企業法・授業まとめ-第2回-

 

【会社の特徴:営利性とは】

会社法5条(商行為)
「会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」

⇩ここで浮かぶ疑問。

・「法律に規定されているから営利性があるといえるのか」
・「営利性があるから法律に規定されたのか」
『営利性がなければ会社として目的がなくなってしまうので、後者』?

⇩実はどちらでもOK。大切なのは、

「何か一つ目的を定めると、法律の規制の方針が決まる」ということ。
⇒“営利性”という会社の特徴を決めた瞬間、
さまざまな利害調整、ルールの方向性が決まっていく。
目的が定まっていればルールはブレることがない!

会社においては、
「事業で得た利益を構成員に分配すること」
「商行為をすること、商行為をして営利性を追求すること」
これらも目的のうち。(株主利益最大化原則)
(一般社団法人、公益社団法人、NPO法人等では利益の分配は予定されていない!)
これらの目的があることで、
会社法の利害調整ルールの方向性が決まっていく。
※株主(社員、構成員)は、取締役等に利益を上げるように行動してほしい。
⇒大きな意思決定をするのは株主だが、行動するのは取締役等。

利益を最大化させない行為は規制される。

会社法356条(競業及び利益相反取引の制限)
「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
1  取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
2  取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
3  株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。」

取締役は、株主から委任を受けて会社の経営を任されている。
つまり、取締役のもつパワーもなかなかに大きい。
(株主と取締役は一致しない。株主は会社のオーナーである。)

会社(=株主)の利益を害する可能性があるため、会社法で規制されている。

会社の利益を最大化するために各機関(取締役)は行為すべし、とするのが会社法。

———

【会社の特徴の一つ:社団性】
社団:個人から独立した、人の集合体という意味。
(⇔財団:財産の集まり)
法人格があるかどうかとは別。
(法人格まで認めなくとも単なるグループで良い)
かつては、設立時に複数の構成員を要求していることがあった。
※株式会社では、設立時の発起人の人数として7名を要求していたが、
平成2年の法律改正で撤廃された。
以降、一人で会社を作ることも認められる

社団性にどこまで意味があるのか、
という疑問は残るが
今も概念として残ってはいる。
⇒一人で始めた事業でも、発展する(=人が増える)可能性があるので、「社団性」という概念は失われていないのでは。

構成員が一人でも「人の集合体」として活動することもある。
(屋号、芸名、ペンネーム(一人でつける/複数人で一つを使用)等)
⇒別人格として会社を一つ用意することに不都合はない、ということ。

社団性は、会社に関与する人が複数人でてくる点の根幹にある。

———

【設立する会社の形態選択】
以前紹介した4つの会社形態;合名会社、合資会社、合同会社、株式会社

全社員が有限責任である合同会社株式会社の実務上の違いはどこにあるのか?
※日本では、「株式会社の方が格上」というイメージを持たれやすいが、アップルの日本法人や西友は合同会社を選択している。

所有と経営が密接になっているので、
社員(株式会社でいう「株主」)と代表者が一致している。

代表社員(「株主」的な存在+「代表取締役」的な存在)に、
法人がなることができる。
⇒外国法人が日本に会社を作るときに利用することが多い。

その他のメリットは、登録免許税が安いことなど。

———

【株式会社の特徴(構成員多数を想定)】
①所有と経営の分離
「株主」(オーナー)と「取締役」(運営者)は別。
基本的には、
取締役:会社の経営を決める
株主 :会社の基本的・重要なことを多数決で決める。
※他の形態では、所有と経営は同じ要素が強い。
⇒1人で運営している会社に関しては一致していることが多いが、
会社法上求められて(予定されて)いる特徴としては「分離すべき」。
∵構成員が多くなると意思決定ができなくなってくるので、
経営を誰かに任せたほうが良い、ということなる。
とはいえ、会社は株主のものなので、大事な意思決定は株主が多数決で決める。

②株主の有限責任(⇔無限責任)

会社法104条(株主の責任)
「株主の責任は、その有する株式の引受価格を限度とする。」

⇧この定めがないと株主は困ってしまう。
構成員が多くなるほど、彼らが把握しないことも会社はやり始める。
そうなると責任が負いきれない。
また、株主は細かい意思決定をせず経営にも携わっていないため、
とれる責任もこれが限界。

例えば、賠償義務は会社が負う。
うっかりその会社の株を持っていた場合に、株がただの紙切れになるだけでなく、
それ以上の責任を負わされるとなると酷である…。
※だからリスクは限定される!

③株式の譲渡性細は次回以降)
株主は基本、いつでも株主を辞めることができ、誰に譲渡しても良い。
しかし、会社に株を買い取ってもらうことは基本的にはできない。
(例外:総会決議を経ての自己株取得、しかし要件は厳しい

そのため、ほかの人に株を譲渡して、現金化する。
∵会社債権者の保護、会社資金が配当で出ていってしまうと
お金が回収できなくなる可能性があるから。

なお、会社としては見知らぬ人が株主になることを防止するために
譲渡制限をかけることができる。

④機関の分化(詳細は次回以降)
代表取締役、取締役(取締役会)、監査役(監査役会)、会計監査人など・・・
「会社」の立場で行為をする人を定めることが出来る。

⇒会社自体に意思はなく、機関が動かしている。
そのため独任制にしてしまうと、ステークホルダーの利益を害する可能性がある。
相互に牽制しあって会社を運営しよう、ということで様々な機関を定めている。
※これも株主が多く、所有と経営の分離から生じる点!

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【定款とは】
会社の組織と活動に関する根本規則のこと。要は会社の基本ルール。
会社設立の際に必ず必要になる。(⇦これ自体が法律で定められている)
⇒定款の目的の範囲内でしか(基本的に)会社は権利能力をもっていないから。要するに、できる行為が書いてある!(判例上ほとんど無視されているが…)

定款は、公証人に認証してもらう必要がある。
→内容を確認し、言った・言わないを避けるため。
「最初に作った定款はこんな定款じゃなかった!」というトラブルを避ける。
※公証人=「ある事実の存在、もしくは契約等の法律行為の適法性等について、公権力を根拠に証明・認証する者のことである。」(Wikipediaより)
裁判官や検事が退任後に就き、公証人が認めた文書は法律上“あっている”とする。
ただし、設立以降は株主総会の特別決議で変更可能。
(議事録は残す必要あり)

また、会社法は
定款に記載しなくてはならない絶対的記載事項を定めている(後述)。

※定款では
機関・本店を置く場所はどこか、
会社の目的は何か、
取締役・監査役・会計監査人を付けるか、
株式は自由に譲渡できるか、
決算期はいつか(3月末や12月末でなくても良い)、などなどを定める。

※上場会社の定款は、東京証券取引所ウェブサイトで閲覧することができる。

 

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