企業法・授業まとめ-第4回-

第4回:「機関」

※今回は平成26年改正前の内容を解説しています。改正の内容についての解説は第6回で。

【株式会社の機関の種類】
株式会社に必ず設置しなければならない機関として、会社法上、以下の2つ定められている。

・株主総会:会社の所有者の集まり
会社の最高の意思決定機関として、一応「機関」のひとつ。
・取締役(≠ 取締役会):株主から委任を受けて実際に経営する機関
株主総会とともに、全ての株式会社に必要な「機関」。
⇒この2つはあらゆる株式会社にあるが、
「監査役」「取締役会」の有無は会社によって異なる。

Q. なぜこの2つが必要的な設置機関とされるのか?
⇒「所有と経営を分離する」という方法を株式会社がとった以上、この2つは必ず必要になってくる。(所有:株主総会、経営:取締役)
-株式:会社の持分権を均一に細分化した割合的な単位のこと
-「所有と経営の分離」:株式会社の特徴のひとつ

この大原則をおさえた上で、どのような機関が設置されることになっているのか。
(大原則の2つだけだと、取締役は自身の利益を追及し、好き勝手する可能性がある。それを逐一株主総会でチェックすることは難しい。よって、監視する役目を設置したり、そもそも「何をするか」を慎重に決めてもらう、といった“発想”(ex. 取締役会)になる。)
※株主が自分で全てをできればベストだが、ある程度任せなければいけない、となっている。(∵1人で決めると暴走や独裁の可能性アリ)
⇒取締役会という会議体を設置することによって、「皆で話し合って決めてね」とお願いすることができる。

⇩株式会社の機関の構成は、「取締役会」を設置するか否かにより、以下の2種類に分けることができる。

非取締役会設置会社(「取締役会」という「機関」を置かない会社)
会社の形態としてシンプルな形。監査役を置かないこともできる。
※ちなみに、以前は取締役会の設置は必須だった!

・取締役会設置会社(「取締役会」という「機関」を置く会社)
取締役会とは、3人以上の取締役で構成される会議体のこと。
取締役会が存在すると、一定程度の重要な意思決定を株主総会から取締役会にまで落とすことができる。つまり、取締役会を設置すると、株主総会の権限が縮小する。さらに、監査役の設置が義務付けられる。その結果、株主が有する「取締役を監視監督する権限」自体も縮小することになる(∵監査役に委ねる面が大きくなるから)。
⇒本来、株主総会がオーナーなので、会社経営に関すること・取締役の行為を監督することができるが、ある程度は委ねることができるよ、ということ。

会社の機関設計については、条文で定められている。
※会社とは、存在しないものを、法律上「存在する」としている。作る以上、会社の組み立ては(絶対的記載事項はあるものの)基本自由。また、「どういったルールに沿って会社を作るのか」の大きな方向性もまた自由。基本的にはどのような設計をしてもOKとされている。

⇩それを規定しているのが会社法326条!

会社法326条(株主総会以外の機関の設置)
「1 株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない
2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。」

⇒定められているのはこれだけ。
その他(機関の設置・設計)は原則自由であるという規定。

会社法327条(取締役会等の設置義務等)
「1 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない
①公開会社
②監査役会設置会社
③監査等委員会設置会社
④指名委員会等設置会社
2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。」

⇒会社の形態に応じて特定の機関の設置が義務となる規定。

会社法328条1項(大会社のおける監査役会等の設置義務)
「大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。

⇒設置義務があるという規定

会社法では、機関設計については、パズルのように規定が各所でされている。(監査等委員会の規定ができる前)
⇩各条文をたどると、以下のような整理に…

大会社
(会計監査人設置義務)
非大会社
公開会社
(取締役会設置義務)
株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
株主総会+取締役会+三委員会+会計監査人
株主総会+取締役会+監査役
株主総会+取締役会+監査役会
株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
株主総会+取締役会+三委員会+会計監査人
非公開会社 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
株主総会+取締役会+三委員会+会計監査人
株主総会+取締役
株主総会+取締役+監査役
株主総会+取締役+監査役+会計監査人
株主総会+取締役会+会計参与
株主総会+取締役会+監査役
株主総会+取締役会+監査役会
株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
株主総会+取締役会+三委員会+会計監査人

大会社 :資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社
公開会社:株式会社のうち、証券市場に上場する等して株式を公開する会社(株式譲渡制限がない会社)
⇒上場会社は大体、大会社且つ公開会社

※さらに任意で会計参与の設置ができる(後ほど解説)

※機関設計の自由度:公開会社<非公開会社
株式の譲渡を通じて株主が頻繁に交代することが予定され、個々の株主が業務執行者を十分に監視することが期待できない。業務執行監視のための取締役会の設置が義務付け。

※機関設計の自由度:大会社<非大会社
会計監査人の設置が義務付け。会社債権者保護。

⇩     ⇩     ⇩
このように、会社の設計図のルールは会社法上自由であり
色々なメニューが用意されている。
一方で、選択肢が多いほど不自由だったりする…
(∵「何をどうするかはあなたの責任ですよ」ということだから)

———

【取締役会と代表取締役の関係】
⇩まずは条文から

会社法363条1項(取締役会設置会社の取締役の権限)
「1 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
①代表取締役
②代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの。」

取締役会:すべての取締役で組織される機関(362条)。代表取締役の選定・解職をすることができる。(⇔「取締役」自体の選任は株主総会)

<参考:代表取締役と社長>
代表取締役は、よく「社長」と呼ばれる。しかし、会社法において「社長」という言葉は用いられない。それぞれ何が違うのか?◎代表取締役:
対外的なやりとりをする肩書◎社長:
社内的な権限、社内的な役割。
代表取締役ではない社長がいることもあり、社長ではない人が代表取締役を名乗っていることもある。(ex. 代表取締役会長、~専務、~副社長など)しかし、大体の会社において対外的・対内的なトップが一致することが多く、「代表取締役社長」が多く存在するのである。

取締役の中から誰を代表取締役として選ぶかは、「取締役」の過半数で決められる。(× 株主総会)ゆえに、選出された取締役の中から、株主の期待とは違う代表取締役を選ぶことも、法的には可能。取締役の過半数を支配すれば、株主が期待していた代表取締役を解職することも可能。
しかし、基本は出来レースなので、そんなことはあまりおこらない。

※たまにズレが生じる。株主総会は保有株式数なので一人で過半数を取ることも可能。取締役会は頭数なので、一人で過半数をとることはできない。
※代表取締役は氏名と住所までが登記される(911条3項14号)
(ほかの取締役は名前のみ)

Q. なぜ「代表取締役」を決めなければいけないのか?
⇒「一人で物事を決めて実行する」ことをやっていると、その人が暴走する可能性があり、そうした事態を防ぐため、「意思決定をする人」と「実際に業務を執行する人」を区別している。

⇩その区別が会社法上の…

・意思決定である「業務執行の決定
・その実行行為である「業務執行

例)重要な財産の処分や借入れ:
・取締役会で借入れの意思決定がされる(取締役会で合議して、議事録に記載)
業務執行の決定
・銀行からの借入れの執行は、代表が行う(契約書には代表取締役が押印)
業務の執行
※この印には「●●株式会社 代表取締役××(氏名)」の記載、つまり代表ひとりの名前があれば、最終的には契約締結が可能。代表権がなければ契約締結行為はできない。

「代表権」という言葉
観念的・象徴的に会社を代表しているのではなく、“会社の代表として行動できる”ということ(その行動の法的効果は会社に帰属)。 既述のとおり、「社長」とはあくまで別の概念。
代表取締役は会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を

有する(会社法349条4項)。ただし、そのうち重要な業務の意思決定は取締役会・株主総会でおこなう必要がある。

Q. なぜ取締役会での決定事項なのにサインするのは代表取締役だけなのか?役員全員でしてはだめ?
『会社の代表は1人しかいないから』?

⇩なぜそんなに回りくどいことをするかというと、条文で定められているから。

会社法349条(株式会社の代表)
「1 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りではない。
2 前項本文の取締役が二人以上である場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

⇒代表取締役はすべての行為ができる。
「すべての行為」には細かなことも含まれる。極端な話、
– 事業を1つ買う
– ペンを1本買う
いずれの行為も、「取引」という面から見ればすべて同じ。違いは(ざっくりと言えば)規模だけ。よって、この取引はどちらも「売買契約」であり、取引としては同じ種類。しかし、「ペンを1本買う」行為を事業の売買と同じ手順で進めるなんてありえない。

⇩そこで…

会社法14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
「1 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」
※使用人=従業員

⇒代表取締役がやるまでもないことは、従業員に委任できる。

会社法15条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)
「物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」

⇒コンビニ等で店員が「売る行為」をできるのは、この条文があるから。

これらの条文により、基本的には代表取締役がすべての業務執行をおこなう権限を持つが、細かい物品の売買等に関しては従業員等に委任することができ、委任された人たちが行為(業務執行)することができる。

———

また、株主総会・取締役のみが設置必須の機関であると述べたが、その原則に戻った時、取締役を1人しか置いていない場合は、以下の条文のとおり。

⇩取締役会を設置していない会社の場合

会社法348条(業務の執行)
1 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
①支配人の選任及び解任
②支店の設置、移転及び廃止
③298条1項各号に掲げる事項
④取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
⑤426条1項の規定による定款の定めに基づく423条1項の責任の免除
4 大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。

⇒基本1人しかいなければ、その人が決定・実行できる。
しかし、それでは不安と考える株主がいた場合には、取締役を2人設置し「合議によって決定・実行して!」とする:二人で考え・決めたのだから正しいはず……となるから。

⇩取締役会を設置している会社の場合

会社法362条(取締役会の権限)
「1 取締役会は、すべての取締役で組織する
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
取締役会設置会社の業務執行の決定
②取締役の職務の執行の監督
③代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
①重要な財産の処分及び譲受け
②多額の借財

⑥取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(※内部統制システム)
⑦426条1項の規定による定款の定めに基づく423条1項の責任の免除」

⇒取締役会の過半数で業務執行の意思決定をする。
決めた後で、実際に契約書にサインするのは代表取締役。

———

【業務執行は代表取締役がおこなう、ということの意味】
実際に業務執行するのは代表取締役。
業務執行できる権利を持った人のことを、「代表権がある」ともいう。
代表権がない人にも、ある程度の業務執行を委任することは可能。

例えば……
文房具屋でペンを1本買う:依頼された担当者が購入可能
大きな機材の発注     :承認が必要な場合も、誰が当該行為をできるかは社内の権限分掌の規程(稟議規程)などで決まる。
※社内の権限があるかどうかについては、社内ルール。それを信じた相手方には対抗できないこともある。

会社の意思決定~意思表示(会社法)
「取締役会で決議」→「代表取締役が業務執行」
⇒この仕組みを採用するメリットは、「前段階(=意思決定)をみんなで話し合って決めてください」としておくことで、代表取締役が好き勝手なことをしなくなる点。プラス、「株主利益の最大化のために頑張ってくれるのではないか」となること。

一方で、「ズレ」が生じる可能性がある。
例えば(大げさな例えではあるが)、取締役会で「A事業を売却しよう」という決定があったとき、代表取締役が勝手にB事業の売買契約書にサインしてしまった、といったケースなど。
このように「決定事項と行為のズレ」は、理論的には生じる。
又は「決定していないことを勝手に行為する」ことも…

そんなときは、民法の解決方法を借りて処理・解決する。
(人になぞらえて、会社や法人格の話をしているので)

人の意思決定~表示行為(民法)
(動機→)「(内心的)効果意思」→(「意思表示」)→「表示行為」
考える過程を、民法学者がこのように呼んでいる。図にすると以下の通り。

<人の意思決定から表示行為まで(意思の紐づかない行為は原則無効)>
人の意思決定から意思表示まで

よく見てみると、会社の意思決定も似たようなものでは…?

<会社の意思決定から意思表示まで(決議のない重要な業務行為は原則無効)>
会社の意思決定から意思表示まで

つまり会社法上でいうと、取締役会決議のない代表取締役の行為は無効となる。
そうした事態など、今までに紛争となった事例がある⇩

最高裁判所昭和38年9月5日判決
〔判決文〕
株式会社の代表取締役が、自己の利益のため表面上会社の代表者として法律行為をなした場合において、相手方が右代表取締役の真意を知りまたは知り得べきものであつたときは、民法93条但書の規定を類推し、右の法律行為はその効力を生じないものと解するのが相当である。
しかるに、原判決は、訴外Aは、登記簿上上告会社の代表権限があるのを幸い、自己の利益のために、上告会社所有の本件建物を被上告会社に売り渡したものであり、被上告会社は右の事情を知りながら悪意でこれを買い受けたものであるから、右の売買契約は無効である旨の上告会社の抗弁に対し、代表取締役が会社を代表して行為をする場合に、その経済的利益を自己におさめる底意があつたという事実は何ら会社に対する効果に影響はないとの理由により、果して上告会社が主張するとおり、訴外Aに背任的な権限濫用の行為があつたか否か、また、被上告会社の知情の点如何を審理判断することなく、たやすくこれを排斥しているのであつて、ひつきよう法令の解釈を誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法あるを免れない。
<参考:自然人の場合の意思決定と表示行為のズレに関する条文>
民法第二節(意思表示)

93条(心裡留保)
「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。」
94条(虚偽表示)
「1 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」
95条(錯誤)
「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」(※ネットショッピング?)
96条(詐欺又は強迫)
「1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

———

【会社の意思決定(業務執行とズレたら…?):代理・決定】
会社の意思決定から意思表示までについても

「取締役会で決議」→「代表取締役が業務執行」

の間にズレがある場合(代表取締役が勝手に契約等)、法的に効力を生じないこともある。(取締役会での決議が必要な重要な行為に限る)
※会社の担当者が勝手に契約をしていた場合も同様。

では、ズレていたり、決定した内容と別の行為をした場合には?民法の代理では?(意思表示のズレは同じ人の中での話、代理は違う人の間での話)

<参照:自然人の場合の意思決定と表示行為のズレに関する条文>
民法第三節(代理) ※法人は「代表」だが、民法上の「代理」の規定を使うことも

99条(代理行為の要件及び効果)
「1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。」
100条(本人のためにすることを示さない意思表示)
「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」
109条(代理権授与の表示による表見代理)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

⇒本当は代理権を与えていないのにも関わらず、「与えた」という旨の委任状等を渡してしまった場合には、その委任状の範囲内で責任を負いなさい、という規定。(会社法354条と似ている)

110条(権限外の行為の表見代理)
「前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」
112条(代理権消滅後の表見代理)
「代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。」
354条(表見代表取締役)
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

代表取締役が好き勝手やっても、相手方がその真意を知らない場合、有効になってしまう。
会社の意思決定~意思表示までについて、ズレが生じた際、その行為をどのように扱うのかが問題となったケースがある。(実務的にもよくありそう……)

最高裁判所昭和35年10月14日判決
〔判決文〕
原判決の確定するところによれば、本件消費貸借の締結に当つたAは上告会社の使用人で、平素から、同会社が他から金員借入の交渉をなすに際し同会社の代表取締役たる社長Bの諒解を得て、上告会社常務取締役の名称を使用(同会社常務取締役なる肩書のある名刺を使用)していたものであるが、本件消費貸借についても右Bの承認の下に、同会社常務取締役の名称を使用したというのである。かくのごとき場合においては、上告会社は商法262条の規定の類推解釈により、右Aが会社のためにした金銭借入の行為について、善意の第三者に対してその責を負うものと解するのが相当であつて、これと同趣旨の原判決に所論のような違法ありとすることはできない。本件は消費貸借上の債務の履行請求の訴訟であつて、既に右債務について会社に責ありとする以上、割引のために使用された所論手形が偽造のものであつたとしても、同会社の右消費貸借上の債務に消長をきたすいわれはなく、また、本件借入金は右Aの委任を受けたCが受領したことは原判決の確定するところであるから、会社が右Aの借入行為につき責を負うべきものとする以上、右金銭受領行為についてもその責に任ずべきは当然であつて、この点についても原判決に所論のような違法はなく、論旨はすべて理由がない。
最高裁判所昭和52年10月14日判決
〔判決文〕
商法262条に基づく会社の責任は、善意の第三者に対するものであつて、その第三者が善意である限り、たとえ過失がある場合においても、会社は同条の責任を免れえないものであるが、同条は第三者の正当な信頼を保護しようとするものであるから、代表権の欠缺を知らないことにつき第三者に重大な過失があるときは、悪意の場合と同視し、会社はその責任を免れるものと解するのが相当である。

※ 過失、重過失、故意、悪意とは…?
過失 :一般的に要求される注意を欠いていること。
重過失:過失のうち、著しく不注意であった場合。
故意 :一定の結果が起こることを認識し、その結果が起こっても良いと認容していること。
悪意 :法律用語においては、ある事情を知っていること。(⇔ある事情を知らないこと:「善意」)

最高裁判所平成21年4月17日判決
〔判決文〕
会社法362条4項は、同項1号に定める重要な財産の処分も含めて重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めているので、代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行をすることは許されないが、代表取締役は株式会社の業務に関して一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有することにかんがみれば、代表取締役が取締役会の決議を経ないでした重要な業務執行に該当する取引も、内部的な意思決定を欠くにすぎないから、原則として有効であり、取引の相手方が取締役会の決議を経ていないことを知り又は知り得べかりしときに限り無効になると解される。そして、同項が重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めたのは、代表取締役への権限の集中を抑制し、取締役相互の協議による結論に沿った業務の執行を確保することによって会社の利益を保護しようとする趣旨に出たものと解される。この趣旨からすれば、株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、これを主張することはできないと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、本件債権譲渡はAの重要な財産の処分に該当するが、Aの取締役会が本件債権譲渡の無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情はうかがわれない。そうすると、本件債権譲渡の対象とされた本件過払金返還請求権の債務者である被上告人は、上告人Y1に対し、Aの取締役会の決議を経ていないことを理由とする本件債権譲渡の無効を主張することはできないというべきである。

信じて取引したのに相手が会社の承認を取っていなかった!となっても、信じたものは最終的に保護されるようになっている……!

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