いきなり企業法! <2-1.株式会社とは>

第2回は株式会社について、いきなり!解説していきたい。

……と、その前に。会社も人と同じく生まれてから死ぬまで色々あって、それぞれの人生があるのだ、とは言いすぎかもしれないが、人の一生のように生まれてから死ぬまで、法律によって決められた様々な手続がある。今回は、まずその話から始めたい。
そんな導入っぽい話から始めることで“いきなり感”がやや薄まるが、そこは気にせず進めよう。

-人の一生、会社の一生

人は出生により権利能力を獲得し(民法3条1項「私権の享有は、出生に始まる。」)、出生届を提出して戸籍に記載される。成長し、結婚して新しい戸籍を二人で作ったり、また離婚して親の戸籍に戻ったり、そんなことを経験する人もいるだろう。
なお、成人するまでの間は行為能力が制限される(民法5条1項「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」同条2項「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」)。子どもが勝手に契約してきたとしても、親(法定代理人)が契約を解除することができるのである。
そんなこんなで、最後は死亡届を提出し、その人の人生が終わる。

これに対して会社の出生は、設立の登記が完了したときである(会社法49条「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」)。人でいう戸籍は、会社における登記と考えてよいだろう。登記が完了することで株式会社として成立し、前回解説したとおり、法人格が与えられて権利義務の主体となれるようになる。事業をおこなう中で分割や合併、M&Aをおこなえば二つの会社が一つとなり、一方の会社の法人格は消滅してその登記も抹消される。代表者が交代して長く長く続く会社もあれば、解散、清算の登記をしてそこで“おしまい”となる会社もある。

 

-設立中の法律関係、権利能力

さて、上で述べたとおり、人は出生により権利能力を獲得する。そのため胎児は権利能力を有さないものとされるが、相続と遺贈、損害賠償請求に限り権利能力が認められている。

たとえば、お母さんのお腹の中に赤ちゃんがいて、そのお父さんが交通事故で突然亡くなったとする。この場合、まず相続については民法886条1項に「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」とあるとおり、お腹の中の赤ちゃんはお父さんの財産を相続することができる。しかし同条2項に「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」とあるように死産の場合は適用されないため、実際に遺産分割をするのは赤ちゃんが無事に生まれてからの方がよいだろう。次に損害賠償請求については「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」と民法721条に規定されている。つまり、まだ生まれていなくても、事故の加害者に対して損害賠償請求が可能なのだ。

会社の話に戻そう。
出生前、つまり登記前である設立中の会社は、権利義務の主体となることができないが、設立のためには様々な行為が必要となる。そういった行為は一体誰に帰属するのだろうか。

<企業法から少し逸れるが、基本的人権といえば、「すべての人が生まれながらに持っているものである」というのは、きっと耳にしたこともあるだろう。しかし、行政の手続の上では無戸籍者、すなわち戸籍に記載のない人については「存在しない人」として扱われてしまう。戸籍に記載がなければ住民票もなく、そうなると行政サービスはもちろん義務教育も受けられず、パスポートも取得できず、選挙権もないのだ。国が権利や保護を与えたくとも、法律上それができないのである。いわゆる“無国籍問題”は一刻も早く解消すべき問題のひとつであり、企業法からあまりに離れてしまうためここではあまり深く触れないが、興味があれば調べてみていただきたい。>

法人の権利能力については民法34条により、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定められている。定款で定めた目的の範囲外の行為によって不利益が生まれたとすれば、会社としてはなかったことにしたいだろう。法的には目的の範囲外の行為については「権利がないってことは無効っぽいし、なかったことにできるんじゃないの」と思いがちだが、そうではない。しかし、この“目的の範囲内”の解釈によってほとんどの行為が認められているというのが実状である。

ここで再び八幡製鉄所事件の判決を参照しよう。

会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。
最高裁判所大法廷判決 昭和45年6月24日

このとおり、政治的献金も「定款で定めた目的の範囲内」と解される。
つまり、何でもありといえば何でもありなのである。人にしかおこなうことができない、人にしか認める必要がない権利以外であればほとんどが認められる。

 

-発起人の存在、会社の3つの特徴

株式会社では「発起人」が手続をおこなう。発起人は設立を企画し、設立事務を行い、会社の株式を最低一株は引き受ける。つまり、会社の設立後は株主となり、これを発起設立という。発起人がそのまま代表取締役になることが多いため混同しがちだが、正しくは異なる機関で、設立手続を行うのが発起人、設立後に会社として行為をするのが代表取締役である。発起人が権限の範囲内で行なった行為の効果は当然に設立後の会社に引き継がれる。
権限の範囲内の行為とは、たとえば定款を作ったり、それを公証役場に持って行って認証してもらったり、株式の引受けや払込みをしたり、設立の登記をしたり、などなど、ざっと設立に必要な諸手続ひととおり、といったところである。これらの行為は会社の設立後、会社に帰属することとなるのである。

このように独立した権利義務を認めることを法人性という。これは会社の特徴の一つであり、残り二つの営利性、社団性とセットで覚えていただきたい。

会社法5条において「会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」と定められており、会社の行為には営利性が求められる。
さてこの場合、法律で規定されているから営利性があるのか、それとも営利性があるから法律で規定されたのか。これはニワトリが先か卵が先かという非常に哲学的な話のようだがしかし答えはどちらでもよくて、そもそも問い自体の重要度は高くない。こういった条文があるからこそ、会社の特徴の一つに営利性があり、会社というのは利益を追求することを目的とした存在であるということが定められる。重要なのは目的を定めることで、その目的が一つ決まると法律の規制の方針が決まる。会社法の基本原則の一つに「株主利益最大化原則」というものがあり、会社は事業で得た利益を構成員に分配することを目的とされている。ステークホルダーの利害調整の方向性を決めるにあたり、世のため人のため!などと言っていてはキリがない。会社は利益を追求するというその目的に沿ってみんなで調整していきましょう、というのが会社法なのである。

最後に社団性について、現在の会社法においてはほとんど意味をなさない特徴ではあるが、学問上特徴の一つとして決まっているので取りあげておく。

社団とは個人から独立した人の集合体という意味がある。かつては複数人でやらなければ会社が存在する意味がない、一人で事業をするなら会社という法人格は不要なのではないかという話もあり、株式会社は設立時の発起人の人数として7名を要求していた。これが平成2年の法律改正でこの規定は撤廃され、以降、一人でも会社を設立することが認められている。一人なのに社団とは一体……という疑問が浮かぶのは当然であるが、後々人が増える可能性があれば社団性が認められることになっている。一人でいる期間が長く、人を増やす気がないように見える場合は社団性が認められないのかというとそうでもなくて、増える要素があればいつだってそこに社団性はあるのである。
人は一人であっても屋号や芸名、ペンネームを使って活動することもある。そう考えると別人格として会社をひとつ持つことは何ら不自然ではないだろう。

 

-会社の「形態」、どれを選ぶ?

会社の特徴がわかったところでテーマに戻って話を進めよう。会社を設立するにあたり、会社の形態を決めなくてはならない。前回簡単に紹介したとおり、会社法では合名会社、合資会社、合同会社、株式会社の四つを会社として定めている。合同会社と株式会社の実務上の違いは何だろうか。

日本で最も一般的なのは株式会社であるため、なんとなく株式会社が格上というイメージを抱きがちであるが、たとえばAppleや西友は合同会社を選択している。
合同会社の特徴としては、所有と経営が密接である点が挙げられ、社員、株式会社でいうところの株主と代表者が一致している。また、法人が代表社員という株主+代表取締役というような存在になることができるのも特徴の一つで、先に挙げたAppleも西友も、代表社員は会社である。外国法人が日本に会社を作るときによく利用される。

それに対して株式会社の特徴は大きく四つ、
1.所有と経営の分離
2.株主の有限責任
3.株式の譲渡性
4.機関の分化
である。

 

-株式会社の特徴

まず一つ目、所有と経営の分離について。
先ほど合同会社では一致していると説明したが、株式会社においては会社を所有する「株主」と、実際に経営をおこなう「取締役」は別である。日々の経営については取締役が決定するが、会社の基本となる部分や重要なことについては株主総会を開き、株主の多数決によって決められる。規模の小さい会社では取締役が株主であることも多いが、会社法上、分離すべきであることが求められている。構成員(株主)が多くなればなるほど意思決定が難しくなるため、経営は別の人に任せた方がスムーズなのである。とはいえ会社は株主のものなので、大事なところは株主総会を開いて多数決をとるのである。

次に株主の有限責任だが、これは前回触れたとおり、会社の負債を肩代わりするようなことはない、ということである。先ほど説明したように株主が細かい意思決定をすることはなく、また株主が多くなればなるほどみんなが会社の行為について把握することが難しいので、自分の知らないところでおこなわれた会社の行為についてまで無限に責任を負ってしまっては大変だ。

あなたは株式会社タイラカ商店の株をたくさん持っているとしよう。ある日カエルさんのうっかりミスで、タイラカ商店は取引先に損害を出してしまった。その結果、取引先から損害賠償請求され、タイラカ商店はその賠償義務を負うことに……カエルさんから「会社の財産を全部売っても、取引先にお金を払いきれませんでした。だから申し訳ないんだけど、株主であるあなたにもお金を払っていただきたいのです!」と言われたら、いやいや、せっかくお金を出して買った株券をただの紙切れにされた挙げ句お金まで請求されちゃうの!!?と思うだろう。
そんなわけで、株主の責任は有限、リスクは限定されている。

三つ目は株式の譲渡性である。株式については次回以降、詳しく説明するのでここではさらっと軽めにいこう。
ある日あなたは「タイラカ商店に投資したはいいものの、なんだかイマイチでパッとしないや……やっぱり株、いらないな……」と思い、投資を回収しようとする。しかし、タイラカ商店にあなたの株を買い取ってもらうことは、基本的には不可能だ(例外として、株主総会を経てタイラカ商店が自己株取得ということもできなくはないが、要件はかなり厳しいのである。)。そうなると株を現金化するには、他の人に買ってもらうことになる。なお、見知らぬ人が株主になることを避けるため、会社は株式に譲渡制限をつけることも可能だ。

最後は機関の分化。
機関についてもまた次回以降解説するが、会社そのものに意思はないため、「会社」として行為をして会社を動かす人たちがいる。代表取締役、取締役、監査役や会計監査人など様々な役割の人たちがいて、これらを機関と呼ぶ。機関を分けてそれぞれが監視し、牽制しあうことで会社が健全に運営される仕組みになっている。


…と、長くなってきたので一旦ここでおわり。
後半は株式会社の作り方ということで、具体的な設立の仕方について解説したい。

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