【委員会設置会社】
委員会設置会社(新名称:「指名委員会等設置会社」)は本講義では深く取り扱わない(実務上導入社数は限定的。上場企業4000社程度のうち、100社もない。SONYとか、銀行とかにも多い)。
なお、近時の改正により「指名委員会等設置会社」と名称が変わり、別途監査等委員会設置会社という、従来の委員会設置会社との折衷的な制度もできた。
※元はアメリカの制度を参考にして作られたもの
⇒有名な会社が導入していたりするものの、非常に人気がない!
社名 | 証券コード | 上場場部 | 移行年 |
(株)LIXILグループ | 5938 | 東証1部 | 2011 |
東京電力(株) | 9501 | 東証1部 | 2012 |
(株)日本取引所グループ | 8697 | 東証1部 | 2013 |
マネックスグループ(株) | 8698 | 東証1部 | 2013 |
株式会社みずほフィナンシャルグループ | 8411 | 東証1部 | 2014 |
日東紡績(株) | 3110 | 東証1部 | 2014 |
(株)三菱ケミカルホールディングス | 4188 | 東証1部 | 2015 |
日本郵政(株) | 6178 | 東証1部 | 2015 |
(株)荏原製作所 | 6361 | 東証1部 | 2015 |
株)ツバキ・ナカシマ | 6464 | 東証1部 | 2015 |
日立工機(株) | 6581 | 東証1部 | 2015 |
(株)三菱UFJフィナンシャルグループ | 8306 | 東証1部 | 2015 |
GMOクリックホールディングス(株) | 7177 | JASDAQ | 2015 |
(株)かんぽ生命保険 | 7181 | 東証1部 | 2015 |
(株)ゆうちょ銀行 | 7182 | 東証1部 | 2015 |
(株)メニコン | 7780 | 東証1部 | 2015 |
(株)ブリヂストン | 5108 | 東証1部 | 2016 |
クラリオン(株) | 6796 | 東証1部 | 2016 |
三菱地所(株) | 8802 | 東証1部 | 2016 |
窪田製薬ホールディングス 株式会社 | 4596 | マザーズ | 2016 |
(株)マクロミル | 3978 | 東証1部 | 2017 |
日本取締役協会HP「指名委員会等設置会社リスト(上場企業)2017年3月28日現在日本取締役会調べ。(各社のプレスリリースなど、公表されている情報を元に作成)」より(一部)
東証1部 | 61社 |
東証2部 | 2社 |
マザーズ | 3社 |
JASDAQ | 4社 |
セントレックス | 1社 |
計71社 |
⇒なお、監査等委員会設置会社の数は増えている。
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【取締役】
資格 :自然人のみ(法人が代表社員になれる合同会社等とは異なる)
員数 :取締役会設置会社は3名(この人数に明確な理由があるわけではない)
任期 :2年(非公開会社なら定款で10年まで伸ばせる)
選任 :株主総会の普通決議
単純投票だと、例えば、6割グループと4割グループがいた場合、
多数派ですべて占めることが可能。なので、累積投票制度がある。
会社法342条(累積投票による取締役の選任) 「1. 株主総会の目的である事項が2人以上の取締役の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、3項から5項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。 2. 前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の5日前までにしなければならない。 3. 308条1項の規定にかかわらず、1項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、1人のみに投票し、又は2人以上に投票して、その議決権を行使することができる。 4. 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。 5. 前2項に定めるもののほか、1項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。 6. 前条の規定は、前3項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、 適用しない。」 |
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【取締役の地位】
<参考:最高裁判所平成16年6月10日判決> 〔判決文〕 本件免責条項が、上記のとおり、保険契約者又は被保険者が法人である場合における免責の対象となる保険事故の招致をした者の範囲を明確かつ画一的に定めていること等にかんがみると、本件免責条項にいう「取締役」の意義については、文字どおり、取締役の地位にある者をいうものと解すべきである。そして、有限会社の破産宣告当時に取締役の地位にあった者は、破産宣告によっては取締役の地位を当然には失わず、社員総会の招集等の会社組織に係る行為等については、取締役としての権限を行使し得ると解されるから、上記「取締役」に該当すると解するのが相当である(なお、最高裁昭和42年(オ)第124号同43年3月15日第二小法廷判決・民集22巻3号625頁は、株式会社が破産宣告とともに同時破産廃止の決定を受けた場合において、従前の取締役が当然に清算人となるものではないことを判示したもので、本件とは事案を異にする。)。 このような見地に立って本件をみるに、前記のとおり、本件火災は、本件保険契約の保険契約者である訴外会社の取締役の地位にあったCの放火によるものであり、当時、訴外会社は破産宣告を受けて破産管財人が選任されていたが、Cは、依然として、取締役の地位にあったのであるから、Cの放火による本件建物の焼失は、本件免責条項にいう取締役の故意による事故招致に該当するものというべきである。 |
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【取締役解任の正当事由】
<最高裁判所昭和57年1月21日判決> 〔判決文〕 原審が適法に確定した事実は、(1)被上告会社の代表取締役であつた上告人は、昭和52年9月ころ持病が悪化したので、被上告会社の業務から退き療養に専念するため、その有していた被上告会社の株式全部を被上告会社の取締役新道虎男に譲渡し、新道と代表取締役の地位を交替した、(2)そして新道は、経営陣の一新を図るため、同年10月31日開催の臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、原告を取締役から解任した、というのであり、右事実関係のもとにおいては、被上告会社による上告人の取締役の解任につき商法257条1項但書にいう正当な事由がないとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。 |
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【取締役の解任の訴え(条文)】
会社側の多数株主が、取締役の職務執行に関して、不正の行為等があったのに取締役を解任しない場合、少数株主は納得がいかない。
そこで、100分の3以上もっていれば、解任の訴えが可能。
ただし、要件は厳しいので裁判所に認めてもらうためのハードルは高い。
会社法854条(株式会社の役員の解任の訴え) 「役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が323条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。 一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主 ロ 当該請求に係る役員である株主 二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。) イ 当該株式会社である株主 ロ 当該請求に係る役員である株主」 |
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【権利義務取締役】
役員に一度なってしまうと、制度上、なかなかやめられない。
(登記もされるし…)
もし欠員が出た場合には、権利義務取締役が生じる。
⇒取締役が任期の満了又は辞任により退任するとき、そのことで法定の取締役数を満たさなくなってしまう場合、その者は、後任が来るまで引き続き取締役としての権利義務を有する。(その間は退任登記ができない。最判S43.12.24⇩)
<最高裁判所昭和43年12月24日判決> 〔判決文〕 株式会社の取締役または監査役の辞任は登記事項の変更にあたり、会社はその登記をしなければならないことはいうまでもない。しかし、商法258条1項、280条によれば、法律または定款に定めた取締役または監査役の員数を欠くに至つた場合においては、任期満了または辞任によつて退任した取締役または監査役は、新たに選任された取締役または監査役の就職するまでなお取締役または監査役の権利義務を有するのであるから、このような者については、退任による変更登記をしたままにしておくことは取引の安全の見地からみて適当なことではなく、退任者がなお取締役または監査役の権利義務を有することを登記公示することが必要であると解せられる。 しかるに、法律においては、この特別な場合に関する登記公示について明文の規定を欠いているので、このような場合には、取締役または監査役の権利義務を有する退任者につき、登記簿上なお取締役または監査役の登記を存続させておくべきものと解することは前叙の見地からして合理的理由があるというべきである。 従つて、取締役または監査役の任期満了または辞任による退任があつても、商法258条1項の適用または準用をみる場合においては、いまだ同法67条に定める登記事項の変更を生じないと解するのが相当である。 そして、以上のように解することは、利害関係人や一般公衆に対し取引上重要な事項を知らしめて不測の損害を防止することを目的とする商業登記制度の趣旨にもとるものではない。 ところで、商業登記制度は登記事項についての法律関係当事者の利益のためにも存するものであることは所論のとおりであるが、前記258条1項所定の権利義務関係は退任による登記の有無に関係なく存続するものであること、そのような地位にある者について登記公示する必要があること等を併せ考えれば、上告人らがいま直ちに辞任による登記を受けることができないとしても、現行商業登記制度上やむをえないところである。 原判決の確定したところによれば、訴外株式会社高橋商店においては、上告人らの同時の辞任により、取締役、監査役とも法律に定める員数を欠き、後任者の選任がされていない、というのであるから、前記商法258条1項の適用または準用がある場合にあたり、従つて、いまだ登記事項に変更がないと解し、本件登記申請を却下するのが相当であるとした原判決の判断は正当として首肯することができる。なお、所論引用の大審院判例は、この点については、前述したところからしてこれを変更すべきものである。 |
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【取締役会の招集】
・取締役会は各取締役が招集。
⇒ただし、基本的に業務執行をおこなっているものも多いため、招集手続きはかなり簡略化することができる。招集通知は書面ではなく、口頭・電話でもOK。(取締役にとって、取締役会への出席・討議は権利ではなく義務であり、会議に様々な事項が付議されることは当然予想されるべきだから。)
・取締役の議決権は頭数(=保有株式数の株式とは違う)。
⇒経営専門家としての能力を期待されているから
・特別の利害のある取締役は決議の公正を期すため、議決に加わることが出来ない(369条2項)。
・取締役会の決議の瑕疵
⇒会社法上の定めは無い。一般原則に従い、瑕疵のある決議は無効。
・議事録:10年間の備置義務。
議事録に署名押印する際に異議がある場合、その中に異議をとどめて(=残して)おかないと、決議に賛成したと推定されてしまう(369条5項)。
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【取締役会の構築する内部統制システム】(次回以降)
内部統制システム:大会社で定めることが義務付けられる制度のこと。
人数が少ない会社だと、取締役が個々の従業員を監視することができるが、人数が大きくなると、それが難しくなるし現実的ではない。
不祥事を防止するため、組織をシステムで監視する体制を作る。
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【監査役】
取締役(+会計参与)の職務執行を監査するもの。
監査:行為者(取締役)とは別の者(監査役)が、一定の基準(法令や会計基準)で行為の適否を判断すること(適法性)。
⇔これに対し取締役会が行うのが監督:行為者と監督者の区別は必ずしも明確ではなく、経営の合理性といった裁量のある判断がされる(妥当性)。
資格 | 兼任禁止(*1)、自己監査(*2)を避ける *1 監査役は業務執行を監視することが任務だから、業務執行者や、業務執行者の指図を受ける立場を兼任することが禁止されている。 *2 つまり、取締役も兼任することができない。 |
任期 | 4年(10年まで伸ばせるが、短くはできない) |
・監査役の解任は会社法上、一定の制約がある。
⇒嫌な監査をする人間を排除していては経営の効率性は保てない。取締役との意見の対立による不再任・解任・辞任を想定。
(ex. 株主総会による解任は特別決議、監査役の選任・解任または辞任について総会で意見を言える、など。)
・適法性監査はするが、妥当性監査はしない。
※妥当性監査:取締役による業務執行がビジネスとして妥当かどうか、をチェックするいったようなこと。監査役の権限は及ばないと考えるのが多数説。
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【監査役会】
社外監査役の要件。公開会社かつ大会社は監査役会を設置する必要がある。
監査等委員会設置会社においては、監査役会は3名以上の監査役で構成され、且つその半数以上は社外監査役でなくてはならない。
この社外監査役の確保、社外取締役の確保が上場企業ではハードルが高い。
過去に当該会社や子会社の従業員や役員だった人はなることができず、
以下のいずれかに該当するもの、と定められている。
①監査役に就任する前10年間、その会社または子会社で取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと
②社外監査役に就任する前10年間のいずれかの時点で、その会社、または子会社で監査役にあったことがある者の場合には、その就任の前10年間、その会社または子会社で取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人であったことがないこと
③現在、その会社の大株主(自然人)、親会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人でないこと
④現在、その会社の兄弟会社の業務執行取締役等でないこと
⑤その会社の取締役・支配人その他重要な使用人・大株主(自然人)の配偶者・2親等内の親族でないこと
※「社内」監査役はどうしても心情的に適切な監査が出来ない…
企業不祥事が起こるたび、監査役の選任ルールが厳しくなっていった。
監査役の独任制:複数名いても、各自が独立して監査権限を有する。
※裁判官の独任制。適切な立場で権利行使をする者には独任制が要求される。
<参考記事①>
企業の統治形態 3つの選択肢、株主総会で承認(2015/4/17 日本経済新聞 朝刊)
<参考記事②>
監査等委員会設置会社の人気と課題(2015/4/15 日本経済新聞 夕刊)
<参考記事③>
「監査等委設置会社」移行、600社に 上場企業の2割(2016/4/22 日本経済新聞 電子版)
<参考記事④>
取締役会の監督機能底上げへ 「社外」明確な役割求める 経産省、企業向けに実務指針(2017/4/17 日本経済新聞 朝刊)
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【会計監査人】
大会社では、会計監査人の設置義務がある。それ以外は任意。
公認会計士または監査法人(5名以上の公認会計士で設立されている法人)が担う。監査法人は、監査「法人」なので、個人たる公認会計士とは別。
会計監査人による監査についてもルールが厳しくなっていっている。
(継続的監査の制限:7年継続したらそのあと2年は継続できない等。さらに要件が厳しくなることも。)
会社の内部の人間・役員である取締役・監査役とは異なる。外部の者。
そのため、会計監査人を含めて呼ぶときは、「役員等」という。
会社法396条1項(会計監査人の権限等) 「会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。」 |
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【会計参与】
会社の内部の人間として計算書類の作成を補助する。公認会計士・税理士等の資格を持つものがなることができ、設置については、ほとんどが任意
会社法374条(会計参与の権限) 「会計参与は、取締役と共同して、計算書類(435条2項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)及びその附属明細書、臨時計算書類(441条1項に規定する臨時計算書類をいう。以下この章において同じ。)並びに連結計算書類(444条1項に規定する連結計算書類をいう。396条1項において同じ。)を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。」 |
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【非取締役設置会社】
取締役会を設置しない会社。(公開会社でなければ、基本的には取締役会を設置する必要がない)
取締役1名のみで会社の運営を行う。
1名のみの場合には、1人で決定ができる。そして、業務執行は1名でできる。
2名以上の場合には、過半数で決定。
ただし、重要な意思決定(利益相反行為への承認も含めて)については、株主総会で決定・承認がなされる。
※適用されるルールの多くは、会社法が制定される前の有限会社のものを多く引き継いでいる!
第4回はここまでになります。
今回も民法との関連性がポイントになったのではないでしょうか。
法律の種類は違えど、「人と人にもの」に関するという点はブレることがなく、フォローしあっているものなのかもしれません。
次回は「企業経営者の法的責任」についてです。お楽しみに。