。

会社の話に戻そう。
出生前、つまり登記前である設立中の会社は、権利義務の主体となることができないが、設立のためには様々な行為が必要となる。そういった行為は一体誰に帰属するのだろうか。

<企業法から少し逸れるが、基本的人権といえば、「すべての人が生まれながらに持っているものである」というのは、きっと耳にしたこともあるだろう。しかし、行政の手続の上では無戸籍者、すなわち戸籍に記載のない人については「存在しない人」として扱われてしまう。戸籍に記載がなければ住民票もなく、そうなると行政サービスはもちろん義務教育も受けられず、パスポートも取得できず、選挙権もないのだ。国が権利や保護を与えたくとも、法律上それができないのである。いわゆる“無国籍問題”は一刻も早く解消すべき問題のひとつであり、企業法からあまりに離れてしまうためここではあまり深く触れないが、興味があれば調べてみていただきたい。>

法人の権利能力については民法34条により、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定められている。定款で定めた目的の範囲外の行為によって不利益が生まれたとすれば、会社としてはなかったことにしたいだろう。法的には目的の範囲外の行為については「権利がないってことは無効っぽいし、なかったことにできるんじゃないの」と思いがちだが、そうではない。しかし、この“目的の範囲内”の解釈によってほとんどの行為が認められているというのが実状である。

ここで再び八幡製鉄所事件の判決を参照しよう。

会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。
最高裁判所大法廷判決 昭和45年6月24日

このとおり、政治的献金も「定款で定めた目的の範囲内」と解される。
つまり、何でもありといえば何でもありなのである。人にしかおこなうことができない、人にしか認める必要がない権利以外であればほとんどが認められる。

 

-発起人の存在、会社の3つの特徴

株式会社では「発起人」が手続をおこなう。発起人は設立を企画し、設立事務を行い、会社の株式を最低一株は引き受ける。つまり、会社の設立後は株主となり、これを発起設立という。発起人がそのまま代表取締役になることが多いため混同しがちだが、正しくは異なる機関で、設立手続を行うのが発起人、設立後に会社として行為をするのが代表取締役である。発起人が権限の範囲内で行なった行為の効果は当然に設立後の会社に引き継がれる。
権限の範囲内の行為とは、たとえば定款を作ったり、それを公証役場に持って行って認証してもらったり、株式の引受けや払込みをしたり、設立の登記をしたり、などなど、ざっと設立に必要な諸手続ひととおり、といったところである。これらの行為は会社の設立後、会社に帰属することとなるのである。

このように独立した権利義務を認めることを法人性という。これは会社の特徴の一つであり、残り二つの営利性、社団性とセットで覚えていただきたい。

会社法5条において「会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」と定められており、会社の行為には営利性が求められる。
さてこの場合、法律で規定されているから営利性があるのか、それとも営利性があるから法律で規定されたのか。これはニワトリが先か卵が先かという非常に哲学的な話のようだがしかし答えはどちらでもよくて、そもそも問い自体の重要度は高くない。こういった条文があるからこそ、会社の特徴の一つに営利性があり、会社というのは利益を追求することを目的とした存在であるということが定められる。重要なのは目的を定めることで、その目的が一つ決まると法律の規制の方針が決まる。会社法の基本原則の一つに「株主利益最大化原則」というものがあり、会社は事業で得た利益を構成員に分配することを目的とされている。ステークホルダーの利害調整の方向性を決めるにあたり、世のため人のため!などと言っていてはキリがない。会社は利益を追求するというその目的に沿ってみんなで調整していきましょう、というのが会社法なのである。

最後に社団性について、現在の会社法においてはほとんど意味をなさない特徴ではあるが、学問上特徴の一つとして決まっているので取りあげておく。

社団とは個人から独立した人の集合体という意味がある。かつては複数人でやらなければ会社が存在する意味がない、一人で事業をするなら会社という法人格は不要なのではないかという話もあり、株式会社は設立時の発起人の人数として7名を要求していた。これが平成2年の法律改正でこの規定は撤廃され、以降、一人でも会社を設立することが認められている。一人なのに社団とは一体……という疑問が浮かぶのは当然であるが、後々人が増える可能性があれば社団性が認められることになっている。一人でいる期間が長く、人を増やす気がないように見える場合は社団性が認められないのかというとそうでもなくて、増える要素があればいつだってそこに社団性はあるのである。
人は一人であっても屋号や芸名、ペンネームを使って活動することもある。そう考えると別人格として会社をひとつ持つことは何ら不自然ではないだろう。

 

-会社の「形態」、どれを選ぶ?

会社の特徴がわかったところでテーマに戻って話を進めよう。会社を設立するにあたり、会社の形態を決めなくてはならない。前回簡単に紹介したとおり、会社法では合名会社、合資会社、合同会社、株式会社の四つを会社として定めている。合同会社と株式会社の実務上の違いは何だろうか。

日本で最も一般的なのは株式会社であるため、なんとなく株式会社が格上というイメージを抱きがちであるが、たとえばAppleや西友は合同会社を選択している。
合同会社の特徴としては、所有と経営が密接である点が挙げられ、社員、株式会社でいうところの株主と代表者が一致している。また、法人が代表社員という株主+代表取締役というような存在になることができるのも特徴の一つで、先に挙げたAppleも西友も、代表社員は会社である。外国法人が日本に会社を作るときによく利用される。

それに対して株式会社の特徴は大きく四つ、
1.所有と経営の分離
2.株主の有限責任
3.株式の譲渡性
4.機関の分化
である。

 

-株式会社の特徴

まず一つ目、所有と経営の分離について。
先ほど合同会社では一致していると説明したが、株式会社においては会社を所有する「株主」と、実際に経営をおこなう「取締役」は別である。日々の経営については取締役が決定するが、会社の基本となる部分や重要なことについては株主総会を開き、株主の多数決によって決められる。規模の小さい会社では取締役が株主であることも多いが、会社法上、分離すべきであることが求められている。構成員(株主)が多くなればなるほど意思決定が難しくなるため、経営は別の人に任せた方がスムーズなのである。とはいえ会社は株主のものなので、大事なところは株主総会を開いて多数決をとるのである。

次に株主の有限責任だが、これは前回触れたとおり、会社の負債を肩代わりするようなことはない、ということである。先ほど説明したように株主が細かい意思決定をすることはなく、また株主が多くなればなるほどみんなが会社の行為について把握することが難しいので、自分の知らないところでおこなわれた会社の行為についてまで無限に責任を負ってしまっては大変だ。

あなたは株式会社タイラカ商店の株をたくさん持っているとしよう。ある日カエルさんのうっかりミスで、タイラカ商店は取引先に損害を出してしまった。その結果、取引先から損害賠償請求され、タイラカ商店はその賠償義務を負うことに……カエルさんから「会社の財産を全部売っても、取引先にお金を払いきれませんでした。だから申し訳ないんだけど、株主であるあなたにもお金を払っていただきたいのです!」と言われたら、いやいや、せっかくお金を出して買った株券をただの紙切れにされた挙げ句お金まで請求されちゃうの!!?と思うだろう。
そんなわけで、株主の責任は有限、リスクは限定されている。

三つ目は株式の譲渡性である。株式については次回以降、詳しく説明するのでここではさらっと軽めにいこう。
ある日あなたは「タイラカ商店に投資したはいいものの、なんだかイマイチでパッとしないや……やっぱり株、いらないな……」と思い、投資を回収しようとする。しかし、タイラカ商店にあなたの株を買い取ってもらうことは、基本的には不可能だ(例外として、株主総会を経てタイラカ商店が自己株取得ということもできなくはないが、要件はかなり厳しいのである。)。そうなると株を現金化するには、他の人に買ってもらうことになる。なお、見知らぬ人が株主になることを避けるため、会社は株式に譲渡制限をつけることも可能だ。

最後は機関の分化。
機関についてもまた次回以降解説するが、会社そのものに意思はないため、「会社」として行為をして会社を動かす人たちがいる。代表取締役、取締役、監査役や会計監査人など様々な役割の人たちがいて、これらを機関と呼ぶ。機関を分けてそれぞれが監視し、牽制しあうことで会社が健全に運営される仕組みになっている。


…と、長くなってきたので一旦ここでおわり。
後半は株式会社の作り方ということで、具体的な設立の仕方について解説したい。

いきなり企業法! <1.はしがきにかえて>

平山が担当した企業法の講義について授業のライブ感を出しつつご紹介しているところだが、平行して読み物形式でもお伝えしたい。これは、法律の初学者、つまりまったく法律を学んだことのない学生に対していきなり企業法を教えていた授業である。
朝の通勤電車で、試験の前に、寝る前にベッドの中で、いつでもどこでもサクサクとお読みいただけるようにまとめていければと思う。
目指せ書籍化!


-「企業」とは何か、「法律」とは何か

企業法の授業を進めるにあたり、そもそも「企業」とは何か、という話からはじめてみたい。漢字だけを見れば、「ぎょう(業)」を「(企)くわだてる」である。説明になっているような、なっていないような…しかし、学問における言葉の定義とは大概においてそんなものである。

シンプルな言葉ほど、日常において意識することなく使うので、敢えてその言葉の「意味」を考えることは少ない。たとえば、「法律って何?」と聞かれたら、「法律は法律でしょ」と返したくなってしまう。辞書で調べてみても「法律とは法規範のこと」と書いてあったりする。これでは説明になってない。さらに、「法規範って何なの?」という話になると、これもまた「法で定められた規範のこと」となってしまう。…ようやく近づいてきた気がする。
そこで、「では、規範とはなにか?」である。「規範とはルールのことである」だと、「規範とは法である」と言っていることが変わらないので、敢えて乱暴な説明をすると、「規範とは常識のこと」である。つまり、「法律」とは「国によって定められた常識」のことである。

ここで「国によって定められた」というフレーズがいきなり出てきたが、国会が「国の唯一の立法機関である」(憲法41条)と憲法に書いてある以上、国(国会)以外が法律を定めること(立法)はできない。「誰が」「何を」「どうした」で考えるならば、「国が」「常識を」「定めた」ものが「法律」である。では、誰の常識なのか、ということについては、みんな(国民)の常識である。多分。

ただし、定められたその時代での常識であったりもするので、時代が変われば常識も変わる。古い常識(法律)も廃止されなければそのまま残っているし、有効である。時代遅れになっても、国が廃止していなければそのまま有効ではあるが、あまりに時代遅れになると、時に、最高裁判所により「違憲」とされることもある。

 

-講学上の概念としての「企業」

この辺りの憲法論等については別の機会に譲るとして…
話を戻すと、「『企業』とは何か」である。様々な考え方があると思うが、ここではひとつの正解として講学上の概念、すなわち法律学を研究する上で用いられる定義を採用することとしよう。それによると企業とは、
①「現代の経済システムの中で、経済活動をおこなう主体」であり、②「計画的・継続的に利益を取得して企業の構成員に分配することを目的とするもの」とされている。ここでも、一つ一つの言葉をひも解いてみたい。

まず、「経済活動をおこなう主体」とはどういったことか。主体というからには、他から独立してものごとの中心となり、何かができていないといけないような気がする。たとえば、道にある自動販売機は、お金を入れれば飲み物が出てくる。これも立派な経済活動である。しかし、自動販売機が主体として何かをしているようには見えない(と、少なくとも私の目からは見える)。飲み物が補充されなければやがて空になってしまうし、お金も、誰かが回収しなければ自動販売機の中に取り残されたままである。主体的に何かができない「物」は、おそらく企業にはなりえない。よって自動販売機自体は企業ではない。きっと、100台自動販売機を並べてみたところで、それだけでは企業とはならない。

では、飲み物を道に並べて売っている「人」がいたとしよう。この人は「企業」と呼べるのか。その人が1日だけ、たまたまその場で1回だけ売っているのであれば「企業」ではなさそうだが、毎日売っていたらその人のことを「企業」と呼びそうである。では、二人で売っていた場合にはどうか。三人の場合には。「タイラカ商店」という看板を出して売っていた場合には。どんどん「企業」っぽくなってくる気がする。人が売っているから「意思」があり、主体性も出てくる気がする。
では、三人で売っていた場合はその人たちが「企業」なのであろうか、三人でまとめて売っていないと企業とは呼べないのか。それとも、同じ「タイラカ商店」という看板を出しながら売っていれば、毎日違う人が交互に売りに来ていても企業と呼べるのか。そうなってくると、もはや売っている人ではなく「タイラカ商店」の方が企業っぽくなってくる。というか、そもそも企業といわれて真っ先にイメージするのは大企業の名前であったりもする。そういった大企業と、道で一人で飲み物を売っている人とは何が違うのか。規模が違う。規模が違うというのならば、どの程度の規模になれば「企業」となるのか。ここで先程の講学上の定義に戻ると、規模の違いについては書かれていない。すると規模とは、企業が企業であるためには重要ではないのかもしれない。

 

-法人格という概念

あることろに「タイラカ商店」という飲み物を売るお店があった。メンバーはウサギさんとカエルさん。ウサギさんは営業を担当し、カエルさんが飲み物の配達を担当している。ある日あなたはウサギさんに飲み物を注文をして、自宅に届けてもらう約束をした。ウサギさんは「カエルさんに届けさせますね。」と言い、お金を受け取って帰っていった。しかし、飲み物は待てど暮らせど一向に届かず、仕方がないのでカエルさんに聞きに行けば「そんな約束はしていません、聞いていません。」と言われてしまった……となると、あなたは非常に困ってしまう。飲み物を飲みたいし、そのためにお金だって払っている。しかし、約束をした相手はウサギさんなので、カエルさんには軽くあしらわれてしまう。そこであなたは、「ウサギさんもカエルさんも同じ『タイラカ商店』でしょ。タイラカ商店が責任を取ってよ!」と、心の中で叫ぶことになる。
そう。タイラカ商店に責任を取ってもらうためには、ウサギさんではなく「タイラカ商店」と約束すればいいのだ。ここで浮かぶのが、「お店と約束ってできるの?」という疑問である。

こんな時に登場するのが、法人格という概念である。お店(企業)として活動をおこない、「お店」が契約をして、権利や義務の帰属主体となる(=権利能力を持つ)には、ウサギさんやカエルさんといった、そこではたらく「人」から独立した人格、つまり法人格(権利能力の帰属主体)という概念が必要となる。この法人格はどんな集団にも認められるものではなく、基本的に、会社法で定められたルールに則って設立された法人にのみ認められるなぜなら、法によって一つの「人格」を作り出すからである。法で認められた瞬間、人格が認められるのだ。
つまり、法律により法人格を認められない限り、それはただの人の集まりであり、それを超えて権利義務の主体となることはできないのである。

つまり、タイラカ商店が法人格を取得していれば、権利の帰属主体となることができ、あなたは「タイラカ商店と契約を結ぶ」ことが可能になるのである。

(「権利能力」や「権利」「義務」といった用語を当たり前に使っているが、次回以降に少し詳しく解説をすることにする。ここでは何となく、言葉の持っていそうな雰囲気を眺めておいていただきたい。)

それでは、タイラカ商店が法人格を取得していなかったとしたら?タイラカ商店はウサギさん、カエルさんたちの「集まり」で、これは単なるグループのことで、組合と呼んだりもする。グループ名が付いていても法人格はない。ゆえに、グループ(組合)というものは、権利能力を持つことができない。権利能力を持たないということは「個人の集合体」であるため、権利や財産は組合員で「共有」されるということになる。たとえば、机を新しく買うときに「タイラカ商店」が主体となって購入するのではなく、ウサギさんとカエルさんが二人で購入し、二人の共有の財産として机を使うのである。実は個人事業主として独立して事業をおこなっている…というパターンもあるが、その場合は企業法の中でも会社法から離れ、商法や民法といった法律による説明も必要となり、やや複雑になってしまうのでここでは考えないことにしよう。

法人格が認められ、タイラカ商店が会社となった場合はどうだろうか。タイラカ商店は「経済活動をおこなう主体」としての会社なのだから、机を買うのは「タイラカ商店」であるし、買った机はタイラカ商店の財産となり、その権利はタイラカ商店に帰属するのである。ウサギさんやカエルさんは机を所有していない。あくまで会社のものである。このように、会社は法律により人格が認められており、そのため法律行為が可能となるのである。

 

-会社以外の法人

では、どんなときでも法人格をもっていなければ主体としての行為ができないのだろうか。

そんなことはなく、ときに例外として、会社でなくても一定の条件を満たせば、法人格に類似した人格を有することで行為が可能である。こうしたグループは「権利能力なき社団」と呼ばれ、マンションの管理組合やサークル、OB会などが該当例である。一定の要件を満たせば、そのグループの名前で、たとえば訴えの提起等も可能である(民事訴訟法29条)。しかし、あくまで法律で認められた法人ではないため、権利義務の主体となることはできない。逆に言えば、名称にかかわらず法律で認められていれば法人格を持つことができ、COOP(消費生活協同組合)やNHK(日本放送協会)は、会社ではないが法律により法人格が与えられている(消費生活協同組合法4条、放送法15条及び16条)。

 

-物や動物の権利

さて、話がやや脱線するが、物や動物は権利の主体になれるのだろうか。物はともかく動物は生きているわけだし、人と同じように権利が認められてもいいような気がしないでもない。ここで、動物を原告とした環境訴訟の例として、オオヒシクイ訴訟(東京高等裁判所判決平成8年4月23日)を取り上げよう。国内で提起された環境訴訟といえば、他にもアマミノクロウサギ訴訟やムツゴロウ訴訟などがあるが、本件はオオヒシクイを茨城県の住民であるとし、オオヒシクイ、個人2名、団体1(ヒシクイ保護基金)の4者を原告として、茨城県知事に対し訴訟を提起したものである。

一審水戸地裁は、オオヒシクイが当事者能力を欠くことを理由に訴えを却下しており、控訴審においても同様に、「人に非らざる自然物を当事者能力を有する者と解することは到底できない。」とし、「当事者能力を有しない自然物であるオオヒシクイの名において控訴代理人らか提起した不適法なものであり、これを補正することができないことは明らかであるから、却下を免れない。」として却下した。
以下はその判決文である。

【主文】
1、本件控訴を却下する。
2、原審及び当審における 訴訟費用は、控訴代理人らの負担とする。
【理由】
1、本件は、オオヒシクイ個体群を茨城県の住民であるとして、その名において、地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき、同県に代位し、知事である被控訴人に対し、被控訴人はオオヒシクイ個体群の越冬地全域を鳥獣保護区に指定しなかったことにより同県の威信を著しく損なわせ、重要な自然環境の要素にして重要な文化的財産を損傷させたとして、不法行為による損害の一部2257万2000円を同県に賠償するよう求めた事案の控訴審である。
2、およそ訴訟の当事者となり 得る者は、法律上、権利義務の主体となり得る者でなければならず、このことは民法、民事訴訟法等の規定に照らして明らかなところというべきであり、したがって人に非らざる自然物を当事者能力を有する者と解することは到底できない。住民訴訟の当事者となり得る者についてもこれと異なる解釈をする余地は全くない。当事者能力の概念は、時代や国により相違があるのは当然であるが、わが国の現行法のもとにおいては、右のように解せざるを得ない。
そうすると、本件控訴も、当事者能力を有しない自然物 であるオオヒシクイの名において控訴代理人らか提起した不適法なものであり、これを補正することができないことは明らかであるから、却下を免れない。
(東京高等裁判所判決平成8年4月23日)

このように、日本においては動物には当事者能力(民法上の権利能力)がなく、訴訟の当事者になることは出来ないとされているのである。法律上、動物は物として扱われるから、動物を傷つけた場合は「器物損壊罪」となるのである。(動物好きにとっては、何だか切ない事実かもしれない。)
ちなみに、棄却と却下の違いについて触れておくと、「棄却」とは審理の結果・請求などを退けることをいい、「却下」とは訴えが不適法としてそれ自体を認めないとすることをいう。

 

-会社は人と同じことができるのか

話を戻そう。
会社が「権利の主体」となり得ることは既述のとおりだが、法人としておこなう行為に制限はあるのだろうか。会社は人と同じことができるのだろうか。

ここで参照したいのが、八幡製鉄所事件(最高裁判所大法廷判決昭和45年6月24日)である。会社がとある政党に政治献金したところ、株主が“目的の範囲外”として訴えを提起(役員の責任を追及)した事件である。つまり、会社は営利を目的とする法人である以上は、政治献金なんていう「行為」はできない。というお話なのである。
判決文は長いが次に少しだけ載せてみる(といっても長いが…)。小難しい文章であるが、ここはひとつ、一度読んでみていただきたい。

【判決】
会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。
ところで、会社は、一定の営利事業を営むことを本来の目的とするものであるから、会社の活動の重点が、定款所定の目的を遂行するうえに直接必要な行為に存することはいうまでもないところである。しかし、会社は、他面において、自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、それとしての社会的作用を負担せざるを得ないのであつて、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものであるとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要請にこたえることは、会社の当然になしうるところであるといわなければならない。そしてまた、会社にとつても、一般に、かかる社会的作用に属する活動をすることは、無益無用のことではなく、企業体としての円滑な発展を図るうえに相当の価値と効果を認めることもできるのであるから、その意味において、これらの行為もまた、間接ではあつても、目的遂行のうえに必要なものであるとするを妨げない。災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、各種福祉事業への資金面での協力などはまさにその適例であろう。会社が、その社会的役割を果たすために相当を程度のかかる出捐をすることは、社会通念上、会社としてむしろ当然のことに属するわけであるから、毫も、株主その他の会社の構成員の予測に反するものではなく、したがつて、これらの行為が会社の権利能力の範囲内にあると解しても、なんら株主等の利益を害するおそれはないのである。
以上の理は、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても同様である。憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがつて、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。論旨のいうごとく、会社の構成員が政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による政治資金の寄附が、特定の構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待ないし要請されるかぎりにおいてなされるものである以上、会社にそのような政治資金の寄附をする能力がないとはいえないのである。上告人のその余の論旨は、すべて独自の見解というほかなく、採用することができない。要するに、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。(最高裁判所大法廷判決 昭和45年6月24日

やはり長いが、要は「会社というものが社会に存在している以上、社会に対して何かしらの行為をすること、社会的役割を果たすためにしたことは会社の行為として認めてあげても良いし、権利能力の範囲となるんだ」ということが示されている。このように、普段はなかなか考えることのない「企業」というものについて、ルールを学ぶことがこの授業の目的である。

 

-「企業法」とは、会社法で規律される「会社」とは

さて。ここまで、「企業法」という言葉を使ってきたが、実は「企業法」という法律は存在しない。一般に、会社法や商法、金融商品取引法などの会社にまつわる様々な法律をまとめて企業法と呼んでいる。企業の経営にはさまざまな利害関係人(ステークホルダー)が存在し、企業を取り巻くステークホルダーを規律することに、企業法を構成するそれぞれの法律の目的がある。

会社法では次の四つを会社として定め、それぞれに法人格を認めている。
①合名会社
②合資会社
③合同会社
④株式会社
なお、①~③を持分会社といい、所有と経営が一致しているといわれている(このあたりも詳しくは次回以降で。)。
この分類は、会社の所有者である社員(会社法における社員とは、株主のことを指す。)はどこまで責任を負うのか、また誰が業務を執行するか、この二つの観点によるものである。責任の範囲には大きく二種類あり、まず、株式会社に出資する際、株主は株を購入するだけでそれ以上の責任を負うことはなく、たとえば会社の負債を代わりに弁済するようなことはない。これを有限責任という。次に無限責任とは、出資をおこなうだけでなく、会社が負った負債も変わりに弁済する必要がある場合のことをいう。

合名会社では全社員が無限責任社員であり、また全社員が業務を執行し、会社を代表する。つまり、社員と会社の人格が一致しており、最も団体性が弱い会社形態である。株主、社長、会社がすべて一致しているとすれば、わざわざ会社としての人格を取得する必要もなく、利用されている例は少ない。

合資会社も、合名会社のように無限責任社員が存在するが、有限責任社員もいる。全社員が業務を執行し、会社を代表する点においては合同会社と同じだが、有限責任社員がいる分、社員と会社の人格は分離されている。
合同会社と株式会社はすべての社員が有限責任社員である。合同会社の場合は全社員が業務を執行して会社を代表するが、無限責任社員が存在しない分、①②に比べて社員と会社の人格の分離はさらに進んでいる。

日本において一般的なのが株式会社であり、最も団体性が強い企業形態である。所有と経営は原則分離しており、株式が業務を執行することは基本的にはない。また、持分会社と異なる点の一つとして、株式に譲渡性があることが挙げられる。
会社法による会社の分類はこの四つであるが、他にも公開会と閉鎖会社、大会社やその他といったように、様々な特徴の会社が存在する。

…といったところは一旦忘れていただき、次回は日本で一番多く存在する株式会社について説明していきたい。初回は、会社の属性と基本構造について紹介した。

企業法・授業まとめ-第3回-

授業まとめブログ、第3回目です。

前回は、会社の設立を人になぞらえ、理解を深めていきました。
「法人格」という重要なキーワードも出てきましたね。
その「法人格」や「権利」に関連し、今回は「株式」がテーマです。

<記事内の色分けについて>
●オレンジ
講義中、学生の方々に言葉の意味・意義に関する質問を投げかけています。
視野を広げてくれる回答も多いかと思いますので、ぜひご参照ください。
●ブルー
講義の本軸に加え、ポイントや補足として平山がお話した内容になります。
多少口語的ですが、“授業”の臨場感を味わっていただければと思います。


【前回の復習】
<1.会社の設立とは何か?>
会社の設立とは、法人格を取得すること
(法人格:人としての扱いを受ける)
⇒会社が、法「人」としての権利を取得するのはいつか?

Q.人の出生との違いは?人の権利取得との違いは?
人      :出生時にすべての権利義務を取得するが、成人するまで行為能力制限
⇒「あなた自身」が存在していることが実体
法人  :登記時に目的の範囲内において権利義務を取得
⇒実体のない(実在しない)法人という組織を実在するものとして扱い、(法律で)権利義務を付与する。

※「目的の範囲内」:この幅は広く解釈される。社会的に必要なこと、例えば大震災の支援など、本来の目的以外のことも会社の行為として認められる。「範囲外」として、やった行為は無効になることはほぼない。

Q.法人格を取得するために必要な手続きとは?
定款の作成:「法人」をかたち作る基本ルール。設計図のようなもの。
⇒実在しない法人を「実在する」ものとして扱う、「法人たるもの」を決める。
(人でいう「脳」や「心臓」のようなものを定める→お金(資本金)や人(機関))

<2.発起設立の手続き>
(発起人以外の株主を募集する「募集設立」は実務上ほとんど利用されない)
流れ:出資比率、役職の分配、会社の運営方針等についての交渉(設立時株主が複数いる場合)
⇒定款(会社の基本ルール)の作成(絶対的記載事項、相対的記載事項が載る)
(相対的記載事項:書かなくてOKだが、効力ゼロになる)
⇒株式発行事項の決定と株式の引き受け(株式の内容を決める)
⇒出資の履行(お金を振り込む)
※お金が絡むので若干論点がある
※会社を動かす源泉

設立時役員等の選任(会社の経営者を決める)
(オーナー会社だと発起人が代表になることが多い)
⇒設立登記(会社の誕生)

設立手続きに関連し、「仮装の払込み」が規制されている。
目的は、会社財産保護の必要性。払込みを偽装しても、会社財産は増加しないため、出資の履行があったことにはならない。

⇩代表的な偽装方法とされるのは以下二つ。

①預合い(法律で禁止されている)
発起人が払込取扱機関(銀行)の役職員と通謀して、払込取扱機関から借り入れをしてそれを払込みに充てるが、借入を返済するまでは預金を引き出さないことを約束する行為。(会社法965条で禁止。5年以下の懲役等)
⇒例えば、100万円を銀行から借り、資本金として振り込む。
本来、これは運転資金として引き出すことができる。
(例えば事務所の家賃や、従業員の給与などに使用)
預合いとは、これを引き出して使うことのできない状態にしてしまうことを指す。

※資本金で払い込んだお金というのは、基本的にすぐに自由に使うことができる。
(会社にキープしておかなければいけない、ということはない。)
あくまで必要なのは、「最初に資本金を●●円振り込んだ」ということだけ。

※借入れを返済する(お金で追加を払い込む)まで、資本金を使えないならば、追加で払ったときが本当に資本金の払込みではないのか。こういった虚偽表示のような行為は禁止されている。

⇧登記に記載されている金額は、実際存在しないことに……
こういった虚偽表示のような行為は禁止されている。

※要するに「銀行と通謀して悪いことをしている」ということ。

会社法965条(預合いの罪)
「第960条第1項第1号から第7号までに掲げる者が、株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする。」
会社法9601項(取締役等の特別背任罪)
「次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
① 発起人
② 設立時取締役又は設立時監査役
③ 取締役、会計参与、監査役又は執行役
④ 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
⑤ 第346条第2項、第351条第2項又は第401条第3項(第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
⑥ 支配人
⑦ 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
⑧ 検査役」

⇧なかなか罪が重たい・・・
それだけ登記の記載が重要なものであるということ。
(会社の存在・法人格の所有を示す唯一の手段)
嘘を書けば処罰される。

②見せ金(判例上無効とされている) 
発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金銭を株式の払込みに充て、会社の成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てる行為。
⇒要するに、第三者を巻き込んで預合いを同じことをすると、資本金を振り込んでいないとみなされ、無効になってしまう、ということ。

見せ金※会社法で禁止されている行為ではない。
ただし、全体としてみれば、会社がすぐに使えるお金がないために、
資本金として振り込んだ意味が無い。(かつて裁判所が無効と判断したことも)
⇒「②払込み」から「④返済」までにかかった期間が、
本当に資本金を多めに見せるためにとった手続きなのか、判断が難しい。

 

最高裁判所第2小法廷判決昭和38126
「よつて審案するに株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つて、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決の確定するところによれば、訴外D株式会社は資本金200万円全額払込ずみの株式会社として昭和24年11月5日その設立登記を経由したものであるが、被上告人Bは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Bが主債務者としてその余の被上告人らのため一括して訴外E銀行Gから金200万円を借り受け、その後右金200万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会社成立後、同会社は右銀行支店から株金200万円の払戻を受けた上、被上告人Bに右金200万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金200万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Bの前記銀行支店に対する借入金200万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示することなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、破棄を免れない。」

※ちなみに⇧での「右」の記載は、以前判決が縦書きだったことから。
「上記」なんかと同じ意味。

※破棄差し戻し、要件に該当する行為があったのかどうかを高裁で再度審理

現在では、1円の資本金で株式会社が作れるので、普通の株式会社ではほとんど行う意味は無いが、それ以外の資本金が要件とされる会社では行われることがある。(最低資本金が要求される会社)
⇒ゆえに違法行為をする会社がいなくなってきているものの、ある特定の会社については、資本金の金額が特別法上用意されてたりする。
以下条文を参照。

債権管理回収業に関する特別措置法5条(許可の基準)※サービサー法
「法務大臣は、前条の規定による許可の申請があったときは、許可申請者が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第3条の許可をしなければならない。
① 資本金の額が5億円以上の株式会社でない者
② 第24条第1項の規定により第3条の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない株式会社
……
④ 常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士のない株式会社
……
⑦ 取締役若しくは執行役(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、会社に対し取締役又は執行役と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)又は監査役(以下この号において「役員等」という。)のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社

ヘ 暴力団員等

⑧  債権管理回収業を適正に遂行するに足りる人的構成を有しない株式会社」

———

【その他、違法な設立について】
いったん設立登記がなされても、設立手続に不備があった場合、会社はどうなるか?万一会社が設立されたあとに無効だとわかったら?
※「無効」、(有効なことを前提として)「取消し」、「請求できない」
『会社に対して勧告し、法的手続きをとる』?

⇩そこで法律上用意されている制度が

設立無効の訴え(会社法828条1項1号)
会社が成立しなかったことにすると多数の関係者の混乱を招くため、この法律によってのみ、会社の成立を否定できることとされている。法律関係の安定のため、設立登記から2年以内に株主などだけが提起可能。
※法律の世界では、何かに不備があることを「瑕疵(かし)」という。

会社法828条1項1号(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
「次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
①会社の設立 会社の成立の日から2年以内
……
<参考:設立無効の訴え(会社法828条1項1号)は殆ど使われない?>

具体的な無効事由は、

・定款(会社の基本ルール)の絶対的記載事項が欠けている
・設立時株式を1株も引き受けていない発起人がいる
・公証人による定款の認証がない

といった場合。実際に、こんなことが起きるのか?

設立が無効となるケースは、
「これ、もはやちょっとした手当てでは無理!」ってこと。
ちょっとした不備(ex.申請書類の誤記)程度なら補正可能。

また、登記官が所定の(書面上の形式的な)審査をするので、
そもそも無効事由が生じる可能性は低い。
※ミスがあれば登記所で受理されず、
そもそも“無効の会社が設立される”なんてことは実務上ほぼ起こらない!!

それでも、
・定款の記載不備などを見逃して登記が通った⇒無効事由になってしまう
・実際には開催されていない創立総会の議事録が添付され登記が通ってしまった
(とはいえ、現実には、開いていない株主総会の議事録が「あったもの」として添付されることはある……。)
等々があるため、理論上・条文上はあるが、
実務上ほとんど使われることはない。

また、この「設立無効の訴え」は以下2点が有効。

第三者効(対世効)
⇒判決の効力が当事者だけでなく、第三者にも及ぶこと。
判決の効力は、原則として訴訟当事者にしか及ばない(民訴法115条1項)。
Wikipediaより)
※裁判を起こしたとき・何かを争ったとき、むしろ第三者効はあって当然な気もするが…

(この原則があることで、たまに矛盾した判決が出ることがある。ex. 諫早湾開拓事業の司法判断など)
⇒一貫した判断を下すべきという意見もあるだろうが、裁判は人が関わるものであり、矛盾した権利関係を抱えた部分もある。逆に、自分に無関係な裁判の判決の影響が及んだら困ることもある。
そう考えると、原則本人にしか影響がないほうが良い。

「設立無効の訴え」の場合、例外的に第三者効がある。なぜか?
⇒会社とは登記される存在であり、ある程度公益性が強い。よって、
・ある人たちにとって会社が登記されていない(無効)
・ある人たちにとって会社が存在している
これらの状態が同時に発生することは、日本において避けなければいけない。
それを踏まえると、第三者効は認めるべきとなる。

会社法838条(容認判決の効力が及ぶ者の範囲)
「会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。」

それ以外は原則通り。(ex. 役員に対する損害賠償請求など)

○将来効のみ(⇔遡及効)
※将来効=法律や法律要件の効力が、ある時点から将来に向かって及ぶこと。
※遡及効=法律や法律要件の効力が、その成立以前にさかのぼって及ぶこと。
コトバンクより)

<参考:設立に関する責任>
世の中に存在しない「会社」というものを一つ生み出し、人や会社との取引が発生する:社会的な責任は必ず発生する
⇒変な会社を作られては困るから、きちんと罰則が定まっている
会社設立に関する違法行為や不正行為については、
発起人・設立時取締役などの責任を規定し、
罰則(会社法960条1項)・過料(会社法976条)が定められている。
※独立した法人格が与えられる会社の設立はある程度厳格
⇩たとえば…
現物出資の価額が定款に定めた額に
著しく不足する場合の不足額支払い義務(会社法52条1項)

会社法52条(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
「株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。」

⇒会社の運転資金として準備しなければいけないお金を、「これだけ用意して会社をつくる」と定款に書いている以上、その金額に満たない場合には、発起人は責任を持って支払わなければならない。

・任務懈怠によって会社に生じた損害を賠償する責任(会社法53条1項)
・悪意・重過失によって第三者に生じた損害を賠償する責任(会社法53条2項)
⇧発起人の責任として、会社財産を確保できなかった場合が定められている。
会社資本を充実させるまでが発起人の仕事だから。

会社法53条(発起人等の損害賠償責任)
「発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

 

新人弁護士”まりえ”が行く!六法全書を探してみた・続編

これまで、全3回にわたってお伝えしてきた『六法全書探しの旅』。
読んでくださっていた方に、とても嬉しいご報告です!

(…え?そんな話あったのって?そんな方はぜひこちらへ。)

 

どれだけインターネットを駆使しても・・・

どれだけ歩き回って探しても・・・

なぜだか見つからなかった昭和54年昭和56年の六法全書。

 

この度、無事に昭和54年版を入手することができました!

六法のことをすっかり忘れてお昼ご飯を食べていたある日、
六法探しにてお邪魔したうちのある書店さんが
入荷の連絡をくださったのです。

思わぬ朗報に事務所一同(特に筆者)歓喜!!

 

後日、無事手元に到着しました。
まりえ先生にもさっそくご報告。

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やっと会えた六法に思わずにっこり。
頑張って探した日々が報われます…(涙)

 

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六法全書を前にこんなに笑顔になるのは、
日本中でまりえ先生しかいないのでは…!

というくらいの素敵な笑顔を見せてくださいました。

 

 

散々眺めたのち、最終的に棚へ収まりました。

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なかなか出会えなかったせいか、なんだか輝かしく見えます。

 

ちなみに弊所、実は古い六法全書もいくつか揃えております。

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まるで博物館に並んでいそうなヴィンテージ感……
古いものは明治から、様々な出版社の六法全書があります。
現在は有斐閣しか出版していませんが、
昔はこんなにも多様なデザインが存在したんですね。
なんだかレトロで素敵です。

もし古書店などで見かけた際には、ぜひ手に取られてみてはいかがでしょうか。

 


 

さて。

残るは昭和56年版です。
着実に揃ってきていますので、このまま順調に手に入ることを願うばかり。
まぼろしの六法全書、果たしてどこに眠っているのでしょうか……

 

このシリーズ、まだまだ続いていく予感がいたします…!

新人弁護士”まりえ”が行く!六法全書を探してみた③

これまで2回にわたってお届けしてきた六法全書探しの旅。

でもでも、一冊も見つけられなかった私たち…

ついに最後の最後に望みをかけた伸松堂書店さんへ向かいました。

 

 

水道橋から再び電車に乗り込み、東大方面へ。

大学周辺というだけあって、趣のある書店もちらほら。

 

 

そんな景色を楽しんでいるうち、本郷通りに面するお店に到着。

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壁一面に並べられた本の数々。期待が高まります。

 

 

さっそくお店の方に伺うと・・・

なんと六法全書の取扱い&在庫がありました!

や、やったーーー!(涙)

 

 

残念ながら目的の二冊はありませんでしたが、

昭和54年版を購入することができました。

 

参考までに、お店の方に六法全書の流通について伺ってみたところ・・・

・今はほとんど古本市場には流通していない

・皆どんどん買い替えるので、要らないものは捨ててしまう

・昔の弁護士さんだと、ずらーっと各年代の六法を並べていた人もいますよ

とのこと。

 

法律を学んでいない身からすると、

六法全書は肌身離さず、ずっと大切に保管・使用するとばかり思っていました。

でも法は改正されていきますもんね、買い替えなければなりません。

それでも、“古い六法全書に市場価値がない”というのは驚きでしたが……

 

 

何はともあれ、無事、手ぶらでの帰還を逃れることができました。

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六法全書を手に、記念の一枚をパチリ。

諦めずに足を運んだ甲斐がありました。まりえ先生お疲れさまでした!

 

 


 

 

というわけで、六法全書探しの旅は一旦幕を閉じます。

残るは54年と56年。

なぜこの二冊だけ見つからないのか、謎は深まるばかりですが・・・

引き続きネットなどでもリサーチを行い、見つけ出したいと思います。

「見つかりました!」のご報告ブログをぜひお楽しみに。

新人弁護士”まりえ”が行く!六法全書を探してみた②

2回目になる「六法全書を探してみた」シリーズ。

1回目では意気揚々と神保町を探索するも、
まさかの収穫なしという悲しいスタートをきりました。

果たしてまだ見ぬ六法へたどり着くことができるのでしょうか。

 


 

お昼ごはんを終えた私たちは、さっそく大本命である丸沼書店へ。

(実はその前に寄り道も。詳しくは近日公開の百人一首ブログをお楽しみに。)

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水道橋からすぐの場所にお店を構えるこちらは、

「法律書専門」と検索すれば必ず上位に出てくる書店さんです。

ただ、新書・古書どちらも扱っているため、どれ程古書が置いてあるのか……

 

 

ドキドキしながら店内へ。

さすが法律書専門というだけあって、どこもかしこも法、法、法!

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(まりえ先生すっかり夢中です)

古書もなかなかのボリューム。これは期待が高まります!

 

と思いきや・・・

 

 

うーん・・・

 

 

見当たりません。

「いや、需要が少ないから店頭にないのかも」

恐る恐る店員さんに聞いてみると、

「ものすごく古くて良ければありますが昭和は・・・」

 

なぜでしょう。昭和の六法全書はそんなに希少なのでしょうか。

 

お店を出て呆然とする我々。

このままでは神保町にランチしにきただけになってしまうではないか!!

そこで最後の最後に望みをかけ、赤門近くの伸松堂書店へ行くことにしました。

(こちらも法律関係専門古書店)

時間的にもこれがラストチャンスです。

 

果たして求めているものは見つかるのか!?次回へ続く!

新人弁護士”まりえ”が行く!六法全書を探してみた①

突然ですが、

みなさんは六法全書を手に取ったことがありますか?

そもそも六法全書って何だかご存知でしょうか?

 

「簡単にいえば“法律の辞典”」、というのはイメージがつくかと思います。

“六法”とは日本の法律の基本となっている6つの法を指し、

  1. 憲法
  2. 民法
  3. 刑法
  4. 民事訴訟法
  5. 刑事訴訟法
  6. 商法会社法

これらに関する各種の法規を収録した法令全書のことを「六法全書」といいます。

※法規 = 法律と規則。特に、その中で国民の権利・義務にかかわるもの。(引用:goo辞書

※法令全書 = 法令全書とは、日本における独立行政法人国立印刷局から出版されている刊行物であり、官報とともに法令の原典となるものである。(引用:ウィキペディア「法令全書」)

 

日本には約2000もの法律があるそうですが、
その基礎の基礎となっているのがこの六法なんですね。

どうりで分厚い本になるわけです。

また、今日では書籍自体のことを“六法”と呼ぶことも多くあります。

6つの法典との意味から転じて、これらの6つの法典を中心として主要な法令を収録した書籍を「六法全書」と呼び、さらにこれを略して「六法」と呼ぶ。なお、現在では有斐閣のみが『六法全書』と題する日本の全法令集を網羅した本を毎年発行しているため、単に「六法全書」と呼ぶときは、これを指すことも多い。(引用:ウィキペディア「六法」)

 

<参考>
– ウィキペディア「六法
– 弁護士志望Aの法律学習ゼミ


 

さて、なぜ六法全書のお話をしているのでしょうか。

 

新年のご挨拶でもお話したように
弊所では、六法全書の蔵書を増やすことに力をいれております。

所属弁護士の生まれ年の六法全書を揃えたことをきっかけに、
現在は昭和51年~平成4年版を所有しています。

昨年末から動き出したこのプロジェクト(?)、
これまではインターネットを駆使し、様々なサイトで購入を続けてきました。

 

 

しかし。

 

 

昭和54年・56年版だけが、どうしても見つからないのです。
血眼になってインターネット上を探し続ける日々・・・

「やはりネットに頼ってはいけない、足を使って探さねばならないのでは!?」

世界最大の「本の街」である神保町なら、我々の求める六法が眠っているはず。

 

 

 

そんな期待に胸を躍らせながら
1月某日、新人弁護士のまりえ先生と共に神保町へ行ってまいりました!

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(街へ繰り出すのになぜか駅に向かってしまう先生、可愛いです。)

 

駅を出ると、素敵な雰囲気の書店がずらり。

まずは事前に調べた法律古書専門店を中心に、片っ端からお店を覗いていきます。

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あれ・・・全然見つからない・・・?

 

 

 

どこへ行っても、まず六法全書の取扱いがありません。
(そもそも法律書の取り扱いが少ない印象・・・)
困った我々は「本と街の案内所」へ駆け込みました。

 

すずらん通りに位置するこの施設は
神保町の書店や飲食店の情報が得られるだけではなく、
千代田図書館からコンシェルジュさんが出張されており(平日のみ)
目的にあった書店など案内して下さる場所なのです。

(ちなみに千代田区図書館、とっても素敵な場所なのでおすすめです。)

 

そこで新たな書店情報をゲットするも、7店舗とやや少ない印象。
やはり文学・歴史系の古書が圧倒的に多いのですね・・・

でもそんな弱音は吐いていられません。
だって「足を使ってさがす」ためにわざわざ来たのだから!

教えていただいたお店を隈なくチェックしていきます。

 

 

 

・・・しかし
どこにもありません。収穫ゼロです。どうしたものか。
行く先々でしつこく店員さんに聞いてみるものの、

 

私たち 「古い六法全書売っていそうなお店、ご存知ありませんか?」

店員さん「六法全書なんて今扱ってるところないと思いますよ~」

 

そ、そんな・・・

神保町DSC03467

こんなに書店が並んでいるのに!!

 

だからと言って手ぶらでは帰りたくない私たち。
折れそうな心をたてなおし、
水道橋にある法律書の専門店・丸沼書店へ向かうことにしました。

 

 

と、その頃。世間はちょうどお昼時。
腹が減っては六法が探せぬ(?)ということで、
せっかくなので先生とお昼ご飯をいただくことにしました。

 

やってきたのは「天ぷら いもや」。

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神保町といえばカレーだろうって?
もちろんカレーがおいしいのは重々承知ですが・・・
実は筆者、神保町周辺で学生生活を送っておりました。

コアな神保町グルメもお伝えしたい次第です。

 

 

一本路地に入った場所にあるお店はカウンターのみ、全部で7席ほど。
職人感あふれる店員さんが、大きなお鍋で次々と揚げていきます。
すぐ目の前なのでかなりの迫力と熱気。

二人そろって定番の天ぷら定食にしました。

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このボリュームで650円!どうりで男性客が多いわけです。
(ちなみに好きな天ぷらを単品追加もできます。)

サクサクあつあつ、非常においしくいただきました。

 

 

 

満腹になったところで、さっそく水道橋へ。
六法全書探しの旅はまだまだ続きます。

商標についてのお話②

前回の商標についてのお話①では、商標とはなにか、区分や指定商品・役務を中心に書きました。

今回は、前回の続きから、まずは出願しても登録を行うことができない商標について書きたいと思います。

■登録できない商標
商標法では、登録をすることができないものが規定されています。折角お金と時間をかけて、商標の出願準備をしても、無駄になってしまいますから気をつけておきましょう。
具体的には、以下の●●●があります。

①商標登録の要件
商標法第3条1条では、1~5号の各号でそれぞれ、識別力を欠くこととなるような商標で商標の登録を受けることはできないと規定しています。
商標の主な働きとしては、前回少し書きました。その中でも識別力は商標の大きな働きとなっています。自己と他人の商標の見分けがつかなければ商標として登録してしまう訳にはいきませんね。

(1)普通名称
商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法第3条1項1号)
例えば、31類で、指定商品・役務を「りんご」とし、「りんご」という商標登録を行うことなどはできないということです。

(2)慣用名称
商品又は役務について慣用されている商標(商標法第3条1項2号)
もともとは識別力があったものの、同業者間などで使用され、同業者や世間に一般的に認識されているものは、商標として登録をすることができないません。
よく例えとして使われるのが、日本酒に『正宗』とつけることです。現在では、日本酒=正宗として広く認識されていることから、このような商標も識別力を欠くため登録を行うことができないものとされています。

(3)記述的名称
単に商品の産地、販売地、品質等又は役務の場所、質等のみを表示する商標(商標法第3条1項3号)
単に、商標についてその産地や販売地、品質等を表示する商標は登録をすることができないと規定されています。
例えば、青森県産のりんごに青森産という商標させてしまうと、今後、すべての青森産のりんごに「青森産」と記載して販売できなくなってしまいます。これは困りますね。
商品の産地や販売地、品質等はどのような商品を販売するにも、誰もが記載したく、又、商品販売にはこれらの記載が必要になってくるので、産地や品質等を商標として認めて、商標権者に独占して使用させるのは妥当ではないため、登録を行うことができないとされています。
また、「青森県産」と商標登録されたりんごが、本当は長野県であった場合、青森県産と認識して購入する方がほとんどだと思うので、このような誤認を避けるためにも商標登録はできないとされています。

(4)ありふれた氏など
ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法第3条1項4号)
ありふれた氏・名称とは、同種のものが多数存在しているものをいいます。
名称には、商号も含まれるとされています。これらが商標登録できない理由は、その氏や名称が多数存在している以上識別力を欠くため、商標として登録を行うことはできないということにあります。

(5)きわめて簡単・ありふれた標章
極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(商標法第3条1項5号)
例えば、「あ」・「ア」など、ひらがなやカタカタの一文字の商標や、単に一本の直線を記載しただけの簡単でありふれた標章のみで構成される商標も登録を行うことはできないとされています。

(6)その他識別力のない標章
需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であると認識することができない商標(商標法第3条1項6号)
(1)~(5)に該当するもの以外で、識別力の無いものは本規定に該当して商標の登録を受けることができないとされています。

②公益的に使用されている標識と似ている商標
①では、識別力を欠く商標は登録を行うことができないとご説明しました。
ですが、たとえ識別力があったとしても、次のような商標は、公益的な観点から登録を行うことができないとされています。詳しくは、特許庁HP(リンクを貼る)をご覧ください。

 

商標についてのお話①

先日、茨城県水戸市のイベント会社が、徳川の家紋「葵の御紋」に似た紋様で商標登録を行い、既に「葵の御紋」で商標を登録している公益財団法人徳川ミュージアムが特許庁に異議を申し立てたというニュースを見かけました。以下ニュース記事引用です。

水戸徳川家の「葵の御紋」によく似た紋様を水戸市内のイベント会社が商標登録していることが分かった。水戸徳川家の15代当主が理事長を務める公益財団法人が特許庁に異議を申し立てていて、同庁が異議を認めるかどうか検討している。

特許庁の公開情報などによると、民俗芸能の企画・運営などをしている水戸市のイベント会社が昨年12月、お守りや日本酒、演芸などに使うとして、三つ葉葵の紋様を商標として登録した。

これに対し、15代当主徳川斉正さんが理事長の公益財団法人「徳川ミュージアム」(東京都)が今年3月、ミュージアムがすでに商標登録している紋様と酷似しているとして、特許庁に異議を申し立てた。葉の模様が多少異なる程度で、代理人を務める下坂スミ子弁理士は「こちらの使用にも影響が出かねず、見過ごすわけにはいかなかった」と話している。

特許庁は現在、異議を認めるかどうかの審理中だ。イベント会社は取材に対し「この件についてはコメントしない」と答えている。

(「「葵の御紋」そっくり、商標登録 徳川側、特許庁に異議」、朝日新聞デジタル、2016年11月5日更新、http://www.asahi.com/articles/ASJC44JJ2JC4UJHB01X.html、2016年11月11日引用)

確かに、両者の商標を比べてみると、とても良く似ているんですよね。これは助さん格さんにどうにかしてもらいましょう。

そもそも葵紋とは何だろうと思い、気になって調べてみました。以下、葵紋ついての記事を引用です。

三つ葉葵紋は、もともと徳川家のルーツである松平家の紋として使われていました。
松平家だけではなく、本多、酒井といった三河武士団の中にも葵紋は多く、本多家や酒井家が松平家よりも先に葵紋を使っていたのではないか、という説もあります。

そもそも葵紋は、京都の賀茂神社の神紋でした。

賀茂神社の神紋は徳川家のような三つ葉葵ではなく、葉が二枚の二葉葵ですが、葵紋の意匠の元になったフタバアオイは、その名の通り葉が二枚です。そのため、紋としては二葉葵が古く、そこから実在しない三つ葉葵が派生したと考えられています。

(「徳川家康の家紋 三つ葉葵はどんな意味を持つ紋所なのか?」、歴史のトリビアひすとりびあ、http://historivia.com/cat4/tokugawa-ieyasu/504/、2016年11月11日引用)

葵紋とは、フタバアオイがモチーフになっており、通常のフタバアオイの葉は2枚だそうで、3つの葉をもつフタバアオイは架空のものとのことです。徳川の家紋である葵紋は3つ葉なので、架空のものとのこと。

徳川時代には、葵紋は徳川家のみ(所説あるみたいですが)に使用が許され、あの有名なセリフ「この紋所が目に入らぬか」でおなじみであるように、葵紋を見ると悪党も退散していくほどの強い力をもっていたものが、現在では商標として登録されているんですね。

 

という訳で、今回は商標について書こうと思います。
商標の全体的な仕組みなどから、少しご説明いたします。

 

①商標とは

商標とは、「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音」等をいいます(商標法2条1項柱書)。

パッと見て、このマークは〇〇社の商品だ!と分かるものがありますよね。それはおそらく商標として登録をされ使用されているものです。例えば、代表的な商標でいうと、不二家のペコちゃん。ケーキやお菓子などにペコちゃんのマークが記載されていたら、それは不二家の商品だと誰もが分かると思います。ペコちゃんは不二家の登録商標なので、しっかり商標の機能を果たしていますね。

商標の主な機能としては、次の(1)~(4)があり、商標が記載等されている商品購入の際に例えて各機能を少しご説明します。

(1)出所表示機能・・・商品がどこから発売されているか判断することができます。信頼している企業などからの販売商品であるか等を識別して購入することができます。

(2)自他商品識別機能・・・読んで字のごとく自社の商品と、他社の商品を識別することができます。誤って、購入するはずでなかった商品を購入してしまうことなどを防ぎます。

(3)品質保証機能・・・商品がどのような品質かを認識することができます。例えば、何年も同じ品質で販売されている商品は、商標によってその品質を把握することができますね。

(4)宣伝広告機能・・・商標そのものを使用して商品を宣伝・広告をすることもできますし、商標を使用しつづけることにより、商標が世間に浸透され、商品の宣伝・広告などにつながることも期待できます。

②商標の区分

商標には区分というものがあります。この区分とは、1つの商標権で権利が保護される商品・役務のグループをいい、世界共通の国際分類によって分けられています。
区分は1類~45類まであり、1類~34類までが商品についてのグループ・35類~45類までが役務のグループとなっています。
※1つの区分で商標を登録すればすべての区分で権利が保護されるわけではないのです。

④商標の区分表

区分は以下の表のとおりに分けられており、自分が取得したい商標の区分で申請を行う必要があります。例えば、コーヒー(缶コーヒーやペットボトルなどの商品)で商標を取得したい場合には、32類となります。お菓子やケーキに印字されているペコちゃんは、30類での登録商標という訳です。

区分 指定商品例 区分 指定商品例
1類 工業用、科学用又は農業用の化学品 他 18類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具 他
2類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調整品 他 19類 金属製でない建築材料 他
3類 洗浄剤及び化粧品 他 20類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの 他
4類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤 他 21類 家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品 他
5類 薬剤 他 22類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維 他
6類 卑金属及びその製品 他 23類 織物用の糸 他
7類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械 他 24類 織物及び家庭用の織物製カバ 他
8類 手動工具 他 25類 被服及び履物 他
9類 科学用、航海用、測量用、写真用の機械器具 他 26類 裁縫用品 他
10類 医療用機械器具及び医療用品 他 27類 床敷物及び織物製でない壁掛け 他
11類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用の装置 他 28類 がん具、遊戯用具及び運動用具 他
12類 乗物その他移動用の装置 他 29類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物 他
13類 火器及び火工品 他 30類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料 他
14類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計 他 31類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料 他
15類 楽器 他 32類 アルコールを含有しない飲料及びビール 他
16類 紙、紙製品及び事務用品 他 33類 ビールを除くアルコール飲料 他
17類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック 他 34類 たばこ、喫煙用具及びマッチ 他
 区分 指定役務例 区分 指定役務
35類 広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 他 41類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動 他
36類 金融、保険及び不動産の取引 他 42類 科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウ ェアの設計及び開発 他
37類 建設、設置工事及び修理 他 43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供 他
38類 電気通信 他 44類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林 業に係る役務 他
39類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配 他 45類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属す るものを除く。)、警備及び法律事務 他
40類 物品の加工その他の処理 他

④指定商品・役務

区分の中の小さいカテゴリーとして、指定商品・役務というものがあります。出願する区分で、さらにどのような内容・範囲なのかをより明確に把握できるようにするため、具体化して記載しなければならない(商標法6条1項)と決められています。この指定商品・役務は比較的自由に記述することができ、例えば、先ほど区分の例として挙げましたコーヒーの商標では実際に以下のような指定商品名で登録がされております。

<区分> <指定商品>
32類 コーヒー入りの清涼飲料
(アルコールを含有しない飲料及びビール) エスプレッソコーヒー入りの清涼飲料
コーヒー風味の清涼飲料
コーヒーを加味した豆乳飲料

                    

区分のみですと、「アルコールを含有しない飲料及びビール」などのざっくりとした内容・範囲しか分からないので、指定商品で具体的に絞り込んでいます。

指定商品・役務の記述方法をどうのようにすべきが分からない場合には、特許庁のJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)にて、出願したい商品や役務と類似したものを検索して、実際に他者がどのような指定商品・役務で登録を行っているか参考にしてみてもよいと思います。

⑤区分/指定商品・役務に関する出願時の注意点

②~④でご説明いたしました、区分、指定商品・役務に関する出願時の注意点として実際に以下のようなことがございました。商標の取得検討段階で気に留めておくと良いと思います。

●出願時に、「指定商品・役務」(類似コード)で8つ以上指定すると、(区分が一つでも複数でも同じ)事業計画書等の提出が求められることがあります。日本の商標法では、商標登録で「使用する意思」が求められるので、多くの区分で商標を指定しようとすると、使用する意思がないだろう、と思われるためです(事業計画書等を作って出せば、登録はできなくはないです。)。

 

今回は、商標の登録を検討するにあたり、どのような区分、指定商品・役務で出願を行えばよいかということについてご説明いたしました。

では、この区分や指定商品・役務で正しく記載をして特許庁に出願すれば、どんな場合でも商標の登録を行うことができるかというと、そういった訳ではありません。
登録をしたいロゴやマークが、既に別の会社などで登録がされてしまった場合、またはそもそも登録を行うことができないロゴやマークなどで商標の出願を行ってしまっていた場合などには、登録を行うことがでません。

具体的にどのような場合に登録を行うことができないのか、また出願の方法や手数料などについては次の記事で書きたいと思います。

 

次回 出願しても登録にならない商標~出願

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会社設立のお話③

さて、会社設立のお話①に引き続き株式会社の設立について書きます。
前回は、定款の認証についてご紹介いたしました。
今回は、④資本金の払い込みから設立登記完了までの手続きについて書きます。

会社設立の流れは以下となりますので、①~③の手続きについては、会社設立のお話①をご参照ください。

①設立事項の決定

②定款の作成

③定款の認証

④資本金の払込

⑤登記申請に必要な書類の作成

⑥登記申請

⑦設立登記完了

 

④資本金の払込

定款の認証が終わったら資本金の払い込みを行います。
発起人は、設立時発行株式の引受後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につきその出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない(会社法34条1項)とされています。定款により発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数を定めた場合には、定款認証のあとに行うのが一般的とされています。(会社法30条1項より)

資本金の払い込み方法等は以下となります。

  • 払込先・・・発起人の口座。会社設立までは会社の口座を作成することができないので、発起人の個人の口座で構いません。発起人が複数人いる場合には、代表者1人の口座へ行います。
  • 払込方法・・・各発起人は、定款又は発起人全員の同意により定めた金額の全額を払込ます。

また、既に預金がある口座に払込を行う場合には、残高が払込の金額になっていれば良いという訳では無く、必ず払込行為を行ってください。払込行為があれば良いので、一旦預金を引き出した後、同額を払い込む方法でもかまいません。
※「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数は,定款又は会社法32条1項の発起人全員の同意により定まるから,登記実務上,出資の履行の時期は,定款の認証前であっても,定款の作成又は当該発起人全員の同意の後であれば差し支えないとして取り扱われている。(『商業登記ハンドブック第2版(92頁)』」という見解もあります。

⑤登記申請に必要な書類等の作成

定款の認証・資本金の払い込みが終わったら、設立登記の申請をします。法務省のHPに登記申請書等の記載例が載っているので参考すると良いです。登記申請書記載例リンク
設立登記に必要な書類は以下となります。

●登記申請書・添付書類
a)登記申請書
b)登記すべき事項(CD⁻Rなどで可)
c)定款
d)発起人決定書(本店所在地など)
e)設立時取締役の就任承諾書(+議決権の過半数の一致があったことを証する書面)
f)印鑑証明書(取締役全員分)
g)払込を証する書面
h)委任状(代理人が行う場合)

●登記申請書の添付書類とは別に登記申請時に提出するもの
i)印鑑届書
j)印鑑カード交付申請書

※今回は、発起設立で、発起人が設立時取締役に就任し、取締役会は設置しないモデルに則して書きますので、形態の違う会社を設立する場合にはそれぞれご確認ください。

a)~j)についてそれぞれ少し補足をします。

a)登記申請書
設立登記の申請の際は、「株式会社設立登記申請書」を提出します。
登記申請書には、以下の事項を記載します。

  • 商号
  • 本店
  • 登記の事由
  • 登記すべき事項(別添可)
  • 課税標準金額(資本金の額)
  • 登録免許税
  • 添付書類

必要事項を記載したら、登記手数料の15万円分の収入印紙を消印をせずに収入印紙張付台紙にはります
※登記手数料が15万円を超える場合には、その金額をはります。手数料の算出方法は会社設立のお話①をご参照ください。

登記申請書が複数枚になる場合には、左端をホチキスで止め、会社代表印で契印を行います(代理人が行う場合には代理人の印鑑)。

b)登記すべき事項(CD⁻Rなどで可)
登記すべき必須事項は、登記申請書に直接記載する他、CD-Rなどの記録媒体で提出することもできます。登記すべき事項の必須事項は以下となります。

  • 「商号」・・・商号を記載します。
  • 「本店」・・・本店の所在地を記載します。
  • 「公告をする方法」・・・定款にて公告をする方法を定めた場合にはその通りに記載をし、電子公告による場合には公告先のURLも合わせて記載します。
  • 「目的」・・・定款で定めた事業目的を記載します。
  • 「発行可能株式総数」・・・定款で定めた通り記載します。
  • 「発行済株式の総数」・・・発起人が割当てを受ける株式の数を記載します。
  • 「資本金の額」・・・資本金の額を記載します。
  • 「役員に関する事項」・・・各取締役について役職と氏名を記載します。代表取締役を定めた場合には、当該代表取締役の住所も記載します。
  • 「登記記録に関する事項」・・・設立登記の場合には「設立」と記載をします。

※必須事項は全ての株式会社の設立登記時に必要となり、必須事項以外にも登記すべき事項がある会社形態の場合には、その内容も合わせて登記します。

電磁的媒体によって提出する場合には、すべて全角文字で作成しなければならいなどの留意点があります。詳しくは、法務省が掲載している案内をご参照ください。登記すべき事項の提出に関する留意点リンク

c)定款
公証人が認証を行った定款(謄本)を添付します。

d)発起人の同意書(決定書)
定款で本店所在地の記載を最小行政区画までの記載としている場合には、行政区画以降(何丁目・何番地などの地番まで)の詳細な住所を発起人で決定・同意をした旨の書類を添付する必要があります。その他、設立に際して発起人が割当を受けるべき株式数及び払い込むべき金額、発行株式数などの内容が定款にて定められていない場合にも、発起人の決定・同意をした旨の書類が必要となります。

e)設立時取締役の就任承諾書
定款若しくは発起人の議決数の過半数により定めた(会社法38条、40条)設立時取締役の全員分の就任承諾書を添付する必要があります。就任承諾書には、設立時取締役に選任されたこと・就任を承諾する旨を記載します。
また、設立時取締役の選任を定款で行った場合には定款を、発起人の決議で定めた場合には発起人の議決権の過半数の一致があったことを証する書面を合わせて添付します(商業登記法47条3項)。
また、代表取締役を定めた場合には、代表取締役就任承諾書も合わせて添付します。
取締役が就任承諾書へ押印する印鑑は、市区町村に登録をした印鑑で行います。(認印では×)
※取締役が1名の場合には、自動的に代表取締役を兼ねるため、取締役承諾書とは別に代表取締役就任承諾書を添付する必要はありません。

f)印鑑証明書(取締役全員分)
各設立時取締役が就任承諾書に押印した印鑑の印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書は3カ月以内に発行されたものである必要があります。

g)払込を証する書面
払込が本当に行われたかどうかを証明する書類を提出します。
払込があった金額の総額・払込があった株数(設立時発行株式数)などを記載した払込証明書を作成します。

また、添付書類として払込が行われた口座の通帳のコピーなどが必要となります。
コピーの箇所については以下の3か所となります。

  • 通帳の表紙
  • 通帳の表紙をめくった1ページ目
  • 資本金の入金が記録されているページ

■製本
払込証明書と通帳のコピーを合わせて1冊の書類を作成します(払込を証する書面)。製本方法は、ページとページの間に契印をする方法が一般的ですので、書類をまとめて左端をホチキスで止め、会社代表印で契印をします。

h)委任状
設立登記手続きを代理人が行う場合には、委任状が必要となりますので、準備しておきましょう。

i)印鑑届書
会社を設立する際には、会社代表印の届出を法務局へ提出し、印鑑の登録を行わなければなりません(商業登記法20条1項・3項)。届出は法務局指定の「印鑑届書」をもって行います。フォーマットの指定ヶ所に代表印として登録をする印鑑を押印し必要事項を記載して提出します。印鑑の登録ですので、印影がかすれたり途中で切れたりしていると登録ができないことがあるので出来るだけ綺麗に押印するようにしてください。印鑑届書リンク

j)印鑑カード交付申請書
会社代表印の印鑑証明書を発行する際に、印鑑カードが必要となります。設立登記時に絶対に必要ということではないですが、印鑑届書と合わせて提出しておくと良いと思います。印鑑カード交付申請書リンク

⑥登記申請
登記申請に必要な書類の作成が終わったら、⑤でご説明をしましたa)~j)の書類を管轄の法務局へ提出します。提出は、直接持ち込むか郵送で行う方法があります。管轄の法務局は、管轄法務局リンクから調べてみてください。

■原本還付請求
登記申請時に添付する書類は、原本で提出しなければなりません。そして提出した書類は、そのまま法務局に保管されるため、返却されることはありません。手数料をかけて取得した書類や大事な書類などが戻って来ないのは悲しいですよね…。
しかし、原本還付請求を行うと、原本の返却を受けることができます!

原本還付請求の方法は、返却を希望する書類の原本のコピーに「原本と相違ありません」と記載をし、登記申請書に押印した会社代表印を押印すると法務局保管用の書類がコピーした書類となり、登記が完了すると晴れて手元に原本が返却されます。

⑦設立登記完了

申請を行った法務局によって多少異なるようですが、申請を行ってから1週間程度で登記が完了します(補正などが入った場合にはもう少しかかるかと思いますが。)。
登記が完了すれば設立の手続きは終了です。お疲れ様でした。
会社設立の日は、登記が完了した日ではなく、登記申請を行った日となります。

以上が会社設立の一連の手続きになります。
今回ご紹介したケースとは異なる会社の設立の場合には、必要書類などが異なることなどもありますが、おおまかな流れはこのようになります。

全3回に分けて、会社設立について書きました。
株式会社の設立の際にご参考いただければうれしいです!

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