企業法・授業まとめ-第3回-

 

【前回のキーワード:「設立中の会社」】
設立中の会社は法人格を持っていない。
でも、実際には発起人がいろいろと活動をしてしまう。
「発起人の行動が、どの範囲で設立後の会社に帰属するか」について、会社法上、実務においてさまざまなケースが発生する。

※設立前・設立後という二つの時間軸があるなかで、設立前におこなう行為の類型が大まかに以下の4つ。

  • 設立を直接の目的とする行為(会社法26条など)
    ※設立前は法人格がないから、会社として行動することは不可能。
    発起人が行動するしかない。
  • 設立のために必要な行為(登録免許税の支払いなど)
  • 財産引受(←現物出資の設立後版。定款に記載があればできる。)
  • 事業行為発起人の行動がどの範囲で設立後の会社に帰属するか?
    ボーダーラインは?:事業行為

教科書通りの答えは「事業行為はダメ」。
しかし、実務上では色々おこなってしまっている。
⇒「どこでラインをひくか」は結構難しい。

会社法26条(定款の作成)
「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。」

———

【定款に記載のない財産引受は有効か、無効か?】
⇒この場合も「定款に記載のない」時点で「できない行為」となり、事業行為と同じ扱いになってしまう。判例上(最高裁判決S61.9.11)ダメ、とされている。

「そこで、上告会社に本件営業譲渡契約の無効を主張することができない特段の事情があるかどうかについて検討するに、原審の確定した事実関係によれば、被上告会社は本件営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行ずみであり、他方上告会社は右の履行について苦情を申し出たことがなく、また、上告会社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、被上告会社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、しかも、上告会社は、原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由については契約後約九年、株主総会の承認手続を経由
していないことを理由とする無効事由については契約後約二〇年を経て、初めて主張するに至つたものであり、両会社の株主・債権者等の会社の利害関係人が右の理由に基づき本件営業譲渡契約が無効であるなどとして問題にしたことは全くなかつた、というのであるから、上告会社が本件営業譲渡契約について商法一六八条一項六号又は二四五条一項一号の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定した上告会社又は被上告会社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、右違反に籍口して、専ら、既に遅滞に陥つた本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められ、信義則に反し許されないものといわなければならない。したがつて、上告会社が本件営業譲渡契約について商法の右各規定の違反を理由として無効を主張することは、これを許さない特段の事情があるというべきである。」 (全文より)
最高裁判所第一小法廷判決 昭和61年9月11日

※原則無効であるが、信義則に照らしてその無効は主張できないこともある。
⇧会社設立の無効とは別の話。「営業譲渡契約」が無効か?ということ。

会社自体は有効にできていて、発起人のできる行為としてOKか?という話。

⇒みんなが有効だと思っていたものが本当は法律上無効だったということに
気付いたとき、「無効だからお金払うのやめます!」と言われても
困ってしまうので、「無効であってもそれは許されない!」という状況になる。
その場合、裁判所は「信義則に照らして」という言葉を使い、
条文を全部ひっくり返し「お金を払ってあげなさい」等と判断することがある。
かなりイレギュラーな判決ではあるが…。

ここでおさえるべきは、
財産引受は定款に記載していなければ無効である」という原則。

———

【開業準備行為と事業行為】
⇒会社が不成立だった/設立されなかった/別の会社になったetc.のケース
発起人の権限として会社に帰属しないが、発起人組合としての効果?

※発起人は会社をつくることだけを目的に行動しているので、それ以外のことは基本やってはいけない。しかし判例(最高裁判決S35.12.9)では、石炭の売買をおこなっていた。
⇒結果として、組合(法人格なし)の組合員全員に効果帰属し、会社には効果帰属しなかった事例。:事業行為との区別の話

発起人組合がその本来の目的に属しない石炭売買取引を行つた事実を主張し、各組合員らに対し商法511条1項に基き右売買代金の連帯支払を求めるにあり、商法194条1項に基き会社不成立の場合における発起人の責任を追及するものではない」ものの、「石炭株式会社設立の目的を以て発起人組合を結成したが、右組合本来の目的でない石炭売買の事業を「中外石炭株式会社」名義で営み、そのため本件売買取引を行つたもの」であり、「元来組合の業務執行と組合代理とは区別すべきものであるが、組合契約その他により、特定の組合員に業務執行を委任した場合において、その業務が第三者と法律行為を為す必要あるものについては、別段の定めのない限り右委任に代理権授与の契約をも包含するものと解すべきである。又業務執行者の定めのない場合において組合の常務に属しない或特定の事項を特定の組合員又は第三者に委任しようとする場合は、民法670条1項により組合員の過半数を以て決することを要するものと解すべきであるが、その特定事項が対外関係に属する場合は、別段の定めのない限り右委任に代理権の授与も包含するものと解するを相当とする」(全文より)

⇩参照条文

民法670条(業務の執行の方法)
「1. 組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
2. 前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。
3. 組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。

会社設立前の発起人の責任についても判例(最高裁判決S33.10.24)あり。

「上告人らは、かねて東洋整練株式会社の設立を計画発起し、昭和30年9月12日に至りその設立登記を了したものであるが、上告人は、昭和30年3月、未だその設立手続未了で設立の登記をしていない右会社の代表取締役として、被上告人との間に本件契約を締結したというのである。そして、本件契約は、会社の設立に関する行為といえないから、その効果は、設立後の会社に当然帰属すべきいわれはなく、結局、右契約は上告人が無権代理人としてなした行為に類似するものというべきである。もっとも、民法117条は、元来は実在する他人の代理人として契約した場合の規定であつて、本件の如く未だ存在しない会社の代表者として契約した上告人は、本来の無権代理人には当らないけれども、同条はもつぱら、代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護する趣旨に出たものであるから、これと類似の関係にある本件契約についても、同条の類推適用により、前記会社の代表者として契約した上告人がその責に任ずべきものと解するを相当とする」(全文より)

⇒設立登記未了の会社の代表取締役として契約を締結した者の責任

⇩参照条文

民法117条(無権代理人の責任)
「1. 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2. 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。」

※このあたりの判例の理解・整理は難しい。日本の場合、具体的トラブルや問題がおこらないと裁判にならず、裁判所は必ずそれらに対して判断を下している。ゆえに、判断はすべてケースバイケース。その時々で、法律上正しいと思う判断を下している(根底にあるものは変わらないが)。

<参考:発起人の権限とは?>

・発起人の権限の範囲内:成立後の会社に帰属
(範囲内=定款に記載した財産引受まで)
・発起人の権限の範囲外、だが、発起人組合としての権限の範内:
発起人組合に効果が帰属し、発起人全員が責任を負う。
・また、代表者が行ったのならば民法117条の類推適用。

会社の設立

ここまでが前回のテーマ。

 

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