企業法・授業まとめ-第12回-

 

競争制限的な企業結合

2つ以上の企業が株式保有や合併などによって一緒になることを「企業結合」といいます。
    
上の絵のように、市場を二分していたA社とB社が、合併すると、新会社のAB社が市場を独占することとなり、競争がなくなります。
市場にはAB社の商品しかないため、消費者は仕方なくその商品を買うことになります。それでは消費者のメリットが失われることになりますので、このような競争制限的な合併は禁止されています。 株式の取得、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどの企業結合も合併と同様に規制されています。
企業結合が行われても、市場で企業間の競争が行われていれば、その企業結合は問題ありません。国内外を問わず、一定の企業結合を実施しようとする会社は、競争制限的か否かをあらかじめ審査するために公正取引員会への届出が義務付けられています。
公正取引委員会HPより)

 

私的独占を未然に防止するための規定

事業同士が好き勝手に一緒になることは禁止されており、
併合等をしたいときは、事前に公正取引委員会にお伺いをたて、
審査を受けなければいけない。条文でも規定されている。

独占禁止法9条
「1 他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない。
2 会社(外国会社を含む。以下同じ。)は、他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することにより国内において事業支配力が過度に集中することとなる会社となつてはならない。
3 前二項において「事業支配力が過度に集中すること」とは、会社及び子会社その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたつて著しく大きいこと、これらの会社の資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと又はこれらの会社が相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。」
独占禁止法10条
「会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない。」
独占禁止法13条
「会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従事する者であつて、役員以外の者をいう。以下この条において同じ。)は、他の会社の役員の地位を兼ねることにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員の地位を兼ねてはならない。」

参考記事:
M&A届け出、昨年度1割弱増319件 公取委
(2017/6/15 日本経済新聞 朝刊)
⇒定められている届出は、年間300件程されている。

資源高・国際化 新日鉄・住金、勝ち残りへ合併
(2011/2/3 日本経済新聞)

新日鉄・住金合併、公取委が条件付き承認 一部事業を譲渡
(2011/12/14 日本経済新聞)
⇒以上の2件は、当時かなり話題になった。
新日鉄はもともと日本で第1位だったが、
第2位の会社と合併することで、断トツ1位になる。
果たしてそんなことが許されるのか?と関心が高まった

結果として合併は認められた(条件付きではあるが)。
鉄鋼という分野に関しては、国の違いによって事業の中身は変わらない。
どの国の企業が売る鉄であろうが、鉄は鉄。
そうである以上、企業として戦わなければいけない相手は「世界」であり
戦っていくためには、規模を大きくしなければいけない。

しかし、ここが独占禁止法の考え方の難しいところで
「鉄」で見れば、相手は世界になるが
「国」で見れば、日本においては独占している。
日本で鉄を買いたいとき、選べるのは1社だけに。

その場合、鉄を買いたい会社は「世界の別の会社から買えばいいや」という判断ができるのか、というのがポイント。
∵「可能である」との結論なら、市場への新規参入阻害にはならない。
事業によってはこういった判断ができないケースもある。

米弁護士らが疑問の声 公取委のグーグル・ヤフー提携容認
(2010/8/19 日本経済新聞 電子版)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA