企業法・授業まとめ-第3回-

授業まとめブログ、第3回目です。

前回は、会社の設立を人になぞらえ、理解を深めていきました。
「法人格」という重要なキーワードも出てきましたね。
その「法人格」や「権利」に関連し、今回は「株式」がテーマです。

<記事内の色分けについて>
●オレンジ
講義中、学生の方々に言葉の意味・意義に関する質問を投げかけています。
視野を広げてくれる回答も多いかと思いますので、ぜひご参照ください。
●ブルー
講義の本軸に加え、ポイントや補足として平山がお話した内容になります。
多少口語的ですが、“授業”の臨場感を味わっていただければと思います。


【前回の復習】
<1.会社の設立とは何か?>
会社の設立とは、法人格を取得すること
(法人格:人としての扱いを受ける)
⇒会社が、法「人」としての権利を取得するのはいつか?

Q.人の出生との違いは?人の権利取得との違いは?
人      :出生時にすべての権利義務を取得するが、成人するまで行為能力制限
⇒「あなた自身」が存在していることが実体
法人  :登記時に目的の範囲内において権利義務を取得
⇒実体のない(実在しない)法人という組織を実在するものとして扱い、(法律で)権利義務を付与する。

※「目的の範囲内」:この幅は広く解釈される。社会的に必要なこと、例えば大震災の支援など、本来の目的以外のことも会社の行為として認められる。「範囲外」として、やった行為は無効になることはほぼない。

Q.法人格を取得するために必要な手続きとは?
定款の作成:「法人」をかたち作る基本ルール。設計図のようなもの。
⇒実在しない法人を「実在する」ものとして扱う、「法人たるもの」を決める。
(人でいう「脳」や「心臓」のようなものを定める→お金(資本金)や人(機関))

<2.発起設立の手続き>
(発起人以外の株主を募集する「募集設立」は実務上ほとんど利用されない)
流れ:出資比率、役職の分配、会社の運営方針等についての交渉(設立時株主が複数いる場合)
⇒定款(会社の基本ルール)の作成(絶対的記載事項、相対的記載事項が載る)
(相対的記載事項:書かなくてOKだが、効力ゼロになる)
⇒株式発行事項の決定と株式の引き受け(株式の内容を決める)
⇒出資の履行(お金を振り込む)
※お金が絡むので若干論点がある
※会社を動かす源泉

設立時役員等の選任(会社の経営者を決める)
(オーナー会社だと発起人が代表になることが多い)
⇒設立登記(会社の誕生)

設立手続きに関連し、「仮装の払込み」が規制されている。
目的は、会社財産保護の必要性。払込みを偽装しても、会社財産は増加しないため、出資の履行があったことにはならない。

⇩代表的な偽装方法とされるのは以下二つ。

①預合い(法律で禁止されている)
発起人が払込取扱機関(銀行)の役職員と通謀して、払込取扱機関から借り入れをしてそれを払込みに充てるが、借入を返済するまでは預金を引き出さないことを約束する行為。(会社法965条で禁止。5年以下の懲役等)
⇒例えば、100万円を銀行から借り、資本金として振り込む。
本来、これは運転資金として引き出すことができる。
(例えば事務所の家賃や、従業員の給与などに使用)
預合いとは、これを引き出して使うことのできない状態にしてしまうことを指す。

※資本金で払い込んだお金というのは、基本的にすぐに自由に使うことができる。
(会社にキープしておかなければいけない、ということはない。)
あくまで必要なのは、「最初に資本金を●●円振り込んだ」ということだけ。

※借入れを返済する(お金で追加を払い込む)まで、資本金を使えないならば、追加で払ったときが本当に資本金の払込みではないのか。こういった虚偽表示のような行為は禁止されている。

⇧登記に記載されている金額は、実際存在しないことに……
こういった虚偽表示のような行為は禁止されている。

※要するに「銀行と通謀して悪いことをしている」ということ。

会社法965条(預合いの罪)
「第960条第1項第1号から第7号までに掲げる者が、株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする。」
会社法9601項(取締役等の特別背任罪)
「次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
① 発起人
② 設立時取締役又は設立時監査役
③ 取締役、会計参与、監査役又は執行役
④ 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
⑤ 第346条第2項、第351条第2項又は第401条第3項(第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
⑥ 支配人
⑦ 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
⑧ 検査役」

⇧なかなか罪が重たい・・・
それだけ登記の記載が重要なものであるということ。
(会社の存在・法人格の所有を示す唯一の手段)
嘘を書けば処罰される。

②見せ金(判例上無効とされている) 
発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金銭を株式の払込みに充て、会社の成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てる行為。
⇒要するに、第三者を巻き込んで預合いを同じことをすると、資本金を振り込んでいないとみなされ、無効になってしまう、ということ。

見せ金※会社法で禁止されている行為ではない。
ただし、全体としてみれば、会社がすぐに使えるお金がないために、
資本金として振り込んだ意味が無い。(かつて裁判所が無効と判断したことも)
⇒「②払込み」から「④返済」までにかかった期間が、
本当に資本金を多めに見せるためにとった手続きなのか、判断が難しい。

 

最高裁判所第2小法廷判決昭和38126
「よつて審案するに株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つて、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決の確定するところによれば、訴外D株式会社は資本金200万円全額払込ずみの株式会社として昭和24年11月5日その設立登記を経由したものであるが、被上告人Bは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Bが主債務者としてその余の被上告人らのため一括して訴外E銀行Gから金200万円を借り受け、その後右金200万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会社成立後、同会社は右銀行支店から株金200万円の払戻を受けた上、被上告人Bに右金200万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金200万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Bの前記銀行支店に対する借入金200万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示することなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、破棄を免れない。」

※ちなみに⇧での「右」の記載は、以前判決が縦書きだったことから。
「上記」なんかと同じ意味。

※破棄差し戻し、要件に該当する行為があったのかどうかを高裁で再度審理

現在では、1円の資本金で株式会社が作れるので、普通の株式会社ではほとんど行う意味は無いが、それ以外の資本金が要件とされる会社では行われることがある。(最低資本金が要求される会社)
⇒ゆえに違法行為をする会社がいなくなってきているものの、ある特定の会社については、資本金の金額が特別法上用意されてたりする。
以下条文を参照。

債権管理回収業に関する特別措置法5条(許可の基準)※サービサー法
「法務大臣は、前条の規定による許可の申請があったときは、許可申請者が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第3条の許可をしなければならない。
① 資本金の額が5億円以上の株式会社でない者
② 第24条第1項の規定により第3条の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない株式会社
……
④ 常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士のない株式会社
……
⑦ 取締役若しくは執行役(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、会社に対し取締役又は執行役と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)又は監査役(以下この号において「役員等」という。)のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社

ヘ 暴力団員等

⑧  債権管理回収業を適正に遂行するに足りる人的構成を有しない株式会社」

———

【その他、違法な設立について】
いったん設立登記がなされても、設立手続に不備があった場合、会社はどうなるか?万一会社が設立されたあとに無効だとわかったら?
※「無効」、(有効なことを前提として)「取消し」、「請求できない」
『会社に対して勧告し、法的手続きをとる』?

⇩そこで法律上用意されている制度が

設立無効の訴え(会社法828条1項1号)
会社が成立しなかったことにすると多数の関係者の混乱を招くため、この法律によってのみ、会社の成立を否定できることとされている。法律関係の安定のため、設立登記から2年以内に株主などだけが提起可能。
※法律の世界では、何かに不備があることを「瑕疵(かし)」という。

会社法828条1項1号(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
「次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
①会社の設立 会社の成立の日から2年以内
……
<参考:設立無効の訴え(会社法828条1項1号)は殆ど使われない?>

具体的な無効事由は、

・定款(会社の基本ルール)の絶対的記載事項が欠けている
・設立時株式を1株も引き受けていない発起人がいる
・公証人による定款の認証がない

といった場合。実際に、こんなことが起きるのか?

設立が無効となるケースは、
「これ、もはやちょっとした手当てでは無理!」ってこと。
ちょっとした不備(ex.申請書類の誤記)程度なら補正可能。

また、登記官が所定の(書面上の形式的な)審査をするので、
そもそも無効事由が生じる可能性は低い。
※ミスがあれば登記所で受理されず、
そもそも“無効の会社が設立される”なんてことは実務上ほぼ起こらない!!

それでも、
・定款の記載不備などを見逃して登記が通った⇒無効事由になってしまう
・実際には開催されていない創立総会の議事録が添付され登記が通ってしまった
(とはいえ、現実には、開いていない株主総会の議事録が「あったもの」として添付されることはある……。)
等々があるため、理論上・条文上はあるが、
実務上ほとんど使われることはない。

また、この「設立無効の訴え」は以下2点が有効。

第三者効(対世効)
⇒判決の効力が当事者だけでなく、第三者にも及ぶこと。
判決の効力は、原則として訴訟当事者にしか及ばない(民訴法115条1項)。
Wikipediaより)
※裁判を起こしたとき・何かを争ったとき、むしろ第三者効はあって当然な気もするが…

(この原則があることで、たまに矛盾した判決が出ることがある。ex. 諫早湾開拓事業の司法判断など)
⇒一貫した判断を下すべきという意見もあるだろうが、裁判は人が関わるものであり、矛盾した権利関係を抱えた部分もある。逆に、自分に無関係な裁判の判決の影響が及んだら困ることもある。
そう考えると、原則本人にしか影響がないほうが良い。

「設立無効の訴え」の場合、例外的に第三者効がある。なぜか?
⇒会社とは登記される存在であり、ある程度公益性が強い。よって、
・ある人たちにとって会社が登記されていない(無効)
・ある人たちにとって会社が存在している
これらの状態が同時に発生することは、日本において避けなければいけない。
それを踏まえると、第三者効は認めるべきとなる。

会社法838条(容認判決の効力が及ぶ者の範囲)
「会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。」

それ以外は原則通り。(ex. 役員に対する損害賠償請求など)

○将来効のみ(⇔遡及効)
※将来効=法律や法律要件の効力が、ある時点から将来に向かって及ぶこと。
※遡及効=法律や法律要件の効力が、その成立以前にさかのぼって及ぶこと。
コトバンクより)

<参考:設立に関する責任>
世の中に存在しない「会社」というものを一つ生み出し、人や会社との取引が発生する:社会的な責任は必ず発生する
⇒変な会社を作られては困るから、きちんと罰則が定まっている
会社設立に関する違法行為や不正行為については、
発起人・設立時取締役などの責任を規定し、
罰則(会社法960条1項)・過料(会社法976条)が定められている。
※独立した法人格が与えられる会社の設立はある程度厳格
⇩たとえば…
現物出資の価額が定款に定めた額に
著しく不足する場合の不足額支払い義務(会社法52条1項)

会社法52条(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
「株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。」

⇒会社の運転資金として準備しなければいけないお金を、「これだけ用意して会社をつくる」と定款に書いている以上、その金額に満たない場合には、発起人は責任を持って支払わなければならない。

・任務懈怠によって会社に生じた損害を賠償する責任(会社法53条1項)
・悪意・重過失によって第三者に生じた損害を賠償する責任(会社法53条2項)
⇧発起人の責任として、会社財産を確保できなかった場合が定められている。
会社資本を充実させるまでが発起人の仕事だから。

会社法53条(発起人等の損害賠償責任)
「発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

 

企業法・授業まとめ-第2回-

授業まとめブログ、第2回目です。

前回は非常にベーシックな知識を中心に共有いたしました。
当たり前に使っている「会社」「企業」「人」といった言葉について
今一度振り返り考える、新鮮な機会となったのではないでしょうか。

さて、今回のテーマは「会社の設立」です。

<記事内の色分けについて>
●オレンジ
講義中、学生の方々に言葉の意味・意義に関する質問を投げかけています。
視野を広げてくれる回答も多いかと思いますので、ぜひご参照ください。
●ブルー
講義の本軸に加え、ポイントや補足として平山がお話した内容になります。
多少口語的ですが、“授業”の臨場感を味わっていただければと思います。


【前回の復習】
〇法人とは
個人(出資者や構成員)から独立した別個の法人格を有するもの。
法によって自然人と同様に権利能力を付与された存在。

⇩法人格がないと、どんな不都合が発生する?

例えば構成員が10人いた場合、
誰に権利義務(代金の支払い、物の引渡請求権)が帰属するのかが不明確になる。
⇒担当者に帰属してしまうことになる?団体としてそれで良いのか?
→大きな団体になると、相手にしてみたら誰と契約しているのか分からない…ぼんやりとしたグループ名で取引されても困ってしまう。
だから、一人の人格を持った人(=権利義務が帰属している)を介したい。その時、法人格をもっていれば法人に権利義務を帰属させることが可能。

なお、会社であっても建物や代表取締役に権利義務が帰属するわけではない。
代表取締役は別の人格、あくまで「機関」のひとつ
→別人格(法人格)をたてて、会社の中で行為することが大切。
グループメンバーが多くなった時、一つの団体として株式会社を作るのは分かりやすくて良いのでは?ということ。

〇「機関」とは
会社自体に「意思」があるわけではない。
では会社とは何なのか、誰が「意思」を表示して行為するのか。

代表取締役が最終的に意思を表示して行為するが、
「意思」そのもの、「行為するか否か」を決めるのは
株主総会や取締役会。
※ちなみに「機関」は法律用語

 

機関の図(伊藤博文)

上の図は、
伊藤博文が海外で国の統治等を学んだ際に、国の機関を人体になぞらえたもの。
「海江田がシュタインの講義をうけたときに提示したものと思われる。図は人体と国家を対比して、神祇官 · 親祭を頭とし、人民を左右両足とし、そのあいだに各部局を置く。首のところに政府と書かれて、胴体には弾正 · 宮内・文部 · 司法 · 大蔵、両腿に農務と商務、向かって右肩から右手へ、上院、內務、陸軍、左は下院 · 外務 · 海軍となっている。」
NAMs出版プロジェクト シュタイン、伊藤博文、国家有機体説:メモより)

⇩ここでまた、
「一つ一つの当たり前に思っている言葉の意味を考える作業」

  • 国って何?
    『ある一定の地域に住む人たちを代表する存在』
  • 領土があって人が住んでいるが国ではない場所って地球上にある?
    『南極?あるいはない?』
  • “あなた”はどこからどこまでがあなた?
    『人体的なところ~人間関係まで(社会的なつながりも含めて)』

「機関」として挙げられるのは・・・
・会社の機関(株主総会、取締役会、代表取締役…)
・国の機関 (政府、国会、裁判所…?)
・人の器官 (心臓、筋肉、脳、肺…)

⇒それぞれ意思表示をしているのは誰なのだろうか?
機関の行為の法的な効果は、「機関」である個人に帰属するのではなく、
「法人」に帰属するということ。
これが法人格を別個に認めることの意味。
→代表取締役や社長がしたことは会社に帰属し、個人の責任は切り離される。(やりすぎれば個人の責任であるけれど・・・)
“会社の人”がしたことは会社に帰属する。

※法人格がない場合、構成員(組合員)のした行為は
原則そのまま構成員に帰属し、団体という存在には帰属しない。

 

会社の種類(フォーマット)

———

【今回のテーマ:会社の設立
会社の一生を人に例えると…

〇設立
出生:権利能力を取得し、出生届を役所に提出、戸籍に記載される。
→ちなみに、基本的人権は
「生まれながらに持っている?」「法律によって与えられるもの?」
綺麗な言い方をすれば前者だが、実際は法律がないと人の権利は無いに等しい。
例えば、無戸籍児は国から権利が与えられない。
∵戸籍に載っていない、住民票もないという状態では
国が権利や保護を与えたくとも、やりようがないから。
法的にその人は存在しないことになってしまう。

○解散・精算
死亡(死亡届の提出、除籍)
外国籍の取得?(国としてその人が居なくなる)

事業譲渡
(会社の一部門を譲渡する行為、会社法上、一方の法人格は消滅せず。)
里子に出すこと?臓器提供?(中身だけの移動。例えづらい!)

〇会社分割・合併・M&A
(合併の場合:会社法上、一方の法人格は消滅する
(合併の場合:登記上、一方の会社の登記は抹消される)
結婚(婚姻届を提出、新戸籍を二人で作る=親の戸籍から抜ける)

※ちなみに、戸籍法上の「入籍」と婚姻届の提出は別の概念。
入籍とは「すでにある戸籍に誰かが入ること」。
初婚の二人の夫婦の戸籍は初めて作られるので、
本来の意味での入籍ではない。(「内縁事情.com」より)

離婚(離婚届を提出し、筆頭者でない側が戸籍から除籍される)

※ちなみに、親の戸籍に戻れるのは筆頭者になっていなかった人。
また、成人していれば自身が筆頭者の単独戸籍を作ることも可能。
戸籍は自由な住所で作ることができる。住んでいなくともOK。

国が人を管理するのは複雑・・・(戸籍、住民票、マイナンバーなど)
国が会社を管理するのもまた同様なのである。

 

企業法・授業まとめ-第1回-

弊所ホームページにてお知らせをしておりましたが、
代表・平山剛は慶應義塾大学総合政策学部にて下記講義をおこなっておりました。
・企業法(会社法)(2015, 2016)
・企業法演習   (2017)

これらの90分に及ぶ授業内容を
なんと、こちらのブログでもお伝えすることとなりました。

「学生時代にこんな授業とってた」
「これまで学ぶ機会がなかったな」
「知識として学んでみたいかも」

そんな気持ちをお持ちの方にぜひ、楽しんでお付き合いいただければ幸いです。

<記事内の色分けについて>
●オレンジ
講義中、学生の方々に言葉の意味・意義に関する質問を投げかけています。
視野を広げてくれる回答も多いかと思いますので、ぜひご参照ください。
●ブルー
講義の本軸に加え、ポイントや補足として平山がお話した内容になります。
多少口語的ですが、“授業”の臨場感を味わっていただければと思います。

 


 

第1回:会社の構成、基本構造

【企業法(会社法)とは?】
まず、そもそも企業とは何だろうか。
会社との違いは何か。

『企業は経済活動をするためにあって、会社は利益を生むためのもの。』?
『我々が生活していく上で必要な財やサービスを提供してくれるところ』?

そんな考え方もあるかもしれない。

※「企業法」という法律があるわけではなく、
会社法も、数多くある企業に関する法律のうちのひとつ。
会社法、商法、金融商品取引法などを、まとめて企業法と呼ぶ。

講学上の回答だと、企業とは
「現代の経済システムの中で、経済活動を行う主体」で、
「計画的・継続的に利益を取得して企業の構成員に
分配することを目的とするもの」
である。

※講学上の概念=法律学を研究する上で用いられる用語であって、
法令上用いられる用語ではないもの。

⇩意味を理解するため
「現代の経済システムの中で、経済活動を行う主体」の言葉を分けて考えてみる。

  •  この「主体」とは何を指すのか。
  • 「会社」というものは存在するのか。
    実際あるから存在するが、何が「会社」?
  • 「会社」と「人」では何が違うのか。
    『会社は組織、人は人間』?

    『会社は構成員が同じ目的をもって利益のために動く団体、人は個人』?
  • じゃあ、そもそも「人」とは何なのか。
    『人間が社会で生活していれば人。
    社会とは、人間が中心になって作り上げたコミュニティ。』?

⇒このように、ひとつひとつ”当たり前に思っている言葉”の意味を考える作業も
法的思考には必要となってくる。

———

【法人と法人格】
企業に関連して「法人」「法人格」という言葉がある。
ここで考えたいのは、

・「法人」、「法人格」という言葉の意味
・「人」の人格と「法人」の人格の違い
『目的が違う』?
・そもそも「人権」とは何か
基本的人権で考えられるのは
『生存権(憲法25条)、教育を受ける権利、表現の自由など』?


「人権」とは主に基本的人権である。
これは国家から侵害されないために憲法上尊重されている権利のこと。
自然権的性質が強く、
法に与えられたのではなく、生まれながらにもっている権利(という説)である。
※人権は自然権の代表的なもの

⇩そこで浮かぶ疑問

  • 法人(会社)は「人」の権利をもてるのか?認めるべき?
    『認められているけど、制限されていそう』?
  • また、物や動物はどうだろうか?
    『必要ない』?『認められてもいいのでは』?

⇩以下の環境訴訟を確認

オオヒシクイ訴訟(東京高等裁判所判決 平成8年4月23日)

「本件は、オオヒシクイ個体群を茨城県の住民であるとして、その名において、地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき、同県に代位し、知事である被控訴人に対し、被控訴人はオオヒシクイ個体群の越冬地全域を鳥獣保護区に指定しなかったことにより同県の威信を著しく損なわせ、重要な自然環境の要素にして重要な文化的財産を損傷させたとして、不法行為による損害の一部2257万2000円を同県に賠償するよう求めた事案の控訴審である。
およそ訴訟の当事者となり得る者は、法律上、権利義務の主体となり得る者でなければならず、このことは民法、民事訴訟法等の規定に照らして明らかなところというべきであり、したがって人に非らざる自然物を当事者能力を有する者と解することは到底できない。住民訴訟の当事者となり得る者についてもこれと異なる解釈をする余地は全くない。当事者能力の概念は、時代や国により相違があるのは当然であるが、わが国の現行法のもとにおいては、右のように解せざるを得ない
そうすると、本件控訴も、当事者能力を有しない自然物であるオオヒシクイの名において控訴代理人らか提起した不適法なものであり、これを補正することができないことは明らかであるから、却下を免れない。」

《解説》
わが国の民訴法の教科書及び注釈書等で自然物の当事者能力について触れたものはないようである。これに対し、アメリカにおいては、かつて奴隷等が物とみなされていたが、後に人格を認められたのと同様、自然物にも当事者能力を認めるべきであるとの学説が存し、動物の名で提起される訴訟もある。
良く知られているのは、ハワイ島のパリラ鳥(ミツドリの一種)を原告とする訴訟であるが、その訴状においてはパリラの近友(後見人)として、シエラ・クラブ等の環境保護団体が付いており、判決においては、環境保護団体三者及び自然人一人の当事者能力についてのみ言及されているものである(なお、合衆国法典16編1540条は、この種の訴訟について民衆訴訟を許容している)。
この種の野生動植物を原告とする訴訟は各地に少なからずあるようであり、本判決が「当事者能力の概念は、時代や国により相違がある」と述べた部分を評価する向き(平8・10・14付東京新聞。なお、平9・6・8付朝日新聞社説参照)もあるので、当然の結論ではあろうが、これを紹介する。
(判例タイムズ957号194頁より引用)

つまり、動物に権利は認められなかった。(他にもアマミノクロウサギ訴訟の例)
※法律上、動物は「モノ」として扱われる。傷つければ「器物損壊罪」。
では会社も同じ扱いになるのか?

法人には、
持つべき・持たざるべき権利、持つことができる・できない権利が存在する。
⇒「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の
範囲内において、権利を有し、義務を負う。」(民法34条)
 ※定款=法人の基本的なルールを定めたもの

———

ここで、学生生活において身近な「人の集まり」であるサークルを例にとり、
会社との違いを確認していきたい。

サークルは「組合」という概念に近い。

会社(法人) サークル(組合)
民法34条
(法人の能力)
法人は、法令の規則に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負う。 民法667条
(組合契約)
1 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
2 出資は、労務をその目的とすることができる。
会社法3条
(法人格)
会社は、法人とする。 民法668条
(組合財産の共有)
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。

たとえば財産であれば「組合」として単独で所有するのではなく、
「総組合員」という人の集まりで共有するのである。
単なる人の集まりか、それを超えての「人格」が認められているか、が異なる点。
⇒会社とは、
法によって認められた瞬間に「人の集まり」を超えて「人格」が認められる。

法律で“会社”として認められていない限りは、所詮「人の集合体」でしかない!

会社とサークルの違い

<例外>
「法人」でなくても、一定の場合には
ある程度の「法人格」類似の人格を有しての行為ができる。
※「権利能力なき社団」というものもある

権利能力なき社団
社団としての実質を備えていながら法令上の要件を満たさないために法人としての登記ができないか、これを行っていないために法人格を有しない社団をいう。ドイツ法や日本法における概念。人格なき社団、ないしは任意団体ともいう(日本国内における法令用語としては人格のない社団)。
典型的なものとしては、設立登記前の会社、町内会の多く、入会集団(入会団体)、政党要件を満たさない政治団体、マンションの管理組合、サークル、学会などがある。
Wikipediaより)

●民事訴訟法29条(法人ではない社団等の当事者能力)
「法人ではない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるものは、その名において訴え、または訴えられることができる。」

⇧この条件を満たせば、サークルでも訴えを起こすことができる!
しかし、あくまで権利義務の帰属主体にはなれない。
∵権利を持つためには「人格」が必要であるから。
⇒名称ではなく、法によって認められているかどうかで決まる
(名称を用いて良いかも法によって決まるが…)

以下該当例⇩

・NHK(日本放送協会)
「協会は、前条の目的を達成するためにこの法律の規定に基づき設立される法人とする。」(放送法16条)

・コープ(消費生活協同組合)
「消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会(以下「組合」と総称する。)は、法人とする。」(消費生活協同組合法4条)