企業法・授業まとめ-第5回-

 

【役員等の責任】
では、これらの義務は結局、誰に対する責任なのか?
→基本的には、会社に対する責任として会社法上は設定されている。
なぜならば、委任契約において受任者は委任者へ義務を負う。
⇒経営判断の原則というのは、委任契約からも導き出される原則のこと。

任務懈怠責任:注意義務、忠実義務 ※任務懈怠責任・423条

損害賠償をする場合の要件:
・任務懈怠
・損害
・任務懈怠責任と損害の間の因果関係

帰責事由の立証責任:423条と428条

<参考:責任を否定すべき事由>
無過失の議論。
任務懈怠を証明した場合には、通常無過失の立証は不可能では?
任務懈怠の証明は「役員等は何をなすべきだったか」→「それをしていない。」
過失は「なすべきことをしていない。」、
無過失は「なすべきことをなさないことはなかった」
ただし、法令違反行為については、過失・任務懈怠が認められる。

 

【任務懈怠の具体的な判断】
取締役の意思決定により会社に損害。ただちに損害賠償請求か?

例:
ある街に支店を出す決定、うまくいかない。儲からない。撤退。損害が大きい。損害賠償請求が認められるか?
損害は誰がこうむっているの?株主なのか?

※経営判断の原則
Business judgement rule
米国で判例法として発達したルール。日本ではどこまで認められているか?
参考:医療行為との比較?

経営判断の原則:
「取締役の行った経営上の判断が合理的で適正なものである場合は、結果的に会社が損害を被ったとしても、裁判所は、取締役の経営事項については干渉せず、当該取締役も責任を負わない」というルールで、ビジネスジャッジメントルールともいいます。
コトバンクより)

※既述のとおり、役員の責任は会社に対するものであり、最終的には会社を所有している株主への責任となる。
さまざまな義務を負っているが、一般的に何をしたらいけないのか?
例えば会社の経営について、役員に任せたところ10年赤字だった、あるいは大損害を被ってしまったとする。当然株主は怒り、役員に対して「責任をとってくれ」となるわけだが、結論からいうとそれは難しい。なぜかというと、「経営判断の原則」という言葉につながる。
儲けるためには、ある程度リスクをとっていくことも必要なのに、たまたま失敗したからといって「責任とってよ!!」と訴えると、リスクをとった経営をしなくなってしまう。それは結果的に株主も困ることとなる。なぜなら、株価を上げてほしいのに、無難な経営を続けた結果、株価は安定したまま推移することになり、株主はリターンを取れなくなってしまうからだ。それでは困るので、株主も「ちゃんと攻めた経営をしてくださいよ」となる。
しかし、株主がリスクをとっていいと言っているにも関わらず、善管注意義務違反など認められしまうことが多くある。それを裁判所が判断していいのか?というのが個人的な意見。ましてや、その経営があっていたのか/間違っていたのかは結果論になってしまう。結果論だけで判断できることでもないのではないか…
経営判断の原則とは委任契約であるから、参考として医療行為を挙げられる。成功率が低く難しい手術に失敗することもあれば、明らかな医療過誤もある。
そこからもわかるように、基準は難しく、裁判所も様々な判決を出している。

企業経営にはリスクがつきまとう。リスクのある事業をおこなうことこそが株式会社という制度の役割。事後的にすべて失敗すると、困る。

※一般の株主は経営判断に関して、経営者よりも優れた能力を有するわけではない(ことが多い)。だからこそ、株式会社では、出資者である株主ではなく取締役が業務の執行をおこなうことになっていた。(所有と経営の分離)

最高裁判所平成20年1月28日
〔判示事項〕
1、銀行が、第三者割当増資を計画する企業から新株引受先として予定された当該企業の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ、これを実行した場合において、融資を決定した取締役らに忠実義務、善管注意義務違反があるとされた事例
2、銀行が、積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し、同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において、追加融資を決定した取締役らに忠実義務、善管注意義務違反があるとされた事例

→すでに融資が焦げ付いている会社に対する追加融資を決定した銀行の取締役に責任が認められた事例。
一律で禁止なのではない。お金を貸して、きちんと経営を立て直していればOKだった…その瞬間にその判断が正しい、と判断されることもある。

最高裁判所平成12年7月7日
〔判決文〕
「株式会社の取締役は、取締役会の構成員として会社の業務執行を決定し、あるいは代表取締役として業務の執行に当たるなどの職務を有するものであって、商法266条は、その職責の重要性にかんがみ、取締役が会社に対して負うべき責任の明確化と厳格化を図るものである。本規定は、右の趣旨に基づき、法令に違反する行為をした取締役はそれによって会社の被った損害を賠償する責めに任じる旨を定めるものであるところ、 取締役を名あて人とし、取締役の受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項(民法644条)、商法254条の3の規定(以下、併せて「一般規定」という。)及びこれを具体化する形で取締役がその職務遂行に際して遵守すべき義務を個別的に定める規定が、本規定にいう「法令」に含まれることは明らかであるが、さらに、商法その他の法令中の、会社を名あて人とし、会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定もこれに含まれるものと解するのが相当である。
けだし、会社が法令を遵守すべきことは当然であるところ、取締役が、会社の業務執行を決定し、その執行に当たる立場にあるものであることからすれば、会社をして法令に違反させることのないようにするため、その職務遂行に際して会社を名あて人とする右の規定を遵守することもまた、取締役の会社に対する職務上の義務に属するというべきだからである。したがって、【要旨2】取締役が右義務に違反し、会社をして右の規定に違反させることとなる行為をしたときには、取締役の右行為が一般規定の定める義務に違反することになるか否かを問うまでもなく、本規定にいう法令に違反する行為をしたときに該当することになるものと解すべきである。」

※法令違反行為による利益と損失を比較して法令違反行為を選択することは許されない。
公序良俗:民法、ただし、過失が無いことを立証すれば、許されるかもしれない。もっとも、法の不治は罰するのが刑法。

⇒要するに、取締役の責任とは結果責任ではなく、あくまで行為責任。その時ちゃんとした職務を執行していたか、ちゃんとした意思決定をしていたか、というところの責任なのである。

 

【監督・監査と任務懈怠】
監視義務違反:取締役会は取締役の職務の執行を監督する。
→実際の業務執行を行うのは代表取締役、その義務を監視する権限・義務があるのが取締役会。その他、監査訳や会計監査人らも同様。

※個々の取締役は取締役会に上程された事項についてだけ監視すればよいわけではなく、代表取締役による業務執行一般について監視する職務を有する。
上がってきたことだけを受動的にチェック・承認等していればOKということは当然ない。会社で何が起きているか見極めたうえで、必要があれば取締役を招集するなどして、適正に職務がおこなわれるよう監督しなければならない!「知らなかった」はとおらない。

・個々の取締役は注意義務の一内容としてほかの取締役の職務の執行を監視する義務を負う。
・監査役:取締役の職務の執行の監査を職務とする。(381条1項)
・会計監査人:計算書類その他の書類の監査を職務とする(396条1項)
⇒違反すると任務懈怠責任(423条)

※なお、取締役の職務の執行の範囲に計算書類の作成は含まれる。

⇩取締役が具体的にどのような監視・監督をするのか、という事例として問題になったのが以下判例。

最高裁判所昭和48年5月22日
〔判決文〕
「株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有するものと解すべきである。」

なお、部長・課長なども結構な裁量権をもって物事を決定している。それらもすべて取締役が監視するかというと、それもなかなか難しい。ゆえに、組織体制として不正が起きないようにしましょう、というのが、次にでてくる内部統制システム構築義務。

 

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