企業法・授業まとめ-第2回-

 

【株式会社の設立手続き】

発起設立
発起人が会社成立時に発行される株式の全部を引き受ける方法。
(会社法25条1項1号)
募集設立
発起人は会社成立時に発行される株式の一部のみを引き受け、
残りの株式は発起人以外の引受人を募集する方法。
(会社法25条1項2号)

実務上、使われるのは殆ど発起設立
募集設立の利用数は極めて少ない。(ほとんどゼロ)

「募集設立に対する利用のニーズが減少している」
会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明(平成15年10月)より)

会社の株式を募集する方法で、詐欺に利用されてしまうこともある。
⇧こうした方法は、金融商品取引法などで厳しく規制されている。
だから、手続きが大変で利用も少ない。

*利用が少ないとはいえ、募集設立の手続きも簡単に説明したい。

発起設立に比べ、募集設立はより厳格な手続きとなる。
∵募集設立の場合には、
発起人以外の株式の引受人には、会社の内部事情がみえにくい。
⇒投資公衆の保護の必要性

⇩具体的には・・・

  • 出資の払込みについて、
    払込取扱機関が払込金の保管証明の義務を負っている(会社法64条)。
  • 創立総会を開催する必要がある。

上記の点などにおいて、発起設立とは手続が異なっている。

———

【発起設立の手続①】

概観:会社として成立するために必要なこと

1. 出資比率、役職の分配、会社の運営方針等についての交渉
(設立時株主が複数いる場合)
⇒会社の根本ルールを定めるため、発起人同士で行う
2. 定款の作成
3. 株式発行事項の決定と株式の引き受け
⇒一株いくら、を決める
4. 出資の履行
⇒決定した株価の金額を振り込んでもらう
5. 設立時役員等の選任
6. 設立登記

なぜ会社設立には登記が要求され、細かな手続きが必要となるのか?

そもそも、権利の帰属主体になるための要件が厳しいから。
「法人」として権利義務の帰属主体となっているかどうかは、非常に重要なこと。
∵その会社にしか責任がいかない(=権利義務が帰属しない)から。

例えば…

会社だと思って取引をしていたら、実態がなかった。
⇒非常に困る!だから登記をする必要がある。
登記をしていれば誰でも閲覧可能なので、会社の実在を確認できる。
(※実在することが分かるだけ。財産がどれ位あるのかは不明なのが現実…)

※ただし、所定の手続きを経れば誰でも設立できるのが株式会社。
これを準則主義という。

準則主義=法人の設立にあたり、法律などにのっとり、それを根拠としたり準じているならば行政機関が採る主義として法人格を付与する原則的な方針。 行政機関の裁量や判断として法人格を許可するのではなく、該当する法律などの要件を満たしておれば法人の設立を拒む理由がなく法人格が付与される事を言う。
(Wikipediaより)

(免許主義ではないため会社の内容が審査されることはない。
ただし、明らかに公序良俗に反するものは難しい…?)

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【発起設立の手続② :定款の作成】

絶対的記載事項
決めないと会社が設立できない事項
(目的、商号、本店所在地、出資額、発起人の名称)⇨人が生まれる時と同じ
相対的記載事項
決めなくても良いが、決めた場合には定款に記載しないと効力が生じない事項
(現物出資、財産引受、発起人の報酬等、設立費用)

⇩発起設立における絶対的記載事項は・・・

1. 会社の目的(27条1号)
2. 商号(27条2号)
3. 本店の所在地(27条3号)
4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(27条4号)
(資本金の額)
5. 発起人の氏名・名称および住所(27条5号)
6. 発行可能株式総数(37条)
会社法Visual Materials22~23頁参照)

⇧これがなければ会社とはいえない、という最低限のもの。

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【発起設立の手続③:株式発行事項の決定と株式の引き受け】
設立時発行株式:設立の際に発行される株式のこと。
株式の引き受け:出資を行って株主になることを指す。

設立発行株式に関する事項(株式発行事項)のうち、
重要な事項は定款に定められ、その他の事項は発起人の多数決で決定される。

発起設立の場合、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける。

⇩大切なのはステークホルダーとの利害関係の話

*資本金と資本準備金
会社債権者の保護のため、
一定の財産を配当として社外に流出させることが制限される(会社財産の確保)。
その時の計算の基準となるのが資本金である。
これを少なくする方が、配当は増やしやすい。
⇒資本金として示された金額を常に会社にプールしなければいけない訳ではなく、
基準として「いくらまで配当できるのか?」を決めているのが資本金。
なお、出資額のうち半額までは、資本準備金にすることができる。

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【発起設立の手続④:出資の履行】
発起人は株式の引受け後、遅滞なく、引き受けた設立時発行株式分の全額の払い込みをする(会社法34条1項)。

金銭の払い込みは、発起人が定めた払込取扱機関(銀行・信託銀行等の金融機関)の払込取扱場所において行う(会社法34条2項)。※要は振り込み。

出資の履行がなされない場合には・・・
⇒催促を経て、
最終的には失権(設立時発行株式の株主となる権利を喪失)する。

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【発起設立の手続⑤:出資の履行の方法】
株式の対価を現金で支払う以外に、現物出資という方法がある。
現物出資:金銭以外の財産による出資のこと。
(動産、不動産、債券、有価証券、知的財産権など)

現物出資は、定款への記載が要求される(会社法28条)ほか、
原則、裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならない(会社法33条)。
∵金銭ではないため、目的物の価値評価が不当になる可能性がある。
(ものの価値なんて何時どうなるか分からない…)
他の出資者とのバランスや、会社債権者を害する恐れがある。

※基本的には裁判所に検査役(大体こういうのは弁護士がやる)
をしてもらって調査をしてもらう。かなり大変。

例外としては、33条10号、500万円以下、市場価格のある有価証券。
(それでも手続きが大変なので、あまり行われない。)

⇒その他の手続きの組み合わせでカバーする。

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【発起設立の手続き⑥:出資の履行後に行うこと】
〇設立時取締役の選任
⇒発起人は1株につき1議決権を持ち、
議決権の過半数によって、設立時取締役を決める。

〇設立登記
⇒株式会社は、その本店の所在地において
設立の登記をすることによって成立する(会社法49条)。
⇒登記時をもって、法人格を取得する。

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【まとめ】
“設立”とは、設立の登記時。

会社法49条(株式会社の成立)
「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」

 


今回はここまで。

会社の設立や能力も、
「人」に置き換えればなんとなく身近になります。
「法人」も生きていて、人格があって、法に律されているのですね。
この考え方で新たに気づく点もあるかもしれません。

次回のテーマは「株式」です。お楽しみに。

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