資格試験アラカルト・宅建(1)~「宅建」って何?編~

はじめに

 

タイラカ総合法律事務所事務員です。

このたび、「宅建」資格を取得しました。

「宅建」は、国家資格の中で受験者数が最も多いそうで、
合格体験記等もインターネット上に数えきれないくらいあります。

そんな中でも、あまり「典型的」ではないケースとして、何かのご参考になればと思い、何度かに分けて体験を共有させていただきます。

(※なお、本稿は令和4年度の資格試験制度に基づく記載です。最新の制度は異なる可能性がありますので、必ず試験団体のホームページ等によりご確認ください。)

 

 

宅建とは

 

さて、改めまして「宅建」です。

その存在については広く認識されているのではないかと思うのですが、

「ところで、宅建に受かると何ができるの?」
と改めて質問されると、

「さあ?」
となってしまう方が多いのではないでしょうか。

 

正式名称は、「宅地建物取引士資格試験」といい、
合格すると、「宅地建物取引士」(通称「宅建士」)になることができます。

 

この辺り、少しややこしいのですが、

宅地建物取引業(ざっくり言うと、不動産の売買や貸借の媒介などを、事業としておこなうこと)を営むためには、

・国土交通大臣(複数の都道府県にまたがって事業をする場合)
・都道府県知事(一つの都道府県内でだけ事業をする場合)

いずれかの「免許」を受けなければならないのですが、その免許を受けるためには、事務所ごとに、従業員5人に1人以上の割合で「宅地建物取引士」を置かなければならない、とされているのです。

またまたざっくり言うと、

宅建=不動産業者等に就職して(又は個人事業主として)
不動産取引のうち、専門知識が必要とされる業務に従事するための資格

という感じでしょうか。
宅建士じゃないとできない(したら罰則が科される)業務もあります。

それが、

① 重要事項の説明
② 重要事項説明書への記名
③ 契約書への記名

この3つです。

 

 

宅建士にしかできない業務

 

・・・と言われても、
①重要事項の説明ってナニ?という方もいらっしゃるでしょう。

この「重要事項説明とは何か」というのも、実は宅地建物取引業法(宅建業法)で決まっていて、宅建試験で必ず出題されるところだったりします。

 

まあ、読んで字のごとく
「重要事項」を「説明」することなんですが(まんまですね)
これを5W1Hに分解してみると、

When(いつ)
契約が成立するまでの間に、

Where(どこで)
(特に制限なし。オンラインも可)

Who(誰が)
宅建業者が、宅建士をして
(Whom(誰に):買い手・借り手になろうとする人に、

What(何を)
その不動産の現在の所有者の名前や、その不動産上に建築基準法等の法令による制限(建築できる建物は高さ何メートル以下、など)があるかどうかとその制限の内容、電気ガス水道が整備されているかどうか、などなど、買ったり借りたりする前に知っておく必要のあることを、

Why(なぜ)
(宅建業法にはっきりと書いてあるわけではありませんが、不動産取引は高額である上に、一般的には一生に数回程度しか経験しないものであるところ、悪徳業者に、買い手・借り手の経験が少ないことに付けこんだ不当な取引をさせないため、です。)

How(どのように)
説明を記載した書面(※)を交付して、口頭でも説明する
(相手も宅建業者の場合は、書面の交付だけでよい)

※ちなみに、書面のひな形は、こんな感じです(国土交通省HPより)。
ものすごく長くて、見るだけでうんざりしてしまいそうですが、「不動産を買ったり借りたりするんだったら、これくらいは知っておけ」ということなんですね。

   

となります。
上記でハイライト付したところが、宅建士でないとできないところです。

重要事項説明の時に交付する書面=「重要事項説明書」に、
「説明をする宅地建物取引士」として記名し(←②)、
実際に説明する(←①)
ことになります。

 

もう一つの、③の「契約書」については、
「日常生活で見たことがある」「ハンコを押したことがある」
という方が多いのではないかと思います。

法律(民法)上は、売買契約や賃貸契約は当事者の合意によって成立するとされているので、不動産の売買や賃貸契約も、「契約書」がなくても成立します。

ただ、そうは言っても、不動産取引のように高額で、しかも内容が複雑な契約を口約束でおこなってしまったら、後日「言った」「言わない」「説明したはずだ」「聞いてない」のように、トラブルになる危険性が高いので、通常は「契約書」を交わします。

もしも「契約書」を交わさなかったとしても、宅建業者は、契約内容を記載した「書面」(宅建業法の37条に規定があるので、「37条書面」と呼ばれます。)を当事者双方に交付しなければならないことになっています。

宅建業者は、その書面(一般的には、「契約書」に、「37条書面」に記載しなければいけないことを全部記載して、「契約書兼37条書面」とすることが多いようです)を作成して、これに、宅建士をして、記名させなければならないと決められています。

(余談ながら、私が勉強した時は、重要事項説明書も37条書面も、宅建士の「記名押印」が必要とされていたのですが、デジタル改革の一環として宅建業法が改正され、2022年5月から押印は不要となり、「記名」だけになりました。
こういうことがあるので、教材は最新のものを使った方が良いです。)

 

 

「宅建」を選んだ理由

 

ここまでをまとめると、「宅建」は

・不動産業者で働いている人
・仕事で不動産取引をおこなう人
(例えば、各地の不動産を買ったり借りたりして新規出店する外食産業チェーンなど)

のための資格と言えそうです。

 

そうだとすると、

法律事務所で働いていながら、どうしてこの資格を取得しようと思ったの?
何かの役に立つの?

と聞かれるかもしれません。
その答えは、試験科目を見て決めました、となるでしょうか。

 

宅建の試験内容は、宅建業法施行規則で、7項目規定されているのですが、
ものすごく大雑把にまとめてしまうと、

① 宅建業法
② 民法等の、不動産の権利関係の部分
③ その他の法令の、不動産に関する制限(売買するときは届出が必要とか)や不動産に関する税制の部分

となるかと思います。

 

現在までのところ、弊所において、
①③の宅建業法に関する業務等には、ほぼ従事したことがないのですが
(一度だけ、不動産を購入したクライアントさんから、クーリングオフが可能かどうか調べてほしいとのご依頼があり、条文等を調べたことがあるくらいです)

②の民法等(借地借家法などの特別法も含むため、「等」としています)の権利関係についての条文には、業務で、日常的に触れています。

そこで、②について勉強することで、民法的な考え方が身に付いて、日常業務にも役立つのでは?と期待して、チャレンジすることにしたのでした。

(その他、難易度等の関係もありますが。
ほかに弊所の業務に関係しそうな資格で思いつくものといったら、司法書士とか社会保険労務士とか、超難関資格しか見付けられなかったので・・・。
ちなみに、令和4年の宅建試験結果は、試験団体の発表によりますと、
申込者数283,856人
合格者数38,525人
合格率17.0%
だそうです。まあまあ、何とかなるかも、と思える数字ですよね。)

 

◇ ◇ ◇

 

というわけで、
今回は「宅建」って何?というところについて、ざっくりお話しました。

次回は、宅建試験に向けてこんなことをやりました、実際の試験はこんな感じでした、というところをお話したいと思います。

では。

 

(参照:一般財団法人不動産適性取引推進機構HP

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA