六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成17年版

平成17年版六法全書

平成17年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、

武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
(平成16年法律第112号)

があります。通称、「国民保護法」といいます。

米国での同時多発テロや北朝鮮による弾道ミサイル発射等によって、
我が国の安全保障に対する国民の関心が高まるとともに、
大量破壊兵器の拡散や国際テロ組織の存在が重大な脅威となっています。

そのような状況下、この法律は、
武力攻撃を受けた場合や大規模なテロなどの緊急事態が発生した場合に、
これらの事態から国民の生命、身体、財産を守り、また国民の生活や経済に与える影響を少なくするために、国、都道府県、区市町村などが担う役割や避難・救援などの具体的措置について定めた法律です。

対象となるのは、< 武力攻撃事態 > と < 緊急対処事態 >です。

 

武力攻撃事態として、以下の4つの類型が想定されています。
①着上陸侵攻
②ゲリラ・特殊部隊による攻撃
③弾道ミサイル攻撃
④航空攻撃

緊急対処事態とは、具体的に
「武力攻撃に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する事態」を指し、例えば
・石油コンビナート施設等に対する攻撃
・大規模集客施設やターミナル駅等に対する攻撃
・核物質入り爆弾等による放射能の拡散等
・航空機などによる自爆テロ
などが想定されているようです。

 

想定されている緊急事態を見ていると、
こんなにいろいろな危機が起こり得るんだなと、
改めて怖くなってしまいますね。

そして、そんな事態が起きた時の国民の保護のための措置は、大きく、
①避難
②救援
③武力攻撃災害への対処
の3つから構成されています。

一つずつ中身を見てみましょう。

 

①避難
武力攻撃事態等が迫った場合は、まず国が情報を収集・分析して、対策本部長(内閣総理大臣)が国民に警報を発令し、住民の避難が必要なときは、都道府県知事に避難措置を指示します。
これを受け、都道府県知事は、警報の通知や避難指示をおこないます。
さらにこれを受けて、市町村長は防災行政無線等を通じて住民に情報を伝達し、避難住民の誘導をおこないます。
②救援に関する措置
救援は、住民が避難した後の避難先における生活を支援するための活動としておこなうものです。避難住民等に対する宿泊場所や食品、医薬品などの提供や、安否情報の収集・提供をおこないます。
対策本部長が都道府県知事に救援を指示し、指示を受けた都道府県知事が市町村や日本赤十字社と協力して救援を実施します。
③武力攻撃災害への対処に関する措置
武力攻撃災害による被害を最小化するための措置です。
消火や被災者の救助などの消防活動、
ダムや発電所などの施設の警備、
化学物質などによる汚染の拡大を防止、
住民が危険な場所に入らないよう警戒区域を設定
などがおこなわれます。
国は、自ら必要な措置を講じたり、地方公共団体と協力して措置を実施したりします。都道府県や市町村も、必要な措置を実施します。

 

国民保護法は、いわゆる有事法制の個別法の一つです。
その内容については賛否両論あり、成立の過程では反対運動もあったようです。

しかし、少なくとも、昨今の新型コロナ感染拡大のように、
それまで想像もしていなかったことが、ある日突然現実になるのが世の中です。
緊急事態に備えておくことは、絶対に必要だと強く感じます。

「有事なんて縁起でもない」「それについて議論することすらタブーだ」
という態度ではなくて、しっかり問題に向き合って、どう対処するかを考えておく姿勢が必要ではないでしょうか。

その出発点として、まずは、有事法制として何が決められているのか、
きちんと知っておきたいと思います。
(参考:内閣官房国民保護ポータルサイト

 

◇ ◇ ◇

 

改正された法令として収録されたものに、
行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)があります。

行政事件訴訟とは、ものすごくざっくり説明すると、
国民が、行政の活動に対して不服があるときに、裁判所にその不服を聞いてジャッジしてもらうという制度です。

行政事件訴訟法の改正は、司法制度改革の一環としておこなわれたもので、
柱は次の4つでした。

①行政訴訟をより利用しやすく分かりやすくするための仕組み
②救済範囲の拡大
③審理の充実・促進
④本案判決前における仮の救済制度の整備

それぞれ具体的な中身も見てみましょう。

 


①行政訴訟をより利用しやすく分かりやすくするための仕組み
出訴期間等の情報提供制度の新設
(訴訟を提起することができる処分等をする場合には、行政庁は、相手方に、いつまでに訴えを起こさなければならないか等の情報を提供しなければならなくなった。)

出訴期間の延長
(処分等があったことを知った日から3か月以内に訴えを起こさなければならなかったところ、6か月に延長された。)


②救済範囲の拡大
取消訴訟における原告適格の拡大
(原告適格とは、ものすごくざっくり説明すると、訴えを起こす資格があること。
行政処分等の名宛人ではない人でも、訴えを起こすことが認められやすくなった。)

義務付け訴訟・差止訴訟を法定、確認訴訟を明示
(そのような類型の訴訟が認められるかどうか議論になっていたものが、法律に明記された。)


③審理の充実・促進
釈明処分の規定を新設
(執行停止は、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に限り許容されていたところ、「回復の困難な損害」が「重大な損害」に改められた。)


④本案判決前における仮の救済制度の整備
執行停止の要件の緩和
(執行停止は、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に限り許容されていたところ、「回復の困難な損害」が「重大な損害」に改められた。)

仮の義務付け、仮の差止めの制度の新設
(本案判決の前に、仮に行政庁がその処分等をすべき旨を命ずることや、仮に行政庁がその処分等をしてはならないことを命ずることができるようになった。)


・・・などがあります。なかなか、盛りだくさんですね。

行政を相手に個人で戦うとなると、
情報量や専門的知識の面で、圧倒的に行政が有利です。


(ちなみに、平成30年度の司法統計年報によると、

民事訴訟(金銭を目的とする訴え)では、
認容判決:棄却又は却下判決=4:1
であるのに対し、

行政訴訟では、
認容判決:棄却又は却下判決=1:7

と、認容判決の割合がとても低くなっていることが分かります。)

とはいえ、個人の側がやられっ放しにならないよう、
諦めて泣き寝入りをしてしまわないよう、こういう制度があるんですね。

行政を相手に不服をいうには、
〇行政自身に対して不服を申し立てる方法
〇裁判所に対して不服を申し立てる方法
大きく分けて二つがあります。

どちらも一長一短がありますが・・・
やはり、最終的に公正な判断をしてくれるのは裁判所ではないでしょうか。
国や地方公共団体、いわゆる「お上」が相手だからといって、最初から諦めてしまうことなく、正々堂々と不服を申し出て、どちらが正しいか判断してもらう、その積み重ねが、この国全体を良くしていくのだと信じます。

法律古書を探してみた-六法全書 復刊版編-

タイラカ総合法律事務所には、法律古書のギャラリーがございます。

タイラカ総合法律事務所HP・ギャラリーについて

 

様々な時代の、様々な法に関する書籍を収集していますが
そのなかでも、

有斐閣の出版する六法全書をすべて揃えること

を、大きな目標としております。

 

これまでもコツコツと六法全書の収集に励んでまいりましたが、
この度、新たに昭和23年発行のものが加わりました!

こちらの記事でもふれましたが、

1901年に『帝國六法全書』を刊行。昭和になってから刊行を中断したが、1948年に、創業70周年事業として『六法全書』の刊行を再開した。
Wikipediaより)

とありますように、六法全書の始まりは1901年に刊行された「帝國六法全書」のようです。しかし、恐らく戦争で刊行を続けるのが難しくなってしまったのでしょう。
戦後、1948年(昭和23年)復刊の折には、新しい時代に向かっていく日本と共に、六法全書も新たな再スタートを切ったのですね。
今回入手した昭和23年発行版は、今日我々がお世話になっているそんな六法全書の再開時の「初代」といえるものです。

ちなみに、元祖の「帝國六法全書」も弊所ギャラリーに蔵書がございます。
1908(明治41)年に発行されたもので、戦前の貴重な一冊です。

現在の六法よりもかなり小さい、手のひらサイズです。

この頃は「●●年版」といった年次の発行ではなく、訂正や改訂を重ねていたよう。
弊所ギャラリーの蔵書は「訂正増補改版15版」。編纂者の熱意が伺える数字です。

 

少し話がそれましたが、昭和23年の六法全書がこちら。

時代を乗り越えてきた感がありますね。

 

表紙には凹凸をつけた印刷で「六法全書」と書かれており、
(うっすら見えますでしょうか?)

 

中表紙には「創業七十周年記念出版」との文字が。

この一冊が「はじまり」だと思うと、何だか感慨深いものがあります。

 

ちなみに・・・
弊所ブログでは、年毎に制定・改定された法律についてもご紹介しています。

六法全書クロニクルシリーズ

昭和23年版についても追ってアップされる予定ですので、
ぜひそちらをお楽しみに。

 

◇ ◇ ◇

 

創業70周年という節目に、何か他のこともおこなっていそう…
そう思い調べてみたところ、現在の社章が制定されたのもこのタイミングでした。

現在の社章は創業70周年に制定されました。獣の王といわれる獅子と,鳥の王といわれる鷲を題材にしたもので,それは,社会科学から,やがては人文科学と自然科学の両分野における最高の権威ある書物を出版の目標としよう,といった意味が含まれております。さらに,獅子には赤色,鷲には青色を配し,それは動脈と静脈をあらわしており,静かな中にも動的なもの,動的な中にも静かなもの,両者の融合と活動によって生々脈々の発展を意図したものでもあります。
有斐閣HPより)

 

社章に使われている獅子と鷲ですが、なんとゆるキャラ化もされています…!

 

有斐閣が出版している、

判例の読み方 — シッシー&ワッシーと学ぶ
(青木人志 (一橋大学教授)/著)

という書籍の登場キャラなのですが、なんと社員さんの落書きをもとにデザインされたのだそうです。素敵なアイデアですよね!

なんとも言えない表情とポージング、個人的には非常に好きです。
グッズがあったら思わず買ってしまいそう!

このゆるキャラ、当時かなり話題になったそうですが、有斐閣のような歴史ある企業がこうした遊び心をもち、利用者を楽しませてくれるなんて、とても素晴らしいことだと思います。

実際のシッシー&ワッシーの姿をぜひチェックしてみてください。
私も読んでみようと思います!

 

◇ ◇ ◇

 

というわけで、無事に創刊版は入手できたわけですが
実は抜けてしまっている年度がいくつかあります。

以前書店で教えていただいたように、
六法全書は法律古書のなかでも流通が少ないという事情があります。

これまでなかなか蔵書に加えることができなかった年度版もありましたが、それぞれ良いタイミングやご縁でめぐり会っていますので、また次も気長に待とうと思います。

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成18年版

平成18年版六法全書

平成18年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、
刑事施設及び受刑者処遇法(平成17年法律第50号)が、

改正された法令として収録されたものに、
刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律
(旧:監獄法、明治41年法律第28号)

があります。

 

いかにも古めかしい名前の法律ですが、
結構最近まで「監獄法」なんて名前の法律が現役で使われていたって、
ご存知でしたか?

改正前の監獄法は、
監獄の管理運営と在監者の処遇全般について定めていた法律です。
明治41年の制定以来、一度も改正されることがなかったため
その後の実務や理念の変遷を取り込めず、極めて不十分な内容となっていました。

法務省としても、昭和57年には監獄法を全面改正する「刑事施設法案」を国会に提出していたのですが、代用監獄問題(詳しくは東弁HPを参照)をめぐる対立などから、法改正は実現しないままとなっていました。

 

そんな中・・・
平成14年、名古屋刑務所の刑務官が集団で受刑者に暴行し
3人を死傷させたとされる事件が発覚。
この問題を受けて、有識者からなる「行刑改革会議」が設置され
同会議は、監獄法の全面改正などを求める提言を提出しました。

法務省では、この提言を受けて
①まずは受刑者の処遇を中心として監獄法の改正をおこない、
②その後、未決拘禁者等の処遇に関しても早期に法改正をする
という、2段階方式を採用することとしました。

こうして、平成17年5月18日に第1段階として、刑事施設一般及び受刑者の処遇に関して定める「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が成立し、この結果、監獄法には、未決拘禁者・死刑確定者の処遇についての規定だけが残り、法律の名称が「監獄法」から「刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」へと改められたのでした。

つまり、監獄法改正が半分だけ達成された状態であるのが
平成18年版六法全書なのです。

 

ちなみに、平成18年には、第2段階として、
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」の一部を改正する法律が成立。
これによって、未決拘禁者・死刑確定者についての規定が同法に統合され、
名称も「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」と変更されて、
現在に至っています。

監獄法は、ここに、完全に廃止されました。

 

◇ ◇ ◇

 

ここまで、長々と法改正の経緯を書いてしまいましたが、
実は、私もこの監獄法改正作業に少し関わっていました。
あの時は大変でした・・・。
個人的な思い入れから、詳しめに取り上げさせていただきました。

  

さて、改めまして、法律の中身を見てみましょう。

これらの法律では、刑事施設の管理運営に関する事項や、
刑事施設に収容されている人たちの処遇が決められています。 

刑務所や拘置所での生活がどんなものか、ご存知でしょうか?

時々、テレビ番組や雑誌などでも取り上げられたりしていますが、
一般的にはあまり馴染みがないですよね。
収容される人々の処遇がどのように決められているか、
衣食住についての法律の規定をひも解いてみましょう。

 

まず、「衣」「食」。いわゆる官給原則が規定されています。
(条文は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律のもの)

(物品の貸与等)
第四十条 被収容者には、次に掲げる物品(中略)であって、刑事施設における日常生活に必要なもの(中略)を貸与し、又は支給する。
一 衣類及び寝具
二 食事及び湯茶
三 日用品、筆記具その他の物品

生活必需品については国から貸与又は支給されますので、
基本的には生活費はかかりません。

一方、「住」については、法律には特に規定がありません。
しいて挙げれば、施設に収容するということと、居室の定義が置かれている程度。
部屋の広さや設備についての規定などはありません。

 

こうやって見てみると、
法律で書かれているのは、本当に大枠のところだけなんですね。

例えば、
・何の衣類を何枚貸与する
・一日当たりご飯の量は何グラム支給する
そういう具体的なところは「訓令」や「通達」といって、法律よりももっと下のレベルの法令に定められています。

訓令や通達は、六法全書には掲載されていないことがほとんどです。
そのため、調べようと思ったら、その分野に絞った法令集(※)を入手する必要がありますが、かなり大きな書店でないと置いていなかったりします。

※『金融六法』や『福祉六法』などと呼ばれます。
今回取り上げた分野では、『矯正実務六法』という法令集があります。

 

やれやれ、調べるだけでも、一苦労です。

 

だったら、そんな回りくどいことしないで、実際に見るのが一番!
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、残念ながら、見に行くのも簡単ではないんです。
やはり、収容されている人のプライバシーの問題などもありますので、
刑事施設には原則として、関係者以外は立ち入ることができません。

 

法律には、

『刑事施設の長は、その刑事施設の参観を申し出る者がある場合において相当と認めるときは、これを許すことができる。』
(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律12条)

という規定もありますが、
例えば、学術研究のためなど、相当と認められるような理由が必要です。

ただ「興味がある」とか「ご近所なので見ておきたい」といった理由だと、
ご遠慮くださいと言われてしまうかもしれません。

やはり、塀に囲まれた、閉ざされた世界という側面があることは、否めませんね。

 

しかし、行刑改革会議が掲げた
国民に理解され、支えられる刑務所を目指して
という言葉の下、刑事施設も市民の方の理解を得られるよう
昔よりは大分頑張っているんですよ。

一番身近なところでは、
多くの刑事施設で、年に一度「矯正展」と呼ばれるイベントを開催しています。

「●●刑務所矯正展」や「△△拘置所矯正展」という名前、
見聞きしたことはないでしょうか?
開催時に希望者を募り、施設内の見学ツアーをおこなっていることがあります。

写真やパネルのほかに、実際に被収容者が着ている衣服や、食べている食事のサンプル、モデル居室などの実物が展示されていることも!
他にも、受刑者が作業で作った刑務作業製品の展示即売があったり、
刑務所レシピのパンやカレーが食べられたりする施設なんかもあるようです。

どうでしょう、
(今年はコロナの関係で開催されるかどうか不透明ですが、収束したら)
お近くの刑事施設を調べて、矯正展に足を運んでみては。
法律を読むだけでは分からない、超レアな体験ができるチャンスですよ!

ひまわり観察日記-2020-②

5月に似合わない寒さから一転、急に夏日が続いていますね。
すぐ梅雨入りしそうですが、つかの間の晴れを楽しみたいものです。

 

さて、先日種をまいた弊所のひまわりですが・・・

今年も無事に発芽しました。

 

気温のおかげか、今までで種まき~発芽が最速だったような気が!
タイミングが良かったのかもしれません。

新型コロナの影響もあり、まだまだ不安の残る今日この頃ですが
ひまわりの姿で少しでも気持ちが晴れるよう、今年もしっかり観察していきます。

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成19年版

平成19年度六法全書

平成19年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、
遺失物法(平成18年法律第73号)があります。

遺失物、つまり、忘れ物や落とし物の取扱いについて定めた法律です。

それまでの旧遺失物法(明治32年法律第87号)が現状にそぐわず、
また、カタカナ表記で読みにくかったことから、全面的に改正されました。

大きく変わった点は、5つです。

① 拾得物の保管期間が3か月になった(それまでは6か月)

② 拾得物に関する情報が、インターネットで公表されるようになった

③ 携帯電話やカード類など個人情報が入った拾得物については、
拾った人が所有権を取得できないこととなった

④ 公共交通機関など多くの落とし物や忘れ物を取り扱う事業者を対象に
「特例施設占有者制度」が新設された

⑤ 傘・衣類など大量・安価な物等は、
2週間以内に落とし主が見つからない場合、売却等の処分ができることとなった

⑥ 所有者のわからない犬・猫は、遺失物法の対象外となった

 

落とし物や忘れ物。
皆さんの中でも、多くの方が経験されているのではないでしょうか。

私も、一度、出掛けた先で指輪が行方不明になったことがあります。
建物の中で落としたのか、電車の中で落としたのか、道で落としたのかも分からず、建物の管理事務所に問い合わせたり、電車会社の忘れ物センターに問い合わせたり、警察に届けたりと、いろいろ大変だった記憶があります。
(結局、建物の中で落としていたようで、後日、管理事務所に届けられ無事手元に戻ってきました。感謝です。)

本当に困りますし、焦りますよね!
その一方、届けられたほうも保管に困るということで、
上記の①~⑥のように、合理化などが図られたということのようです。

 

ちなみに・・・
落とし物や忘れ物って、どれくらい発生していると思いますか?

警視庁によると、令和元年の拾得届の受理状況は以下のとおり。

拾得件数 4,152,190件
現金 3,884,229,232円
物品点数 4,532,563点

それに対して遺失届は・・・

拾得件数 1,047,015件
現金 8,439,520,462円
物品点数 2,407,027点

 

パッと見ただけでは桁が分からないほど、すごい数字ですよね。

警視庁管内だけでも、1年間になんと38億円(!)ものお金が
「拾いました」といって届けられているんですね。

それに対し、「落としました」「忘れました」という届出は
84億円にものぼります。2倍以上です。

評価は様々かもしれませんが、
海外では、落としたり忘れたりしたら、ほぼ戻ってこないという話も聞きます。

これだけの割合で「拾いました」と届け出られているのは
日本人の誠実さの現れ、なのかもしれません。

 

いずれにしても、ほんのちょっとの不注意が原因であることがほとんど。

例えば、席を立つときや乗り物を降りるとき、
身の回りを見回すだけでも、違うかもしれません。

その時々の少しの労力を惜しまず、落とし物や忘れ物を防ぎましょう!

(参考:警視庁HP

 

◇ ◇ ◇

 

改正された法令として収録されたものとしては、
消費者契約法(平成12年法律第61号)があります。

以前にもブログで取り上げましたが、
消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には、持っている情報の質・量や交渉力に格差があり、どうしても消費者は不利になりがちです。

そこで、消費者の利益を守るために作られたのが、消費者契約法です。

この法律では、消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定しています。
この年の法改正では、新たに「消費者団体訴訟制度」が導入されました。

 

さて、消費者団体訴訟制度とはどのような制度でしょうか?

それは、読んで字のごとく、消費者団体が訴訟をする制度です。
もう少し詳しくいうと、内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって、事業者に対して訴訟等をすることができる制度です。

民事訴訟の考え方では
<被害者である消費者が、加害者である事業者を訴える>
というのが原則ですが、消費者にとっては以下のような問題がありました。

①消費者と事業者との間には、情報の質・量、交渉力の格差がある
②訴訟には時間・費用・労力がかかり、少額被害の回復に見合わない
③個別のトラブルが回復されても、同種のトラブルがなくなるわけではない

そこで、事業者の不当な行為に対して、内閣総理大臣が認定した適格消費者団体が、不特定多数の消費者の利益を擁護するために、差止訴訟を起こすことができる制度が作られたのでした。

対象となる行為は、例えば以下のようなもの。

○「この装置付ければ電気代が安くなる」と勧誘し、実際にはそのような効果のない装置を販売

○将来値上がりすることが確実ではない金融商品を「確実に値上がりする」と説明して販売

○「当社のソフトウェアの誤作動により生じた障害については、当社は免責されるものとする」という条項

○常に同じ価格で販売している商品を「今なら半額!」と表示
(有利誤認表示)

こういった消費者トラブルに、ご自分が遭ってしまったと仮定してみてください。

「ひどい!」「許せない!」とは思っても、
では解決のために訴訟を起こすか、と言われると・・・。

被害額が少なければ、
尻込みして、泣き寝入りとなってしまうことも多いのではないでしょうか。

そうすると、結果として悪徳業者が得をし、はびこってしまいます。
更なる被害者が増えてしまうのです。

そこで、消費者団体が、被害者個人に代わって事業者に申し入れをしたり、訴訟を起こしたりしてくれるとしたらどうでしょう。
すごく助かると思いませんか?

大まかな手続の流れは以下のようになっています。

① 消費者からの情報提供などにより、被害情報を収集・分析・調査
② 事業者に対し、業務改善を申し入れ(裁判外の交渉)
③(交渉不成立の場合)事業者に対し、提訴前の書面による事前請求
④(交渉成立の場合)事業者による業務改善
⑤ 適格消費者団体による裁判所への訴え提起
⑥ 判決、または裁判上の和解
⑦ 結果の概要について、消費者庁のウェブサイトなどで公表

ご自分のためにも、社会全体のためにも、
悪徳業者は許さないという姿勢が大切だと思います。

消費者トラブルに遭ってしまったら、取りあえず、各地の消費生活センターに相談です!消費者ホットライン「188」番で、身近な消費生活センターや相談窓口を教えてもらえるそうです。

それくらいだったら、頑張れそうですよね。
こういう制度があることを知っておいて、いざという時、役立てましょう!

(参考:政府広報オンライン

企業法・授業まとめ-第13回-

授業ブログ第13回目です。

今回は「倒産法」について。
第2回のブログで、会社の一生を人に例えた話をしました。
経営破綻は、その先会社が生き残れるか否かの瀬戸際ではないでしょうか。

そのような事態に陥った場合、
どのような判断をしていくことになるのでしょうか。

“企業法・授業まとめ-第13回-” の続きを読む

ひまわり観察日記-2020-①

5月にしては異様な寒さも過ぎ、少しずつ気温が上がってきました。

もうすぐやってきそうな梅雨に、何だか気分までジメジメしてきそう…
そんな湿気に乗り越えるべく、今年もひまわりを植えました!

 

今年のラインナップは、
毎年お馴染みの「小夏」と、新顔の「夏物語」です。

 

小夏のほうは「ザ・ひまわり」という色合いですが、
夏物語は黄色・クリーム色の花がつくようです。

写真で見ると何だか淡い色合い。これもまた可愛いですね!

 

このひまわり観察日記も、なんと今年で3回目です。

ガーデニングが不慣れな私に観察されながら、
2018年も、2019年も何とか無事に咲いてくれてきたひまわりたち。

今年もばっちり咲いてもらうべく、こちらも気合を入れて種まきです。

 

毎度お馴染み、シャベルと培養土を準備します。

 

まずは小夏から蒔いていきます。
こちらも毎度お馴染み、キャプタンに包まれた青い種です。

2~3粒ずつ土に置き、その上に1センチ程土をかけて完了です。

 

 

次は夏物語を蒔いていきます。
こちらは小夏よりやや大きく、真っ黒な種でした。

同じ要領で土に置いていきます。

 

それぞれお水をあげて終了です!

◇ ◇ ◇

今年の夏も元気に開花し、会議室を華やかに彩ってほしいものです。
2020年もしっかり観察してまいります!

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成20年版

平成20年版六法全書

平成20年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、
統計法(平成19年法律第53号)があります。

統計法は、政府の機関が統計を作成・提供する際の基本的なルールを定めた法律です。それまでは、昭和22年に制定された同名の法律によっていたのですが、時代の変遷に伴って統計を取り巻く状況も変化したため、これに対応すべく、全面的に内容を見直したものです。

 

変更内容を一言でいうと、
行政のための統計」から「社会の情報基盤としての統計」へ。

 

公的統計の基本ルールを定めることで、公的統計の有用性が向上し、
日本の経済や社会の発展、 国民生活の向上にもつながるという考え方です。

ところで、統計が社会の発展や私たちの生活の向上につながるとは、一体どういうことなのでしょうか?普段の生活のなかで、国が作った統計を見ることなんてあまりないような気もしますが…。

公的統計が役立てられている場面について、ちょっと考えてみましょう。

 

例えば、企業が新しい支店を出そうとしている時。

出店場所を決めるにも、商品の品ぞろえを決めるにも、地域の人口や性別、年齢構成などの統計を参考にするのではないでしょうか。
経営者であれば、景気の動向を示す統計を見て「これから景気がよくなりそうだ」と思えば、採用数を増やしたり、設備投資を増やしたり、ということもあるかもしれません。

こんなふうに、行政機関だけでなく
社会で生活する皆が “何か判断をする時の材料” として公的統計を使っています。
まさに、「社会の情報基盤」なんですね。

 

国がおこなっている統計調査で、国民誰もが関係あるものといえば、国勢調査
統計法5条に、総務大臣は、国勢調査をおこない、国勢統計を作成しなければならない旨が規定されています。

5年に一度の調査なのですが、ちょうど2020年もその年に当たります。
つい先日、総務大臣が会見で、新型コロナウイルスの感染拡大の中でも「調査の延期は考えていない」と述べられていましたので、今年10月に予定どおりおこなわれることとなりそうです。

国勢調査のように、国の基本となる特に重要な統計を作るための調査を「基幹統計調査」といい、その作成から結果の公表に至るまで、調査を実施する行政機関が守らなければならない厳しいルールが設けられています。実は、調査の対象である個人や法人の側にも、回答する義務が課せられています。
回答を拒んだり、虚偽の回答をすると、50万円以下の罰金に処せられるのです(統計法61条に規定あり)。知っていましたか?
それだけ、重要な調査・統計だということですよね。

なんでも、西暦年の末尾が「0」の年は大規模調査として、西暦年の末尾が「5」の年には簡易調査として行われるそう。
2020年は、大規模調査、つまり調査項目数が多い方となります。

回答する側としては正直ちょっと面倒くさいですが、その結果作られる統計は、国や地方公共団体が政策や行政サービスを決定する際に利用されることはもちろん、民間企業や研究機関などでも幅広い用途に利用されています。
間接的にではありますが、私たちの生活に大きく影響してくるのです。

調査用紙が配布されたら、真摯に、出来るだけ正確に回答したいと思います。
(参考:総務省統計局HP

 

◇ ◇ ◇

 

改正された法令として収録されたものとしては、
道路交通法(昭和35年法律第105号)があります。

この年の改正のポイントは、

①悪質・危険運転者対策
 飲酒運転に対する制裁の強化、飲酒運転の幇助罪(車両や酒類を提供する行為など)の厳罰化、ひき逃げに対する罰則引き上げなど

②高齢運転者対策等
 75歳以上の高齢運転者の免許証更新時における認知機能検査の導入、高齢運転者標識(もみじマーク)の表示義務付けなど

③自転車利用者対策
 児童・幼児の自転車乗用時におけるヘルメット着用努力義務の導入など

④被害軽減対策
 後部座席シートベルトの着用義務付け

の4つでした。

どれも重要な改正ですが、今でも大きな課題として残されているのは、
②の高齢運転者対策ではないでしょうか。

 

我が国では急速に高齢化が進み、高齢の免許保有者も増加しています。
平成29年交通安全白書によると、75歳以上の運転者の死亡事故件数は、75歳未満の運転者と比較して、2倍以上多く発生しているということです。

特徴としては、道路を進行中、運転を誤って車線を逸脱し物件等に衝突する、といった事故が最も多いとのこと。

また、高齢運転者による交通死亡事故の原因では、ハンドルの操作不適による事故が最も多くなっており、中でも、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故の割合が高くなっています。

最近も、高齢運転者による痛ましい事故が発生しています。
どんなベテランドライバーでも、加齢に伴って動体視力が低下したり、瞬時に判断する力が低下するなどの身体的な変化は、避けられないもの。

それを考えると、
出来たら相当ご高齢の方には運転を卒業していただきたい、というのが本音です。
しかし、「体力等が衰えるからこそ車で移動したい」「車しか移動手段がない」などの事情も十分理解できます。

 

高齢者に限らず、実は私も、運転免許は取得しているものの、自らの運転技術に信頼がおけず、車は運転していません。
かなり交通が不便な土地で生活していたこともあるのですが、運転するのが怖くて、電動アシスト付き自転車でなんとか乗り切ったという経験もあります。
自転車を運転する体力があったからいいようなものの、体力が衰えてしまったら?と考えると…。

一朝一夕に解決することは難しいですが、少しずつでも、運転免許がなくても暮らせる環境づくりが進んだり、自動ブレーキなどの先進安全技術が開発されたりして、みんなが安心して安全に暮らせる社会になるといいですね。

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成21年版

平成21年六法全書

この年の六法全書に新収録された法令に、
保険法(平成20年法律第56号)があります。

保険法には、保険契約の締結~終了の、関係者の権利義務等が定められています。

このような保険契約に関するルールは、従来は商法に定められていました。
しかし、これらの規定は、明治32年の商法制定後、100年近くにわたって実質的な改正がなされておらず、表記も片仮名・文語体のままでした。
そこで、これらの規定を全面的に見直し、独立した法律としたのが保険法です。

保険法の主なポイントは、以下のことが挙げられます。

○これまでは基本的に適用がなかった、共済契約にも適用範囲を拡大

○これまでは規定がなかった、傷害疾病保険に関する規定を新設

○保険契約者等の保護
・片面的強行規定(へんめんてき きょうこうきてい)の導入
(約款の定めが保険法の条文よりも保険契約者等に不利な内容である場合には、
その部分を無効とする。一方、保険契約者等に有利な内容である場合には、無効とならない。)

○告知義務について、重要事項のうち保険会社から告知を求められた事項のみ告知すればよいことに変更

○保険金の支払時期についての規定を新設
(適正な保険金の支払に必要な調査のための合理的な期間が経過した時から、保険者は履行遅滞の責任を負う。)

○保険会社が倒産した場合でも、被害者が保険金から優先的に被害回復を受けられるようにするための先取特権の規定を新設

○保険金詐欺などの重大な事由があった場合に、保険会社が契約を解除できる旨の規定を新設

保険は、人生で2番目に高い買い物と聞いたことがあります。

高価で、しかも長い間付き合っていくこととなる「保険」。
契約すると分厚い約款を渡されますが
「見てもちんぷんかんぷん、結局最初の数行だけ読んで後は読まずじまい…」
という方も多いのでは?

そんな中、(聞きなれない言葉ですが)
「片面的強行規定」で保険契約者を保護してくれているとは
頼もしい限りですね。

しかし、せっかく法律が守ってくれていても
その存在を知らなければ、保険会社に言われるがままになってしまうかも。

「こんな法律があるんだなー」くらいのふんわりした知識からで大丈夫☝
知識をどんどん広げて、賢い消費者になりましょう!

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
少年法(昭和23年法律第168号)があります。

少年法も頻繁に改正されている法律ですが、
この年の改正のポイントは、次の4点です。

①家庭裁判所は、重大事件の被害者等から申出がある場合に、相当と認めるときは、少年審判の傍聴を許すことができる制度を創設すること

②家庭裁判所が被害者等に対し審判の状況を説明する制度を創設すること

③被害者等には、原則として、記録の閲覧・謄写を認めることとするとともに、
閲覧・謄写の対象となる記録の範囲を拡大すること

④被害者に代わり、被害者の配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹が意見を述べることができることとすること

一言でいうと
少年審判における犯罪被害者の権利利益の一層の保護を図るための改正
ということになります。

従来、少年事件では、人格的に未成熟で傷つきやすい少年の情操を保護し、少年時代の非行によって長い将来にわたって不利益を受けることを回避するなどの配慮によって、
少年事件の審判手続は(刑事裁判の公判とは違って)非公開とされ、事件の当事者である被害者でさえ、加害者である少年の審判の内容や結果について十分な情報を得ることができない、という状況が続いていました。

しかし、被害者自身による、その悲惨な状況及び刑事手続における疎外された地位に対する不満の訴えなどを受けて、被害者に対する配慮を求める声が高まっており、立法による制度の創設も順次進められてきています。

少年の保護と被害者の保護、相反する二つの要請。
どこでバランスを取るのか、とても難しい問題だと思います。

軽々しく意見を言うことは控えますが、ただ、どちらか一方だけ満たせばよいという態度では解決しないということだけは確かだと思います。

犯罪被害者の権利保護の動きは、今後も推進されていくことになるでしょう。
関心をもって見守りたいと思います。

(参考:法務省HP

六法全書クロニクル ~改正史記~ 平成22年版

六法全書 平成22年版

 

この年の六法全書に新収録された法令に、
消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号)
があります。
この法律で、内閣府の外局として、消費者庁が設置されました。

2000年代半ば以降、いわゆる食品偽装問題中国製冷凍ぎょうざ事件ガス瞬間湯沸かし器中毒事故など、消費者の身近なところで大きな不安をもたらす消費者問題が多数発生しましたが、製品や事業ごとに所管が複数の省庁にまたがっていたため、対応が後手に回りました。

この縦割り行政の弊害解消のために構想されたのが、消費者庁です。
消費者行政の「司令塔」として、
消費者行政を統一的・一元的に推進することが期待されています。

 

ここで「消費者問題」とは、どのようなものでしょうか。

 

「消費者」とは、商品を購入したりサービスを利用したりといった「消費」活動をする人のことです。全ての人は消費者であるといえます。

「消費者」には、次のような特徴があります。

第一に、生身の人間であること。
生命・身体に深刻な被害を受けると、二度と取り返しがつきません。

第二に、商品・サービスを製造・販売する事業者より、
情報の質と量で劣っていること。
商品・サービスの選択に必要な情報の全てを独力で把握することは困難です。

第三に、事業者との間に、交渉力の格差があること。
消費者は、事業者の巧みなセールストークや強引な売り込みにより、
意図しない消費行動をとってしまうことがあります。

一般的に、これらの特徴を要因として含む問題を
「消費者問題」というそうです。

 

具体的に見てみましょう。

消費者問題年表には、最近の消費者問題として、

  • グルーポンの販売したおせち料理に苦情が相次ぐ
  • 小麦加水分解物を含有する「茶のしずく石鹸」によるアレルギー発覚
  • ホテル、百貨店、レストラン等における食品表示等の不正事案多発
  • 格安旅行会社「てるみくらぶ」、破産手続開始決定
  • 法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が急増

などが挙げられています。
かなり幅広い問題が含まれていますね。

一番最近では、「助成金が出るので個人情報を教えてほしい」などといった、
新型コロナウイルスに便乗した悪質商法も現れているそうです。
みんなが力を合わせて困難を乗り越えなければならないこんな状況で
他人の困難に付け込むなんて、本当に許せませんよね。

先ほど述べたとおり、
消費者は、情報力・交渉力の点で、構造的に弱い立場に置かれています。
何もしないでいると、消費者の利益は侵害されやすいです。

そこで、消費者庁など、公権力がその保護をおこなっているわけですが、
消費者の利益を実現するためには、私たち消費者自身も、責任を果たしていく必要があると言われています。

消費者団体の国際的組織である国際消費者機構は、
消費者の責任として、次の5つを挙げています。

①批判的意識を持つ責任
②主張し行動する責任
③社会的弱者への配慮責任
④環境への配慮責任
⑤連帯する責任

 

何だか少し難しくなってきましたが・・・

要するに、積極的に消費者問題に関心を持って「こんなことがあるんだ」と知っておくことにより、騙されているかも?と気付くことが可能になるのでは、ということです。
一人一人が興味関心を持ち、「賢い消費者」になって、消費者問題をなくしていきたいですね。
(参考:消費者庁HP

 

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改正された法令として収録されたものとしては、
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(平成3年法律第76号)
があります。長い名前の法律ですね。

この年の一部改正は、
①子育て期間中の働き方の見直し
②父親も子育てができる働き方の実現
③仕事と介護の両立支援
④実効性の確保
の4つを柱としていたのですが、

ここでは
③仕事と介護の両立支援
にスポットを当ててみたいと思います。

この法改正で、
介護のための短期の休暇である「介護休暇」制度が創設されました。

条文を見てみましょう。

同法16条の5第1項は、
「要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、1の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。」
と規定しています。

背後には、家族の介護・看護のために離転職している労働者が、
平14年からの5年間で約50万人も存在していたという状況がありました。
また、 要介護者を日常的に介護する期間に
年休・欠勤等で対応している労働者も多かったといいます。

それまでも、「介護休業」の制度は存在していました。

介護「休暇」と介護「休業」の違いは、以下の点などがあります。

〇取得可能な休暇日数
介護休業は、対象家族一人当たり通算93日まで

〇給付金の有無
介護休業については、要件を満たせば介護休業給付金が支給される

〇申請方法
介護休業は、休業開始予定日と終了予定日を明確にし、開始日の2週間前には申請しなければならない。介護休暇は、年次休暇のように、直属の上司に口頭で伝えて取得可能。

…介護休暇を取得したときの賃金に関しては、法的な定めはなく、各企業の判断にゆだねられています。有給のところもありますが、特に中小企業では無給のところも多数存在します。取得する前に、自分が働いている会社の制度を確認する必要がありそうです。

事前にしっかりした計画を立てて、長い期間休むのが介護休業
突発的な事態の際に、短時間だけ休むのが介護休暇という切り分けのようです。

人生100年時代と言われるように、
高齢化が進み、介護を必要とする方が増加しています。
これに伴い、男女を問わず、ご家族の介護をおこなう方も増えてきました。
要介護高齢者の子ども世代となると、まだ現役で働いている世代であることが普通です。働き盛り世代で、企業において職責の重い仕事に従事する方も少なくありません。

そうした中、仕事と介護の両立が困難となり、
いわゆる「介護離職」という選択をしている方が大勢いらっしゃいます。
企業としても、経験を積んだ熟練社員が介護のために離職してしまうことは
大きな痛手でしょう。

誰しもに、突然降りかかってくる可能性がある介護問題。
介護と仕事の両立ができるようしっかり支援することは、
社会全体のためにますます重要になってくると思われます。