企業法・授業まとめ-第5回-

授業まとめブログ、第5回目です。

前回からしばらく時間があいてしまいました…
しかし、前回の「会社の機関」に続いて、今回は「役員の責任」について。

何かをする以上、責任が付いて回るのが常です。

<記事内の色分けについて>
●オレンジ
講義中、学生の方々に言葉の意味・意義に関する質問を投げかけています。
視野を広げてくれる回答も多いかと思いますので、ぜひご参照ください。
●ブルー
講義の本軸に加え、ポイントや補足として平山がお話した内容になります。
多少口語的ですが、“授業”の臨場感を味わっていただければと思います。


と、授業に入る前に。
会社に対するイメージについて少しお話ししてみましょう。

みんなが知っていそうな会社をひとつ挙げてみてください。
サントリーとか?

じゃあ、サントリーにはどんな役職、肩書の人がいると思いますか。5つ挙げてみてください。
社長、取締役、監査役、代表取締役、……経理?

次の方、それ以外に5つ挙げてみてください。
専務、課長、部長、……主任……派遣……?

ありがとうございます。
ちなみに今挙げていただいたうち、会社法上存在する役職は代表取締役、取締役、監査役くらい。よく聞く「社長」という言葉は会社法には出てこなくて、これはあくまで内部的な序列のこと。会社法上のトップは代表取締役で、権限が一番強い業務執行機関。たとえば会長が代表取締役だったり、逆に、代表取締役でない社長がいたり、代表取締役=「社長」ではないので注意。

会社内の序列でいえば、社長がトップにいて、さっき挙げていただいた専務がいたり、部長やら課長やらがいて、という感じかと思いますが、これがタテの権限。経理部とか営業部とか、そういう事業部はヨコの権限。それぞれの事業部に部長がいたりして、タテの権限とヨコの権限はそんなイメージでつながっています。

まあ実際のところ社会に出てみても会社法の用語はなかなか使わないので、どの言葉もなかなか馴染み深いというわけではない……かもしれませんが、この授業ではそれぞれの法律上の位置付けをご説明していければ、というところで今回もがんばっていきましょう。

 

———

 

【前回のおおまかな復習・今回の授業に向けて】

1.「取締役会」と「代表取締役」の関係
-取締役会は意思決定機関(※「業務執行の決定」)
-代表取締役は業務執行機関
その他の取締役や従業員も委任を受けていれば、業務の意思決定と執行は可能(ただし、委任できない事項もある。)。
→人が「何かをしたい」「何かをすると決める」ことと、「実際に何かを実行する」ことは別である。会社も同様に、意思決定と業務執行はわかれている。
(※以下に出てくる、「人の意思決定から表示行為まで」「会社の意思決定から意思表示まで」の図もあわせて参照されたい。)

2.機関設計について
会社法では機関設計は原則自由であるが、株式会社の規模・形態に応じて、ある程度の機関の設置を義務付ける場合がある(債権者保護、株主保護のため)。
ある程度の監視・監督が必要になる場合。コーポレートガバナンス。

<会社法上の業務執行者>

会社法363条(取締役会設置会社の取締役の権限)
「1 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
代表取締役
② 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
2 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。」

→1項:業務を「執行する」。「決定する」とはしっかりと使い分けられている。つい流しがちだが、意識して読むことが理解につながる!

会社法14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
「1 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」
会社法15条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)
物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」

<会社法上の意思決定者、委任不可事項>

会社法348条(業務の執行)取締役会を設置していない会社の場合
「1 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない
①支配人の選任及び解任
②支店の設置、移転及び廃止
③298条1項各号に掲げる事項
④取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
⑤426条1項の規定による定款の定めに基づく423条1項の責任の免除
4 大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。」
会社法362条(取締役会の権限等)取締役会を設置している会社
「1 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う
①取締役会設置会社の業務執行の決定
②取締役の職務の執行の監督
③代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない
重要な財産の処分及び譲受け
多額の借財
③支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
④支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
⑤676条1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
⑥取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(※内部統制システム)
⑦426条1項の規定による定款の定めに基づく423条1項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。」

⇧下線部分は“逆の書き方”をしている。
「取締役会で決めてね」ではなく、「取締役に委任できない」という表現。
じゃあ取締役会で決めた事は誰がやるのか?、これを定めているのが363条というわけ。

<取締役会設置会社:取締役会(業務執行の決定)>
実際に業務執行するのは代表取締役(もしくは権限の委任された取締役など)
ただし、ある程度の業務執行は可能。

人の意思決定から表示行為まで(意思の紐づかない行為は原則無効):

会社の意思決定から意思表示まで(決議のない重要な業務行為は原則無効):

 

<株主総会決議事項(委任不可事項)>
上記に加えて「株主総会」という機関。
株主総会において、取締役会がしているような業務執行の決定をすることは難しい…(人数がとても多いので)。でも会社法上、会社は株主のもの。株主のものである以上、非常に重要なことは株主総会で決めることになっている。

会社法309条(株主総会の決議)
「1 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
①第140条第2項及び第5項の株主総会
②第156条第1項の株主総会(第160条第1項の特定の株主を定める場合に限る。)
③第171条第1項及び第175条第1項の株主総会
④第180条第2項の株主総会
第199条第2項、第200条第1項、第202条第3項第4号及び第204条第2項の株主総会(※募集株式の発行)
⑥第238条第2項、第239条第1項、第241条第3項第4号及び第243条第2項の株主総会
⑦第339条第1項の株主総会(第342条第3項から第5項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)
⑧第425条第1項の株主総会
⑨第447条第1項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
⑩第454条第4項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会(※第六章 定款の変更、第七章 事業の譲渡等、第八章 解散)
⑫第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会」

株式の発行、会社の解散、会社の事業売却といったような事項。
また、第6章にある「定款の変更」も。
⇒定款がそれほど重要なものであるということ。繰り返しになるが、会社というのは実在しないものであり、目的や名前など色々なことを決めて、法律によって法人格が与えられることにより世の中にポン!と生み出される。その会社のこと、どんな事業をおこなうかなどは定款によって規律される。定款とはいわば「会社の設計図」のようなもの。この重要な部分をガラッと変えてしまうとき、それは株主総会の決議が必要でしょう!となるわけ。

こうした事項においてどれ程の決議が必要かというと、重要度によって異なる。
特別決議は株主の2/3以上を要する(309条2項)が、そのほかはたとえば普通決議=株主の過半数でOK(309条1項)。

⇩過半数でOKなもの、例えば…

会社法361条1項(取締役の報酬等)
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

→取締役のお給料は「社長」の一存で決まるわけではなく、「株主総会において決議をとるもの」と会社法上決められているのである。

※「取締役会に委任する」と書かれていなかったら、原則株主総会決議事項は、株主総会決議が必要(=委任不可)。

⇩ざっと表にしたのがコチラ。

意思決定者(要件) 具体例 業務執行
株主総会 特別決議 株主の3分の2以上 定款変更、募集株式の事項の決定、事業の重要な一部の譲渡、解散など 代表取締役(最終的な契約等の署名は「株式会社●●代表取締役▲▲」といった形で行われる。)
普通決議 株主の過半数 役員の報酬の決定など
取締役会(過半数) 取締役の過半数 重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、内部統制システム
取締役会であらかじめ決めて、包括的に委任することもできる事項(稟議規程、決裁基準等で定める)※ 各担当者(⇒ただし取締役会等である程度は包括的に基準を決めておく必要(担当役員は500万円までの意思決定は自由にして良いなど)。方針を決めた場合は、決裁規程等に定めることが一般的。) ある程度少額な設備機材の発注・発注 ※ 業務執行役員(契約等の署名については「株式会社●●取締役事業本部長▲▲」といった形で行われることも)
さらに少額な契約・発注等 ※  担当部長(非役員)
(同上)
 少額備品の購入など ※ 一般従業員(発注書を担当者名で書いたり、店舗で物を買ったりなど)

※会社の規模、取引額により内容は様々。
文房具の売買、懇親会の手配・代金支払い、から、事業の重要な一部の譲渡まで、会社の行為とするなら会社に効果帰属するという意味では同じ。しかし、重要度のランクに応じて、意思決定(≠業務執行)ができる機関は異なる。
→「取締役会であらかじめ決めて…」の欄は、特に会社法で定めらているものでもなく、会社によってある程度柔軟に対応可能。契約書も、必ずしも代表取締役の名前が必要ということはなく、執行役員の名前が…ということもある。

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