【種類株式とは】
発行会社と投資家の間には様々な経済的・会社支配的な需要があることから、様々な需要にこたえるためにバラエティがある。
⇒株式は1株ずつ全て同じ…という話について、
株式というのは全部同じ種類の株式であるはずで、そうでなければいけない。
私の1株とあなたの1株は同じ価値を持っていなければいけないが、「種類株」という制度がある。
異なる種類の株式を発行するが、それぞれの種類に応じてすべて同じ内容である。
ある一定程度の条件を示した株式というものがあるが、A株とB株という、別の種類の株式を発行することによって
A株のなかでは同じ内容・B株のなかでは同じ内容、としておけば別の種類の株式を発行することができる。
⇩どういった種類を設定することができるのか?
会社法108条1項(異なる種類の株式) ※ただし、当該種類株式ごとに均一の内容。 「株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。 ① 剰余金の配当 ② 残余財産の分配 ③ 株主総会において議決権を行使することができる事項 ④ 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。 ⑤ 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。 ⑥ 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。 ⑦ 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。 ⑧ 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの。 ⑨ 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。」 |
⇒例えば、
・剰余金の配当に関して「Aの株式はたくさん、Bの株式は少ない金額」という条件を設定できたり
・議決権を行使することができる事項も設定できたり
様々な種類を設定することが可能。
⇩では、種類株はどういった状況で使われるのか
【CCCの事例】
(スクイーズアクト、全部取得条項付株式)(会社HPより)
平23年5月11日 各位 会社名 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 定款の一部変更及び全部取得条項付普通株式の取得等に関するお知らせ 当社は、平成23年5月11日開催の取締役会において、種類株式発行に係る定款一部変更、全部取得条項に係る定款一部変更、当社による全部取得条項付普通株式(下記「Ⅰ.1(1)②」において定義いたします。)の取得及び株券発行に係る定款一部変更について、平成23年6月21日開催予定の定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)に付議することを決議し、また、全部取得条項に係る定款一部変更について、本定時株主総会と同日に開催予定の当社普通株式を有する株主様を構成員とする種類株主総会(以下「本種類株主総会」といいます。)に付議することを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。 |
平成23年6月21日 各位 会社名 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 定款の一部変更及び全部取得条項付普通株式の取得等に関する承認決議に関するお知らせ 当社は、平成23年5月11日付「定款の一部変更及び全部取得条項付普通株式の取得等に関するお知らせ」(以下「平成23年5月11日付当社プレスリリース」といいます。)においてお知らせしましたとおり、本日、種類株式発行に係る定款一部変更、全部取得条項(会社法第108条第1項第7号に規定する事項についての定めをいいます。以下同じです。)に係る定款一部変更及び当社による全部取得条項付普通株式(下記「1.②」において定義いたします。以下同じです。)の全部取得について、第26回定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)及び普通株主様による種類株主総会(以下「本種類株主総会」といいます。)に付議いたしましたところ、下記のとおりいずれも原案どおり承認可決されましたのでお知らせいたします。この結果、当社普通株式は、株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」といいます。)の定める上場廃止基準に該当することとなりますので、本日から平成23年7月21日までの間、整理銘柄に指定された後、平成23年7月22日をもって上場廃止となる予定です。上場廃止後は、当社普通株式を東京証券取引所において取引することはできません。 |
※スクイーズアウトとは:
M&Aにおいて、ある会社の株主を大株主のみとするため、少数株主に対して金銭等を交付して排除すること。スクイーズアウトの日本語訳にあたる「締め出し」あるいは「キャッシュ・アウト」とも呼ばれる。
(Wikpediaより)
⇒全部取得条項株式というものにすると、会社の決議で株式を全部取得することができる。「自己株式の取得ができない」「会社は株式を買い戻せない」といった原則の話をしていたが、できる株式もある。
何が良いかというと…
ある会社がA株のみを発行していたとする。
B株を追加で発行し、A株を「全部取得条項付株式」に変えてしまう。
その後、A株を全部取得してしまうとする。そうするとB株しか会社には残らなくなったタイミングで、B株を持っている人が株主になる。そうすると、もともとA株を持っていた人たちというのが、全部会社から追い出されてしまう。
これが「スクイーズアウト」。
⇩どういう時に使われるかというと…
会社が上場を辞めたいとき。
株主が何万人、何十万人といる会社で、全員から株式を買い取ったり、誰かに売ったりなど、集約することが不可能。
不可能な場合には、会社法の決議をとること、会社法上の仕組みを利用することによって、強制的に全株主を追い出してしまうことができたりもする。ただ、誰でもできるわけではなく、特別決議が必要になる。
逆に言えば、特別決議をすれば既存株主をすべて追い出すことも可能。
ゆえに、支配権というのはとても大事。2/3以上を占めてしまった場合には、
残りの1/3しかもっていない人を追い出すことも可能。
【伊藤園の事例】
(会社HP「財務・IR情報」より)
優先株式について
┃概要
(注1)議決権が発生する場合があります。 【一定の事象】 |
⇒優先株式も種類株のひとつ。
メリットは、125%分なので25%増しで配当を受け取ることができる。
デメリットは、議決権がないこと。…とはいえ、上場企業の株主総会に行き、議決権を行使して会社に対して何か影響を与えるということは、普通の一般投資家にしてみればあまり意味がない。そうなると、議決権がなくても配当の多いほうがいいのでは?ということで、この優先株式を買う人が出てくる。
恐らく、全上場企業のなかでこうした優先株式を発行しているのは、伊藤園のみ。
【サイダーバインの事例】
※上場企業で種類株を発行している会社は、基本的に極めて少ない。
(野村総合研究所「Financial Information Technology Focus2014.5」より)
サイダーバインの上場 2014年3月、大学発ベンチャー企業として知られ、介護ロボットスーツを開発・販売するサイバーダインが、東京証券取引所(以下「東証」という)のマザーズ市場に株式を上場した。同社の上場が特筆に値するのは、単に同社が技術力の高い研究開発型のベンチャー企業だからというだけではない。同社は、上場した普通株式のほかに、普通株式の10倍の議決権を付与された種類株式を発行しており、同社の創業者であり代表取締役社長を務める山海嘉之筑波大学大学院教授が、出資割合は49.31%でありながら、議決権の89.89%を握るという独特のガバナンス構造をとっているからである。会社法は株主平等原則を定め、普通株式の株主は、出資の割合に応じて議決権を保有する。しかし、普通株式とは種類の異なる株式(種類株式)を用いることで、議決権に差異を設けることも容認されている。 多様化する種類株式 かつての商法は、種類株式の発行を厳しく制限した。上場会社による種類株式の発行例は、優先配当を受けられる代わりに議決権がなく、優先配当が支払われない場合には議決権が復活する優先株式に限られた。また、1990年代以降、銀行等による優先株式発行が相次いだが、いずれも上場されていたのは普通株式のみで、議決権の制約を受ける優先株式は上場されなかった。一方、1990年代半ば以降、2005年の会社法制定に至る一連の法律改正では、定款自治の範囲を拡大し、会社経営の柔軟性・機動性を高めるといった観点から、種類株式の自由化・多様化が進められた。この制度改革を受けて、サイバーダインの上場以前にも、経営上の一定の重要事項について拒否権を行使できる黄金株などが存在するなど、議決権について一般の普通株式とは異なる制約のある株式が、東証市場に上場されるという例も現れていた(図表)。 図表 議決権に一般の普通株式とは異なる制約のある株式の上場事例
出処:各社ウェブサイト等より作成 |
⇒議決権比率が高い株式を発行している。
議決権の9割近くを持っている代表取締役は、何でもできる状態になっている。
49%だと普通決議もできないので、その人の一存では役員1名も決められない状態だが、9割持っていれば本当に何でもできる。
それこそ「既存株主を全部追い出す」なんてことも可能…!
代表者に独裁してもらった方が会社が伸びて良いのではないか…?
ということで、サイバーダインの場合は、議決権が10倍に設定されている種類株式を代表取締役である教授に付与している。
参考記事:
米フェイスブック、無議決権株発行へ 創業者の支配力維持
(2016/4/28 日本経済新聞 電子版)
「グーグル化」するフェイスブック、創業支配維持へ無議決権株発行、企業統治に懸念も
(2016/4/28 日本経済新聞 電子版)
トヨタ、個人向け新型株 5年間は売買できず
(2015/4/28 日本経済新聞 電子版)
トヨタが投じる一石 証券部 松崎雄典
(2015/5/19 日本経済新聞 朝刊)
トヨタ新型株、発行価格1万598円に決定 普通株の2日終値は8153円
(2015/7/2 日本経済新聞 電子版)
⇒このように、色々な種類株というのを発行することができ、
こうして会社は資金調達をする。
それに際し考慮しなければいけないのが、既存株主の利益・権利。
有利発行する場合は、既存株主を含めた株主総会の特別決議を経ないとできないし、上場会社の場合には、有利でなかったとしても、既存株主の議決権比率を大きく下げてしまうような発行は規制がある。
下げる究極的なところにいくと、
スクイーズアウトなど色々なことができてしまう。
それはそれで不利益があるため、上場会社の場合には希釈化するような株式の発行についても規制がある。
そのあたりは上場企業の、証券会社により規制されていたり、
有利発行については会社法上規定があったり。
様々な種類の株式があり、その制度を活用するような方向で日本では進んでいる。
一口に「発行した」「決定した」と書いてあっても、それぞれの発行手続きは結構大変なもの。一回株式を発行するのに印刷代・郵送費などかかると一千万、二千万、もしくはそれ以上お金がかかったり、なかなか大変なのである。