企業法・授業まとめ-第4回-

【代表ではない取締役の権限】
重要ではない事項の意思決定については、個々の取締役に権限を委任することができる。
⇒意思決定から業務執行まで一人でおこなうことが可能。その場合、基本的には意思決定と業務執行を同じ人がおこなえるのでズレは生じない。

職務分掌*により委任することが出来る。
実行行為は、各取締役や従業員もすることができる(会社法11,14,15条参照)。
⇒取締役兼営業本部長、取締役兼管理本部長取締役兼●●本部長、など。
彼らは、意思決定と業務執行のどちらも出来る:自然人に近い
(ただし、その行為の法的効果は会社に帰属

*職務分掌:組織においてそれぞれの職務が果たすべき責任(職責)や職責を果たす上で必要な権限(職権)を明確にするために、職務ごとの役割を整理・配分すること。多くの企業・組織では、個別の部門・部署や役職、あるいは特定の担当者について、それぞれの仕事の内容や権限・責任の範囲などを定義し、明文化している。
(「日本の人事部」より)

※会社法上、文房具の購入~金銭の借り入れまでの法的な扱いは同じ。
(取締役会の承認を要する重要な行為ではない場合)
⇒どこまでが承認を要する・不要かは、実務上かなり問題になることがある。

なお、業務執行をおこなう取締役は、社外取締役にはなることができない。
⇒社外取締役は、会社の業務執行を監督するための大事な機関であるから、兼任することは不可。

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【取締役会と代表取締役の関係】
これもまた条文で定められている。

会社法3631項 (取締役会設置会社の取締役の権限)
「1 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
① 代表取締役
② 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの」
会社法14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
「1 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」
会社法15条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)
「物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」
<参考:株主総会決議事項(委任不可事項)>

会社法309条(株主総会の決議)
「1 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
①第140条第2項及び第5項の株主総会、②第156条第1項の株主総会(第160条第1項の特定の株主を定める場合に限る。)、③第171条第1項及び第175条第1項の株主総会、④第180条第2項の株主総会、⑤第199条第2項、第200条第1項、第202条第3項第4号及び第204条第2項の株主総会(※募集株式の発行)、⑥第238条第2項、第239条第1項、第241条第3項第4号及び第243条第2項の株主総会、⑦第339条第1項の株主総会(第342条第3項から第5項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)、⑧第425条第1項の株主総会、⑨第447条第1項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)、⑩第454条第4項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)、⑪第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会(※第六章 定款の変更、第七章 事業の譲渡等、第八章 解散)、⑫第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会。」
会社法361条1項(取締役の報酬等)
「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」

※「取締役会に委任する」と書かれていなかったら、株主総会決議事項は原則、株主総会決議が必要(=委任不可)。

⇒上位機関~従業員までの意思決定・業務執行を表にしてみると、以下のとおり。

意思決定者(要件) 具体例 業務執行
株主総会 特別決議 株主の3分の2以上 定款変更、募集株式の事項の決定、事業の重要な一部の譲渡、解散など 代表取締役(最終的な契約等の署名は「株式会社●●代表取締役▲▲」といった形で行われる。)
普通決議 株主の過半数 役員の報酬の決定など
取締役会(過半数) 取締役の過半数 重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、内部統制システム
取締役会であらかじめ決めて、包括的に委任することもできる事項(稟議規程、決裁基準等で定める)※ 各担当者(⇒ただし取締役会等である程度は包括的に基準を決めておく必要(担当役員は500万円までの意思決定は自由にして良いなど)。方針を決めた場合は、決裁規程等に定めることが一般的。) ある程度少額な設備機材の発注・発注 ※ 業務執行役員(契約等の署名については「株式会社●●取締役事業本部長▲▲」といった形で行われることも)
さらに少額な契約・発注等 ※  担当部長(非役員)
(同上)
 少額備品の購入など ※ 一般従業員(発注書を担当者名で書いたり、店舗で物を買ったりなど)

※会社の規模、取引額により内容はさまざま。
文房具の売買、懇親会の手配・代金支払いから、事業の重要な一部の譲渡まで、会社の行為に効果帰属するという意味では同じ。しかし、重要度のランクに応じて、意思決定(≠業務執行)が出来る機関とは異なる。
⇒会社法上、条文で決められているのは以下の2か所について。
・「取締役会(過半数)」
・「取締役会であらかじめ決めて、包括的に委任することもできる事項」
ペン1本~工場1つにおける重要度の線引きは、会社によってさまざまってこと。
いすれも、最後にサインするのは代表取締役。

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【取締役会・代表取締役・その他の経営機関】
取締役会:会社に関する事項について意思決定を行うとともに、取締役の職務の執行を監督する場。どのような決議事項も、事前に提案していなくても議論・決議することができる。(=会社の経営の委託を受けているものの集まりであるから、その場で議論・判断できなくてはいけない。)
⇒株主総会との対比(株主総会は原則議論はしない)

取締役に対する監督は、業務執行の適法性のみではなく経営の「妥当性」にも及ぶ、といわれる。(監査役の適法性監査*のみとの違い。)
(※次回以降詳しく!)

*適法性監査:監査役は株主総会で選任され、取締役の職務の執行を監査することがその役割である。監査には、業務監査と会計監査とが含まれる。業務監査は、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することで、一般に適法性監査と呼ばれている。
公益社団法人 日本監査役協会HPより)

※取締役会はこの監督機能を実効的にするため、代表取締役等の職務執行を行った者に対し、3カ月に1度以上の頻度での職務執行の状況の報告義務を課している(363条2項)。

経営会議:取締役の中でも、一部のもので構成する会議体、取締役会に付議される前に審議事項を取扱い、意思決定をスムーズにおこなう観点から導入されている(社外取締役等に対しては結果の報告・承認を受ける)。

執行役員法律上の制度ではないが、導入する会社が増えている。委員会設置会社の「執行役」とは別(←「執行役」は法律上の制度)。決定した重要事項を実行する役割を担うが、重要事項等を決定する権限は持たない。
⇒会社幹部にそれっぽい名前を付すことで、業務をスムーズにさせる。
とはいえ、ごまかしの制度…?

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【株主総会という機関】:最高の意思決定機関
「株主総会」の設置を義務付けた直接の条文はないが、会社法上、当然の前提として規定されている。株式会社が会社を構成員として成立し、営利を目的とすることから、当然のものとして存在している。

*決議する事案(会社の基本的な事項+取締役に委任できない事項)
①取締役等の役員の選任
②定款変更、事業譲渡、合併などの会社の基礎的変更に関する事項の変更
③剰余金の配当などの株主の重要な利益に関する事項
④取締役の報酬の決定

ちなみに…
会社法上、「株主総会決議事項」とされているものについて、いくら定款で「異なる機関が決定する」と定めても、それはもちろん無効になる(295条3項)。

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【株主総会の招集手続】
⇒非常に厳格に定められている。会社法で定められたとおりにおこなわないと、株主総会をおこなった事実や決議したことが取り消されてしまう。
※一般的に招集とは「ある場所に人を招き集めること」をいう。だが株主総会の場合、ただ単に株主を集合させて会社に関する決議をおこなったとしても、それが果たして「会社としての意思決定」であるかどうかはハッキリわからない。そこを明確にするための手続き・厳格なルールなのである。

招集の流れ
取締役会による決定により、招集をおこなう。
⇒取締役会設置会社の株主総会では、会議の議題とされた事項(取締役会による決定事項である必要アリ)以外の事項は決議することができない。株主に、“総会出席の機会”と“議事・議決に参加する準備の機会”を与える点に実質的な意味がある。
※小規模な会社では招集方法は口頭でも良い。

招集通知の発送期間
原則2週間前まで。非公開会社は1週間(定款でもっと減らせる)。(299条1項)
⇒株主総会で招集(×召集)をおこなう場合。しかし、全員で一堂に会したり、全員に形式的な招集手続きを、いちいち経ることはとても大変。省略ルールは色々とある。
※招集手続きを省略できる場合として、一人会社、全員出席総会。
株主が多数いない場合に、迅速な株主総会を開催する必要がある場合。

⇩招集手続きがおこなわれなかったものの、全員出席していた為その株主総会は有効である、とされた判例。

最高裁判所昭和60年12月20日判決
〔判決文〕
商法が、231条以下の規定により、株主総会を招集するためには招集権者による招集の手続を経ることが必要であるとしている趣旨は、全株主に対し、会議体としての機関である株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによつて、これに対する出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするものであるから、招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であつても、株主全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときには、右決議は有効に成立するものというべきであり、また、株主の作成にかかる委任状に基づいて選任された代理人が出席することにより株主全員が出席したこととなる右総会において決議がされたときには、右株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成したものであり、かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り、右決議は、有効に成立するものと解すべきである。

※株主が何人か集まって会議を開いたとき、
・単なる集会なのか
・法的に意味のある株主総会になるのか
違いは当たり前のように感じるが、実際は境目が明確でないこともある
これによって揉めた例も実際ある。

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【株主総会の議事】
議長:議事運営は議長がおこなう。代表取締役が務めることがほとんど。

⇩いわゆる「総会屋」による、議事混乱を想定して設けられた制度

総会屋:日本において、株式会社の株式を若干数保有し株主としての権利行使を濫用することで会社等から不当に金品[1]を収受、または要求する者および組織を指す。
Wikipediaより)

会社法315条(議長の権限)
「1 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。」 ※どこまで命令できるのか?

取締役:出席義務はないが、説明義務はある。

会社法314条(取締役等の説明義務)
「取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。」

⇧この規定があるために、実質出席義務がある。
314条但書きで、株主からの質問に答えないことができる。

最高裁判所平成8年11月12日判決
〔判決文〕
株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由のない限り、同一の取扱いをすべきである。本件において、被上告会社が前記1の2のとおり本件株主総会前の原発反対派の動向から本件株主総会の議事進行の妨害等の事態が発生するおそれがあると考えたことについては、やむを得ない面もあったということができるか、そのおそれのあることをもって、被上告会社が従業員株主らを他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に着席させる措置を採ることの合理的な理由に当たるものと解することはできず、被上告会社の右措置は、適切なものではなかったといわざるを得ない。しかしながら、上告人高橋は、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、被上告会社の本件株主総会に関する措置によって上告人高橋の法的利益が侵害されたということはできない。

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【株主総会の決議】
一株一議決権原則:各自が負担する経済的リスクに応じて慎重に意思決定に参加することが期待できるから、最も意思決定のゆがみが生じにくく、経済的に合理的な意思決定が導かれる、という考え方もある。

⇩ただし例外的に議決権の行使ができないものが…

・議決権制限株式(種類株)※そもそもの株式の種類として議決権が行使できない種類の株式。会社の支配関係、資金調達の便宜として発行されることが多い。
・単元未満株※株主管理コストの節減、議決権に対する制約。基本的には解消されるべきもの。
・相互保有株式(相手が4分の1を保有していると自己の議決権を行使できない。)
←4分の1でいいの?という批判はある。
・自己株式

会社法308条(議決権の数) ※相互保有株式、自己株式
「1 株主(株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき1個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき1個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。」
最高裁判所昭和51年12月24日判決
〔判決文〕
原審が適法に確定したところによれば、被上告会社の定款には、「株主又はその法定代理人は、他の出席株主を代理人としてその議決権を行使することができる。」旨の規定があり、被上告会社の本件株主総会において、株主である新潟県、直江津市、日本通運株式会社がその職員又は従業員に議決権を代理行使させたが、これらの使用人は、地方公共団体又は会社という組織のなかの一員として上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使に当たつて法人である右株主の代表者の意図に反するような行動をすることはできないようになつているというのである。このように、株式会社が定款をもつて株主総会における議決権行使の代理人の資格を当該会社の株主に限る旨定めた場合において、当該会社の株主である県市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、原審認定のような事実関係の下においては、右定款の規定に反しないと解するのが相当である。

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【株主総会の決議(議決権書面行使の義務付け)】
1000人以上の場合の書面による議決権行使の義務付け。
※株主が地理的に分散しているので、議決権行使の便宜を図ったもの。

会社法298条(株主総会の招集の決定)
「1 取締役(前条4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から302条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
①株主総会の日時及び場所
②株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
③株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
④株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
⑤前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 取締役は、株主の数が1000人以上である場合には、前項3号に掲げる事項を定めなければならない。当該株式会社が金融商品取引法2条16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令に定めるものでる場合は、この限りでない。」

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【株主総会の決議(不統一行使)】
議決権の不統一行使。他人のために株式を保有する者の場合には不統一行使可。
∵信託会社が複数の委託者のために株式を保有、議決権行使に各委託者から異なる指図を受ける場合。

取締役会設置会社の場合には、株主総会の3日前までに、
不統一行使をする旨を連絡。

議決権の集計等・会社の事務処理の便宜のため。

会社法313条(議決権の不統一行使)
「1 株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる
2 取締役会設置会社においては、前項の株主は、株主総会の日の3日前までに、取締役会設置会社に対してその有する議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならない。
3 株式会社は、1項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。」

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【株主総会決議の瑕疵を争う方法】

会社法831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)
「1 次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から3箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人となる者も、同様とする。
① 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
② 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
③ 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。」

←設立無効との比較、Q.「取消し」と「無効」は何が違う?

※株主であれば議決権は自由に行使して良いのが原則(取締役との比較)
※浦和地判H12.8.18

「著しい」というフレーズ:「招集手続き」については、「著しい」が入ってない。もっとも2項で裁量棄却をすることが出来る。

最高裁判所昭和46年3月18日判決
〔判決文〕
株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等から見て重大な瑕疵がある場合には、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、決議取消の請求を認容すべきであつて、これを棄却することは許されないものと解するのが相当である。けだし、株主総会招集の手続またはその決議の方法に重大な瑕疵がある場合にまで、単にその瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないとの理由のみをもつて、決議取消の請求を棄却し、その決議をなお有効なものとして存続せしめることは、株主総会招集の手続またはその決議の方法を厳格に規制して株主総会の適正な運営を確保し、もつて、株主および会社の利益を保護しようとしている商法の規定の趣旨を没却することになるからである。
ところで、被上告会社の昭和40年12月29日の臨時株主総会における会社の解散、監査役および法定清算人の選任の各決議について見るに、原審の確定したところによれば、右株主総会招集の手続はその招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議にもとづかないでなされたものであるのみならず、その招集の通知はすべての株主に対して法定の招集期間に2日も足りない会日より12日前になされたものであるというのであるから、右株主総会招集の手続にはその性質および程度から見て重大な瑕疵があるといわなければならない。
最高裁判所平成5年9月9日判決
〔判決文〕
1、原審は、(1)被上告会社は、昭和63年3月26日、東京都新宿区を招集地として招集された臨時株主総会(以下「本件株主総会」という。)を開催した、(7)右の当時の被上告会社の本店は福島県南会津郡只見町に置かれ、その定款には株主総会の招集地についての規定はなかった。(2)本件株主総会当時の被上告会社の発行済株式の総数は768万株であり、株主は、総数540名で各地に散在していたが、只見町内には数名、福島県内には数十名が散在していた、(4)本件株主総会に出席した株主は206名でその持ち株総数は488万5000株であり、その全員の賛成によって、原告ほか2名の取締役と監査役石川誠を解任する旨の決議及び芹川澄夫ほか4名を取締役に、住谷甲子郎を監査役にそれぞれ選任する旨の決議(以下両決議を併せて「本件決議」という。)がされた、(5)被上告会社においては、同49年に本店を只見町に移転し、翌50年5月には只見町内で株主総会を開催したが、東京都で株主総会を開催することを希望する株主がいたため、その後は、10年以上にわたって東京都内を招集地とする株主総会が開催されてきたが、株主から異議が出たことはなかった、(6)上告人は、被上告会社の代表取締役として昭和62年7月開催の株主総会を東京都港区に招集したが、それは、同地に招集することが違法であるとは知らずに前例に従ったものである、との事実を適法に確定し、右事実関係の下において、本件株主総会の招集手続は商法233条に違反するが、その違反は重大なものではなく、決議に影響を及ぼさないから、本件決議の取消請求は商法251条の規定により棄却されるべきであると判断して、右請求を認容した一審判決を取り消し、上告人の請求を棄却した。
2、しかし、前記1の(1)及び(2)の事実によると、本件株主総会の招集手続には定款に特別の定めがないのに本店所在地又はこれに隣接する地に招集しなかったという違法があるところ、前記1の(4)及び(5)の事実を考慮に入れても、右の違法は重大でないとも、本件決議に影響を及ぼさなかったともいえず、商法251条の規定により本件決議の取消請求を棄却することはできない。
最高裁判所昭和45年4月2日判決
〔判決文〕
株主総会決議取消の訴は形成の訴であるが、役員選任の総会決議取消の訴が係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなつたときは、右の場合に該当するものとして、特別の事情のないかぎり、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至るものと解するを相当とする。
叙上の見地に立つて、本件につきかかる特別事情が存するか否かを見るに、原審の認定したところによれば、上告人らの取消を求める株主総会の決議によつて選任された取締役らは、いずれもすべて任期終了して退任しているというのであるところ、所論は、取消し得べき決議に基づいて選任された取締役の在任中の行為について会社の受けた損害を回復するためには、今なお当該決議取消の利益があるものと主張し、そのいうところは、本件取消の訴は、会社の利益のためにすると主張するものと解されるところがある。しかして、株主総会決議取消の訴は、単にその訴を提起した者の個人的利益のためのみのものでなく、会社企業自体の利益のためにするものであるが、上告人は、右のごとき主張をするにかかわらず本件取消の訴が会社のためにすることについて何等の立証をしない以上、本件について特別事情を認めるに由なく、結局本件の訴は、訴の利益を欠くに至つたものと認める外はない
最高裁判所平成4年10月29日判決
〔判決文〕
原審の確定したところによれば、(1)被上告会社が昭和62年3月30日に開催した第68回定時株主総会において退任取締役及び退任監査役に退職慰労金を贈呈する旨の決議がされ(以下、これを「第一の決議」という。)、上告人らが第一の決議の取消しを求める本件訴えを提起し、第一審は右決議を取り消す旨の判決を言い渡したところ、被上告会社が昭和63年3月30日に開催した第69回定時株主総会において同一の議案(ただし、前株主総会におけるのと異なり、贈呈すべき退職慰労金の総額が明示された。)が可決され(以下、これを「第二の決議」という。)、第二の決議はこれに対する取消訴訟等の提起もなく確定した、(2)第二の決議によれば、退職慰労金支給の時期は昭和62年3月31日とされ、第二の決議は、第一の決議の取消しが万一確定した場合、さかのぼって効力を生ずるものとされていた、というのである。
そうすると、本件においては、仮に第一の決議に取消事由があるとしてこれを取り消したとしても、その判決の確定により、第二の決議が第一の決議に代わってその効力を生ずることになるのであるから、第一の決議の取消しを求める実益はなく、記録を検討しても、他に本件訴えにつき訴えの利益を肯定すべき特別の事情があるものとは認められない。論旨はまた、取締役等に対する過料の制裁を求める上で第一の決議の取消しを求める必要があることを理由に本件訴えにつき訴えの利益があるとも主張するが、右の制裁を求める上で第一の決議の取消しは法律上必要でなく、単なる立証上の便宜を図る必要性をもって訴えの利益があるものとすることはできない。原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲の主張を含め、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
最高裁判所昭和58年6月7日判決
〔判決文〕
株主総会決議取消の訴えのような形成の訴えは、法律に規定のある場合に限つて許される訴えであるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴えの利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を喪失するに至る場合のあることは否定しえないところである。しかして、被上告人らの上告人に対する本訴請求は、昭和45年11月28日に開催された上告会社の第42回定時株主総会における「昭和45年4月1日より同年9月30日に至る第42期営業報告書、貸借対照表、損益計算書、利益金処分案を原案どおり承認する」旨の本件決議について、その手続に瑕疵があることを理由として取消を求めるものであるところ、その勝訴の判決が確定すれば、右決議は初めに遡つて無効となる結果、営業報告書等の計算書類については総会における承認を欠くことになり、また、右決議に基づく利益処分もその効力を有しないことになつて、法律上再決議が必要となるものというべきであるから、その後に右議案につき再決議がされたなどの特別の事情かない限り、右決議取消を求める訴えの利益が失われることはないものと解するのが相当である。そこで、叙上の見地に立つて、本件につきかかる特別の事情が存するか否かについて検討する。この点に関し、論旨は、本件決議が取り消されたとしても、右決議ののち第43期ないし第54期の各定時株主総会において各期の決算案は承認されて確定しており、右決議取消の効果は、右第43期ないし第54期の決算承認決議の効力に影響を及ぼすものではないから、もはや本件決議取消の訴えはその利益を欠くに至つたというのであるが、株主総会における計算書類等の承認決議がその手続に法令違反等があるとして取消されたときは、たとえ計算書類等の内容に違法、不当がない場合であつても、右決議は既往に遡つて無効となり、右計算書類等は未確定となるから、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定なものになると解さざるをえず、したがつて、上告会社としては、あらためて取消された期の計算書類等の承認決議を行わなければならないことになるから、所論のような事情をもつて右特別の事情があるということはできない。

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【株主総会決議の瑕疵を争う方法(無効、不存在)】

会社法830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
「1 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。」

※通常の確認訴訟と違いはほとんどないが、特別の定めを置いている理由は対世効(関連して登記の抹消が可能になる。公示されているために、画一的に処理する必要。当事者間だけで良い話は、当事者間だけで解決すれば良い。)

※取消しとの大きな違いは、提訴期間の制限が無いこと。

※単なる「集会」か、法的に意味のある「株主総会」になるか。

違いは当たり前のように感じるが、実際には境目ははっきりしない。だからこそ、問題になり裁判になる。

最高裁判所昭和33年10月3日判決
〔判決要旨〕
株主9名、株式総数5,000株の株式会社において株主の1名である代表取締役が、単に、自己の実子である2名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の6名の株主(その持株2,100株)には招集の通知を全然なさず、右親子3名だけが株主総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということはできない。
〔判決文〕
所論は要するに本件株主総会決議は有効に成立したもので、たとえ手続に瑕疵ありとするもそれは決議取消の事由たるに過ぎず、これを決議不存在と解するのは誤りである旨主張する。
しかし原審は所論総会当時における上告会社の株主は原判示の如く被上告人、A、B、C、D、E、上告会社代表取締役F、G、Hの9名(総株式数5,000株)であること、しかるに右総会については被上告人以下6名(その持株2,100株)に対しては招集の通知が全然なされなかつたこと、G及びHに対したとえ招集の通知があつたとしても、それは単なる口頭の招集にすぎず、しかも右G及びHの両名はいずれもFの実子であることを認定し、所論株主総会の決議は、なんら法律所定の手続によらず単に親子3名によつてなされたことが明白であるから、これをもつて株主総会が成立し、その決議があつたものといえない旨判示しているのであつて、原審のこの判断は相当である。

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