企業法・授業まとめ-第12回-

不公正な取引方法:再販売価格の拘束

「不公正な取引方法」とされるものは数が多い。
大きな概念として、

事業者として「そんなことされたくない」「それはずるい」

と思うことは、大体禁止されていると思って良い。

メーカーが指定した価格で販売しない小売業者等に対して、卸価格を高くしたり、出荷を停止したりして、小売業者等に指定した価格を守らせることを「再販売価格の拘束」といいます。


上の絵のように、メーカーが安売りをしているA販売店に商品を卸すことをやめてしまうと、その商品はどこの販売店でもメーカーが指定した3000円で売られることになります。
それでは消費者は、価格によって販売店を選べなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなり、消費者はメリットを奪われることになります。このような「再販売価格の拘束」は、不公正な取引方法の一つとして禁止されています。
ただし、書籍、雑誌、新聞、音楽CDなどの著作物に関しては、例外となっています。
公正取引委員会HPより)

メーカーが販売価格を高いままで維持できては困るので、
小売店で自由に値段を決められるようにしておかなければならない。

価格拘束してはいけないが、一部例外(本やCD)については価格拘束OKで
非常に分かりにくい点。
条文に細かく定められているので、そちらを確認したい。

 

不公正な取引方法:共同の取引拒絶

競争関係にある企業が共同で特定の企業との取引を拒んだり、第三者に特定の企業との取引を断わらせたりする行為を「共同の取引拒絶」といいます。


上の絵のように、商品を高く売るために、競争関係にある他のメーカーと共同して、安売りする販売店には商品を供給しないことにすると、安売りをする販売店が締め出されてしまいます。
消費者は安売りをする販売店がなくなってしまったので、高い価格でしか購入できなくなり、消費者のメリットが失われることになります。このような「共同の取引拒絶」は、不公正な取引方法の一つとして禁止されています。
なお、不公正な取引方法とは、自由な競争減殺するような行為、競争手段として不当な行為、競争基盤を侵害するような行為をいい、「独占禁止法」はこれを禁止しています。
公正取引委員会HPより)

 

 

不公正な取引方法:独占禁止法

独占禁止法2条9項(定義:不公正な取引方法)
「この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
① 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ  ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ  他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
② 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
③ 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
④ 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ  相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ  相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
⑤ 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ  継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ  継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ  不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
ロ  不当な対価をもつて取引すること。
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。」

 

不公正な取引方法(昭和57年6月18日校正取引委員会告示第15号)
1(共同の取引拒絶)正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
① ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

② 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
2(その他の取引拒絶)不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。
3(差別対価)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「法」という。)第2条第9項第2号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること
4(取引条件等の差別取扱い)不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。
5(事業者団体における差別取扱い等)事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に 差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。
6(不当廉売)法第2条第9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること
7(不当高価購入)不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
 8(ぎまん的顧客誘引)自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
9(不当な利益による顧客誘引)正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。
10(抱き合わせ販売等)相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
11(排他条件付取引)不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

12(拘束条件付取引)法第2条第9項第4号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。
13(取引の相手方の役員選任への不当干渉)自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第2条第3項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
14(競争者に対する取引妨害)自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
15(競争会社に対する内部干渉)自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。」

⇒独占禁止法とは別に、公正取引委員会が独自のルールを発表している。
同法2条8項の内容がフォローされつつ、細かく記載されている。
これに違反することもおこなってはいけない。

では、具体的事例においてどのような点が問題になるのか。

参考記事:
公取委、教科書謝礼で警告へ 東京書籍など9社
(2016/6/10 日本経済新聞)
⇒教科書を出版している会社が、教員らを呼び
「うちの教科書はどうですか?気になる点は教えてください!」
などとコメントを求め、それに対し謝礼を渡していた。

…というのは表向きの理由で、助言を受けることが目的ではなく、自社の教科書を選んでほしいというのが真意だった。
結果として、教科書出版社各社は、公正取引委員会から警告を受けた。

公取委、ビール不当廉売で警告 食品卸3社に
(2012/8/1 日本経済新聞)

⇒シンエネコーポレーションの事例。
ガソリンスタンドを運営する同社は、地域への新規参入事業者を締め出すため、
原価を下回る価格で安くガソリンを販売した。
新規参入事業者が撤退したのち、また価格を戻した(上げた)。
※細かな地域で独占しているか、の判断。

 

大阪高等裁判所平成5年7月30日判決(抱き合わせ)
〔判示事項〕
「一 エレベーターメーカー系列の保守業者が系列外の保守業者と保守契約を締結しているユーザーに対して、交換部品だけの販売はせず、部品取り替え工事を合わせて発注しなければ注文に応じないとした行為が独占禁止法上の抱き合わせ規制に抵触するとして不法行為による損害賠償請求が認められた事例
二 エレベーターメーカー系列の保守業者が系列外の保守業者に対して交換部品の供給を拒絶した行為が独占禁止法上の競争者に対する取引妨害に当たるとして不法行為による損害賠償請求が認められた事例」
〔判決文〕
「愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人においては、エレベーターの安全性に関して一定の資格ないしは能力を有しているものということができる。そして、たとえその技術自体が控訴人の技術自体に対比して相対的には劣るとみられるものであったとしてみても、愛媛メンテナンス及び乙事件被控訴人は、その技術水準において、本件各部品の単体での供給を受けて、前記の現実的故障を修理するに足りる程度には達していたものであったとみてよい。
・・・
メーカーである東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人は、東芝製エレベーター及びその部品の数・耐用年数・故障の頻度を容易に把握し得ること及びエレベーターの所有者が容易にはそのエレベーターを他社製のそれに交換し難いことからして、部品の常備及び供給が東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人の同エレベーター所有者に対する義務であると解される一方で、エレベーターが交通(輸送)機関の一種であって、これに不備が生じた場合迅速な回復が望まれるのは極めて当然であることからすると、控訴人の保守契約先でないからといって、手持ちしていた部品の納期を3か月も先に指定することに合理性があるとは到底みられず、不当とされても止むを得ないところである
したがって、控訴人の乙事件行為は、一般指定15項の不当な取引妨害行為に当たるというべきである。」

⇒エレベーターを作る会社が、他のメンテナンス会社に対し
自社の部品の共有を拒否した事例。
「安全性確保のために自社で点検をおこなう」として、抱き合わせ商法によりメンテナンス業のみおこなう会社を「いじめ」ていた。

※自由な競争の範囲内であれば良いが、それを超えて「意地悪」なやり方をすると、独禁法に違反してしまう。

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