資格試験アラカルト・宅建(4)~登録実務講習体験記編

宅建ブログ4回目です。
今回は、登録実務講習の様子について、共有させていただきます。

 

「登録実務講習」って?

 

そもそも、「登録実務講習」って何?という感じですが、
ざっくり言えば、実務経験のない人が、宅建士登録するために受けなければならない講習、です。

宅地建物取引士資格試験に合格しても、それだけでは、宅地建物取引士としての業務をおこなうことはできません。
試験合格後、都道府県知事への「登録」をすることで、宅地建物取引士資格者となり、「宅建士証」の交付を受けて、初めて宅地建物取引士としての業務をおこなうことができます。

そして、この宅地建物取引士の「登録」については、宅建業法及び同法施行規則で、

「試験に合格した者」かつ
「2年以上の実務経験を有するもの」(法18条、規則13条の15)

又は

「国土交通大臣がそれと同等以上の能力を有すると認めたもの」(法18条)

でなければならないと規定されていて、
その、同等以上の能力を有すると認められるための要件の一つが、

「登録実務講習」を修了した者(規則13条の16第1号)

なのです。

つまり、宅建士の「登録」のためには、

①「試験合格」+「実務経験2年以上」
②「試験合格」+「登録実務講習を修了」
等のどちらかが必要、とされていて、
私の場合、宅地建物の取引に関する実務に携わった経験が全くないので、②の「登録実務講習」を受講する必要があった、ということです。

 

実施機関

 

登録実務講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施することになっています。
令和4年11月14日現在の実施機関は、19機関あるようです。

これらの機関が、それぞれに講習をおこなっているのですが、講習の内容については、宅地建物取引業法施行規則13条の21第4号で

・宅地建物取引士制度に関する科目が講義1時間
・宅地又は建物の取引実務に関する科目が講義37時間

などと定められています。
そのため、どこの機関の講習を申し込んでも、科目やコマ数は共通になっています。
(念のためネット情報も検索してみたのですが、特に「ここがいい!」とか、逆に「ここはやめておけ!」のような情報はないようでした。いずれも独自性を競うようなことはしておらず、大差はない、というところではないかと思います。)
実施機関によって違うのは、会場(場所)、日程、費用などでしょうか。

大手の資格試験予備校などは、全国の会場で多数の日程にわたって講習をおこなっている一方、地方に事務所がある機関では、当該地方で少数の日程しか講習をおこなっていないところが多いようでした。
費用については、おおむね同程度で、22,000円(消費税込)が相場のようです。
(地方の機関がおこなっている講習では安価な設定のものがあるようでしたが、条件が合わず、今回は使えませんでした。)

今回私は、そのうちの「TAC株式会社」で登録実務講習を受講しました。
費用は、相場どおりの22,000円(消費税込)です。
上述のように、どの機関を選んでも大差はないように思ったので、選択のポイントは、(またしても)自宅から通いやすいこと、です。

というのも、この講習の一番重要なポイントは、(後で詳述しますが)

▼2日間にわたり、朝から夕方までのスクーリングに参加が必要(オンライン等不可)
▼欠席・遅刻・早退・中抜けは一切認められない

というところだからです。
(最後に修了試験はありますが、これはそもそもが「受からせるための試験」です。受験できれば、まあ間違いなく合格できると思われます。)

そこで、「2日間、スクーリングの全講義に出席すること」というミッションを確実に達成するため、
・迷子にならない(土地勘がある)
・最悪、交通機関がマヒしてもたどり着ける
ということで、自宅近くの会場が設定されていたTACを選びました。

(受講してみて分かったことですが、実施機関側も、受講者を1回で修了試験に受からせたい、といろいろな便宜を図ってくれます。でも、遅刻・欠席だけは、どうにも救済できないようでした。
朝が苦手な方は、8時半始まりのところではなく9時半始まりの講習を選ぶなど、対策されてください。)

 

申込手続

 

申込みの際は、宅建試験合格証書のコピーが必要となります。
TACでは、何故かオンラインでは申し込みができず、窓口に行くか、郵送でした。
費用は、郵送の場合は先に振込んで振込控えを提出する形で、窓口の場合は現金のほかクレジットカードも使えました。

どんどん枠が埋まっていくので、早めに申し込むのが良いと思いますが、ただ、「申し込み後、会場や日程の変更は一切できない、振り替えもできない(キャンセルの場合も返金しない)がよろしいですか」と何度も念押しされましたので、その点は十分注意が必要です。
(実際、業務に差しさわりのない時期を選んだつもりが、急遽、書面提出の締め切りが入ってしまい、できることなら変更したい!と電話してみたのですが、「変更はできません」とけんもほろろに断られました。)

 

カリキュラムと実際の様子

 

カリキュラムは、大まかに、
①通信学習
②スクーリング
③修了試験
の三つです。

①通信学習(約1か月間)
スクーリング日の1か月くらい前に、自宅にテキスト等が届けられ、これを使ってWeb講義を受講します。
ここで使用する教材は、以下となります。
・送られてきたテキスト1冊+確認テスト1冊
・インターネットからダウンロードした講義動画×3回分
(各回2時間20分程。各回、前半・後半の2ファイルに分かれています。)
・講義録のPDFファイル×3回分

教材については、実施機関によっていろいろ違いがあるようで、例えば、最大手のLECでは、DVD教材を使用しておこなうそうです。

TACではWeb講義で、視聴には、「TAC WEB SCHOOL」というアプリを使用します。
巻き戻しや早送り、再生速度の変更、「しおり」を挟んで次回そこから再生できるようにする、などの機能があって、使い勝手は悪くなかったです。(HPから事前に、動作環境の確認もできます。)

なお、講義動画は、ファイルをダウンロードして視聴するのですが、(ダウンロードしても)インターネットに接続されていない環境では再生できないようでした。自宅にwi-fi環境がない方は、要注意かもしれません。
講義中、板書等はしないので、画面が小さくても問題ないです。私はスマホで視聴しましたが、「大きい画面で見たい」と思うことはなかったです(なんなら、音声だけで充分だと思います)。

内容は、宅建試験の復習又は延長のようなものになっており、やっていて、なんとなく「こういうの勉強したなあ」と懐かしい感じがしました。難易度も同じくらいなので、試験合格者の方なら、恐れるに足らず、だと思います。

 

②スクーリング(演習)(12時間)
重要事項説明・契約書の作成等について、事例を基に演習をおこないます。
(先ほども書いたとおり)この講習の肝は、このスクーリング講義、すべてに出席することです。ほとんどの機関が2日間で実施していますが、中には、1日で全て終わらせるところがあるそうです(ただし、時間数は12時間で同じ)。
1コマでも欠席・遅刻・早退・中抜けをすると、修了試験の受験が認められません(つまり、講習を修了することができません)。

実際の演習の内容は、
一軒家の売買にかかる事例が示され、
その事例についての「重要事項説明書」と「売買契約書」を作成する
(実際の「重要事項説明書」と「売買契約書」の、要所要所が空欄になっているものが示されて、それを穴埋めする)
というものです。

こちらも、問われている内容は宅建試験でやったことの復習ですし、答えは示される資料(不動産登記簿など)に書いてあって、それを拾い出して書き写すだけなので、登記簿等を見たことがある人だったら、恐れるに足らない、と思います。
(これまでに全く不動産登記を見たことがない人だと、1回目は少し戸惑うかもしれませんが、スクーリング中にどこを見たら知りたい情報が書いてあるか、丁寧に教えてくれますので、講師の話さえ聞いていれば大丈夫だと思います。)

今回の場合、講師は不動産鑑定士をされている方でした。
土地建物の取引の実務に日々携わっておられる方なので、実務上で用いられる略語とか、実務の最近の動きなどが説明にちりばめられており、「そうなんだ!」と、興味津々でした。

ただ、実施機関側としては、何としても「修了試験を受けてもらい、1回で合格してもらう」ことを至上命題としているようで、
そういった実務的なお話などより、「修了試験にはここが出ます」(言葉は少し濁して言われますが、翻訳するとそういう意味)というお話が大半でした。
(そのため、正直なところ①の通信学習は、受けなくても支障はない(修了試験合格のためには)と思います。Web講義を聞かなくても、スクーリング中に、修了試験にでるところは全部、「復習」として教えていただけます。)

 

③修了試験(1時間)
一問一答式と記述式があり、それぞれで8割以上の得点を取ると合格=登録実務講習修了となります。
試験中は、通信教育のテキスト、スクーリングのテキスト、スクーリング当日に配布されるノート(穴埋め式)の3冊を持ち込むことができます。その3冊以外から出題されることはなく、時間も60分たっぷりあるので、まあ、ほぼ不合格になることはないのではないか、と思います。
(マークシートで、マークする場所が全部一つずれていた、とかでなければ…)
提出時、問題用紙は回収されます。試験開始から30分経過後、途中退席も可です。

もし不合格となった場合、追試等の救済措置はない、とのことでした。
(ただし、修了試験に不合格になってしまった場合、1回に限り無料で再受講可能となっている機関が多いようです。その場合、修了試験だけを再受験するということはできず、スクーリング12時間を全部最初から受講する必要があるようです。)

 

受講してみての雑多な感想ですが、

〇2クラスに分けて実施されました。教室にはかなりゆとりがあり、3人席を一人で使える状態だったので、快適でした。(通信教育のテキストと、スクーリングのテキストとノート、3冊同時に開いて作業する、みたいなこともありますので、スペースは広い方がやりやすいです。)

〇会社の同僚?と思しきグループで受講されている方もいらっしゃいましたが、一人で受講されている方が多く、(私も一人での受講でしたが)独りぼっち感はなかったです。

〇受講生は、男女比は半々くらい、年代は20代から60代くらい?までバラバラといった感じでした。

〇時間割上、「演習①9:30~12:30」のように記載されていますが、実際は1時間ごとに10分程度の休憩がありました。1コマ3時間は長い、集中力が切れてしまうのではないだろうかと心配していたのですが、ちゃんと配慮されていました。なお、各コマの最初に、結構厳密な(写真との照合もされているようでした)出欠確認がありますのでご注意ください。

 

最終的な感想としては、
〇試験勉強で自分が勉強していたことは、実務でこういうふうに使われているんだ、というのが理解でき、何というか、「身になった」気がした
〇最初に不安に思ったほど、大変ではなかった
→結論「受けてよかった」、といったところでしょうか。

私は、今のところ、不動産取引そのものに携わる予定はないのですが、弊所での業務でも、不動産売買契約書や重要事項説明書を参照する機会は少なくないので(法務デューデリジェンス等)、今回得た知識を活かしていきたいな、と改めて思いました。

 

◇ ◇ ◇

 

そして、1週間後くらいに、無事に修了証が郵送で届きました。
これを添付して、各都道府県に「宅地建物取引士資格登録申請」をすることになります。

次回、その手続についてお伝えしたいと思います。
では。

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